16.2024/10/2 とある非モテアラサーに起こった8.14後の変化
ちょっとえっちぃシーンがある章です。
たぶんこの二人は、後でまた出てくると思われます。
2024/10/2
佐々木充
俺の名前は、佐々木充、34才。年齢=彼女いない歴。金に本格的に困った事は無いから何度かそういうお店を利用したので物理的には童貞ではない。心理的にとか、真実として童貞ではないかと言われればそうかも知れない。他人からの評価はどうであれ、死ぬまでには彼女欲しいと願ってる内に、12.7が起こった。
正直、思ったさ。全国数千万(誇張あり)の非モテ男子と同じく、これで俺にも春が、というか彼女というかお相手が出来るんじゃね!?と。
甘かった。確かに、たーしーかーに、カップルの数はほぼ全世代で激増したらしい。フリーのフツメンでさえ争奪戦は激しかったらしい。ははっ。裏山裏山。
別にひきこもりではなく、働いてないわけじゃない。極端なコミュ症でもないし、暴力癖があるとかでも、適齢期の女性を見ると鼻息を荒くして突進していくわけでもない。
ただ単に、ひたすらに、モテなかった。
別に不潔にしてたわけじゃない。中肉中背というには難しい肥満体。それだけならたぶんどうにかなったけど、俺の溢れ出るオタク愛が、リアル女性達を遠去けてしまっていた。
スマホカバーもスマホの待ち受け画面も、何ならPCのデスクトップ画面も、自分のお気に入りアニメキャラで定期的にローテーションさせていた。
コロナでリモートワーク中心になってからは、Web会議でPCカメラに映り込む背景にはきっちり自己主張のある(ちゃんとオール年齢OKな)ポスターを貼り込んだり、画面ぎりぎりにお気に入りフィギュアを登場させたりしていた。(両肩の後ろに映り込む位置に飾ったら、さすがに複数人から注意され上司からも止めてくれと懇願されて、泣く泣く妥協した。以降は、俺だけカメラ無しの音声だけで良いと言われたけどそこは妥協しなかった。出来なかった)
そんな訳で、一応、一般組員でもあって、並以下程度の収入もある俺だけど、お相手は出来ないままだった。会社の人を含め、時々残念そうな目で見てくる女性達はいたけど、私服で外出する時はもっとオタク趣味の露出は上がるし(ちゃんとレーティングは守っています)、スーツで仕事に出かける時も会社につくまではオタク趣味柄なネクタイを締め、鞄にもキャラグッズが複数ついていた。
仕方ないじゃないか。愛してるんだから。
ずっと独り身の俺を支えててくれたのは、この世界には存在しない二次元の女性達だった。物理的な女性達ではない(フィギュアは除く)。
自分はネトウヨでは無かった。かといってサヨとかフェミとかでも無かった。趣味に没頭していればそんなわき目を振る余裕などどこにも無かった。
同類の筈の非モテ男性達がフェミとかにかみついてる姿はSNSで頻繁に見てはいたが、叩いてて彼女が出来るわけないじゃん、てくらいは分かってた。擁護してても彼女が出来るわけじゃないことも。モテる奴はモテる。モテない奴はモテない。それだけが絶対の真実だった。
ただ、かつての同士達の内でも脱落者は相次いで寂しい思いはしていた。彼女というより伴侶が出来てしまって、避妊出来ないから子供も出来てしまって、趣味に走る金が全く無くなってしまったという悲鳴で彼らのつぶやきは満ちあふれていた。
まだその罠に掴まっていない同士達は志を堅くした。俺達だけは、掴まらずに二次元愛を貫こうと。自分達を支え続けてくれた彼女達を裏切るまいと。
忠臣組は、いろいろな物を廃止したけど、ソシャゲとかガチャは禁止しなかった。パチスロとか競馬みたいな破産者が出るような公的ギャンブルには、借金が無い事やある程度の貯金がある人だけが(一定のセーブをかけられた上で)楽しむように法的制限が課せられるようになったけど、ガチャはまだ大丈夫だった。企業側もいつ制限がかかるか冷や冷やしながら続けているらしい。
さて、そんな俺でも、死にたくないな、という願いと同じくらいに、彼女が欲しいな、とは思い続けていた。妄想癖に駆られた奴でなければ、普段から死に怯えて暮らす事は無いだろう。同じ様なものだ。
