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25.2025/11/2 とある非モテアラサーに起こった変化のその後

16.2024/10/2 とある非モテアラサーに起こった8.14後の変化、に出てきた二人のその後です。

2025/11/2

佐々木(みつる)


 去年の10/2からシゲハさんと同棲(!)し始めて、一年と一ヶ月が過ぎた。

 初めての家族以外と過ごすクリスマス・イブというイベントは、ワースト・クリスマスという世界史的一大イベントに塗り潰された。いやまぁ、する事はしてたんだけどね。する事ってのは、プレゼント交換とか一緒にケーキとかケンタチキンを食べたりとかですよ?(それ以外はまぁ以下略)


 で、プレゼント交換できた事からわかるだろうけど、彼女の口座とかはロックされてなかったし、ATM使った後に忠臣組のガサ入れがあって彼女と俺が連行されるとかってイベントは無かった。

 別のイベントはあったけど、それは後述。


 彼女と生活し始めて追っ手がかかってない事を確認してからほぼすぐに、彼女は一般組員として申し込み、申請は受理された。彼女の腕輪が届いたのと同時に、婚約を申し入れ、あっさり受け入れられた。それがほぼきっかり一年前の出来事。忠臣組の決め事的事情で彼女を守る為だったので、ロマンチック的要素はほぼゼロだった・・・。婚約しておく?ああ。みたいな、ね。

 する事してたというか、シゲハさんが積極的だったのもあり、春前くらいには妊娠を告げられた。そんな感動的なイベントが自分に(妊娠したのはシゲハさんだけど)起こるなんて信じられなくて、ぼろぼろに泣いてしまった。涙と鼻水とかだらだら垂らしながら、ありがとうみたいな言葉をずっと繰り返してた。彼女は、嬉しそうな微笑みを浮かべながら自分の顔を拭ったりしてくれた。ただ、時折、ふと悩ましそうな表情を浮かべたりするのが気になったけど、訊いても妊婦とはそういうものだろう?しかも状況が状況だ、と言われればそういうものかと納得してしまった。その時は。


 ただ、だからこそ、少しでもその不安を取り除くか軽減できるように、引っ越しをする事にした。シゲハさんも反対はしなかった。無理をする必要は無いとマンションの購入とかは止められたけど、忠臣組の相談窓口に問い合わせて、公団住宅の3LDKの格安賃貸物件を紹介してもらえたりした。託児所も併設されてる優れ物で、ベビーラッシュに備えて子供が産まれたり産まれる予定の新婦新郎が優先されてるらしい。忠臣組、ぐっじょぶ!としか思えなかった。


 その引っ越し当日頃に起こったのが、日本救国党事件だった。

 痛いくらい真剣な眼差しでライブ中継画像や特番番組に見入るシゲハさんに、臆病な俺でも尋ねずにはいられなかった。

「あのさ、まさか、行かないよね?」


 シゲハさんは即答しなかった。


「お願いだから、行かないで、くれると、嬉しいな・・・」


 シゲハさんは少し膨らんできたお腹をさすって、でも、答えてくれなかった。

 引っ越しの数日前から、いつもより悩む表情をする機会が増えて気になってはいた。誰かからの電話だったり、スマホのメッセージツールだったり、怖くて聞けなくて、シゲハさんからも説明は無くて。

 引っ越しだから、本当に自分とこのまま一緒になる事に不安を感じていたから、そんな風に考えていた。でも、それにしては、最初に会った頃のような、とても怖い雰囲気だったから、何となく、想像はついていた。

 だから奈良で事件が発覚して、数日で数万人以上に膨れ上がったという報道を目にして、何を悩んでいたかの裏付けが取れた感じだった。


 まだ段ボールが積み重ねられて、とりあえずテレビとソファーと、ベッドと寝具くらいしか荷解きされてない状態で、俺は隣に座ってるシゲハさんの手をぎゅっと掴んで言った。

「行かないで。ていうか、行くなよ。お願いだから」

 まだ言葉は返ってこなかったから、言葉を重ねた。

「ほら、ネットやテレビのニュースで何度も報道されてるじゃないか。略奪を繰り返して、暴行やリンチで殺害も繰り返してる。ほとんどマスクしてる奴もいないみたいだし、コロナなんて陰謀論だなんて連中だよ?

