渡されるバトン
『1500メートル走に出場する生徒は、放送部テント前の待機場に集合してください』
体育祭最後の種目、1500メートルリレー。
今年の学年優勝候補は一組と二組だ。
一組は二人三脚、借り物競走で一位を取っており、対して、二組のうちのクラスは騎馬戦とクラス対抗リレーで一位を取っている。
現状は少しだけ一組のクラスが二組よりも得点が高い。なので、この1500メートルリレーで上位を取れるかどうかで勝敗が大きく変わってくる。
俺が今後の事を考えていると、隣にいる蓮が話しかけてきた。
「おいおい颯、そんな暗い顔しなくても俺たちなら優勝できるって!」
「俺そんな暗い顔してた?」
確かに考え事はしていたが、別に暗い顔をしてたってわけじゃない。も、もしかして、俺って元々そうゆう顔なのか!?
・・・・・・・・・今度彗さんに聞いてみよう。
「で、確か1500メートルリレーの走順って藍里、倉敷さん、渡辺さん、蓮、で最後に俺だったよな?」
「そうだよ。うちのクラス陸上部いないから野球部の倉敷と渡辺がいてくれてほんと助かったよ」
「うちのクラスはほんと野球部多いな・・・・・・」
坊主の割合も高いし。坊主の人口密度高いぞ。
でも、一組には三人陸上部がいる。
現役相手に、俺たちのクラスのメンバーがどんだけ食い付いていけるかで変わってくるけど、まあうちのクラスはやる時はやるからな。そこは心配しなくていいだろ。
「おーいっ颯と蓮っ。もう、みんな集まってるよ!皆んなで円陣組むんでしょ!」
「ああ、ごめん!すっかり忘れてた、今行くよ!ほら、颯も急げって藍里に叱られるぞ!」
ああそういえば、そんな約束もしてたっけ。
まあ、蓮の言う通り急がないと叱られそうだから走って行こう。これも軽めのウォーミングアップだ。
⭐︎⭐︎⭐︎
『出場選手が揃ったので、これより体育祭最終種目1500メートルリレーを開始したいと思います!』
「遂に始まるね!私最初から全力ダッシュしちゃおうかな」
「それだけは絶対にやめてくれよ・・・・・・」
「もう、冗談だって。颯も蓮も一緒に頑張ろ!」
そう言い残し、藍里はスタートライン前の待機場に向かった。
「へへっ、ここでかっちょいい所見せれば俺らも颯みたいにモテモテだぜ!なぁ、渡辺!」
「ああ、そうだな。ここで活躍して俺は坊主青春ライフを送る!」
どうやら倉敷さんと渡辺さんも張り切っているようだ。蓮もさっきから走りたくてうずうずしてるし。
俺もこうやって体力で勝負するのはいつぶりだろうか。
中学最後の試合、確か夏の大きな試合ぶりだろうか。そう思うと、時の流れは早く感じる。あの時の俺は、確か・・・・・・・・・バンッ!!
俺が中学時代の事を思い出そうとしている内に、1500メートルリレー開始の銃声が、広い校庭に鳴り響いた。
(おっと、こんな事考えている場合じゃないな。ちゃんと藍里応援しないと後で怒られちまう)
「おい颯!藍里めちゃくちゃ飛ばしてるぞ!もう半周走ってる!」
「はぁ!?まだ始まってから10秒ぐらいしか立ってねぇじゃねぇか!あいつそんな飛ばして大丈夫なのか!?」
おいおい、あいつどんなけ飛ばすつもりだよ。
こりゃ、俺も頑張らないと怒られるだろうなぁ。
ま、現役陸上部がいる以上、頑張らないと負けるし、本気は出すけどさぁ。あいつ、俺たちに圧かける為に飛ばしてるだろ。
そう思い、俺は藍里の方を向いては、声が枯れそうになるまで応援した。
⭐︎⭐︎⭐︎
トップバッターの藍里は順調に順位を伸ばして、二位と言う形で終わった。続く倉敷さんも順位を維持し続けてくれた。だが、次の渡辺さんで三組の陸上部に抜かれてしまい、三位で蓮にバトンが渡った。
蓮は最初から全力で走っていった。
三組の陸上部を抜かし、先頭を走る一組の陸上部との差を埋めてくれた。
そして今、蓮からのバトンが俺に繋がる。
「は、颯ッ!優勝、奪って来いッ………!!」
「・・・・・・あぁ、わかったッ!!」