忠臣組の世になって男性は上位の男性からの暴力に晒されやすくもなっていたけど、自分の二次元愛の加護のお陰か、自分は襲われた事は無かった。なんかそういう奴にまで視線をそらされた時は、胸に形容しがたい何かが突き刺さった事もあったけど、愛は、負けない。
で、8.14。普段はニュースを気にしない自分でも、これでハリウッド中心のコンテンツが、中華中心のコンテンツに切り替わっていくなら、中国語を勉強する必要があるのでは?くらいに真剣に捉えていた。美少女アニメは心の食べ物、いや酸素です。
核戦争が起こったと知った時にはもう手遅れか何も出来る事は無いだろうから、気にしないようにはしてたけど、アメリカは、意外な事に、ソランプ元大統領の方が先に復讐の為の戦争は望まないと発表し、インドの新しい国連常任理事国入りにも賛同した。
ただ、提案の他の二つに対しては、どちらかと言えば責任は自分達の側ではなく疑われて仕方ない事をしている中国側にあるとは思うものの、オーストラリア海軍にしたような事をアメリカに対してするなら核戦争も辞さないと脅しをかけた。
実際には虚勢だったとしても、もう半分のアメリカの声明がまだだったせいか、中国は反応をすぐには見せなかった。
アメリカ東西両岸の州が多い民主党系のFDAは、中国の驚異により晒されているとも言えたせいか、ソランプの声明の後も揉めに揉めた。
アメリカの政治になんてこれっぽっちも興味の無い自分がなぜそれだけ把握してるかというと、SNSのTLに挟まる広告バナーとか動画サイトの広告映像とかで、強制的に情報を仕入れさせられてただけだ。
で、8.14から一ヶ月後、ドロシー・ペロス大統領代行は声明を発表した。声明の内容によっては核戦争まで始まり兼ねないので、自分も一応見た。
15分くらいに及ぶ内容を要約すると、
「8.14はかつてのパールハーバー以上に卑怯な攻撃でとても容認出来るものではないが、それでも、アメリカ合衆国は、第三次世界大戦も核戦争も望んでいない。
8.14に参加して犠牲になった将兵の命を軽んじるつもりはないが、それ以上に生きて中国に囚われている将兵の命もまた無駄にしてはならない。兵器は再生産出来るが、人命は再生産出来ない。
インドの常任理事国入りには基本的に賛同しよう。アジア系の排斥運動には取り締まりを強化しよう。中国がCOVID-19を広めたというソランプ元大統領の言説にはこれまで通り反対の態度を取ろう。
だが、それらの判断は、これからの中国政府の行動を何でも看過するという妥協を意味しない。我々は今回の不意打ちへの即時の報復を我慢する代わりに、もし、次に何かあった場合は、核ミサイルの発射ボタンに手をかけてそのまま押し込んでしまうかも知れない。その衝動はかつてないほどに強まってしまっている。政府内だけでなく、一般市民達の間でも。
こらえているのは、それが世界全体にとって破滅をもたらす行為だと理解しているからだ。
中国の影響力は、今回の騙し討ちによる勝利でかつてない程に高まっただろう。だが覚えておいて欲しい。我々の手はすでに核ミサイルの発射ボタンにかけられているという事を」
中国政府からの反応はその日の夜の内にあった。なぜ見たかというと、新作アニメ番組が放映される筈の枠が緊急ニュースでつぶされてしまったからだ!ぐあああああっ!
ともあれ、中国政府からの回答はこんな感じだった。
「分裂したアメリカ政府のどちらもが、報復や戦争を望んでいないという回答を選んだ事は評価する。
インドの常任理事国入りに関しては早々に国連で手続きを進める。他の二つの事項については、経過観察としよう。処置方針はすでに伝えた通りだ。
あなた方が核ミサイルのボタンに手をかけ続けるというのなら、8.14で我々の捕虜になった誰かはいつまでも母国へ帰国を許されないだろう。
まだあなた方白人は思い上がっている。アジア系やその他非白人は白人以下の存在だと。我々の生殺与奪の権利をあなた達だけが握っていると。
いいかげんにして欲しい。あなた達は8.14から何も学ばなかったのか?