 行ったら、シゲハさんやお腹の子供も危ないよ!ていうかほぼ絶対に感染して酷い事になるか、忠臣組に殺されて終わるだけだって!」


 自分に出来る精一杯の力でシゲハさんの手を握りながら、怒鳴るくらいの強さで語りかけた。懇願ていうか、すがりついた。


「・・・・ってる」

「へ?」

「そのくらい、わかってはいる」

「なら!」

「でも、これが一つの大きな機会である事は間違い無いんだ」

「かも知れない!でも、絶対失敗するよ!」

「なぜ言い切れる?」

「だって、天皇制を何をしてでも存続させたいって連中までならともかく、普通に民主主義を取り戻したいって人達が、あんな酷い事してる連中になびくと思う?」

「酷い事というなら、忠臣組の神国日本でも大差あるまい」

「否定はしないよ。でもさ、シゲハさんや、恋人さんだった人が取り返そうとしてる日本て、あの連中が取り返そうとしてる日本と重なってるんですか?ぼくには、そうは思えない」

「・・・・・かもな」

「かつてのお仲間さん達も加わってるんですか、あそこに?」

「全員ではないが、一部がな」

「で、誘われていたと。妊婦なのに。いや、妊婦だからこそですか?」

「気付いていたのか?」

「・・・シゲハさんがATM使っても追っ手がかからない事を確認して一人で外出するようになってしばらくしてから、シゲハさんのお母様がいらっしゃいましたから・・・」

「そうか・・・・・。母は、何と言ってたにゃらん?」

「ぷっ!こんな時に笑わせないで下さいよ!」

「こんな時だからこそ、にゃら~ん?」

「・・・お母様の時雨さんは、二人が出会った状況とか、それからのシゲハさんの言動をぼくから聞き出した後、教えてくれました。シゲハさんが何をしようとしているのかを」

「そうか。それでも、そんな私と関係を重ねて、婚約して良かったのか?」

「後悔はしてません。どの道、ありのままのぼくをそのまま受け入れてくれる女性なんて現れないでしょうからね。時雨さんの予想が外れる事もあると期待してた自分もいましたし」

「母は、他に何か言っていたか?」

「あなたの目論見通りに事が運んで、あなたがいざ行動を起こそうとした時、止められそうになければ、連絡をもらえれば手助けしてくれると」

「やれやれ。それでは拘束されているのも同じだな。降参だよ」

「ぜんぜん、声に真剣味がありませんよ?」

「シゲハには、わかんにゃいにゃら~ん」

「可愛く言ってごまかそうとしてもだめです。半年以上付き合ってきて、女性経験ほとんど無かったぼくにも少しくらいはわかるようになったんですから」


 シゲハさんは、じっと見つめる俺の頭をぽんぽんと撫でて、ぎゅっと握ってる手をもっと強い力で握ってきて俺が悲鳴を上げてぎぶぎぶぎぶ!と連呼すると手を放して、ふっと笑いながら言った。

「母が察し、ミツルが心配してくれたように、妊婦でしか出来ない事をしようとしていたのは、事実だ」

「座り込みとかのデモくらいなら、ぼくだって付き合いますよ」

「ミツルは優しいな」

「シゲハさんと子供の命がかかってますからね」


 シゲハさんは、はぁ、と重い溜め息をついてから言った。

「忠臣組は、妊婦をとりわけ慎重に扱おうとする」

「時雨さんから言われて自分でも調べてみました。マタニティー・デモって呼ばれてるらしいですね。民主主義を取り戻したいって人達の間でも相当批判浴びてるみたいですけど。自分だけならともかく、まだ産まれてもない子供を巻き添えにするのはどうなんだって」

「・・・ミツルは、母の腕輪を見ただろう?」

「自衛官ていうか神国日本軍の兵士なら赤銅色の腕輪。一部高級事務官とかの例外はあるけど、時雨さんのは、金色の横線が入ってて、しかも輪の両端には黒い縦線が入ってました・・・」

「そうだ。母は、12.7を成立させた立役者の一人と言って良い」

「どうして・・・?」

「訊かなかったのか?」

「腕輪のディテールにまで関心が向いたのは、時雨さんと会って別れた後だったので」

「まあいい。理由はな、あのままだと日本は保たないと判断したからだそうだ。当時の政権与党と政府は、わざと、コロナ禍を蔓延させ長引かせた。解決には憲法改正が必要だと、その為には国民の犠牲などささいなものだと。自主独立と言いつつ、米軍従属は変わらない存在なのに、民主主義を最悪な形で終わらせようとしていた。だったら、マシな方を選んだそうだ」

