狙い 3
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晩餐の時間になって、ベアトリスとエドワードはダイニングへ向かった。
マクローリン辺境伯夫妻はすでにダイニングにいて、ベアトリスたちが入ってくると立って出迎える。
マクローリン辺境伯夫妻には男女一人ずつ成人した子供がいるが、二人とも結婚し、現在は王都にいるそうだ。
ヒュームの姿はない。
彼は仕事があるので晩餐には参加しないという。
晩餐がはじまるって少しして、ベアトリスは現在の国王や王太子を取り巻く環境を訊ねてみた。
「城の様子はどうですか? 兄が、毒を盛られたと聞いたのですが……」
マクローリン辺境伯は真面目な顔で頷いた。
「ええ、現在は小康状態であるものの余談は許されないとか。面会謝絶なので、直接お会いできておりませんが、侍医によれば回復にはもうしばらくかかるだろうと」
(つまりお兄様は、派閥の人間も簡単に近寄れないようにしているのね)
派閥の人間にも警戒対象がいるからなのか、はたまたプリチェット公爵の目を欺くためにそうしているのかのどちらかだろう。前者であれば、派閥内に裏切者がいるのかもしれない。
「プリチェット公爵やその周辺の動きはいかがでしょうか」
「相変わらず大きな勢力を誇っておいでです。……最近では、王太子殿下が寝込まれているのをいいことに、派閥内の令嬢を殿下の婚約者にと推しておいでです」
なるほど、ベンジャミンが集めてきた兄の婚約者が決定するかもしれないという噂は本当のことだったようだ。
(でも……)
何故ここにきて、プリチェット公爵は自身の派閥の令嬢をニコラスの婚約者にあてがおうとしたのだろう。
王権奪取が狙いなら、自身の派閥の令嬢とニコラスを婚姻させようという動きはいささか不可解に映る。
(って、推測はよくないわね。プリチェット公爵の考えは、まだはっきりしないもの)
縁談がプリチェット公爵の狙いならば、何かがあるのは確かだ。それだけ念頭に置いておけばいい。
「お相手の方はどなたですか?」
「ベッカム侯爵の養女だそうですが、ベッカム侯爵に養女を迎え入れたのは最近で、情報はほとんどございません。押し通されそうならば、こちらも対抗し派閥内の令嬢を婚約者候補に挙げるしかないでしょうが、ミューア公爵はもう少し静観するとおっしゃっています」
「そうですか……」
ミューア公爵が静観の姿勢を取ったならば、状況は最悪ではないだろう。
縁談話は上がったが、まだ話が出ただけで、前には進んでいないと考えられる。
何より、ニコラスが臥せっているふりをし、面会謝絶の状態を貫いているので、顔合わせすらできない。さすがに顔合わせもしないうちに婚約が確定することはあるまい。
(お兄様のことだから対応はとっているでしょうね。だったらわたしも、この件は静観でいいかしら?)
そう思っていたら、マクローリン辺境伯が執事を呼んで一通の封筒を持ってこさせた。
封は切られていない。
「こちらが、王太子殿下より届きました」
執事がベアトリスの前に封筒とペーパーナイフを置いてくれた。
ベアトリスは少し悩んだが、後から開封すると伝えるとマクローリン辺境伯を信用していないように聞こえるだろう。
ニコラスがマクローリン辺境伯館宛てに手紙を送ったということは、マクローリン辺境伯を信用しているということだ。警戒する必要はない。
封を切って中を中を確認する。
エドワードが隣から手元をのぞき込んできた。
けれど、ただの近況報告に見えたのだろう。不可解そうに眉を寄せる。
(お兄様とのやり取りは基本的に暗号だからね)
何も知らない人が読んだらただの他愛ない手紙に見えるのだ。
「ありがとうございます。手紙に細かい指示が書かれていると思いますので、部屋に戻って解読してみます」
マクローリン辺境伯も暗号が使われているのは想定内だったのか、そうですねと笑顔で頷いた。
ベアトリスは手紙を封筒に戻すと、晩餐の続きを口に運ぶ。
その後も、マクローリン辺境伯からヘンウッド国での近況を聞きながら、大きな問題はなさそうだとベアトリスは思った。
――表向きは。
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