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もう一人の目的 5

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 昨夜――いや、日付が変わっていたので今日か。


 本日、十一月二十六日。時刻は深夜零時三十五分すぎ。

 スタッフ会議が終わり、見回りの乗務員がスタッフ車両に戻ったあと。


 ベンジャミンは、ベアトリスのコンパートメントの施錠確認をするふりをしてスタッフ車両を出る。

 部屋の灯りは落とされ、廊下も薄暗い。

 ベンジャミンがランタンを片手に一等車両に向かうと、計画について打ち合わせ済みだったアンソニア・エアトンがコンパートメントから出て来る。


 恐らくだが、アンソニア・エアトンが実行役、ベンジャミンが情報収集役と、役割分担がされていたと思われた。乗務員ならば乗客の情報も仕入れやすい。

 ベンジャミンはアンソニアに、例えばベアトリスの飲み物に睡眠薬を混ぜて置いたなどという嘘の情報でも流していたのかもしれない。


 アンソニアはベアトリスのコンパートメントに向かう。

 鍵は、そう、鍵は、ベ(・)ン(・)ジ(・)ャ(・)ミ(・)ン(・)が(・)持(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)鍵(・)で(・)開(・)け(・)た(・)。

 それが自然だ。


 アンソニアは部屋に入る。

 ベンジャミンは、見張りをしておこうとでも言って、アンソニアとは少し距離を保つ。

 アンソニアは隠し持っていた武器を構え、足音を殺してベッドへ向かう。

 ベッドはあらかじめベンジャミンによって細工でもしてあったのかもしれない。

 たとえば衣類などであたかも人が眠っているように膨らませておくとかだろうか。


 アンソニアは目の前の、そう、ベッドの中のベアトリスに集中している。

 ベンジャミンも、足音を殺してアンソニアに近づいていく。

 ベッドを見、アンソニアはさすがに様子がおかしいことに気づいたかもしれない。

 しかし、アンソニアがベンジャミンに質問を投げかける余裕はなかっただろう。


 ベンジャミンは背後からアンソニアに襲い掛かり、口元を片手で塞ぐと、素早く首の後ろに長い針のようなものを突き刺した。

 女は神経反射でビクンと震える。

 だが、神経が集中している脳幹や中脳を傷付けられては、いかに熟練の暗殺者とはいえ動きは取れない。


 ベンジャミンはアンソニアの手から短剣を奪い取り、彼女の背中に突き刺す。

 そうしてアンソニアの遺体を床に転がし、ベアトリスの宝石箱の中身を床に散らばすと、その中に真珠のネックレスを見つけてアンソニアの手に握らせる。

 ベッドに細工をしていた衣類も取りだし床に投げる。

 ベッドは綺麗に元に戻しておく。

 そうしてランタンを片手に悠然と部屋の外に出たベンジャミンは、扉がこじ開けられたように見せるために、鍵穴の周りにいくつかの傷をつける。


 その後、あたかもアンソニアの遺体を発見したふりをして、医務室を訪れ、マイケル医師を呼ぶ。

 きっと、その物音を聞いてベアトリスとエドワードが起きるのは計算のうちだろう。

 こうしてベンジャミンはベアトリスたちを連れてコンパートメントに舞い戻り、アンソニアの遺体と、散らかった部屋を見せた。


 以上である。





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