第二十一話 赤き神狼と精霊の森
「依頼完了っす!」
窓口で依頼報告をし、依頼品を提出した。
「お疲れ様です。依頼品の確認をしますので、しばらくお待ちください」
これはもう初依頼達成したも同然!
「依頼達成したっす。アニキはどうっすか?」
「あ、はい。依頼達成おめでとうございます。俺たちは護衛依頼の完了報告です!」
隣にいたアニキは護衛依頼か……。
「どこまで行ったんすか?」
「ローゼンブルク辺境領の領都ローゼニアまでです。ハージマーリングもローゼンブルクの領地です」
「ローゼニアには、美味しい肉はあるっすか?」
「ありますよ。肉の煮込みが有名ですね」
「食べたことは?」
「ローゼニアに行くたびに食べてます!」
俺はアニキにニッと笑んで、サムズアップ!
アニキはぎこちなくサムズアップを返してくれた。
「イグニスさーん。イグニスさーん」
「はーい!はーい!」
「お待たせいたしました。依頼完了の確認ができました。初依頼達成おめでとうございます。こちらが、ハージ草二十本、赤ハージ草十本の代金、銀貨四枚です」
「おー!ありがとう!」
肉を買いに行こうとしたところで思い出した。
「マール草は買い取ってるの?」
「マ、マール草を持っているんですか?」
「えっ!?持ってないけど?」
受付嬢の必死な顔にビビってしまい、持ってないって言ってしまった……。
(この俺様が気圧されるなんて!やはりこいつは只者じゃないな!)
「残念です……。マール草は大金貨一枚になりますよ」
「たかっ!おやじごと買えそう!」
「精霊のいる場所にしか生えなくて、生えるのも一年に一度なんですよ」
だから高いんだと教えてくれた。
なるほど。あんなかまってちゃんなヤツでも、何かの役に立つことはあるんだな。
よし!今度こそ、おやじんとこで肉をいっぱい焼いてもらって、保存しとこう。
(いや、ちょっと待てよ……。肉の煮込みが美味いって言ってたな!)
これはローゼンブルク辺境領都ローゼニアまで行くしかない!
さっきのアニキに場所を訊かないと!
薬草採取をした森を右にして進むと、ローゼニアへ着くらしい。
♪に~こみ~、すじにくの~に~こみ~♪
どうやら肉の煮込みとは、スジ肉をトロトロになるまで煮込んだ物だった!
その煮込みをマッシュポテトと一緒に食べるらしい。
(アニキに道も訊いたし、お金もある!問題なし!)
ショートカットダメ!道なりにそこそこのスピードでローゼニアへ!
(あっ。あれはかまってちゃんの森か……。寄ってくか!)
「おーい!俺がきたぞ!」
「何だよヒモが欲しいの?」
「ヒモはいらん。マール草を返しに来た」
「それは君が採取したんだから君の物だよ」
「ギルドで聞いたんだよな、精霊がいる場所に生えるって……って事はお前の物だろ」
精霊は少し考えると、ゆっくりと口を開いた。
「やっぱりそれは持って行きなよ。それから、ヒモも持って行ってほしい。このヒモはこの森で作った特別製なんだから……」
「分かった!じゃあ、これをやろう……。じゃあなっ!」
俺は世界樹の森で拾っていた魔石を一つ置き、ヒモの束をもらってローゼニアへ向かった。
(俺の大事な魔石弁当を一つあげたんだから、対価としては十分だろう!)
***
「い、行ってしまわれた……」
緑色に輝く魔石からは世界樹の波動を感じる。
「さすが神狼だね。こんな貴重品をポンと差し出すなんて……」
草の上に置かれた魔石を、愛おしそうに触れる精霊は輝きを増した。
中級精霊となり、心身共に余裕を持った精霊は森の奥へと戻って行った。
「ここまで来たらマール草なんていくらでも生えてるのにな……。あなたは見抜いてたのね、私が精霊として成長していないのを……」
精霊は位階が上がり、これまでの自分がなんて未熟だったのかを知った。
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