俺と人生最後の復讐
俺は今、待ち合わせ場所に向かっている。
ずっと、落ち着かないこの気持ち。
全身に汗が流れるような緊張感。
この感情を一言で言うと、不安。この気持ちが俺の中でずっと渦巻いている。
前の俺だったら絶対に気持ち悪くなって吐いていると思う。
でも、何に対して不安を抱いているのか、わからない。
だけど、今の俺のやることはただ一つ。
それは……
「ごめん颯、待った?」
「いや、待ってないよ優奈」
「それならよかった!じゃあ行こっか!」
「あぁ、行こうか」
俺は優奈と付き合う前、ずっと毎日が退屈だと思ってた。何にも代わり映えのない平穏で窮屈な日常。いつからそんな風におもいだしたかわからないが、気づいたときにはそう思っていた。だけど優奈に告白されたとき。俺はなにかが変わる気がした。
「わぁ~!すごい人の数!」
「本当にすごい数だな」
優奈と付き合ってからの日常は凄く楽しかった。毎日が光のように早かった。
初めてのデート、初めてのキス、初めてのセックス。少し怖かったけど、優奈となら怖さも吹っ飛んだ。だからその分、裏切られたときは辛かった。
「あともうすぐで炎をつけるって!」
「そうなんだ。楽しみだね」
思っていない事を口に出すのは簡単だ。だが思っていることを口に出すのは難しい。それは優奈も同じだと思う。だから俺たちはこんな関係はなったんだと思う。
「ね、ほんとに楽しみ!」
優奈と付き合ってから2ヶ月後に優奈と秀真の浮気現場を見た。あの時はほんとに立ち直れなかった。あの姿を想像すると今でも吐き気がする。それから俺はどんどんと、間違った方向に進んでいった。人を価値のないものだと判断して、利用出来る
物だけを自分の近くに置いた。その例が藍里だった。今でも本当に申し訳ないと
思っている。だけど藍里はこんな俺を見捨てずに、寄り添ってくれた。その事実が
絶望の淵にいた俺を救ってくれた。そんな藍里には感謝の気持ちが溢れるばかりだ。
「颯~早くこっちこっち!」
「はいはい、今行くよ」
「もぉ~颯、ぼぉーっとしすぎ!」
『さようなら颯。あなただけは絶対に殺す』こんな物騒な言葉を聞いて、人々はどうとらえるだろうか。俺だったらこの言葉に感謝を伝える。だって梨花は、そう吐き捨てた彼女の瞳には涙が溢れてたから。ありがと梨花。こんな俺を好きになってくれて。絶対にまた仲直りして一緒に話そうな。その日が来るまで俺は絶対にお前を嫌いにならないから。
「あぁー!颯、炎がついたよ!」
「ほんとだ、綺麗だな」
「ね、本当に綺麗」
俺がまだ幼い時、近所に男の子が引っ越してきた。そいつと出会ったのは引っ越しの挨拶の時だ。幼い頃の俺は、今と同じで友達が少なかった。だからそいつとも、
関わらないと思ってた。だけどそいつは毎日俺の家に来て「一緒に遊ぼ」と誘ってくれた。今思えばその時、初めて心の友ができたと思う。だから秀真には感謝している。だけどその分、裏切られたときは憎しみの感情しか抱かなかった。なんで秀真が俺を裏切ったかはわからない。だけどなんか隠してるのなら言ってもらいたかった。
ただそれだけだ。
「なぁ、優奈」
「どうしたの」
炎は消えずにずっと燃え盛ってる。
「お前は、俺と一緒で楽しいか?」
「ーーっ!」
今の俺の声はとても冷え切っていて、とても冷めた目をしているだろう。
まるで、白虎にでもなった気分だった。
「そ、それは……」
彗さん、彼女に惚れかけている。
あの凛とした振る舞い、まるで塔の上のお姫様を表すような長くて黒い綺麗な髪。
ちょっとドジな部分もあるけど、甘えん坊で大人びた、ただの女の子。みんなはお姫様とか特別扱いするけど、ただの見栄っ張りで強がりな女の子。俺はそんな女の子に惚れかけている。俺のすべてを受け止めて、包み込んでくれる。遊びに誘ってくれたり、俺のことを好きになってくれたり、ちょっと揶揄ってくるときもあるけどそこもまた良い。本当に彗さんには感謝してもしきれない。
「あぁ、俺、彗さんに会いたい……」
「え……」
よし、覚悟決めるか。
「すぅーーはぁーー」
行くぞ、これが俺の復讐だ。
「優奈、俺と別れよう」
「な、なんで……」
「理由はわかるだろ。胸に手おいて考えろ」
「ーーっ!」
「あと、優奈ごめん。俺、気になる人ができたんだ。浮気はしたくない、だから俺と別れてくれ」
「気になる人……わかった。別れよ。ごめんね、颯、私……最低だね、自分でも笑っちゃうよ」
「今さら遅いよ。じゃな優奈、今まで本当にありがとう。」
俺と優奈の関係はあっさりと終わった。俺は切り替え藍里との待ち合わせ場所に向かった。泣き崩れている優奈を見いないようにして。
二話連続投稿じゃい!




