ランク診断の裏をかけ
Sランクモンスター『カイザー・シェル』が突如として倒れ伏し、沈黙した現場。
呆然と立ち尽くすハンターや作業員たちの視線が、俺の右手に注がれていた。
「お、おい……今の静電気みたいなやつで、あいつを撃破したのか……!?」
「待て、救急隊と協会本部が来るぞ! 早く避難しろ!」
遠くから駆けつけてくるハンター協会の足音が聞こえた瞬間、俺は咄嗟に身を翻した。
(ここで下手に目立ったら、『FランクなのにSランクモンスターを倒した異常者』として実験台にされるか、利権に群がる協会に面倒な形で巻き込まれる……!)
俺は助けたおじさんに「他言無用でお願いします」と小声で言い残すと、混乱に乗じて現場から素早く離脱したのだった。
――1時間後。ハンター協会・検査支部。
俺は再び、能力の再測定室の前に立っていた。
ダンジョンでの事故を受けて緊急の健康診断と魔力波測定が義務付けられたからだ。
「神谷さんですね。先ほども測定しましたが、一応再チェックを行います。測定器に手を触れて、限界まで魔力を込めてください」
白衣の測定員が気のない調子で告げる。
測定器の前に立ち、俺は脳内で視界の青いUIを呼び出した。
(協会の測定器は……『出力(KW)』、つまり一瞬でどれだけの破壊力を出せるかという単純な火力しか測っていない)
Plaintext
[System_Scan: Target_Analyzer]
Type = Power_Measurement_Device
Security = Low (Unencrypted Signal Port)
Status = Connected
(なるほど……測定器自体も電気信号で数値を弾き出しているんだ。それなら……)
俺は測定器に手をかざすと同時に、指先から極小の超高周波パルスを流し込んだ。
『測定機器へシグナル割り込み。出力表示数値を [0.02KW] に固定します』
バチッ。
小さく情けない静電気の音が鳴り、測定器のモニターがピコンと音を立てる。
Plaintext
【出力測定値】0.02 KW
【判定ランク】Fランク(変更なし)
「ふむ……やはりFランクですね。先ほどのダンジョン崩落事故で無事だったのは運が良かっただけでしょう。お疲れ様でした」
測定員は呆れ顔で結果用紙を俺に手渡した。
「ありがとうございます」
俺は丁寧にお辞儀をして測定室を出ると、廊下の陰で小さくガッツポーズを作った。
(よし……! 協会の時代遅れな『出力重視』の測定システムをハッキングして、数値を完全に偽装できた)
Fランクのライセンスがあれば、低層ダンジョンへの立ち入りや素材の換金権は自由に得られる。
高ランクハンターとして協会に縛られ、利権争いやメディアの見せ物にされるリスクを回避しつつ、裏で効率よくダンジョンを攻略して金稼ぎができるのだ。
「待ってろよ、妹の薬代……。俺の『静電気』で、誰にも邪魔されずにダンジョンを最速で食い荒らしてやる」
Fランクの仮面を被った俺の、裏での本格的なダンジョン攻略が始まろうとしていた。




