第十八話 赤き神狼と名も無き村
「……困った」
口に出せば、不安はさらに大きなものとなった。
人化には成功したし、二足歩行も問題ない。
神狼から人になるって不思議だけど、なれたものは仕方ない。
問題なのはぜ・ん・ら・
(いや、理屈は分かるけど分からないよ?)
分からないものを、いつまでも考えても時間の無駄!
そう割り切ったけど……。これで神狼に戻ったとして、また人化出来るのかという新たな悩みが出てくる。堂々巡り……。
(しかし、推定十歳くらい?のボーイなんだから、全裸でもワンチャンありか……?)
いやいや、なしだろう。
葉っぱを巻くか?
腰回りもある葉っぱなんてない……。
(もう面倒くさい!早く動けば良いんじゃん!高速移動で町に行って買い物しよう!)
よし!決まり!即行動!
♪目にも~留まらぬ~その動き~、あいつ~は誰だ~、あいつはあいつは~、い~ぐ~に~~す~♪
はい。村発見!壁無し、門無し、門番無し!
今回ばかりはトコトコとは行かない。緊急時は走っても良いんだから問題ない。
「村にお店が無い……」
天国から地獄に落とされた……。
そんな気分に引っ張られ、涙があふれてくる。
「坊やどうしたんだい?」
「服屋が無い……」
「ここは小さな村だからねえ、行商人が日用品は売りに来るんだよ」
「そうなんだ……」
「おばちゃんの息子のお下がりで良いなら上げるよ?」
「えっ?くれるの?」
「うんうん。坊やには少し大きいかもしれないけどね」
「ありがとう!」
おばちゃんに手を引かれて家へと向かう。
本当は全力で走りたいが、おばちゃんは俺が全裸なのも気にしていないみたいだから良いや。
「この家だよ。皆は畑に行ってるから、イグちゃんは座って待ってな」
「はーい」
おばちゃんは「服を持ってくる」と言って家の奥へと向かった。
「うんうん。良いね、その赤い髪にも似合ってるよ。やっぱり少し大きいけど折り曲げたら……良いさ……」
「おばちゃん……なんで泣いてるの?」
「あら嫌だね。涙なんか流れちゃって……」
(服を着せてもらっただけなのにな)
おばちゃんの息子は流行り病で亡くなったそうだ。
他にも子供はいるが、亡くなった末っ子は皆に可愛がられた子だった。
「おばちゃん。ルカは優しくて強い子だから、心配しないで大丈夫。って言ってるよ」
「え?どうしてあの子の名前を?」
「生まれ変わっても、この家に生まれたいってさ」
おばちゃんはその場に泣き崩れてしまった……。
輪廻は巡るもの、きっと同じ血脈に辿り着くさ。
「これ少ないけど、服代ここに置くね」
泣き崩れるおばちゃんの背を二度擦り家を出た。
「この家に幸多からん!」
さて、開拓町ハージマーリングに戻るかな!宿に泊まって肉食わないと!
名もなき小さい村には、一軒の小さい家から豪商にまでなった家があった。
その家は家族仲が良く、何事も皆で解決することを信条としていたそうだ。
この家に生まれる男の子には、イグの文字が必ず入れられるという……。
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