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20.2025/4/3 国民投票の結果

2025/4/3

世田谷重光


 俺の名は世田谷重光(せたがや しげみつ)。29歳、公務員。元世田谷区っていうか、今でも世田谷区だけど、区役所の職員。

 で、当然の様に、国民投票の雑用ヘルプに駆り出された。くそ。

 選管に関わってた人は意外にも不正に関わってはいなかったらしく、東京都が皇都になるくらいまでに処分されたのは全体の一割もいなかったらしい。それが多いか少ないかは、例えば上級国家公務員の財務省官僚とかの数割が処刑されたのと比較してくれ。


 テロに逢うかもってのは杞憂でも何でもなくて、この投票を成立させなければ天皇制は廃止されないかもって勘違いした連中が、あちこちの投票所を襲おうとした。全員漏れなく射殺されたり逮捕されたりしたけど。ちなみに、最低投票率なんて設定されてなかったから、ぶっちゃけ忠臣組の特級組員だけが投票したってだけで結果は出てたんだけどね。意外だけど、連中はそんな事はしなかった。


 12.7以前までの国政選挙とかの投票時と同じ様にボランティアの皆さんは集まって、自分よりもよっぽど手際良く諸々進めてくれた。

 ただ、今までは投票用紙というか郵送された引き替え用紙だったのと違って、投票する人の腕輪にバーコードリーダーみたいな機械を当てて、投票資格を持ってる人なのかどうか確認してた。自分が回された投票所でも、数十人に一人くらいは偽物の腕輪で投票しようとした奴が入り込んでて、忠臣組の警備員にしょっぴかれていってた。


 時折の休憩時間を挟みつつ、淡々と投票予定時間は過ぎていき、やがて、タイムアップを迎えた。

 電子機器による投票行為なのもあって、あっけないくらいに、結果は出た。それでも何度もチェックし直しても、投票締め切りの夜8時の一時間後に、結果は発表された。


 俺はその発表を、こういう時くらいはいいだろと居酒屋の一角に上司や同僚達と陣取り、テレビ画面を見据えて待ち構えた。


 摂政であるじいさん、国塚明宏は、あっさりと告げた。

「本日行われた投票結果を知らせる。15歳以上の一般組員以上の組員の間で投票され、天皇制継続に投じられたのは、3969万6178票。廃止に投じられたのは4131万5729票。従って、神国日本において、天皇制は廃止される事になった」


 居酒屋中が、しんと静まってしまった。


「神国日本はおそらく一年以内に、新憲法を発布する。その発布された時点をもって、現天皇達皇室はその身分を失う。以後は一般市民として扱われる事になるが、その身柄は解放されない。

 理由はいわずもがなだが、皇居から解放された皇族を拉致し、復位あるいは皇位継承をしたと宣言させ、新たな国主として祭り上げる輩が全国に続出するだろうからだ。

 なお、投票と集計は電子的に行われた為、一切の不正は行われていない。一般組員名簿と連動しているので、二重投票などの不正行為が介在していた可能性は無い。組員の等級で投票の重みを変える事もしていない。有記名投票とも言える為、数十年後に投票結果を公表するかも知れない。

 ただし、今公表する事はしない。天皇制継続に投票した者達が、廃止に投票した者達に危害を加える可能性が高いからだ。

 各大連、連、世代別、性別の投票結果などの詳細は、忠臣組公式サイトや、各報道機関を通じて共有されるだろう。

 天皇制継続に投票した者達は特に、短慮を起こさないように。上皇はまさにそういった犠牲を避ける為に今回の投票を願い、実現させたのだから。あなた達が言葉を理解し、自分の願いよりも天皇家自身の願いをより大切に思えるのなら、決してその命を儚く散らさないように。

