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赤き神狼イグニス、今日も全力!  作者: 石火


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第二十二話 赤き神狼と想いの煮込み(前編)

 道なりに走っていると、馬車や人とすれ違う事が多くなった。

 人化をしても俺のスピードは変わらない!

 ただ、加減はしているから、追い抜きざまに驚かすこともないと思っていたが、そうでもないみたいだ。


「おっちゃん驚かせてごめんね!なんで驚いたのか教えてくれる?」


「え、あ、ああ。すごい勢いで近づいてくる気配が、子供だったからだよ。すまんな」


(気配か……。なるほどなるほど。瘴気は感じないが、気配は感じるんだな)


「ありがと!気配は消すね!」


 おっちゃんに手を振り、その場を素早く離れた。


 気配を消して……シュタタタタ。


(もう!気配消してもびっくりしてる!)


「ねー、じいちゃん。なんでびっくりしたの?」


「気配もなく子供が現れたからじゃよ……」


「えええ!?八方ふさがり!」


「よく分からんが……早すぎるから驚くんじゃな、きっと」


 なるほど!また一つ賢くなったな!

 気配を消さず、かなり遅く走ったら誰も驚かなくなった!

 天才の誕生の瞬間だな!


 大きな城壁の向こうに、大きな建物がいくつも並んでいるのが見えてきた。


「あれがローゼンブルク辺境領の領都ローゼニアかっ!待ってろよ肉の煮込み!」


 俺の高笑いに注目を集めてしまったが、気にしない!

 また人化が解けると困るので、王城でエルネストにもらった料理を食べながら、列の最後尾に並んだ。


 人の視線が集まったので、さらに美味そうに食った!


「それはなんて料理なんだい?」

「良い匂いしてるな!」

「どこで買ったんだい?」

「坊主は一人かい?」

「いやいや、近くに親御さんいるんだろ」


 などなど、色々言われた……。


「俺……肉食いに来たんだ!肉の煮込み!」


「そりゃ、ローゼニアの名物だが、坊主の食ってた料理の方が、きっと美味いぞ?」

「そうだな、肉の煮込みは地味な見た目しとる」

「美味いけど地味じゃな」

「そうねえ、美味しいんだけどね」


 小腹も満たされ、アイテムボックスに残りを収納した。

 これで安心!そして、この収納に肉の煮込みも仲間入りか!


 順調に列は進み、冒険者証の提示で、すんなりと門を潜った。


(そうそう。これだよこれ。前は神狼で目立ったからダメだったけど、人化で統一したらこんなにスムーズ!世界樹の森の外は人化一択!)


 もう一つ大事なのは、腹の虫は鳴らさないこと!


 まずは冒険者ギルドを目指して……ギルドを見て右へ行くと「肉の煮込みダニー亭」があるんだったな。


 列でも皆知っていたし、名物だって言ってたから期待値は上がっている。

 さすがこの辺り一帯を治めている領都だな、街は大きいし建物も大きいし人も多い!

 夕日に照らされた街並みは、綺麗だった。


 街は夕飯時だからか、往来も人で溢れていた。

 見つけた肉の煮込み屋さんは、すでに行列になっていた。

 行列の最後尾が路地裏に続いている。


(また並ぶのかー!嫌だなー、先に宿屋か?)


「でも……肉の煮込みが先でしょ!」


「坊ちゃん、肉の煮込みが食べたいのかい?特別にこっちで食べさせてあげるよ」


「え!良いの!?ありがとう!!」


「坊ちゃんが最後の一人だよ」


 ラスイチ!ツイてるし、都会に見えても田舎だからか、優しい人が多いね!

 スキップでおっさんの後を付いて行く。


「けっこう遠いんだね!」


「もうすぐだよ」


 おっさんはニコニコしている。笑顔が良いね!


「ここだよ。どうぞ……」


 ドアを潜ると意外と中は広く、おっさんは奥のドアを開けて中へと誘った。


「みんな檻で肉の煮込みを食べるの?」


 「変わってるね!」と言ったところで、後ろでドアが大きな音を立てて閉まった。


「すまないね、坊ちゃん。あと一人男の子が必要だったんだよ」


「肉の煮込みはまだ?」


「もう日が暮れる、そしたら迎えがくるからね。そこに入って待とうか?」


「はーい!肉の煮込み楽しみー!」


 美味しさに感激したのか、泣いてる人もいるのか?

 それとも、ちょっとこの店は違和感あるから泣いちゃう人もいるよね。



 入り口から男たちの声がする……。


「いよいよ肉の煮込みとご対面ですか!?」


 部屋に入ってきた男たちは、飲食店とは思えない風貌のおっさんたちだった。


「まあ、汚い店ほど美味しいって言う人もいるもんね!」


 部屋にある檻を確認するおっさんたちは、十人いるなと言って部屋を出て行った。


「俺のはおかわりの可能性を考えてね!」


 人気店だから人数分しか提供できないなんて言われたくない!

 確認の確認は大事だ!自己主張も!


 今度は入り口と逆のドアが開き、男たちが檻を運び出していく。

 荷馬車には鷹の紋章が刻まれている。

 煩い客には轡がされ、シクシクと泣いている。


「また移動するの?走った方が早いんだけどー」


 そう抗議の声を上げると、檻をガシャンと棒で叩かれた。


「それが客に対する接客かっ!肉の煮込みは遅いしっ!」


「あー、すみませんね。従業員の躾が足りなくて、教育しておきますね」


「ほんとだよ!しっかりしてよね!」


 おっさんは姿を消し、俺は荷馬車に入れられた……。


「……あれっ!?」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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