生徒会長は百合好き
【一日目】
「あれお姉ちゃん、どうしてここにいるの?」
「唯奈が橘颯と彗と話しているところを見てね。つい気になって話しかけたのだよ」
「あれ、颯くんと唯華って面識あったの?」
「あ、はい。以前少しだけ話したことがあって」
まさか唯華先輩が直々に話しかけてくるとは。
後ろを見たら俺の背丈軽く超える女性が俺を見下ろしてるって軽くホラーだろ。
因みに俺は百七十二センチ、唯華先輩推定百八十オーバー。
「こっえ・・・」
「ん? 何か言ったか橘颯?」
「いえ、何も言っておりません」
嘘をつくのに十分な理由がある。あそこで唯華先輩に独り言を聞かれていたら頭を鷲掴みにされて地面に叩き落されていた可能性もある。
「なんにしろ、妹である唯奈と仲良くしてくれてありがとう。聞けば怜奈の弟も仲良くしてくれているそうだな」
「は、はい。ゲームの話で意気投合して。こ、ここ数時間は・・・・一緒にいました」
俺がこうもビビっているのにも理由がある。
唯華先輩の噂は怖いものしか聞かないのだ。例えばうちの学校の不良グループを竹刀一つでボコボコにしたり、授業を妨げる行為をする者には長時間のお説教があったり。
いい事をしているのだが色々と変な噂がある分、とても怖いイメージがある。てかコミュ力あるわけじゃないからほぼ初対面の人と話すのは無理っ!! 助けてくれ彗さん!!!
「よしっ! 唯奈ちゃん、私とあっちのお肉取りに行こっ!」
「いいですね彗先輩! それじゃ、お姉ちゃん颯先輩また後で!」
え・・・・、ちょっと待ってよこの状況で普通俺の事置いてくか?
彗さん彼氏の事置いてかないでよッ!! この状況で唯華先輩と二人っきりは嫌なんだけど!!
「あ、じゃあ俺もこの辺で・・・・」
「まあまあ、橘颯。そう言わず少し交流を深めようじゃないか」
いやいやあなたと話す内容なんてないですよ、ほんと。
「なぜ彗と付き合ってたりしたんだい?」
「え?」
唯華先輩は先ほどまであった目の光を消し、ハイライトのない暗い目で聞いてきた。
「な、なぜ付き合ったかと聞かれても・・・・」
「・・・・・それだけの理由で付き合ったのか」
「は、はい・・・」
な、なんなんだこの人は。
確かにあまりちゃんとした理由ではないが愛は本物だぞ。
そして俺が苛立ちを覚えてきた頃、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「よぉ、クソ男」
俺を呼んできた声には聞き覚えがある。
「・・・松島先輩」
「そんな嫌そうな顔すんな。彗がどこにいるか聞きに来ただ・・・唯華?」
「ああ、怜奈か。彗なら私の妹と一緒に向こうへ行ったぞ」
「待て待て、二人って面識あったのか?」
そう聞きながら松島先輩は何かを考えるように腕を組む。
「唯華、少しコイツ借りるぞ」
そう言って、松島先輩は俺の腕をつかみどこかへ連れていく。
いや、唯華先輩から離れられるならいいけどよりにもよって松島先輩か・・・・。
☆☆☆
「急に連れ出して悪かったな。だけどお前に一つ忠告しておきたいことがある」
そう言って、松島先輩はため息をつきながら告げる。
「唯華に彗ネタは地雷だ。関わることもなるべく控えろ」
「な、なんでですか?」
そう俺が聞くと松島先輩は目頭を押さえながら話した。
「あー、あいつは彗の事が昔から好きらしくてな。お前のこともあまりよく思っていない」
「ゆ、百合って事ですか?」
「ああ、百合って事だ。彗の方は当然だが異性として好きとは思っていないがな」
俺は知っている。百合の掟。
百合に男は混ざってはいけない。
とりあえず、唯華先輩と関わるのは控えよう。
こうしてお泊り会一日目が終わった。




