第32話 聖女様、監察官に猫だと言い張ります
中央神殿の監察官。
エルネスト。
そう名乗った男は、廊下の奥に立っていた。
白い神官服。
胸元の銀飾り。
整った髪。
穏やかな笑み。
そして、まったく笑っていない目。
ガルディアスとは違う。
魔性の匂いはしない。
危険察知も、強く鳴ってはいない。
だが、安心できる相手ではなかった。
俺は廊下の曲がり角の手前に座ったまま、動けずにいた。
さっきまでの俺は、少し誇らしかった。
転ばずに廊下を歩けた。
若い侍女に挨拶できた。
見習いの少年に応援された。
自力でここまで来た。
それなのに、今はもう帰りたい。
毛布に戻りたい。
聖女様、廊下訓練はここまでにしませんか。
かなり成果は出ました。
十分です。
俺は小さく鳴いた。
「きゅ……」
リリアが半歩前に立つ。
アリアはさらにその前。
司祭長は杖を手に、俺とリリアの接続を確認している。
エルネストは、その並びを見て微かに目を細めた。
「ずいぶんと厳重ですね」
アリアが答える。
「聖女様の護衛です」
「もちろん、それは理解しています。ですが、その保護個体一体のために、聖女様、護衛騎士、司祭長まで動いているとなると、中央としても確認せざるを得ません」
保護個体。
公式記録に近い呼び方だ。
白銀個体ノアではなく、保護個体。
まだ柔らかい。
だが、俺を見る目は柔らかくない。
観察。
評価。
判断。
そういう目だ。
司祭長が静かに言う。
「エルネスト殿。到着の報告は受けておりません」
「急ぎでしたので」
「中央神殿の監察官が、事前通達なしに聖女様の私室周辺へ入るのは、あまり穏やかではありませんな」
「私室には入っておりません」
「詭弁ですな」
司祭長の声は穏やかだが、かなり鋭かった。
普段の「記録にありませんな」と言っている人とは少し違う。
神殿の司祭長としての顔だ。
エルネストは笑みを崩さない。
「失礼は承知しています。しかし、今回の件は中央神殿にもすでに届いています。聖女様のそばに、聖力と魔性の双方に反応する正体不明の個体がいる、と」
早い。
情報が早すぎる。
俺たちは外部には公表しないと決めたばかりだ。
それなのに、中央神殿にはもう届いている。
誰が伝えた。
神殿内の誰かか。
それとも、ガルディアス側が意図的に流したのか。
俺の背中がぴこっと動きかけた。
今は動くな。
動くと絶対に見られる。
すでに見られているけど。
リリアが静かに言った。
「ノアは危険な存在ではありません」
「聖女様がそうお考えなのは分かります」
「考えではありません。私は、ノアを見ています」
リリアの声は落ち着いていた。
疲れは残っているはずなのに、揺れていない。
「ノアは私を守ろうとしてくれました。ガルディアスの干渉も拒みました。自分を捨てる道も、誰かを傷つける道も選びませんでした」
エルネストは俺を見た。
「それを、どのように確認したのですか」
嫌な聞き方だった。
リリアの主観を突いている。
証拠を求めている。
リリアは少しだけ黙った。
俺は思わず前足に力を入れた。
そうだ。
リリアには俺のステータス画面は見えない。
俺が何を拒んだのか、どこまで証明できるかは難しい。
司祭長が口を開く。
「私が確認しています。ノアは外部干渉を受けながらも、魔性への同調ではなく、聖力との変換・調和に近い反応を示しました」
「司祭長の所見として?」
「ええ」
「記録は?」
「作成中です」
「では、まだ正式な提出はない」
エルネストは微笑んだままだ。
言葉だけなら丁寧。
だが、一つ一つ逃げ道を塞ぐような言い方だった。
俺はますます毛布に帰りたくなる。
アリアが一歩前へ出た。
「監察官殿。ノアは現在、体が変化した直後で安定確認中です。長時間の問答には向きません」
「問答をしているのは、その子ではなく聖女様と司祭長です」
