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◆第2話:世界が終わるまでの365日(1)


 脳内のログをもう一度読み返す。




――――――――――――――――――――


【予告】

《THE・World》Ver.2.0.0 アップデート予定日:365日後

・魔素システム実装

・ダンジョン生成開始

・スキルシステム実装

・既存インフラの一部停止


――――――――――――――――――――




 何も難しい事は言っていない。


 ログは、十年前からずっと俺に教えてくれていたのだ。


 間もなく世界が終わる……いや、世界が変わる、と。


“魔素”、“スキル”……具体的には不明だが、そう呼ばれるものがこの世界のことわりの一つとして加わる。


 既存のインフラが止まり、人間社会はパニックに。


 そして、“ダンジョン”が生成される。



「ダンジョン……」



 十年間地下牢に閉じ込められてきた人間の、あり合わせの知識から絞り出す。


 ダンジョン……迷宮……少なくとも、現在の世界には存在しないような建造物が発生するようだ。


 それが、人間社会にとって良い影響を与えるモノだとは思えない。


 何故なら俺は“凶兆の忌み子”。


 俺が受信する言葉は、災いの予言だ。



「まぁ、いい」



 世界の運命には興味がない。


 俺が生き残れるかどうか、それだけだ。


 何より重要なのは、今はまだ普通の世界だという事。


 つまり、準備ができる。



「この世界が終わるまで、365日もあるんだからな」



 人としての生を諦め、ただただ道具として利用されてきた日々。


 いつしか心は死に、感情も消え失せ、全てがどうでもよくなっていた。


 だが、火が灯った。


 このクソみたいな世界が滅び、新しい形に生まれ変わるというのなら。


 俺も生まれ変わってやる。



「俺は道具じゃない」



 今度は道具ではなく、人として生きる。



「俺は人間……霞陣午だ」




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




――――――――――――――――――――


【予告】

《THE・World》Ver.2.0.0

アップデート予定日:364日後


――――――――――――――――――――




 ご丁寧にも、ログは世界終了の日までカウントダウンをしてくれるようだ。


 これは助かる。


 牢屋の中には当然、カレンダーなんて支給されていない。


 正確には、欲しいものを言って許可が下りれば、最低限のものは与えられる。


 最低限――というのは、“仕事”に必要なモノという意味だ。


 娯楽品だとか、俺個人の欲求を満たす“だけ”のものはまず認められない……まぁ、 今までの俺は、そんなものを欲しいとも思わなかったので特に困らなかったが。


 上手く言えばカレンダーくらいは手に入りそうだが、あえて言わない。


“日にちを気にしている”という素振りを、この家の人間に見せないため……これも計画の内だ。


 そう、計画。




 ――世界更新の騒乱に乗じてこの家を脱出し、自由になるという計画。




「さて、まずは……」



 新世界に適応するための前準備を始める。


 第一フェーズは、“情報収集”だ。


 先程も言ったように、例え監禁されていても俺には外界の情報を取得する為の材料がある。


“仕事”の為に持ち込まれてくる機械。


 コンピューター。


 無論、俺が“よからぬ事”を企てないため、インターネット等の外界に接続する機能は制御されているが、それでもある程度の情報収集には役立つ。


 機械の中には、そもそもそれを作った者達の“知識の痕跡”が残されているからだ。


 情報はそれだけでは無い。


 監視役達の何気ない会話にも、今まで以上に耳を欹てた。


 単なる天気の話から、霞家の内情、屋敷内の修繕工事、政治の事、国規模のイベントの事、あの歌が今流行っている、あのアイドルが今人気……高尚なものから下世話なものまで。


 崩壊後の世界では、何が役に立つのかわからない。


 ならば、あらゆるものを集めておくしかない。


 更に、俺は監視役を通じて必要なものをもらえないか交渉を行った。


「“仕事”を行う為に必要なんです」「これが無いと“仕事”を完璧に熟せない」……実際に仕事で必要なものの中に、俺が求めるものを混ぜて要求した。


 そのお陰で、欲しいものが手に入った。


 その一つが、地図だ。


 今のこの国を……いや、俺がいる地域一帯だけでも、把握する。


 どこに何があるのか、どうなっているのかを。


 あらゆる情報を取り纏め、俺は整理する。


 世界崩壊後、価値があるものは何か、必要な物資はどこで手に入るのか。


 そして、パニックになった人々はどこに殺到し、どこが安全地帯となるのか。


 無論、地図や本にメモ書きを残していれば、家の人間に怪しまれる可能性がある。


 全て、脳内で把握する。


 すると、ある日の事だった。


 周辺地域の地形を、脳内にインプットした事が原因だろうか。


 俺の頭の中に、今までとは違うログが表示された。




――――――――――――――――――――


【予告】

初期ダンジョン『××市街地・座表xx.yy区画』

想定死亡率:78%

難易度:未調整


――――――――――――――――――――




「……××市街地」



 俺は手元の地図を広げる。


 霞家の屋敷から少し離れた場所に、同名の街が存在する。


 そして、座表の数字も合っている。



「……よし」



 俺は心の中でガッツポーズを取る。




 ――ダンジョンがどこに産まれるのか、その情報を知り得る事が可能になった。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 新世界に適応するための前準備。


 第二フェーズは、“魔素対策”だ。




――――――――――――――――――――


【予告】

魔素システム実装に伴う《THE・World》変更点

1.物理法則の部分的再定義

『魔素』概念を世界定数として追加

従来の物理法則は魔素干渉下では不完全となる

2.生態系再編成

一部動植物が魔素汚染により変異

既存生物+新規モンスター種が混在


【警告】

都市部は初期モンスター高密度地帯に指定されます


――――――――――――――――――――




 最初のログにも載っていたが、更新された世界では“魔素”というものが発生するようだ。


 魔素の影響により既存の物理法則は働かなくなり、更に動植物が影響を受けモンスターと化すらしい。


 情報を整理するに、ダンジョンの発生にもこの魔素が関わっているのかもしれない。


 とにもかくにも、崩壊後の世界ではこれが重要なものになりそうだ。


 では、どのようにしてこの魔素に対策するか……。




――――――――――――――――――――


【注意】

魔素の制御には精神安定度が影響します


――――――――――――――――――――




 断片的なログが飛び込んできた。


 ログは、必ずしも全てを俺に教えてくれるわけではない。


 全貌の欠片のような文字を読み解き、理解するしかない。


 そしてそれは、俺の得意技だ。



「魔素の制御……魔素はある程度操作できるのか?」



 そして、その操作には精神の安定が重要なようだ。


 俺は、「あくまでも仕事に集中し効率を高めるためです」と嘯いて、精神安定に繋がる資料、書籍の類いを集めた。


 精神を安定……つまり、魔素を実感し完璧に管理するために、常に冷静でなければならないという事。


 呼吸管理、睡眠コントロール、集中維持、パニック抑制……。


 瞑想にヨガ。


 今まで、俺はずっと閉じ込められて生きてきた。


 静かにするのは得意だ。


 牢屋の中で座禅を組み、静かに瞑目する姿は、何だか死期を悟った聖人っぽい。


 監視役にも鼻で笑われる始末だ。


 確かに地味な作業だろう。


 世界崩壊に向けた準備とは到底思えない。


 だが、やるべき事は全てやる。



「新しい世界で……俺は魔素を完璧に制御する」




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 魔素を操作する――。


 この修行が、崩壊後の世界において途轍もない影響力を発揮する事になるとは、この時の俺はまだ知る由もなかった。


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