 我々神国日本は、例えそれが組員であれ、必要な処置を施す。主権者とか有権者といった耳触りの良い言葉は過去の遺物でしかない事を、努々忘れないように」


 まるでお通夜の会場になってしまったかのような会場で、幾組かが、無理矢理乾杯しだしたので、自分たちもそれに習って乾杯し、酒や肴を口にし始めた。


「しかし、やっぱ、廃止になったか・・・」

「予想してたよりは僅差でしたけどね」

「各メディアの事前予想では、僅差で継続賛成票が上回る筈だったんですけどね」

「忠臣組は組員名簿を公開はしてないからな。今までと同じ様な世論調査じゃ、実体は把握しきれてなかっただろ」

 その後も投票結果そのものについて、怪しいだろ云々という議論が一段落してから、女性職員の水瀬さんが言った。

「これから、皇室の方々、どうなってしまうんでしょうね。特に愛子様とか」

「継続された方が良かったのか、廃止された方が良かったのか、将来になってみないとわからんだろうからなぁ」

「でも、少なくともこれで、誰かと強制的に結婚させられる事は無くなった筈ですよね?」

「まぁ、たぶんね。水瀬さんは、その理由で廃止に投票したの?」

「黙秘します。明らかにすると、絡んできそうな人、少なからずいそうですから」


 俺はちらっと店内を見渡してみて、ごもっとも、とつぶやいた。納得いかねぇ!とか、忠臣組なんてぶっつぶしてやらぁ!とか、意気を上げている連中が複数組いたし、酒が入る度にヒートアップしていってるようにも見えた。


「これで新憲法も制定されるのかな。自主憲法制定を党是にしていた政党は無くなってしまってるけど」

「天皇制が廃止された新憲法とか、彼らの想像の埒外でしたでしょうけどね」

「俺らの生活もどうなるんでしょうかねぇ。宮内庁の職員でもないから、新憲法制定されたらいきなりリストラなんて事にもならないでしょうけど」

「はは、確かに」


 なんて、ここまでは平穏な会話が続いていたのだけど、摂政の発表の言葉を聞いてから、ずっと黙り込んでいた新人に近い最若手の一人が叫んだ。


「どうして、どうして皆さんそんな平然としてるんですかっ!?天皇制が、廃止されるって発表されたんですよ?!」


 彼の先輩に当たる俺らは、そうは言ってもなぁとあきらめる事を知ってるので、なあなあでなだめようとしたら、それより先に、近くのテーブルにいた見知らぬ男性四人組が乱入してきてしまった。二人は腕輪をしてない非組員、一人は準組員、一人は中級組員だった。構成からも雰囲気からも、まっとうそうな印象は受けなかった。


「にいちゃん、若ぇのにわかってるじゃねぇか!」

「だよなだよな~!これじゃ忠臣組なんてのも看板詐欺だってのが確定しちまったよな~!?」

「そうすっよね?なんで皆さん落ち着いてられるのか、自分にはわけわからないっす!」

 新人の片岡君は、彼にとっても知り合いでもない筈の連中といきなり意気投合してしまった。

 そいつらはうちらの腕輪を見て、

「おおぅ、これはこれはお堅い役所の公務員の皆さんみたいだぞ。みんな、失礼は働くなよ」

 中級の奴が、気を回してくれたぽいけど、まだ気は抜けない。

「わかってますよ、兄貴。でもぉ~、忠臣組に本気で尻尾振ってるのか、それとも仕方なく従ってるのかくらいはぁ~、聞いておきたいな~?!」

 顔を赤くしてすでに酔っぱらってる非組員の奴が絡んできた。

 同僚達の中ですばやく目配せして、課長扱いの綿貫さんが声を上げてくれた。

「まあまあ、そういうのは各自の心の中に閉まっておくべきじゃないですか?摂政もさっき言ってたじゃないですか。短慮を起こさないようにと」

「たんりょお?なんかむっずかしい言葉使ってますね~?!俺は頭悪いんでわかんないっすわー!」

 柄が悪そうな非組員の男が綿貫さんに絡みそうになったのを、中級組員が襟首を掴んで引き離してくれた。

「むかついたからって誰かに八つ当たりするなって事だよ。忠臣組がどれだけ短気な連中かは、お前も知ってるだろうが」

「あはは、短気なら俺もわかりますよー、さっすが兄貴、賢いー!」

 少しは話せる奴なのかと思ったら、何を思ったのか、椅子とグラスを持ってきて、水瀬さんの正面の位置に陣取ってしまった。兄貴と呼ぶ男の行動に習って、他の3人もその近くの席を固め、綿貫さんや他の同僚は止めようとしたのだが、片岡は喜んで迎えてしまったので、追い出せなくなってしまった。