「終わらせるにしても、コロナ禍を終わらせられそうな方に?」

「そうだ。そして誰も裁けなくなったガン細胞を完全に除去出来るのならと。同士を見つけ秘密を保持するのは、そう大変では無かったそうだよ」

「・・・自衛隊を憲法違反で無くせるなんて甘言に乗せられてはいなかったって事ですか」

「そもそも憲法違反な存在ではないとずっと判断されてきたのだし、単なる詭弁だな。核武装だの、先制攻撃だの、当時の政権与党にまともな思考能力が失われている事は明白だった。私とてそこは否定しない。だが、あれは、やり過ぎだろう?」

「事前に相談されて、協力を要請されたりしなかったんですか?」

「私の性格を見抜かれていたせいか。やんわりと訊かれて、きっぱりと断って、あっさりと手を引かれ、気付いた時には既に事は成し遂げられ、形勢も固められてしまっていた。文句をつけても後の祭りだったよ」

「文句をつけた時に、何か弁解されたんですか?」

「娘であるあなたや、これから産まれるかも知れないあなたの子供達の為にも、やらざるを得なかったと。後悔もしていないと言われた」

「だから、あなたも子供を利用しようとしているんですか?」

「・・・・・・・」

「命をかけるってくらいの強い思いがあるなら、止められないでしょうね。でもせめて、子供が産まれてからにして下さい。その後なら、ぼくも最後まで付き合いますから」

「これは私のわがままだ。だから」

「わかってますよ。後腐れ無く後に残せて、二人の間の子供にも思い入れが生じないような適当に選んだ相手ですものね。ぼくは」

「・・・・・・・・・すまないとは、思っている」


 ぐさりと、とてつもなく重く大きな何かに胸を貫かれた。息も心臓の鼓動も止まったかと思った。でも、覚悟はしてきた答えだった。


「いいえ。ぼくに彼女なんて出来る訳が無い。そんなうまい話がある筈が無いと、ずっと自分に言い聞かせてきましたから。

 でも、だからこそ、言わなくちゃいけない事があります」

「何を?」


 ソファで隣に座るシゲハさんの両肩をがしっと掴み、告白した。


「好きです。シゲハさん。ぼくと付き合って下さい」

「それは・・・」

「ぼくの、生涯の、相方になって下さい」

「・・・・・」

「ぼく達の間の子供の、母親になって下さい。母親で在り続けて下さい。ぼくの相方にならなくてもいいですから、せめて、子供の親として、生きようとはして下さい。お願いですから・・・」


 怖くてずっと言えなかったけど、ようやく言えた。

 顔を見るのが怖くて、がばっと抱きしめてごまかした。

 シゲハさんは黙ったまま、一分以上固まり続けていた。だけど、その腕が俺の体を押しのけるのではなくて、背中に回されて、やさしくぽんぽんと叩かれたりさすられたりしながら、言われた。


「私も、シゲハも、ミツルの事は、好き、にゃらん」

「そこは、ふざけないで欲しかったような気もするけど、でもありが」

「でも、このまま普通の生活に埋没は、出来ないにゃらん」

「前の人と何か約束でもしてたからですか?その約束の方が、ぼくや子供よりも大事なんですか?」

「そんな約束は無い。だが、そうだな、これは自分の中の区切りというか、譲れない何か。そういった物だ」

「なら、ぼくも付き合いますから、せめて出産は終えてからにして下さい。それまでは、二人の命を危険に晒すような真似は避けて下さい」

「そこは、二人ではなく三人と言うべきじゃないのか?」

「・・・ぼくは、たぶんシゲハさんや、かつての恋人だったというヒトシとかとも違う意味で、この世界に未練が無いんです」

「でも、アニメとかマンガとかは?」

「そうですね。未練と言えば未練ですけど、でも、おじいちゃんになってもずっと?とか想像した時に自分でもわかってたんです。自分はやっぱりこの世界の事なんて根本的にどうでもいいんだなって」

「だったら余計に巻き込まれるべき理由は無いんじゃないのか?」

「世界がどうでも良くても、シゲハさんの事はどうでも良くありません。巻き込んだのはぼくじゃなくて、シゲハさんですよね?ちゃんと最後まで、責任取って下さい」


 シゲハさんは、くすりと笑って言った。


「それ、男が言う台詞かにゃらん?」

「事実だから、仕方ないです。それで答えは?もしYesならぼくにキスして下さい。そしたら二人は付き合うって事で、ようやく本当の意味で彼氏彼女というか婚約者というか、そんな感じの間柄になります」