「ノアが緊張すれば、聖女様との接続にも影響します」
「では、やはり聖女様に影響を及ぼす存在なのですね」
アリアの目が細くなった。
うまい。
嫌な意味でうまい。
こちらが何を言っても、ノアが危険かもしれない、という方向へ持っていく。
敵意はない。
でも、厄介だ。
ガルディアスのように黒い糸で絡んでくるのではない。
言葉で絡め取ってくる。
俺は小さく鳴いた。
「きゅう……」
リリアが振り返る。
「ノア」
「きゅ……」
すみません。
たぶん、顔に出ています。
いや、鳴き声に出ています。
エルネストはその鳴き声を聞いて、少しだけ視線を変えた。
「その鳴き声は、噂通りですね」
噂。
また噂。
俺の鳴き声まで噂になっているのか。
「鳴き声だけを聞けば、害のない小動物にも思える」
鳴き声だけなら。
つまり見た目は違うと言いたいのだろう。
まあ、否定できない。
白銀の角。
銀紋。
背中のそれ。
猫と言い張るには、いろいろと増えすぎた。
リリアが言った。
「ノアは、猫に似ています」
出た。
この状況でも出た。
エルネストが一瞬、わずかに眉を動かした。
「猫、ですか」
「はい」
リリアは真剣だった。
「少し個性的ですが」
アリアが目を閉じた。
司祭長が小さく咳払いした。
俺は下を向いた。
ここでそれを言うのか。
いや、リリアなら言う。
中央神殿の監察官相手でも言う。
それがリリアだ。
エルネストは俺をじっと見た。
「角があります」
「寝癖です」
即答だった。
俺は固まった。
ついに公式の場で、角が寝癖にされた。
エルネストも一瞬止まった。
「……寝癖?」
「はい」
「聖女様、あれは角状器官に見えますが」
「少し立派な寝癖です」
無理だ。
さすがに無理だ。
寝癖が立派になるな。
俺は小さく鳴いた。
「きゅう……」
リリア。
それは通らないと思います。
アリアが静かに言った。
「聖女様。監察官殿の前では、もう少し正確な表現を」
「では、個性です」
「それならまだましです」
ましなのか。
アリア判定では寝癖より個性の方がましらしい。
エルネストは少しだけ口元を押さえた。
笑ったのか。
いや、違う。
表情を整えただけかもしれない。
「聖女様は、その子をずいぶんと庇われる」
「庇うのではありません。ノアをノアとして見ているだけです」
「では、ノアが何であるか、説明できますか」
リリアは少し黙った。
それから、俺を見た。
「ノアは、ノアです」
会話としては答えになっていない。
監察官向けの説明としては弱い。
でも、俺には一番効く。
ノアはノア。
器でもない。
白い獣でもない。
危険な特殊個体でもない。
少し個性的な猫……は無理があるけど。
それでも、ノア。
俺は小さく鳴いた。
「きゅ」
エルネストが俺を見る。
「今のは、返事ですか」
「はい」
リリアが答えた。
「ノアは、ちゃんと聞いています」
「人語を理解していると?」
「ある程度は」
隠さない。
リリアは隠さなかった。
アリアが少しだけ視線を動かしたが、止めなかった。
ここまで見られた以上、下手に隠す方が不自然なのかもしれない。
エルネストは興味深そうに俺を見た。
「では、簡単な確認をしても?」
嫌です。
心の底から嫌です。
俺は毛布がないことを思い出した。
今は廊下だ。
隠れるものがない。
強いて言えばリリアの後ろ。
でも、逃げ込むには距離がある。
アリアがすぐに言った。
「ノアへの直接的な試験は認められません」
「直接的ではありません。簡単な反応確認です」
「目的は」
「危険性の判断です」
アリアが断ろうとした時、司祭長が口を開いた。
「一つだけなら」
「司祭長?」
アリアが低い声を出す。
司祭長は俺を見た。
「ノアが嫌がれば中止します。内容は私が選びます」
エルネストは少し考え、頷いた。
「構いません」
え。
やるの?
