第二十七話 赤き神狼と白銀
「おーい!おーい!カプリコ~~ン!こっちこっち!きて!はやく!」
白銀に光る物体を、大きいゼスチャーと声で引き付ける作戦中です!
「また、取り締まれってか?」
なんかサジタリウスよりも、動きがトリッキーな気がするが、暴走ドラゴンなのは共通だ。
「ピッピー!最終通告ですよー!こっちきて!」
「我に何用か?」
いきなり目の前に現れた白銀の光がそう訊いてきた。
「おお!もう!来るなら来るって言ってよね、びっくりするでしょ!」
「それはすまないな、神狼の子よ」
「分かれば良いんだよ。サジタリウスより見込みがあるぞ!俺はイグニス、特別な神狼だ!」
「ホッホッホッホ!サジタリウスより、この第九のリブラが上とは、よく分かってるじゃないか」
なんだか上機嫌になった光の球は、おかしなことを言いだした。
「あなたは第八のカプリコーンだよ!ボケるの早いよ!」
「ホッホッホッホ!たのしい坊じゃの~。あやつは濃い青じゃ、濃紺ってやつじゃな。我は白銀じゃ、坊の家族と同じ色じゃろ?」
「確かに!?えっ……お母ちゃん?」
「ホッホッホッホ!我はリブラじゃよ。カプリコーンに会いたいのなら、少し南東に行くんじゃな」
「いや、別に会いたくない!?美味しい肉に会いたい!」
「なんじゃ、腹が減っとるんじゃな……この辺りはエルフェリア聖王国じゃから、聖都へ行くか?」
【グ~キュルキュル】
【ポスン】
『あー……人化が解けた……』
「なんじゃ!神狼の姿も幼いのじゃな!その幼さで、ここまで来るとはのう。まあ良い、我がエルフェリアまで連れて行ってやろう」
『ちょっとお弁当食べるから待ってね!』
アイテムボックスから取り出したのは大きな鍋とおたまと深皿。
皿は肉球マークの描かれた物だ。
『リブラも食う?』
不思議そうに見ているリブラに声を掛けた。礼儀は大事!案内してくれるからね!
「ふむ。もらおうかの……」
『遠慮しないその姿勢良いよ!そうじゃないとね!』
【ポンッ!!】と人化し、皿に肉の煮込みDXを注いでいく。
すると【ポンッ!!】と、白銀の髪をした女性が現れた。気配はリブラのものだ。
「これね、DXだから特別だからね?おかわりは出来ないからね!」
「そうか、特別じゃからしょうがないのぅ」
「そう!分かってるじゃん!」
「いただきま~す」と言って俺が食べだすと、リブラも恐る恐るスプーンで掬った。
「うんま~」
「……美味いな」
「真剣に向き合って食べて!」
「わ、わかった……」
「よし!腹も膨れたし、急いで聖王国へ行くぞ!」
「その前に一言礼を……美味かった。ありがとう」
「うまいものを食えば幸せになるって事だ!」
リブラは「うんうん」と、何度も首肯で返した。
「たまにはこの姿で飛んでいくか」
リブラはそう言って、俺の両脇の下に腕を回し飛び立った。
「アバババババ……と、ぶ、なら、と、ぶって、い、って……」
さすがトリッキーな暴走ドラゴン!
「あれがエルフェリア聖王国の聖都じゃな」
(口を開けるととんでもない事になる!加減を覚えようか?)
「で、王城の横にあるのが、大神官のいる大聖堂じゃ」
あんなに勢いよく降りたのに、着地はフワッとしていた。
「ここは大聖堂の裏庭じゃ。大神官にお主のことを頼んでやろう」
「俺は最高の料理を頼んでくれる方が嬉しいけど?」
大きな建物から、白を基調とした長い法衣を纏った男が駆けてきた。
「リブラ様!お久しぶりでございます。中へどうぞ!」
「急ぎの用事だ。大神官の元へ案内を頼む」
「畏まりました。こちらへどうぞ」
建物の中を進むと、リブラが敬われ過ぎていてなんか怖い……。
「なーなー。リブラってここでは偉い人なのかな?」
「どうだろうな……とにかく大神官に紹介したら、すぐに戻らないといかんのじゃ」
「どうぞお入りください」と、通された部屋には、案内をしてくれた男よりも豪華な法衣を着た爺さんがいた。
「セラフィエルよ、久しぶりだな。時間が無いから用件だけを伝える。この者は神狼のイグニス、まだ幼き故に世間知らずじゃが神狼の力は強い。力になってやれ」
「し、神狼様でございますか?……畏まりました」
リブラ、久しぶりなのにその対応なの!?でも聖竜ならそんなもんか!
「ではな、イグニス。後はセラフィエルに何でも頼むがよい」
「ありがとリブラ!」
俺が元気に手を振ると、リブラはスーッとその場から消えてしまった。
「爺ちゃん。俺は肉料理が食いたい!この街の名物料理はなんだ?」
「イグニス様。この地では聖都参りというものがありまして、その時に食べる料理が名物でございますな」
「名前からは、美味そうな感じはしないんだけど?これじゃ尻尾は振れないな!」
「味よりも雰囲気と言いますか、邪気払いと言いますか……あっ!下町に詳しい者をご紹介いたしましょう」
「あと、弁当みたいに持ち帰りたいんだけど、大聖堂飯みたいなのは無いの?」
「ございませんが、ご用意いたしましょう。ご用意できるまで、少しお話よろしいでしょうか?」
「美味しいお弁当多めにくれるなら良いよ!」
お弁当が届くまでリブラの事を色々聞かれたが、さっき知り合ったばかりだと言うと、逆にリブラの事を話された……。
(お弁当よりもリブラの話でお腹いっぱいだよ!)
その後はお弁当をもらい、下町に詳しい人と共に大聖堂を後にした。
***
「い、行ってしまわれた……」
応接間に一人残った大神官セラフィエルは、大きく息を吐きソファに腰を下ろした。
「リブラ様は、なんて方をお連れになるんだ……隠しておられるが、相当の神気の圧を感じる。そして話を聞くと、ルクレシア王国にアストレイヤ王国と懇意にし、サジタリウス様や伝説の大亀シュタイン様まで出会っているとは……」
大神官は忘れないように、紙に書き出した。
交流のある国や人物、出会った神獣や神竜などだ……。
「しかし、世界樹様のことには慎重に行かねばならんな。神狼様や神鹿様の話など、めったに出来るものではない……」
お供につけたコニーが、粗相をしないか心配になる大神官だった。
「陛下にも伝えなければ……いや、もう少し情報を得てからの方が良いか?……」
窓の向こうに見える王城を見ながら、また大きな溜息を吐いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
評価やブックマークをいただけると、執筆の大きな励みになります!




