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現れたのは、3年前に事故で失ったはずの恋人…?  作者: ネロ
バッドエンド

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8/12

深い闇

詩乃が亡くなってからちょうど一年目の冬の夜。

蒼はアパートの狭い部屋で一人、酒を煽っていた。

床には空の瓶が転がり、テーブルの上には凛と詩乃の写真が二枚、並べて置かれていた。

二人の笑顔が、蒼を無慈悲に責め続ける。

「また、失った」

「愛したら、必ず奪われる」

「俺は、呪われている」

頭の中で、その言葉がエンドレスで繰り返される。

詩乃の最後の姿——

冷たくなった手、閉ざされた目、もう戻らない笑顔。

凛の事故の記憶と重なる。

二人の女性を愛した罪で、蒼は自分を永遠に罰していた。

酒が回り、意識がぼやける。


蒼は引き出しから、睡眠薬の瓶を取り出した。

事故後、不眠に苦しむために処方されたもの。

残りは、ほとんど全部。

手が震えながら、薬を掌に載せた。

「もう、いい」

「二人に、会えるかもしれない」

「この苦しみから、解放されたい」

涙が写真の上に落ちた。

瓶を傾け、薬を口に運んだ。

一錠、二錠、三錠……

喉を通るたび、意識が、遠のいていく。

蒼は、写真を抱きしめて床に倒れ込んだ。

「凛……詩乃……ごめん……待ってて……」

部屋は、静かになった。

ただ、時計の針だけが無情に進む。




――だが、その夜、奇跡的に蒼は助かった。

隣の部屋の住人が壁越しに異様な物音を聞き、不審に思って管理人に連絡。

ドアをこじ開け、倒れている蒼を見つけた。

救急車が来て、胃洗浄。

意識が戻ったのは、三日後。

病院のベッドで、蒼は天井を見つめた。


生きている。失敗した。

医師は、「命に別状はありませんが、心のケアが必要です」と告げた。

蒼は、何も答えられなかった。

退院後、蒼はさらに深く閉ざされた。

自殺未遂の傷跡は、体だけでなく心にも残った。

誰にも言えず、誰にも助けを求めず、ただ灰色の世界で生き続ける。

二人の写真は、まだ胸に抱いたまま。

でももう、笑顔を見ることも辛くなった。


蒼は日々を機械のように過ごす。

愛する資格を永遠に失ったと信じ、自分を永遠に罰し続ける。

自殺未遂の夜は、蒼にとって最も深い闇の底だった。

そこから、這い上がる力はもう、どこにもなかった。


蒼はただ、生きながら、死んだように、歳を重ねていく。

二人の記憶は、永遠の呪いとして蒼を縛り続ける。

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