やる流れなの?
俺はリリアを見る。
リリアは心配そうな顔をしていた。
「ノア、嫌なら嫌と言ってください」
「きゅう……」
嫌です。
かなり。
だが、ここで完全に拒否すると、かえって怪しまれる気がする。
中央神殿の監察官。
こいつはたぶん、こちらの態度も見ている。
俺が人の言葉を理解しているか。
命令に従うか。
リリアに依存しているか。
攻撃性があるか。
怖がるか。
全部、見ている。
なら、必要最低限だけやって、さっさと終わらせた方がいいかもしれない。
俺は小さく鳴いた。
「きゅ」
一つだけなら。
たぶん。
リリアが通訳する。
「一つだけなら、という感じです」
通訳が正確すぎる。
司祭長は頷いた。
「では、ノア。私の杖の先を見てください」
司祭長が杖の先を床へ向ける。
白い小さな光が、床に三つ浮かんだ。
丸。
三角。
四角。
子ども向けの図形のようだ。
司祭長は言った。
「丸の上に前足を置いてください」
簡単。
それならできる。
俺は床を見る。
丸。
三角。
四角。
前足を動かす。
丸の上へ、ぽふ。
置いた。
廊下に小さな沈黙が落ちる。
エルネストの目が細くなる。
「正確ですね」
司祭長は続けた。
「次に、四角へ」
ぽふ。
四角。
「三角へ」
ぽふ。
三角。
できた。
簡単すぎる。
だが、周囲の反応は違った。
若い侍女が小さく息を呑む。
見習いの少年は目を輝かせている。
神官兵たちは緊張している。
エルネストは表情を変えない。
それが逆に怖い。
「かなり理解していますね」
エルネストが言った。
司祭長は杖を下ろす。
「確認はここまでです」
「もう少し」
「一つだけ、という約束です」
司祭長の声が硬くなる。
エルネストは少し間を置き、頷いた。
「分かりました」
俺は前足を引っ込めた。
心臓が速い。
ただ図形に足を置いただけだ。
なのに、ものすごく疲れた。
人前で知能を見せる。
それは、便利なことではない。
俺がただの小動物ではないと示すことになる。
リリアはノアとして見てくれる。
でも、他の人間はどう見るか分からない。
危険な知性ある魔物。
そう見られる可能性もある。
エルネストは静かに言った。
「この子は、単なる保護動物ではありません」
分かっている。
そんなことは全員分かっている。
リリア以外は。
いや、リリアも分かっているのかもしれない。
分かった上で、猫と言い張っているのかもしれない。
リリアが俺のそばにしゃがんだ。
直接触れないよう、でも近くに。
「ノアは、ノアです」
また言ってくれた。
エルネストはリリアを見る。
「聖女様。その認識は尊いものです。しかし、中央神殿はそれだけで判断できません」
「中央神殿は、ノアをどうするつもりですか」
リリアの声が、少し冷えた。
エルネストは微笑んだ。
「現時点で、強制的な移送や封印を求めるつもりはありません」
現時点で。
嫌な言い方だ。
「ただし、正式な監察は必要です。ノアの能力、聖女様への影響、ガルディアスとの関連。そして、神殿が情報をどこまで把握しているか」
アリアが問う。
「監察官殿は、ガルディアスの件も把握しているのですか」
「もちろん」
エルネストはあっさり頷いた。
「二十年前の追放記録も確認済みです。今回の件が彼と関わるなら、中央神殿としても放置できません」
その言葉だけ聞けば、味方のようにも思える。
だが、信用はできない。
中央神殿が本当にガルディアス対策だけを目的にしているのか。
それとも、俺を管理したいのか。
リリアの立場を揺さぶりたいのか。
分からない。
俺は小さく鳴いた。
「きゅ……」
リリアがこちらを見る。
