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現れたのは、3年前に事故で失ったはずの恋人…?  作者: ネロ
バッドエンド

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7/11

永遠の灰

詩乃の容態は、日ごとに悪化した。

事故から三週間目。

医師の言葉は冷たく、重かった。

「内出血が止まらず、脳の損傷も深刻です。これ以上持ちこたえるのは、難しいかもしれません」

その言葉を聞いた瞬間、世界が音を失った。


病室で詩乃の手を握り、ただ祈り続けた。

「詩乃、頼む。目を覚ましてくれ。君がいない世界なんて、もう考えられない」

でも、詩乃の指はもう、動かなかった。


「内出血が止まらず、脳圧の上昇が深刻です。意識が戻る可能性は、もうほぼありません。

お別れの準備を……」

蒼はその瞬間、膝から崩れ落ちた。

廊下の床に拳を叩きつけ、声を上げて泣いた。

看護師が駆け寄っても、「嘘だ……嘘だろ……」と繰り返すだけだった。

病室で詩乃の手を握り、蒼は祈り続けた。


でも、詩乃の指は二度と動かなかった。

最後の夜。

モニターの音が不規則に乱れ、やがて、長く平らな、無情な音に変わった。

医師が静かに、死亡時刻を告げた。

蒼は詩乃の名を呼び、ベッドに突っ伏して嗚咽を漏らした。

「詩乃……戻ってきてくれ……頼む……俺を、置いていかないでくれ……」


でも、詩乃はもう、答えなかった。

詩乃の冷たくなった手に額を押し当て、何時間も動けなかった。


葬儀の日。

蒼は、詩乃の遺影をぼんやりと見つめた。

白いカスミソウの花束を棺に添えた。

あの待ち合わせの日に持っていた花と同じ。

でも、詩乃はもう笑わない。


詩乃の両親が蒼に、

「詩乃は、蒼さんのこと本当に好きだったって、言ってました。

『蒼さんが、少しずつ笑ってくれるようになった』って、嬉しそうに話してました」

と伝えた。

蒼はただ頭を下げ、涙をこぼした。


その後、蒼は完全に壊れた。

仕事は辞め、アパートに引きこもり、凛と詩乃の写真を交互に眺める日々。

「また失った」

「愛したら、必ず奪われる」

「俺は愛する資格がない」

トラウマは、蒼の心を完全に灰に変えた。

酒に溺れ、食事を拒み、誰とも会わず、ただ二人の記憶に囚われ続けた。


夜毎、夢で、凛と詩乃が笑顔で手を振ってくる。

でも、目覚めると誰もいない。

蒼は、鏡を見るたび自分を呪った。

「俺が、もっと早く、詩乃を愛せばよかった。逃げなければ、こんなことには……」

後悔と自責が、蒼をゆっくりと蝕み尽くした。


「凛……詩乃……ごめん。俺は、愛せなかった。君たちを守れなかった。もう、疲れた……」


詩乃の「そばにいる」という約束は、永遠に叶わなかった。

蒼の心は、二つの愛を失ったまま灰になって、散った。

蒼は、愛した罪で自分を、永遠に罰し続けた。

二人の笑顔は、蒼の胸で痛みとしてしか、残らなかった。


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