第二十八話 赤き神狼とコニー
「あのう……私なにも詳細を知らされてないのですが……本当に、見たままのお子様なのですか?」
「俺はイグニス、肉好きの冒険者だ!」
「なるほど!大神官様の依頼をこなされるのですね」
「とりあえず屋台で肉食いたいな」
「屋台ですね。案内します!」
青い髪の青年はコニーと名乗り、お弁当を持ってきてくれた。
そのまま俺を案内するように頼まれた、お人好しな青年だ。
「このギルド通りには、他ギルドや、商店、宿屋に飯屋なんかがありますよ」
「俺も冒険者として頑張ってる!」
「そうなのですね。そして通りを一つ入ると、屋台が並んでます」
「おー!いいじゃない、いいじゃない!」
「巡礼者の人も多いので、気軽に食べられる屋台飯は人気なんですよ」
何十軒と並んだ屋台から、良い匂いがする。
人通りも今まで見た中で一番だ。
もしかして聖国って、人気の国なのかもしれない。
巡礼者は皆、揃いのサッシュを掛けていて一目で分かる。
「おすすめの屋台はどれ?」
「どれもおすすめですが、私はもう一本東の通りの屋台ですね」
「冒険者の勘が告げている!そこに行くぞ!」
「アハハハ。そんなたいそうな」
「「アハハハ」」
一本道を外れるだけで巡礼者の数は減り、地元感がでてくる。
それでも、小綺麗な家が多い印象だ。
「さあ着きましたよ!ぬくもり亭です!」
「屋台じゃない!?」
「そう思われるでしょ?実はこっちで店と屋台が一緒になってるんです!」
「さすがコニー!さすコニ!ぬくもりもりもり!」
騙されたかとコニーを呪いそうになったが、なんてことだ屋台と店がマリアージュしてるなんて!
「おすすめ二つお願いね。イグニスさんここはね、店と一緒になってるから、なんと椅子もあるのです!」
「なんてことだ!画期的じゃないか!」
「しかも美味しいっていうこと!」
「そういうこと!?」
「そういうことです」
うんうんと首肯するコニーは、実に誇らしげだった。
俺もこうなりたいと密かに思った。
「はい!おすすめ二つね!コニー偶には家の方にも顔だしな!」
おかみさんはコニーにあしらわれたが、嬉しそうに微笑み戻って行った。
「それじゃあ、いただきましょう」
「実家かよ!言えよ!挨拶したかったのに!」
「いえいえ。今は職務中ですから」
コニーは嬉しそうに肉料理を頬張った。
角切り肉がゴロゴロ入った炒め物は、聖国の名物というよりは家庭料理だった。
「うまい!なんか硬いパンと食いたい!」
「分かります!さすがイグニスさんです!」
俺たちの会話が聞こえたのか、おかみさんが籠に入ったパンを持ってきてくれた。
「さすおか!」
「イグニスさんを真似してみました」と、はにかむコニーの笑みはおかみさんとそっくりだった。
***
私は折り詰めを大神官様の部屋に持って行くことになったが、何故かお客様の付き人を任された。
案内の資金だと渡されたのは、金貨や銀貨が詰まった革袋だ。
大金過ぎて倒れそうだ……。
この少年は中々のVIPのようだ。気合を入れてご案内をしなければ。
大聖堂から下町の方に行くには少々距離があるが、少年は足には自信があると笑っていた。
乗合馬車もあるが、直に街の様子が見たいのかもしれないと思った。
……なるほど。それで下町育ちの私が選ばれたのか。
少年は肉好きの冒険者イグニスと名乗った。
なにか大きな依頼を大神官様に頼まれたのかもしれないな。
年齢ははぐらかされたから、人族じゃない可能性もあるな。
緊張しながらも、私は思い切ってイグニスさんと呼んでみた……何も起きなかった。
敬称にこだわりはないようだ……。
流した冷や汗を返して欲しい。
昼も過ぎたからか、屋台で肉が食べたいと言い出した。
肉か……ここから少し歩くが、私のおすすめで良いと言うし提案してみよう。
冒険者の勘で了承された。
もしかして顔に似合わず凄腕!?
道中も楽しく歩いて行く。
目的地に着いた、ぬくもり亭!私の実家だ!
地元民に愛されている食事処だ。
母さんにおすすめを二つ頼み、しばらく待つと「偶には家にも顔を出せ」と怒られた。
ほらっ、イグニスさんが挨拶したかったとか言い出したじゃないか。
おすすめと言えば出てくるこの料理は、「ゴロゴロ肉の炒め物」って名前だが、おすすめと呼んでいる。
うまいうまいと食べるイグニスさんに、持ち帰りも頼まれた。
母さんいっぱい欲しいそうだよ。
売り上げ貢献できたかな。
大聖堂で折り詰めもいっぱいもらっていたが、そんなに食べられるのだろうか?
気を利かせた母さんが、パンを持ってきてくれた。
その時にふと脳裏に浮かんだ「さすおか!」少し照れ臭かったが、イグニスさんは笑ってくれた。
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