「もしNoなら?」

「一緒に生活するのももう無理なら、時雨さんを頼ります」

「そこは男として力尽くで何とかしないのか?」

「シゲハさんのが明らかに強いってのわかってますし、力で何とか出来ないししたくもないですから。ストーカーにはなりたくないけど、無茶しないかずっと心配にはなりますからね。監視役は必要です」

「仕方ないにゃら~、ミツルは」

「じゃ、じゃあ!?」


 シゲハさんは、俺の鼻の頭にちゅっとしてくれた。


「えっと、このキス?の心は?」

「ちょっとだけ、保留だ」

「ちょっとだけって、どのくらいの何がでしょうか?」

「この日本救国党の連中は好かない。特にそのトップの二人ともがろくでもない。コロナ対策もする気がない。そんな奴らが神国日本を打倒出来るとも思えないし、万が一打倒出来てしまっても奴らが作ろうとしてる国が神国日本よりもマシになるか、かなり怪しい。12.7以前の桐生睦紀とか吉浦洋文の言動は噴飯物だったしな。あいつらの為に命をなげうつくらいなら、ミツルや子供の為になげうつ方がマシだ。というか比べものにならない」

「そ、それはどうも」

「それにミツルも言ってた通り、こいつらどう見ても失敗しそうだしな。後につながる善い何かは何も残せずに」

「でしょうね・・・」


 その当日の夕方には、奈良から大阪方面に抜けようとした総勢十万の暴徒的な日本救国党の群衆は、封鎖線の防衛兵力に弾き返されて畝傍山へと逆戻り。

 さらに追いつめられて五日後の夜には奈良から離脱しようとして失敗し壊滅。

 トップ2の桐生(皇族未満)吉浦(二世知事未満)、そして炎上芸人(政治家未満)の端元は、コロナは風邪かどうか、日本人なら重症化しないし死にもしないかという公開実験台にされて自らの死をもって何かを証明。日本救国党も、連んで動いていた日本民主主義復活同盟もまた消滅していった。


「行かなくて正解だったな。とは言え、これで次にどう動くかが、また難問になった訳だが」

「たった一人や二人に何が出来るかって話ですけど、無理はしないでおきましょうね。普通のデモならぼくも付き合いますから」


 そんな話をしてたのが7月の頭頃。妊娠五ヶ月くらい。それまでもそれからも日本でも世界でも相変わらず激動のニュースが続いてたけど、秋前くらいから少しずつ流れてきたのが、噂だけどってリークみたいな形で、神国日本が倭国に国号を復すという一大ニュース。その為の憲法も(天皇制卒業式で告知してた様に)の中身が少しずつだけど世間に流されていた。


 世界的な動きで言うと、アメリカ、特にWSR勢力圏の州の大半は国連PKO統治下に置かれて74Mが完全なテロ集団化して彼らの言う独立闘争レジスタンスを続けていた。

 PAU(汎アラブ連合)のイラクの強い主張により、米CNNや英BBCが解体させられたりとかもあった。いわゆる欧米メディアには、中華連合による実質的な検閲がかかるようになったと言ってもいいらしい。

 東南アジア諸国はどうにかまとまって対抗しようと、真羅とも協調して動こうとしていたけど、その連帯の実効性が乏しくて中国にお目こぼしされてる様な状況だった。


 あと目立ったニュースだと、倭国成立のタイミングに併せて、愛子さんがそのお相手の超有名韓国人というか真羅人アイドルと結婚して、その人が親善大使的に倭国に帰化するみたいな噂も、日本や真羅や世界中のファンを騒がせてたりした。自分もシゲハさんもそのアイドルやグループのファンでは無かったのでどーでも良い類としてスルーしてたけど、倭国と真羅が近付くなら、そこに何とか東南アジア諸国もって動きはあるらしい、んだけどこれもまた噂ではっきりしなかった。


 そんな風に、シゲハさんのお腹が膨らみ続ける日々は過ぎていき、出産予定日まで一ヶ月余りを残すのみとなった。



彼らはまた出てくるかも。(内容ちょっと後から修正するかも、です)

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