高ランクハンターたちの傲慢
数日前、人気ダンジョン配信者・白銀葵の配信に「謎のFランク少年が静電気でボスを秒殺した瞬間」が映り込んでしまった。
その動画は瞬く間にSNSで拡散され、ネット上は「あれは一体何の魔法だ?」「いや、CGのヤラセだろ」「でもあの一瞬、確かにパチッと音がしたぞ」と大祭りになっていた。
――そんな世間の喧騒を知ることもなく、俺こと神谷 蓮は、いつものように最下層の物陰で地味に素材回収を行っていた。
「おい、そこのお前」
突然、背後から威圧的な声がかけられた。
振り返ると、銀色の派手な魔導アーマーに身を包んだ、自信満々な面持ちの男が立っていた。
胸元には、上位を示す『Bランク』のギルドエンブレムが輝いている。
炎の魔導士としてテレビにもよく出演している人気ハンター・火神レンヤだった。その背後には、彼の取り巻きであるCランクハンターたちが腕組みをしてニヤニヤと笑っている。
「あんたが、例の配信に映り込んでた『静電気男』だな?」
「……何か用ですか?」
「はっ、白々しいな」
火神は鼻で笑うと、愛用の魔導杖を地面に突き立てた。
「ネットじゃ『一撃でボスを倒したチート』とか持ち上げられてるが、あんなのどうせ目の錯覚か、運営の仕込みに決まってる。お前みたいな、出力0.02KWのゴミみたいなFランクの静電気が、俺たちBランクの誇る極大魔法より強いわけがないだろ」
取り巻きの男たちがそれに同調して気炎を上げる。
「そうだそうだ! 火神さんの『プロミネンス・フレア』なら、あんな雑魚モンスターごとダンジョンを焼き払えるんだからな!」
「Fランクは大人しく、隅っこで雑用でもしてろっての」
現代のハンター界は、SNSのフォロワー数や「派手な大爆発を起こせるか」という出力の大きさがすべて。地味で目立たないスキルや、相手の内側を正確にハッキングするような技術は、彼らにとって「無価値な欠陥品」にしか見えないらしい。
「まあ、いいさ」
火神は不敵な笑みを浮かべ、俺の肩を乱暴に掴んだ。
「ちょうど今から、俺たちのパーティーの配信撮影がある。お前みたいな珍獣を『引き立て役』としてゲスト出演させてやるよ。もちろん、映るのはお前の情けない『パチパチ静電気』だけで十分だ。せいぜい俺たちの引き立て役として画面を盛り上げな」
勝手に話を決め、俺の返事も聞かずにスタスタと去っていく火神たち。
(めんどくさいことに絡まれたな……。目立ちたくないのに、これじゃあ余計な注目を集めちまう)
俺は小さく息をつきながら、遠ざかる火神の背中を見つめた。
実力もないくせに権威と派手さだけに酔いしれている連中――その化けの皮が剥がれる瞬間は、そう遠くない未来にやってきそうだった。