「まあ、なんだ。残念会だな。男連中だけでしみったれた顔つきあわせてたらもっとしみったれて溜まるもんがもっと溜まっちまうが、綺麗どころさんがいたら違うかも知れねぇからな。酌くらいは出来るんだろ?」


 水瀬さんは固まりかけてた。助け船を出そうとしたけど、その前に彼女は自分で断りを入れた。


「そういうのがお望みなら、そういうお店へどうぞ。私はそういうのではありませんから」

「おぉ、気が強い女は嫌いじゃねぇぞ?落とした時がもっと楽しめっからなぁ!」

 中級の男も、その取り巻きも、下卑た笑い声を上げた。

 中級の男は、腰を浮かした綿貫さん達に自分の腕輪を見せつけながら言った。

「公僕の地位は、一般組員以上、中級組員未満て扱いだろ。その業務に支障が生じるような場合は、上位の組員からの要求をはねつける事が許されてたりもするが、そうでない場合は・・・」

 そいつは、テーブル越しに水瀬さんの腕を取って、その腕輪のインターフェイスに、自分の腕から外した腕輪のインターフェイスを押しつけた。

「お、やっぱ当たりだったか。お前、誰にも所有されてないだろ。お前を俺は予約した。俺に付き合えよ。悪い様にはしないから」

 げへへぐひひとか擬音が付きそうな笑顔を浮かべてる手下共の様子からは、とてもそうは思えなかった。ので、男の手と水瀬さんの手を引きはがした。

「あんたなぁ、いい加減にしろよ」

「あぁ、下っ端は引っ込んでろよ」

「兄貴は今その女と話し付けてるとこなんだよ。邪魔すんじゃねぇよ」

 綿貫さん他の同僚達も立ち上がって、手下共と口論し始めてたけど、俺は水瀬さんに腕を引かれた。

 何事かと思ったら、彼女は外した腕輪のインターフェイスを、俺の腕輪のインターフェイスに押し付け、中級の腕輪の男に向かって言った。

「あなたのお申し出は丁重にお断りしました。お引き取り頂けませんか?」

 そいつは、水瀬さんと俺をねめつけると、ドスを効かせた声で脅してきた。

「そいつはお前の婚約者でも恋人でも何でも無いんだろうが。小手先の手段で逃れられるとでも思ってるのか?」

「ええ、もちろん」

 水瀬さんは業務用のタブレットを鞄から取り出して、画面を操作しながら窓口で応対するような口調で説明した。

「今日の投票所での執務中でも、普段の業務中でも、あなたと同じ様な手口で関係を強要してくる方がいないとでも思ってるんですか?ああ、答えなくていいです。

 で、あなたは、矢口通やぐち とおる。何度か逮捕された事のある、いわゆるチンピラですね。現在の職業も不定。どうやって中級の奉納義務を満たしているかはここでは不問にしておきましょう。

 ただ、あなたやその手下連中に性的な嫌がらせやそれ以上の脅しをかけられたと皇都の各区役所に複数の届け出が出されています」

「そいつらはみんな、俺より階級が低かった。女は男より劣ってるんだから、俺の言う事を聞くのが当たり前だろうが」

「という手口ですよね。特に、特定の相手を登録していない女性を見つけストーカーまがいの行為までして標的とした女性を追い込んでいった。ここにいる手下連中を使って。

 あなたもその身分を使って、私のプライバシーの一部の情報を覗き見れるのでしょうけど、私は業務上、そういった人達からの相談窓口として寄せられた情報全てにアクセス出来るんです」


 水瀬さんは、にこりと笑ってみせた。矢口とかいう男もその手下も、もう下卑た笑いを浮かべていなかった。


「だ、だけど俺は、自分より身分の低い女しか狙ってこなかった!だから、罪にはならない筈だ!」

「そうやって捕まらないできたのかも知れませんが、頃合いでしょう」

 居酒屋の入り口から、男女混合の忠臣組の実行部隊が姿を現すと、手下共は一斉に青ざめた。

「どうしてだ?!今夜はまだ何もしてねぇだろうが!」

「摂政が言ってませんでした? "我々神国日本は、例えそれが組員であれ、必要な処置を施す”って。今夜は格別に、忠臣組が神経を尖らせてる事くらい、想像できなかったんですか?いつもより些細な事でも、処罰を下すかも知れないくらいに」


