↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤き神狼イグニス、今日も全力!  作者: 石火


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/33

第二十話 赤き神狼と代償

 チュンチュン……チュンチュン。


『こ、これが朝チュン……』


(一晩寝たら神狼に戻ってるじゃないか!?)


 硬いベッドで目覚めれば、目に入るのは見慣れた赤い毛並みだ。

 いつの間にか人化は解けてしまっていた。


(とりあえず、朝ごはんか?)


【ポンッ!!】


 手慣れたもので、すぐに人化は出来るようになった。

 ベッドに落ちている下着をつける。

 全裸になるの地味に困る~。


「おかみさん。おはよ~」


「おはよう、イグニスさん。朝食すぐ出すからそこに座ってておくれ」


 カウンター席に座り、目標がいくつも叶ったが実感が湧かない……。


「はい。お待たせ、熱いから気を付けなよ」


(これはポトフかな……パンは硬い……。これは人化の弊害!顎弱っ!)


「おかみさん。肉欲しい……」


「銅貨六枚でソーセージ出せるよ?」


「じゃあ、十二枚ね!」


「イグニスさん計算速いね!?」


 やはり俺は天才神狼なのか?

 おかみさんは、二皿を一皿にまとめて持ってくると言い厨房に行った。



「じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」


「またね、おかみさん!」


 朝の冷たくも澄んだ空気の中を、冒険者ギルドへ向かう。

 ギルドで依頼を受けなければ、一人前の冒険者とは言えない!


「ち~っす。依頼受けに来た!」


「イグニスさん。依頼はそこの掲示板に貼ってあるものを選んで、受付窓口に持ってきてください」


 「本当に人化してる」や「人化すると子供なのか」などの声が聞こえてくる。


「本物の神狼イグニスっす!」


 そう言い残して掲示板へ向かった。


 受けられる依頼はEとFと書かれた依頼のみだ。


(最初の依頼はやはり定番の薬草採取でしょ!)


 窓口で受付を済ませギルドを出た。



「今日も朝からご苦労さん!」と門番に挨拶をする。


「昨日はすいませんでした」


「じゃあ、行ってくる!」


 神狼イグニス様は細かいことは気にしない!

 目指す薬草は歩いて半刻の森に生えてるようだ。

 町の外に出たし、走り出す……。いや!少し速度を落とす!


「全力ダメ!また行きすぎちゃう!」


 必要なのはハージ草、赤ハージ草の二種類。

 森の奥に行かなくても生えてるそうだが……そりゃ浅い層にも生えるよな。

 森の奥からは、精霊の気配が漂ってきている。


「あった!」


 根元を残して採取、根元を残して採取を繰り返す。

 昔から、何かを集めるのは好きなんだよねー。

 十本を一つにして、それを五束ずつにまとめてとかにしたい!

 意外と几帳面な神狼イグニス様と言われたいな。


「まあ、紐がないんだけどなー」


『ヒモあるよ』


 フヨフヨしたやつが話し掛けてきた。


「お、ちょうだいよ」


『どうしようかなー』


「じゃあ、要らない」


『……ちょっと!もう少し粘ろうよ!』


 無視無視、こういう構ってちゃんは無視が一番。

 黙々と採取を続ける。


「あっ、これなんだろ。赤ハージ草より霊力のようなものを感じる!」


『それはマール草だよ!』


 はい。スルーでーす。

 辺りを見回しても、この草と同じものは無い。

 慎重に周りの土ごと掘り出した。


「よし!帰ろう!」


 足に力を込めてハージマーリングへ向けて駆けだした。

 早すぎると通り過ぎるから、気を付けてしばらく走る。


「あー、お腹空いた~」

【グ~キュルキュル】


【ポスン】


『ええええええ!?服が脱げた!?』


 脱げた服を回収しながら、なぜ人化が解けたのかを考える……。

 お腹空いたって言っただけだ。

 えっ、もしかして呪文的な?


(人化して検証するか!)


「あ、お、な、か、す、い、た」

「おなかすいた」

「あー、お腹空いた~」


 言い方に工夫もしてみたが、何も起こらない……。

 その時【グ~キュルキュル】と可愛くお腹の虫が鳴った。


【ポスン】


『お前かー。腹の虫が原因!』


 神狼の姿のままハージマーリングへ向かった。


「イグニス様、おかえりなさい」


『ただいま~』



『おやじ~、肉銀貨一枚分おくれ』


「イグニス様、今日は人じゃないんですね」


 肉を焼きながら、おやじが訊いてきた。


『お腹空いたら人化解けちゃう』


「なるほど」


 おやじは、「お待ちどう様」と肉を盛った皿を差し出した。


『今日も良い塩梅だ!』


「へへ、いつもありがとな。これ少し包んだから、人化が解ける前に食べるようにしな」


『おやじ~』


 やっぱ田舎は良い人が多いな!


「イグニス様!?それは緊急用だから!!」


 俺は貰いたての肉も、モグモグと食べてしまっていた……。


『ごめんっす!』


【ポンッ!!】





***




『い、行ってしまわれた……』


 森の外縁でフヨフヨと浮きながら、イグニスが走り去った後姿を見送るのは森の精霊だ。


『あの時どうして意地悪を言っちゃったのかな……』


 ヒモなんていくらでもあるし、あげることに何の問題も無かった。

 しかし、精霊の口からは『どうしようかなー』という言葉……。


『でも、普通はもう一度「ちょうだい」って言うよね!?一回で切り捨てて、そのあとはフルシカト……』


 精霊は自分のツンデレ気質を深く呪った。


 イグニスが去ったあとには、出しそびれた縛り紐がポツンと取り残されていた。


『……誰でも良いから使ってよ!』


 その叫びは静かな森に消え入るだけだった……。

 この日を境に精霊はツンデレを封印した。



 その後この森は、精霊の森と呼ばれるようになる。

 森を守る精霊が、人々に恩恵を授けるとして有名になるのだった……。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

評価やブックマークをいただけると、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。