「ノア、大丈夫です。私はここにいます」
今度は大丈夫と言った。
でも、不思議と嫌ではなかった。
この場合の大丈夫は、リリアが自分を誤魔化す言葉ではない。
俺を落ち着かせるための言葉だった。
俺は前足を少し動かし、リリアの聖力糸に触れた。
低出力の糸。
温かい。
エルネストはその動きを見逃さなかった。
「その糸が、聖女様との接続ですか」
司祭長が答える。
「低出力の安定補助です」
「常時必要なのですか」
「現在は、完全に不要とは言えません。ただし、以前より依存度は下がっています」
「なるほど」
何がなるほどだ。
その「なるほど」が怖い。
俺はリリアの糸を離したくなった。
見られているから。
しかし、離すと逆に不安が増える。
俺は迷った。
リリアが小さく言った。
「ノア、無理に離さなくていいです」
読まれた。
俺はリリアを見上げる。
「必要なものを、恥ずかしがらなくていいです」
その言葉に、少し胸が軽くなった。
そうか。
必要なもの。
これは弱さだけではない。
俺が安定するためのものだ。
リリアとのつながり。
それを恥ずかしがる必要はない。
もちろん、見られるのは嫌だ。
でも、今は離さなくていい。
「きゅ……」
俺は小さく返事をした。
エルネストは黙ってそれを見ていた。
そして言った。
「聖女様とノアの関係性は、監察項目に含めます」
含めるな。
俺は内心で突っ込んだ。
だが、言っても無駄だろう。
この人は、何でも項目にするタイプだ。
俺の鳴き声も、前足も、背中のぴこっも、全部記録されそうである。
司祭長が一歩前へ出る。
「監察は受け入れましょう。ただし、ノアの状態を乱す検査、リリア様に過度な負担をかける確認、強制的な隔離は拒否します」
「条件つきですか」
「当然です。ここは私の神殿です」
司祭長の声には、はっきりとした重みがあった。
エルネストは少しだけ笑った。
「分かりました。中央としても、聖女様の状態を乱すことは望みません」
それは本当か。
本当ならいいが。
エルネストは俺を見た。
「ノア」
名前を呼ばれた。
俺は少し身構える。
「あなたにも協力を求めます」
「きゅ……」
協力。
嫌な響きだ。
「嫌がっているようですね」
分かるのか。
いや、誰でも分かるか。
エルネストは初めて、少しだけ困ったような笑みを見せた。
「無理にとは言いません。少なくとも今は」
今は。
やっぱり嫌な言い方だ。
俺はリリアの半歩後ろへ下がった。
いや、実際にはリリアの方が半歩前にいるから、俺が隠れた形になった。
エルネストはそれを見て、何かを考えるように目を細めた。
「聖女様から離れようとしない。興味深いですね」
興味深くない。
怖いから隠れているだけです。
俺は小さく鳴いた。
「きゅう……」
リリアが俺の前で、静かに言った。
「ノアは疲れています。今日はここまでにしてください」
アリアも即座に続く。
「歩行訓練の途中でした。これ以上の接触は認めません」
司祭長も頷く。
「私も同意します」
三人が並んだ。
リリア。
アリア。
司祭長。
俺を守るように。
それを見て、エルネストは少しだけ肩をすくめた。
「分かりました。本日は退きます。正式な話は後ほど」
後ほど。
つまり、また来る。
逃げられない。
エルネストは丁寧に礼をした。
「聖女様。司祭長。アリア殿。そして、ノア。またお会いしましょう」
俺にも礼をした。
やめてほしい。
扱いが丁寧すぎるのも怖い。
エルネストは廊下の奥へ歩いていく。
その背中が見えなくなるまで、誰も動かなかった。
危険察知は鳴らない。
魔性反応もない。
だが、俺の心はずっとざわついていた。
