↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤き神狼イグニス、今日も全力!  作者: 石火


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/33

第九話 赤き神狼と交易都市ルーエン

『♪さ、さ、さ、最高の、タ・レ・を、さあー頂くの、さあ♪』


 最高のタレの危機を救った俺は、タレをもらいにヴェルディに向って全力疾走中!

 そりゃ、ご機嫌に歌も口ずさむってもんですよ。


 遠くに大きな街が見えてきた!あれがヴェルディ!

 入り口は……おっ、あの列に並ぶんだな。


 列の最後尾で大人しく列に並ぶ。

 お、前に並んでるのは遠い親戚と言えなくもない、狼獣人じゃないか。一応挨拶しておくか。


『こんちは~。後ろ並びますね』


 話し掛けられると思ってなかったのか、狼獣人はびくりと肩を震わせ勢いよく振り向いた。彼は冒険者のようで、腰に剣を佩いている。


「列に並ぶのに挨拶なんかする間抜けは……お、れ、かなぁ……?」


『ふむ。変な自己紹介だな。名はなんていう?』


「はひ。ピ、ピ、ピートです!」


(はひぴぴぴーとってなんだ?はいばひひーと、ばひいーと……あー、「はい。バハムートです」か!なかなか強そうな名前じゃないか)


『では、バハムートよ。なかなかの行列だけど、皆の狙いは最高のタレか?』


「最高のタレっすか?」


『そうだ。ヴェルディ名物となりうる、ティオの作る最高のタレだ』


「こ、この街は交易都市ルーエンへの入街の列です」


 ルーエンだって!いや、確かにヴェルディに向ってたはずなんだが?

 だけどもう並んだ上に、冒険者とも打ち解けてしまった俺が、いまさら間違いましたなんて言えるはずがない。

 ここは華麗に冒険者になりに来たことにしよう。最初の目的は確かにそうなんだから。


『バハムートよ、俺も冒険者になりたいんだが、冒険者ギルドまで案内を頼めるか?』


「は、はひ……」


 ガチガチに緊張しているバハムートの後ろを、ご機嫌ステップでついて行く。

 門番がバハムートに俺を指さし、お前の従魔かと尋ねている。

 バハムートはそんな滅相も無いと、大きく手を振り否定した。


『従魔だと!?聞き捨てならんな!我は神狼イグニスである!』


 俺が神威を込めてそう言うと、門番は腰を抜かし何事かと他の門番が集まりだした。


「神狼様ですか!?盗賊の退治の話は伝わってきております!」


『人違いなんじゃないか?』


「緋色のフェンリルで、神々しく慈悲深い御方だと伝わっております」


(緋色は合ってるのかな?母さんはスカーレットねって言ってたしな。神々しく慈悲深いは当てはまらない!ということは)


『人違いです。いや、神狼違いです!それじゃあ、入らせてもらうね』


「お待ちください!身分証をお見せください」


(身分証?俺そんなの持ってないけど?それ以前に、神狼が誰から身分証を発行してもらうんだ?)


『持ってないが?』


「ならばお通しすることはできません」


 バハムートが俺からも頼むよと、助け船を出してくれた。


『冒険者も入れて欲しいって言ってるし……』


「決まりです」


『でも、神狼に誰が発行するの?』


「知りません。身分証をお持ちください」


『じゃあ、この街のギルドが発行してよ!』


「発行してからおいでください」


『わからずや!こんな街、滅びてしまえ!!』


 俺がそう言った瞬間。にわかに空は搔き曇り、ゴロゴロと雷鳴が轟きだした。


(え?これって俺がしでかしたの?噓でしょー!?)


『嘘!嘘!嘘!この街は滅びない!でも少し不幸になれ!』


 すると雷鳴は収まり、雲は消えた。そして俺もその場から消えた……。跳び立つ瞬間目の端に、バハムートが派手に転ぶ姿が見えた……小さな不幸か……。


(危ない危ない、迂闊に恨み言も言えないな。それにしても身分証か……どうするかな)




***




「い、今の雷雲はいったい……」


 交易都市ルーエンの正門前には、先ほどまで緋色の神狼が佇んでいた。

 それが今はあちこちで人が転び、起き上がっては転ぶという異常事態に陥っていた。


 門番はガタガタと震えながら言った。


「身分証で御立腹された神狼様が、『こんな街、滅びてしまえ』と仰られたが、すぐさま『少し不幸になれ』と仰られた」


「それは、我らの慢心を見抜き、街を滅ぼすこともできるが、少しの不幸で許してやるってことか……」


「神狼様はこうも仰った。神狼に誰が身分証を発行するのかと……。考えれば確かに、陛下が通るときに身分証を求めたことは無い」


「なんと英知に優れ、慈悲深いのか……」


 それを聞いて感じ入った者は皆、神狼が去った空に向かって祈った。



***



 一方その頃、ルーエンから大きく駆けた山の上で、洞穴を見付けたイグニスは安全を確認していた。


『いやー、危なかったー。うっかり街を滅ぼしかけてたじゃん。当分人目に付かない此処で大人しくしとこう』


 それほど高くもない山だが、険しい山が連なった此処は何かいやに落ち着く場所だった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

評価やブックマークをいただけると、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。