 すでに手下共は後ろ手に手錠をかけられていた。


「けど、俺は、お前に危害は加えてないし、業務も妨害してなかっただろ!」

「いいえ、私、怖かったです(・・・・・)。ね、先輩?助けてくれて、ありがとうございます」


 水瀬さんは、俺の肩に手をかけ、もう片方の手で目の端をこすってみせた。


「う、嘘泣きじゃねぇか!このアマァ!これで留置場に引っ張られたとしても、お前の顔と名前、勤め先は覚えたんだからな!」

「おおっとぉ。それは立派な恐喝だね。現行犯逮捕だ」

 実行部隊の女性が、ばちばち電気の火花?が飛んでる警棒を男の顔の前にかざしながら言った。もう一人のインテリぽい男が、矢口に告げた。

「公僕は、社会全体に仕える者だ。その公僕を恐喝し思い通りにしようなど、正気の沙汰とは思えない。報復行為を口にした事もあり、対象に近づけないよう、遠方に強制移転させられるだろう。これまでの余罪も込みで、強制労働くらいは課せられて、その間は身分凍結。その後の態度が改善してなければ、降格も有り得る。どうする?ここで我々相手に抵抗してみるかい?」


 チンピラとは装備も練度も段違いで、身分も自分と同等以上の存在に、矢口はがっくりとあきらめて、おとなしく引き立てられていった。


「残念。あそこで抵抗してくれれば、その場で降格とそれ以上の刑罰が課されてたかも知れなかったのに」

 飲み会はそれからしばらくして解散となり、俺は水瀬さんを最寄り駅まで送るよう皆から申しつけられてしまった。チンピラ連中を庇うようなそぶりを見せてた片岡は、綿貫さん他の有志によって別の店(二次会)へと連行されていた。

「そういった最終的なラインを踏み越えないだけの分別だけはあるから、チンピラでいられるんだろ」

「ヤクザなんて今やほとんど絶滅種ですし、ああいったチンピラも滅多に見ない感じになってるんですけどね。身分で関係強要しようとしてくる輩はいつだっていますけど」

「あー、そういえばさ、さっきのあれって」

「先輩って、フリーですよね?」

「まぁ、な。仮の彼氏という感じのお相手登録ってのにはつきあわされてたけど、先日そいつがめでたく本命と婚約できたらしくてな。

 で、フリーになったって知ったのは、職権乱用か?」

「失礼な。誰のでも見てる訳じゃないですよ?」

「やっぱり職権乱用じゃねぇか」

「お嫌でした?もしそうなら、取り消しますけど」

「あー・・・」


 じっと上目遣いで見つめてくるのはあざといと言えばあざとい。だが27歳で、かわいくて、さっきのチンピラとのやりとりでもわかる通り芯も強い。


「こんな流れで、というのはちょっと不服ではあるんですけど、ずっと先輩の事、いいかなぁと思ってたんですよ」

「そうなの?全然わからなかったし、そういったアプローチとかも無かったじゃん」

「形だけかどうかわからないけど、いちおうお相手も登録されてましたからね」

「でも、どうして俺だったんだ?似たようなのくらい、周りにいくらでもいただろ。俺よかいいとこ出てる奴とかさ」

「そういう人達から声がかからなかった訳じゃないですし、さっきのチンピラ並とは言いませんけど、女は男の物になって当たり前。俺が君を守ってやるよって意識がにじみ出てるのが多くて。先輩は、そういうの無かったから」

