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赤き神狼イグニス、今日も全力!  作者: 石火


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第二十四話 赤き神狼と想いの煮込み(後編)

「半刻には余裕で間に合ったな!」


 マッケンジーよ、国王は連れてきていない……。


「それはそうでしょう。一国の王たるもの、そんな気軽に会えるものではありません」


 子供たちは落胆の顔を隠さずにいる。対して大人たちは安堵した顔だ。


「まずは子供たちよ肉だ!食え!」


 肉多めに頼んだ、包みを子供たちに分け与えた。


(ちゃんと、肉多めになってるな!)


「腹が減っては戦は出来ぬと言うしな。その飯は、アストレイヤ国王が用意してくれた」


 子供たちの手が止まり、大人たちはざわついた。


「なかなか美味いな!肉の煮込みは、まだ食ってないがな!」


「ぼくもまだ食べてない……」

「わたしも……」


「みんな肉の煮込みも食えずに攫われたのかー!酷いやつもいるもんだなー!しかもそんなやつを庇うやつもいるんだって?」


「うん。マッケンジーって名前だった!」


「いや!私は庇ってなんかいません!ただ、神狼様が裁可を下すのは違うのではないかと……」


「しかし……子供たちはマッケンジーもグルなのではと、疑ってるよな?」


「イグちゃんが、いない間も男爵を気遣っていたよ」

「仲が良いみたいだった……」

「ローゼンブルク様!あなたも関係してたのですか!」


(だから誰だよ!)


 アイテムボックスから、丸められ封印のされた羊皮紙を取り出した。


「おっ。良いタイミングで到着かな?」


「お待たせいたしました。この度は大変なご迷惑をお掛け致しまして、深くお詫び申し上げます」


「父上!?」


「ここに戻る前に、辺境伯邸に寄らせてもらった。……これが国王から受け取った勅書だ。封蝋も確認するが良い」


 お前が読み上げろと、ローゼンブルク辺境伯に手渡した。


「アストレイヤ国王勅書。一、ローゼンブルク辺境領にて男爵家が主導していた「子供を攫い隣国へ売り飛ばす非人道的行為について、これを国家は重大な反逆罪および大罪と認定する。該当の男爵家および関係者の全財産は没収し、これを全て被害者救済、奪還の原資とする。一、本件の解決、断罪に関し、赤き神狼イグニス様の裁定および処罰は王国法に優先されるものとする。一、本件の一切の責任はローゼンブルク辺境伯家にあり、解決には全力をもって当たることを命令する。一、特記事項として、赤き神狼イグニス様の破壊などの行為は一切不問とする。以上となります。勅書はお返しいたします」


「簡単に言うと、我と国王はマブってこと!」


「その通りでございます」


 辺境伯が礼を取ると、マッケンジーは頽( くずお)れた。


「さあ子供たちよ、親元に辺境伯が責任をもって送り届けてくれるぞ。辺境伯も被害者の汚れた服等もしっかりと補償するように。加害者の資産が換金できるまでの資金は、辺境伯が建て替えるんだぞ!」


「畏まりました」


「一件落着だな!それで、肉の煮込みダニー亭はまだ開いてるのかな?」


「いえ、もう閉店しています……」


 その言葉に疲れが一気に押し寄せた……。


「この恨みは忘れないからなっ!」


 俺は宿を探しに街へと駆けだした……。




***




「い、行ってしまわれた……」


 この場に残された面々は、イグニスの寂しそうな後姿を見送った。


「父上、申し訳ありません!」


 マッケンジーは深く腰を折った。


「お前は、事件に関わっているのか?」


「……関わってはいませんが、知ってはおりました」


 辺境伯は顔を真っ赤にし、ワナワナと震えだした。


「何故知っていて、わしに報告しなかった!領都の子供は宝だぞ!その宝をお前はなんと心得る!」


「申し訳ございません!」


「お前の罰は追って通達する!それまでは家からは一歩も出るんじゃないぞ!」


 辺境伯は、男爵家の面々を男爵邸に軟禁するように指示した。


「子供たちよ、申し訳なかった。このような犯罪が我領で起きてることにも気付かず、お主たちのような被害者を作ってしまった。すべての責任はローゼンブルク家が取ることを誓おう」


「恐れながら話させて頂きます!この子の親は、この子を守るために殺されたと聞いています。その責任はどのように取るのですか?」


「…………まずは、謝罪させてもらえないか……君の親御さんの冥福を祈らせてもらおう。そして、君の親御さんの代わりに面倒を見させて頂けないだろうか。それがわしに出来る償いだと考える」


 アンネッタにしがみついた小さな手は力なく外れ……二人は抱きしめ合い泣き出した……。


 その光景を、皆が涙を浮かべ見守るしかできなかった。

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