ガルディアスとは違う。
でも、これも危険だ。
別の種類の危険。
そう感じた。
◇
リリアの部屋に戻る頃には、俺はかなり疲れていた。
廊下を歩いた疲れではない。
監察官と向き合った疲れだ。
結界台に戻ると、俺は自分から毛布に潜り込んだ。
深く。
かなり深く。
角だけ少し出た。
リリアがそれを見て、小さく笑う。
「ノア、寝癖が出ています」
「きゅう……」
寝癖じゃないです。
たぶん。
いや、角です。
でも今は、突っ込む気力がない。
アリアが扉を閉め、警備に指示を出す。
「中央神殿の監察官の動向を確認。無断で聖女様の私室周辺に近づけないように」
「はっ」
司祭長は重い息を吐いた。
「思ったより早く来ましたな」
リリアが問う。
「司祭長は、来ると思っていたのですか?」
「いずれは。ですが、まさかこんなに早いとは」
「誰かが伝えたのでしょうか」
「可能性はあります。あるいは、中央にも独自の感知網がある」
面倒だ。
神殿内だけでなく、中央神殿まで絡んできた。
ガルディアス。
中央神殿。
監察官。
俺の歩行適応はまだ低+なのに、周囲の問題だけがどんどん高難度になっていく。
バランスがおかしい。
リリアは毛布の端を少し整えた。
直接触れないように、そっと。
「ノア、怖かったですね」
「きゅ」
はい。
かなり。
「でも、よく頑張りました」
「きゅ……」
図形に足を置いただけです。
「それでもです」
リリアは優しく言った。
「ノアは、自分で答えました」
そうか。
そうなのか。
俺はただ司祭長に言われた通りに丸、四角、三角へ前足を置いた。
でも、あれは俺が自分で答えたことになる。
逃げずに。
隠れずに。
少しだけ。
俺は毛布の中で、前足を見た。
さっきまで図形の上に置いていた前足。
廊下を歩いた前足。
リリアの糸に触れた前足。
まだ頼りない。
でも、少しずつできることが増えている。
リリアが言う。
「ノアは、ノアです」
「きゅ」
はい。
それだけは、忘れないようにしたい。
ガルディアスに器と呼ばれても。
中央神殿に白銀個体と記録されても。
監察項目に入れられても。
リリアがそう呼んでくれる限り。
俺は、ノアでいたい。
その時、ステータス画面が静かに開いた。
⸻
対人反応:警戒/微改善
外部評価:監察対象
精神状態:不安定寄り
関係性補正:リリア・セレスティアにより安定中
備考:毛布内への退避は有効です。
⸻
毛布内への退避は有効。
知ってる。
今まさにやっている。
俺は毛布にさらに顔を埋めた。
リリアが少し笑った。
「ノア、毛布が好きですね」
「きゅ」
好きです。
かなり。
アリアが真面目に言う。
「毛布は正式な安定補助具ですから」
リリアは嬉しそうに頷いた。
「では、もっと良い毛布にしないといけませんね」
「聖女様」
「休んでからです」
「よろしいです」
アリアの教育が完全に効いている。
俺は少し安心した。
問題は増えた。
だが、リリアは休むと言える。
アリアは止めてくれる。
司祭長は守ってくれる。
俺は毛布に逃げ込める。
それだけでも、以前よりはましだ。
外には中央神殿の監察官。
遠くにはガルディアス。
そして俺は、まだまともに廊下を歩く練習中。
やることが多すぎる。
でも、今日できたこともある。
廊下を歩いた。
監察官の前で逃げなかった。
丸と四角と三角を間違えなかった。
かなり地味。
地味すぎる。
でも、今の俺には大事な成果だ。
俺は毛布の中で小さく鳴いた。
「きゅ……」
聖女様。
次に廊下を歩く時は、監察官抜きでお願いします。
できれば。
できれば本当に。
普通の散歩がしたいです。