「付き合ってみたら、そういうの出てくるかも知れないぞ?」

「じゃあ、付き合うって事でいいんですね?わぁ、嬉しい!これからよろしくお願いしますね!」

「あ、ああ。よろしく」

「じゃあ、早速ですけど、うちに来ますか?」

「積極的だなオイ!なんかイメージ違ってきてる」

「おとなしめなのは地ですよ。でも、先輩がフリーだと知れ渡ると、他の子達も動き出すかも知れないので。で、どうします?」

「今のとこ、優先権は水瀬さんに渡したままにしておくから、焦らなくていいよ」

「えー。じゃあ、手形を下さい」

「手形って?」

「ちゅーして下さい」

「まぁ、それくらいなら」


 駅の券売機コーナーの脇のちょっと暗がりのところに移動して、ちゅっ、という感じで済ませた。


「むぅ。先輩、思ってたより、慣れてないですか?もっとこう、初々しい感じがしてたんですが」

「それはまぁ、お互い様って事にしとけ」

「それはそうですね。じゃ、また明日です!」

「ああ、またな」

 ちゃんと個人用携帯のメアドを交換してから別れ、水瀬里香と俺は付き合う事になったらしい。


 アメリカでも中国でも欧州でも世界中あちこちが激動してたけど、日本でも国民投票の結果に不満を持ったり受け入れられない連中がいろいろ騒ぎを起こしてて、区役所にもそういう類が殴り込んでくるような事まであったりした。

 そんな日々を送りながらでも、俺と水瀬はちゃんと付き合いを深め、そういう関係になるまで一月はかからなかった。


 で、国民投票から約3ヶ月後、目白押しな国際ニュースに負けない核爆弾級のニュースが国内を駆けめぐった。

「元皇太女、愛子内親王、韓国人気グループメンバーと婚約か?!、ってこれマジなんかい?」

「どうやら、マジっぽいよ。婚約っていうか、今はまだお見合いしたくらいの段階らしいけど」

「マジか・・・」

「世界的な人気グループのメンバーの中でも、一、二を争うくらいの人だから、ファンからも賛否両論ていうか、鏡の前に立てとか身の程を知れというかで、どっちかっていうとはっきり叩かれてる感じだね」

「詳しいな」

「あはは。私もそのグループ好きだから。でもま、これで、廃止に投票した甲斐があったって感じかな」

「うーん。でもこれ、廃止って決まってからだったから、まだマシな状態だろうけど、天皇制継続だったら、日本から韓国にどうにかして渡ってでもそいつをどうにかしようとした奴らが続出しただろうな」

「12.7から渡航規制かかったままだから、その心配は要らなそうだけどね。でも、愛子様っていうか愛子さんはまだ首輪したままだから、普通にデートとか無理そうだけどね」

「天皇制が廃止された後でも、皇族って身分はある意味そのままだからな~。忠臣組もそこら辺の責任は投げ出さないだろ。日本を訪れるその相手に何かあったら、即国際問題だろうし」

「そうそう。そのグループね、以前よりもずっと注目浴びて来てるんだよ。世界中で」

「中国が無理を押し通して欧米とかでアジア系排斥運動が強まり続けてるのにか?」

「だからだよ。コンサートツアーとかは無理っぽくなってるけど、それでも積極的な発信とかは続けてるし、今、世界で一番ポジティブな発言力のあるアジア系有名人だと思うよ、彼らは」

「なるほど。その中の一人と、愛子様がねぇ・・・。政治的に利用されそうだなぁ」

「そこら辺はお互いわかってて割り切るでしょ。次期天皇になる必要は無くなったからこそ出来る事もあるだろうし」

「例えば?」

「具体的には、まだわからないけど、将来的に、彼の国で生活し始めるとかね」

「今すぐは無理でも、もし結婚まで出来たとしたら、あり得なくはないのか?今の皇居並みに厳重なセキュリティは必要とされるだろうけど」

「うん。まぁ、暖かく見守ってあげようよ。長い皇室の歴史の中で、ほとんど初めて自分の好きな人と結ばれるかも知れないんだし」

「そうだな」

「もし二人が結婚する事になったら、私たちも予定合わせるのも良いかも知れないね」

「まぁ、そうなったらな」

 初めて二人でした日の翌日には、婚約者登録を正式に交わしてたから、そうなるかどうかは完全な運任せだった。


 ただまぁ、国内もそうだけど、国際情勢は、一般庶民の想像を斜め上にぶっちぎるような展開が続いたので、愛子様とその相手とのラブロマンスの行方も、中国と欧米諸国のせめぎ合いも、神国日本の進路も、想像もつかない方向へとすっ飛んでいったのだった。


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