よるのぷーる
【三日目】
三日目の夜、時刻は深夜零時。
俺は見回りの先生から隠れながら、彗さんとの集合場所である学校のプールの脱衣場に向かっていた。
「・・・・・・・・夜の学校、雰囲気怖いな」
背後から人の気配がするっ!
振り向くがそこには誰もいなかった。なんだこの茶番じみた行動は。
そして、そうこうしているうちに、俺は彗さんとの待ち合わせ場所である脱衣場についた。
「・・・・彗さーん、いますかー」
「・・・・・・・・えっ!」
あれが小声で彗さんを呼ぶと、小さい声ながらも俺の声に驚いている彗さんがいた。
「あ、彗さんもう着いてたんですね!」
「ちょ、ちょっと待って颯くん! 私まだ水着着てーー」
俺は彗さんの話を最後まで聞かず振り向いてしまった事に後悔したと同時にとても素晴らしいものが見れたなと思ってしまった。
俺が振り向いた先には水着を着ようとしていた彗さんがいた。つまり、上半身が裸の彗さんだ。
視界が暗くても、雪のように白くもちもちの肌とその大きな双丘はバッチリ見てしまった。
「は、颯くん・・・・・・・・す、すごい恥ずかしいから一回、プールの方行ってて・・・・・・・・」
だんだん声がか細くなっていったものの、彗さんの話はちゃんと聞けたので俺はその指示に従う事にした。
数分経つと、モジモジしながら後ろに手を回している彗さんが脱衣場から出て来た。
「す、彗さん。さっきはすみませんでした。俺の不注意で・・・・・・・・」
「いやいや、颯くんのせいじゃないよ。元はと言えばあのタイミングで服を着替えてた私が悪いし」
沈黙、それ以上会話が続かない。
「お、俺、着替えて来ますね!」
「あ、う、うん! なるべく早く来てねっ。先生来ちゃうから」
「は、はい!」
そう言って俺は脱衣場に向かった。
⭐︎⭐︎⭐︎
数分後、水着に着替えた俺は彗さんがいる場所に向かった。
彗さんはプールの縁に座り、足で水をぱしゃぱしゃしていた。
「彗さんはここに来る途中、先生とかに見つかったらしました?」
「先生はよく見かけたけど多分見つかってはないよ」
よ、よかった。さっきの気まずい雰囲気が消えている。
「そう言う颯くんの方こそ、先生に見つからなかった?」
「俺は先生に見つかるより、夜の学校の雰囲気が怖くてそれどころじゃなかったですよ。終始震えてました」
「あははっ、実は私も颯くんが来るまですごく怖かったんだ。だけど、颯くんが来た瞬間恐怖心が吹っ飛んだよっ」
そう言ってはにかんで笑う彗さんはやっぱり綺麗だ。
「最近は色々な事あって二人きりになる事が少なかったけど・・・・・・・・今日はこうして颯くんが二人きりになれる機会を作ってくれて私、ほんとに嬉しい・・・・・」
「そう言ってもらえると、俺も本当に嬉しいです。まあ、体育祭とか色々ありましたもんね」
あの時は、彗さんのお母さんの事とかを俺の親から聞いて混乱してたと思うしな。
まあいつか彗さんにも相談して欲しいとは思うものの、今の俺じゃ無理かと思う。やっぱり年上系彼氏目指した方がいいのか? 頼れる彼氏像が未だな全くわからん。
「私ね、やっぱりまだ混乱してる。私のお母さんの事とか。颯くんのお父さんとお母さんが私の親と昔仲良かったとか」
「その話は俺も驚きました・・・・・・まさか昔から仲が良かったとは」
一息ついて彗さんはまた話し出す。
「私と付き合う以上・・・・・・・・今後この話の事を相談する時が来るかもしれない。前はね、颯くんに迷惑かけたくないからって思ってたけど、今なら颯くんなら解決してくれるよねって思うようになったの」
彗さんがそう言った。
その言葉を聞いて俺は目頭が熱くなる。
「俺は彗さんが疲れているときに支えれる人になりたい。だから、今彗さんにそう言ってもらえてすっごく嬉しいです・・・・・・」
「ふふっ、やっぱり颯くんはかっこいいね。私の自慢の彼氏だよ」
「いやいや、彗さんこそ可愛ーー」
俺が彗さんが如何に可愛いか伝えようとすると、彗さんはプールの水に浸かり、俺に水をかけてくる。
「あっ! やったな!」
「あははっ、颯くん前髪変な感じになってるっ!」
俺はプールにダイブして、彗さんに水を思い切りかける。
「プールと言えば水のかけ合い! くらえ彗さん!」
「ああっ! やったな! それっ!!」
俺たちは無我夢中で水をかけ合った。
「はぁはぁ、水遊びって結構疲れますね」
「そ、そうだね。珍しくはしゃいじゃったよ」
水遊びを初めて何分経っただろう。
「そろそろ戻りますか」
「そうだね。先生に見つかったら大変な事になるし・・・・」
そう言って俺と彗さんはそれぞれ別の脱衣場に入り、服を着替えた。
「やっぱりプール出るとちょっとだけ暑いね」
「そうですね。最近は特に暑いですし。迂闊に外も出歩けませんよ」
会話を重ねながら俺たちはそれぞれの教室に戻る。
「それじゃ、私はこっちだから」
「わかりました。それじゃあ彗さん、また明日」
「うん、また明日」
そう言って俺は自分の教室に戻ろうとする。
「あ、ちょっと待って」
彗さんに止められた俺は彗さんの声のする方へと振り向くと、詰め寄って来た彗さんに軽いキスをされた。
「また明日、私の大好きな颯くんっ」
彗さんはそう言い残し、足早に自分の教室へと戻っていた。
「急にするのは反則ですよ、彗さん・・・・・・・・」
俺の場所に残ったのは、俺とすこし甘ったるい空気だけだった。




