↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【11/7完結予定】侍女アナベルと口紅の秘密~女好きの騎士に口説かれてますが、お嬢様の死の真相を追うのが最優先です~  作者: 青海きのこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/35

第24話 前室での挨拶

馬車の扉を従僕が開けると、セドリックはアナベルの手を取って王宮のエントランスへと進んだ。他の貴族たちも車寄せに馬車を止めると、次々とエントランスへと向かっている。

招待状を確認され、前室へと通される。壁一面の鏡で身だしなみを確認していると、セドリックがアナベルの耳元で「結び目を直してくれないか」と囁いた。驚いて見上げると、セドリックがクラバットを直しやすいように屈んでいる。アナベルは周囲の視線が気になった。


「ご自分で直せるのではないのですか?」


アナベルは周りに聞こえないようにそっと囁くと、「ダメか?」と優しく返された。


「こういうものを直すのは、君の方が器用だろう?」


セドリックの甘えるような言葉に、アナベルの胸が不意に跳ねた。先日のリボンのことまで思い出してしまい、ますます落ち着かなくなる。


(いまは……思い出しちゃだめ!)


アナベルは平静を装い、わずかに歪んだクラバットを直した。


(ああ、落ち着かないわ)


クラバットを直すアナベルに、貴族たちの視線が集中していた。とりわけ令嬢たちからは、冷ややかな視線が向けられている。


(セドリック様のパートナーになったら、こういう目には遭うわよね)


顔見知りの侍女が、アナベルに気付くと驚いていた。が、侍女たちは、セドリックのパートナーを務めるアナベルに好意的な視線を送った。アナベルが前室をさっと見渡すと、見たことのある顔を見つけた。“庭園の君”だ。今夜のドレスは淡いブルーのチェック柄の布地をピンクの造花で飾っている。髪にはピンクの造花と、ドレスと共布の幅広のリボンが巻かれていてとても華やかだ。アナベルと目が合った彼女は、冷ややかな表情をしていたが、すぐに明るい笑顔を浮かべると近寄って来た。


「セドリック様ではありませんの?」

「ああ、エイムズ伯爵令嬢ではありませんか」


アナベルの脳裏に、先日“エイムズ伯爵令息の名”を借りたことがよぎった。


(もしかして、庭園では化粧水のことを……?)


エイムズ伯爵令嬢はアナベルを一瞥すると、セドリックに甘えるような声を出した。


「王宮の夜会にいらっしゃるなんて、珍しいですわね。私もパートナーを務めたかったわ」

「あなたの信奉者に叱られてしまいますよ」

「もう、そればかりじゃない」


彼らのいつものやり取りなのだろうか。エイムズ伯爵令嬢は、扇で顔を隠して「ふふっ」と笑った。


「ところで、セドリック様。ご紹介いただけないのかしら?」


扇越しにアナベルを見つめる令嬢の目は、品定めでもするように鋭い。


「失礼いたしました。こちらはアナベル・フェザーストーン男爵令嬢です」

「フェザーストーン男爵……」


アナベルはエイムズ伯爵令嬢に挨拶をしたが、彼女は口にこそ出さないが「聞いたことがないわ」とでも言うような反応を示した。


(そりゃあ、我が家は片田舎の貧乏男爵家。伯爵令嬢が知るわけがないわよね)


セドリックは彼女の反応を察したように、「彼女の父が私の父と古い友人で、今日の夜会のパートナーを務めることになったんです」と微笑んだ。セドリックの説明を、周囲の貴族たちも聞き耳を立てているようだった。


「そんな繋がりがありましたの」

「ええ」

「シンディー、そろそろ会場へ入場する時間だよ」


エイムズ伯爵令嬢の今夜のパートナーは兄のようだ。顔立ちは妹に似ている。けれど、恰幅のよい身体と柔和な表情が、まるで違う印象を与えていた。


(この人が、ランド商会でお名前をお借りした……。妹のご令嬢ともタイプが違うのね)


エイムズ伯爵令息と令嬢が立ち去ろうとした瞬間、セドリックがチラッと彼らの後ろを歩く女性使用人に目を向けた。


「エイムズ伯爵令嬢」


兄に連れられて会場へ行こうとしていた令嬢は、セドリックに呼び掛けられ、嬉しそうに振り返った。大きな身体のエイムズ伯爵令息の後ろに隠れるように、小柄な女性使用人は立っていた。


「あとで会場でもお話しましょう」


そう言ってセドリックは令嬢に一歩近づき、彼女の背後に控えていた女性使用人へ視線を向けた。


「おや、新しい侍女を雇われたのですか?」

「え? ええ、そうなのよ。よくお気づきになりましたわね」

「ええ。以前お見かけした侍女の方々とは、少し雰囲気が違うように思いまして」

「そんなことにも気が付いてくださるのね」


エイムズ伯爵令嬢はまんざらでもない顔をして微笑んだ。話題にあがった使用人は、セドリックと目が合うと、大きな目を何度か瞬かせた。


「ローズ様のご紹介なのよ」

「……そうでしたか。お引き止めして申し訳ございませんでした」

「とんでもないわ。それでは、また会場で」

「ええ。ぜひ」


エイムズ伯爵令嬢は、控え目に待つ兄の元へと戻ると会場へと入場した。

アナベルとセドリックは、静かに視線を交わした。


「間違いない。彼女はガスリー子爵家にいた使用人だ」


セドリックはそっとアナベルの耳元に囁いた。アナベルは小さく頷いた。


(サロモンで会ったのも、彼女だった。ガスリー子爵家の使用人が、どうしてエイムズ伯爵令嬢の侍女に? しかも、紹介したのはまたローズ……)


アナベルは、ローズへの疑問を一層深め、セドリックと会場へと入場した。

お読みいただきありがとうございました!

「面白い」と思っていただけましたら、ぜひ「ブクマの追加」や「リアクション」、「感想」、下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援いただけますと嬉しいです!

皆さんの応援で執筆のモチベーションがアップします!!!

どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。