第四話 赤き神狼は規格外
ピョンピョンピョーン! と跳び跳ねるように山を登り、ついに高い山の頂に到着したイグニスでっす!
達成感に浸りながら景色を眺めようと思ったら……なんだか変な奴に絡まれています。
(これあれだな、大きな赤トカゲだ。雪山で寒くないのかな?)
首をかしげて観察していると、赤トカゲのトカちゃんが火口に向かってファイヤーボールを「ぽすん」と撃ち落とした。
「これはこれは、お噂は精霊たちから聞いております。私、サラマンダーのフレアバルトと申します。いやあ、ヒマすぎて火口の底の岩を狙う『的当て遊び』をしていたのですよ。神狼様もやってみます? 結構むずかしいですよ?」
(えっ、的当て!? やるやる! 俺そういうの超得意!)
『どれどれ? 炎マスターイグニスのお手本を見せてあげるね!』
俺は尻尾をフリフリしながら、火口に向けてファイヤーボールを『ぽいっ』と投げ込んでみた。
ボカン!
「おお、素晴らしい! ですが、火口が深すぎて『底』までは届きませんでしたねぇ。まあ、この深さじゃ誰がやっても無理ですが」
(むむっ……! 届いてないの……? でも大丈夫、俺は天才だからね!)
『ふふん、今のはただの挨拶だよ? 本気を出せば底なんて一瞬なんだから!』
「ほう、それは見たいですねぇ」
トカちゃんが尊敬の眼差し(?)で見つめてくるので、俺はすっかりイイ気になって魔力を込めた。
『フハハハ我は炎帝イグニス!極大魔法フレアバーストのトリプル!!』
ドカバキーン!!
「凄まじい! 凄まじいですが……底の『全体』に当てるには、ちょっと小さかったでしょうか? (あともう少しなんですがね)」
(火口がもうドロドロなのに、まだ満足しないとか強欲! トカちゃん欲しがるねえ。よーし、ぐうの音も出ないくらい驚かせてやる!)
『へへん! じゃあ火口全体が消し飛ぶほどのスーパースペシャルウルトラメガフレアバーストMAX!をおみまいだ!!』
その名の通りなんかすごい勢いと物量で火口が炎に満たされた。
(なんか、火山の噴火で見た光景な気がする。これ絶対やり過ぎたやつだ!トカちゃんも固まってる……)
「……え、えーっと…………」
(これはあれだ、何もなかったフリして逃げてしまおうか。トカちゃんほんとにぐうの音も出てないよ!)
火口のフレアバーストは収束する気配もない……まだまだ炎が渦巻いてる……
『じゃ、じゃあ……俺はこれで失礼しますね~』
俺はそう言って山を猛烈なスピードで駆け下りた……
山の中腹辺りで背後で爆発音が響き、振り返ると山の頂から黒煙が吹きあがっていた。黒煙の合間には赤くうねるものも見え、俺は速度を増した。
(はあぁ。サラマンダーってのは悪いやっちゃなー。火口に炎魔法をぶち込んで噴火させんだもんな!こわいこわい)
***
「……素晴らしい。まさかこれほどの熱量を一度に注ぎ込んでいただけるとは」
噴火の黒煙と灼熱のマグマが噴き出す山頂で、サラマンダーのフレアバルトは満足げに目を細めていた。
その足元--ドロドロに溶けたマグマの超高熱を吸い上げ、火口の底に眠っていた『フェニックスの卵』が、美しい黄金色のヒビを立てて産声を上げる。
「ピィ……」
「感謝いたします、赤き神狼様。あなた様のおかげで、我が主が数百年ぶりに目覚められました」
フレアバルトは、猛スピードで山を駆け下りて逃げていくイグニスの背中に向けて、深々と礼を捧げた。
一方、山の麓の街では大騒ぎが起きていた。
「見ろ! 数百年間も沈黙していた霊峰が……炎を吹き上げたぞ!」
「山頂で天を衝く巨大な炎の柱を見た者がいる! 赤き神狼様だ!」
「神狼様が死火山に息吹を吹き込み、大地の脈を蘇らせてくださったのだー!」
こうして、ただの『的当て遊び』で調子に乗っただけのイグニスは、またしても【死火山を復活させ、伝説の不死鳥を孵化させた救世主】として歴史に名を刻むのであった。
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