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赤き神狼イグニス、今日も全力!  作者: 石火


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第十九話 赤き神狼と人化

「よっ!通るぜっ!」


 俺は冒険者証を手にし、門を潜る!いや、潜れない!?


「お前は誰だ!その冒険者証はイグニス様の物!」


「お、おお。俺がイグニスだってーの」


 赤い髪を手に取り見せながらそう言うが、門番は納得しない。

 人化できるようになったのに、町に入れないのなら意味がない。


(人化を解くか?でも、また人化出来るか分からないからなあ……)


「イグニス様はどうした?」


「イグニスは俺だから知らんな」


 神狼イグニスの知名度が仇になるとは!

 他に行くとしても……知ってるところは顔が割れてるしな。


「このままじゃ埒が明かない!ギルド職員を連れてきてよ!」


「よーし、吠え面かくなよ!」


ほどなくして別の門番がギルドの受付嬢を伴って現れた。


「このお姉さんなら知ってるぞ!個室でワイバーンの買取りの話をしたからな」


「門番さんから話は聞いていましたが、本当にイグニス様ですか?」


「そうだよ!人化が出来るようになったんだよ!」


 受付嬢は顎に手をやり少し考えている。


「ならば、私から受け取った物がありますよね?お金じゃないですよ?」


「ああ、持ってるぞ。手形だろ?」


 アイテムボックスから手形を取り出し見せた。


「本物です……この方をイグニス様ではないとは言えません」


「それって、イグニス様であると断定も出来ないと言ってるのと一緒じゃないですか?」


 まあ……ギルド職員のこの言い方だと、門番がそう言うのも分からないではない。


「仕方ない!」



【ポスン】



 音と煙が消えたその場には、足元に衣服を纏った神狼イグニスの姿があった。


『ほら、本物だろぉ?』


 驚いた様子の門番と受付嬢は、すぐさま平謝りをした。


『人化またできるかなぁ?』


「きっと出来ます。応援しています!」

「俺も応援しています!」



【ポンッ!!】



(おー、出来た!なんだ出来るじゃん!)

「なっ!イグニスだろ?もう!大事な服が土で汚れたじゃないか……」


 足元に落ちている服をいそいそと着替えた。


「はい。申し訳ありませんでした」


「人化が出来るとは、さすが天才の呼び声高い冒険者ですわね」


「フハハハ。次からは気を付けろよ!これは貸し一つだな!」


(俺も冒険者らしくなったと思ってたが、まさか冒険者の鏡とまで思われてるとはな!)


 いそいそと服を着て門を潜る。目指すは肉焼きマッシーンのおやじの店だ!



「おやじー、肉おくれよ」


「あいよ!いく……ら……だい?」


 今日も肉を焼いているおやじは、見慣れない子供に戸惑っているようだ。


「イグニス様の声かと思ったが……」


「おやじ!俺イグニスだよ!人になれるようになった!」


「やっぱりイグニス様か!人化とはさすがだねえ」


「そうだろ?なんか冒険者の鏡なんだって!」


「そりゃ凄い!でも当然だよな!」


「うん!とうぜん!」


 おやじと二人で「アハハハハ」と笑い合い、宿屋の場所を教えてもらった。

 冒険者の宿と言えば此処って宿らしい。


(今まで草原の木の下とか、洞窟とかでしか寝てないから楽しみだ)


「こんにちは~。一泊したいです!」


 カウンターの奥から恰幅の良い女性が、「はいはいはいはい」と言いながら出てきた。


「あら!坊ちゃん一人かい?親はいないのかい?」


「俺冒険者だから!ほら、冒険者証もあるよ!」


「イグニスさんね。ドワーフとかハーフリングなのかね。一泊食事付きで銀貨五枚で、食事無しなら三枚よ。何泊するかしら?」


「食事付きで、一泊にしよっかな」


「じゃあ、前金で銀貨五枚ね。夕食は四の鐘が鳴ったら、食堂で食べられるわ。朝はパンとスープが一の鐘が鳴るまでよ。遅れずに食堂へ来てね」


 そう言って部屋の場所と鍵を渡された。部屋は二階の手前だそうだ。

 階段を上っていると「あっ、体を拭くお湯が欲しかったら、銅貨二枚で用意するわ」了解と軽く返しておいた。


(替えの服と一緒に手拭いも買っておかないとだな、訊きに行くか)


「おかみさーん。服ってどこで売ってる?」



「宿を出て右にずっと行けば右手に……あった!」


 服の絵が描かれた看板が掛けられた店に入った。


「すいませーん。似合う服を一式ください」


「あらあら、お母さんかお父さんは一緒じゃないの?」


「独り立ちしてるよ!」


「本当だわ、冒険者証ね。お任せで良いのかしら……」


 おばさんは悩みながらも、沢山の服から三種類のセットを選んでくれた。


「サイズとか好きな色とかは?あ、なんでも好きなのね。好き嫌い無いのは良い事よ」


「おっ!サイズもピッタリで良いね。さすが服屋さんだ!これ全部と靴も買うね」


「沢山買ってくれたから、おまけして銀貨二十枚ね。小金貨なら二枚よ」


 小金貨二枚を払い、アイテムボックスに服を入れた。

 宿も取れ、買い物まで一人で出来た報告がしたくて、おやじの屋台へと向かった。


「おやじ!宿とれた!」


「おー、イグニス様。良かったですね!ゆっくり休んでな」


 ルンルン気分で宿に帰り、転生後初のベッドに言葉を失った……。


「めっちゃ、硬いですやん……」




***




「い、行ってしまわれた……」


 まさか冒険者証を持った赤髪の少年が、神狼イグニス様本人だとは思いもしなかった……。

 しかし、人化まで会得されるとは、聞きしに勝る御方だ。


 そして何よりも「人の姿も可愛い!」


 思わず尻尾を探して凝視してしまったが、見当たらなかった。


 そして、最後にイグニス様は「貸し一つだな!」と言われた。

 なんという冒険者らしいセリフなんだろうか!

 賢き神狼イグニス様は、冒険者に馴染むのも早いんだな!


 ……さすがです。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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