第三話 赤き神狼師となる
『♪フェンフェンフェンリル、フェンフェンフェン♪』
「トゥッタカタカタカ、タンタンタン」
「ドゥンドゥクドゥク、ドゥクドゥンドゥンドゥン」
『はいそこ! ワンテンポずれてるー!』
山登りに戻る途中で見つけた大きな湖で、静かに休憩していたら、白い大きな鳥が「ガーガー」煩いから歌の指導中のイグニスでっす!
何十羽もの鳥が好き勝手に「ガーガー」歌ってるんじゃ、聴いてられないよ。
森のチュルリなんて、ソロで馬鹿みたいに永遠「愛してる愛してる」って歌ってる。そんな最悪なチュルリ以下だよ……。
ならばこのマスターイグニス様が指導してあげようじゃないか!
『違う違う!』
ガァー!
『そこは伸ばす!』
ガァーー!
『伸ばしすぎ!』
ガァ……。
『落ち込まなくていい!もう一回!』
…………
……
「トゥッタカタカタカ、タンタンタン」
「ドゥンドゥクドゥク、ドゥクドゥンドゥンドゥン」
うんうんと首肯する。
『最後にもう一度通しでやろうか?』
『♪フェンフェンフェンリル、フェンフェンフェン♪』
「トゥッタカタカタカ、タンタンタン」
「ドゥンドゥクドゥクドゥク、ドゥンドゥンドゥン」
『Yes!完璧!パーフェクト! もう君たちに教えることは無い……音楽という大海原へ飛び立つがいい!』
白い鳥たちは一斉に湖を飛び立ち、空高く輪を描きながら「フェンフェンフェンリル」を大合唱していった。
***
湖の畔で春を迎えるにあたって、周囲の様子を調べていた村人が不思議な光景を見た。
「おらはびっくりしただよ。湖の神鳥たちが赤い毛並みのフェンリル様に向かって歌を捧げてたっぺ」
続けて同行していた男も口を開く。
「あの、好き放題に歌ってた神鳥がフェンリル様を讃えるかのように歌っただ」
「そして飛び立ち上空で歌いながら輪になってただ」
「「「ほんとに神々しかっただ」」」
その後、この湖では春になると神鳥たちが「フェンフェンフェンリル」と歌うことから、『神狼讃歌の湖』として語り継がれるようになった。
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