梨花との関係
【七日目】
俺は今、体育館裏に向かっていた。
それは梨花の返事を聞く為、そしてこのクソみたいな関係を終わらせる為だ。
断言しよう、梨花と縁を戻すつもりは一切ない。
この数日間アイツは妙に俺と俺の友達に関わってきた。
俺とよく行動していた蓮には接触してないみたいだが、藍里は完全に接触している。いずれ彗さんにも接触するかもしれない。アイツが俺と仲直り? するわけねぇだろ仲直りだなんて。
アイツのあの言葉『さようなら颯。あなただけは絶対に殺す』。あの時、梨花は俺を殺意が溢れる怪物の様な目をして告げた。
そんな奴が、今更仲直りをしようって言ってうんと頷く訳ねぇだろ。
本当だったら素直に仲直りしたいと思う。
実際梨花に話しかけたあの時は俺も仲直りしたいと思った。だが、よく考えてみろ。最近の俺は緩み切っている
友達との楽しい日常。
彗さんとの関係。
日に日に増える友達。
俺はずっと楽しい高校生活を望んできた。
それは今でも変わらない。だから、だからこそ今ここで梨花への警戒を緩めたら何もかもが終わる気がする。
もう、俺はあんな風になりたくない。誰かに裏切られ、誰かを貶して、誰かに復讐をしようとして。
だから、ここでもう一度変わろう。
前は復讐のために、俺は自分の気持ちを殺した。
だが、
今は友達のために、俺は自分の気持ちを殺そう。
友達である蓮、藍里、唯奈さん、松島先輩、神崎先輩。
そして彼女の彗さんのために。
「楽しい高校生活はここで一旦終わりだ。梨花との関係が終わるまで、俺は冷静になろう」
そう、決心したと同時に、この話の元凶が声を掛けてきた。
「考えは決まったのね、颯」
「ああ、決まったぞ梨花」
体育館裏、キャンプファイヤーで盛り上がっている生徒たちの声が聞こえてくる。
赫く燃え上がる焔。
振動の様に空気を伝わってくる生徒の声。
そしてそれを冷やす様に吹く夏の風。
「思えばキャンプファイヤーなんて、林間学校以来だな」
「ええ、そうね。あの時は、とても辛くて、あなたがとても憎たらしかったわ」
やっぱりだ。
「遂に本性出しやがったな梨花。お前はそうじゃないとこっちもやりにくい」
「ふふっ、久しぶりにこうして話すわね。貴方はやっぱりそうじゃないと。私も堕としがいがないもの」
堕としがい・・・・え、何。アイツ俺のこと堕とそうとしてんの?
「んだよその言い方。まるで俺の事が好きみてぇな言い方しやがって気持ち悪りぃ」
「私は黒く染まって絶望に満ちた貴方が大好き。だから今の幸せに満ちた様な貴方なんて私は大嫌い」
そう言って梨花は一枚の写真を見せてくる。
「お前、今でもその写真保存してんのかよ」
「当たり前よ、好きな人の裸の写真だもの」
こりゃあ信じがたい事実を知れたな。上手くて利用してやりたいけど、アイツにこれ以上関わるとこっちが利用されそうだ。
「私は今のその殺意に満ちた目が大好き。黒く染まった雰囲気が大好き。あとは、足りないのは絶望っ!」
「はん、今の俺が絶望なんてする訳ねぇだろ。彼女もいて友達もいて、むしろ幸せだわ」
「うふふっ、その友達のうちの一人はもう私にお熱だけどねっ」
そう言って梨花はまたもや写真を見せてくる。
「お、お前・・・・チッ、気持ち悪りぃ趣味しやがって」
その写真に写っていたのは藍里が梨花にベロチューをしている所だった。それもお互い裸で。
藍里は確かに昔から何というか気持ち悪かったが、まさか百合もいけるとは。それに流石にこれは想定外すぎて俺も動揺している。
「お前、こんな事して何が狙いだよ」
ま、こんな事を聞いているが、もう答えは分かりきったものだろう。
「決まってるじゃない。貴方の周りにいる全ての人を私が奪い取る。そして誰にも頼れず絶望する貴方を私が助けて堕とすのよ」
梨花は恍惚とした表情でそう話す。
「あぁ、想像すると興奮しちゃう。子宮が疼いて堪らなくなっちゃうわ」
瞬間、梨花は俺に肉薄し、そして口を口で思いっ切り塞いでくる。
「梨花っ!! お前ッ!! ・・・・んっ」
「颯っ!! ・・・・・んちゅ・・・レロっ」
梨花の舌が俺の口の中を舐め回す。
俺は迷いなく梨花を突き飛ばした。
「テメェマジでぶち殺すぞッ・・・・!!」
「ふふっ、その殺意の眼差し大好き。あの泥棒女よりも私の口付けの方が気持ちよかったでしょ?」
「本気でそう思うならお前はもう死んだ方が俺の為になるぞ」
「私が死ぬ時は貴方に絶望を与えたら。もう一度貴方の絶望した顔を見るまで私は死なないわ」
本気でそう言う梨花はやはり常軌を逸している。
「お前はやっぱり、いい性格してるよ・・・・」
「引いてる時の顔は別に好きでもないわ」
コイツはやはり、根っからの悪人であり、頭のおかしい奴だ。
「じゃ、私はあの子のいる場所に戻るわ」
「チッ、藍里を助けれねぇのが辛いところだ」
「あら、助ける方法ならあるわよ。貴方が私のモノになればいいの」
俺は梨花に背を向け告げる。
「テメェの性欲の捌け口に使われるなんざごめんだ」
こうして、俺と梨花は真っ向から敵対する事になった。
前みたいに自分を守る為に自分の気持ちを殺すのではなく。
今は大切な人を守る為に、自分の気持ちを押し殺そう。
「・・・・さて、利用出来る物は利用していこう」
必ず、梨花はこの手でぶっ潰す。
別の意味での闇堕ち? 始まります。