あなた達は民主主義の守り手を自認し、基本的人権はどんな人種のどんな人々にも平等に与えられているという認識の持ち主ではなかったのだろうか?
あなた方のその思い上がりは、インドが常任理事国入りした後に、嫌が応にも是正されていく事になるだろう」
ま、とりあえず世界的な破滅はまた回避されたんだよな?と確認した俺は、コンビニへと出かけた。新作アニメ番組を見れなかった憤りを、コンビニジャンクで鎮める必要があったのだ。
酒は飲まないので炭酸飲料とスナックや肉まんチーズまんカレーまんその他諸々を買い込んだ、帰り。
行きには降ってなかった雨が降り始めてたので、行きとは違う近道を選んで帰る事にした。
そこは細い道が入り組み、しかも途中廃屋の庭をつっきるという荒技が混じる為に素人にはお勧めできないが、そのショートカットをしないと数百メートルは隣を走る通りに出られないという構図になっているので、軽く五分は違ってきてしまうのだ。
「深夜じゃない。まだ明かりは残ってる。だいじょうぶ。何も出ない。出ないったら出ない」
とか自分に言い聞かせながら入り組んだ細い路地を辿り、廃屋の門を開けて入り込む。さらに裏庭に回り込んで、生け垣に隠れた裏門から・・・。と思ってたら、建物と生け垣の隙間に、誰かが倒れるようによりかかっていた。
危うく悲鳴を上げかけてしまったけど、何とかこらえて、じっと見つめる。うん、実在女性だ。年の頃は、たぶん俺より少し若いくらい?暗くて良く見えないし、ちょっと背が高くてガタイも良いけど、たぶんちょっとした美人さん。
髭は剃ってないけど、もしかしてこれは拾い物?!と心躍ってしまいながら、ファンタジーと現実の区別はつける紳士としての嗜みを思い出し、声をかけてみた。
「あのー、だいじょぶですか?けがされてます?そのままだと風邪引いちゃいますよ?」
女性は、半分閉じていた瞳を俺に向けてうっすらと開けて、俺を見た。Tシャツに大きく描かれた美少女アニメキャラの姿を視線はほぼ素通りして、俺の腕輪の有無を確かめて、言った。
「一般組員か。私を捕まえに来たのか?」
「いや何言ってるか分からないんですけど。とりあえず救急車呼んでおきましょうか?こんなオタクと一緒にいたくないでしょうし」
「・・・救急車は、呼ぶな」
「どうして?ひょっとして「聞くな」はい」
ヤクザの抗争にでも巻き込まれたんですか?とか冗談を言って空気を和ませようとしたけど、そんな雰囲気では無いらしい。というか雰囲気が怖い。(ちなみにヤクザの大半は、政治の腐敗に関わってたのでごく早期に壊滅させられてるので、上記の冗句は冗句として成立するのであった)
ともあれ。現実への対応が先だ。
「じゃあ、このままそっとしておけばいいですか?」
女性は、俺をじっと見つめたまま思案していた。
すでにこの場から安全に離脱する事を優先課題に挙げていた自分は提案した。
「そうだ。お腹減ってません?肉まんあんまんチーズまんカレーまん、どれがお好きですか?」
「なぜ饅頭ばかりなのだ?」
「好きだから?」
女性はまた俺の身なりとかをじろじろと見つめてから言った。
「チーズまん、が欲しい。もらえるだろうか?」
「ええ、どうぞどうぞ。ここ廃屋で誰も住んでないからしばらく休んでいくなら誰も気付かないし文句も言わないでしょうけど、入り込めないし、入り込んで生活し始めたら近所の人にはばれちゃうでしょうね」
俺はなぜか伝えなくても良い筈の情報を並べ立てつつ、チーズまんを彼女の手に押しつけ、
「じゃ、俺は見なければいけないアニメ作品が待ってるんで、帰りますね!」
身を翻した俺の手を、彼女は掴んで留めた。手を掴まれた事にも驚いたけど、振り払おうとしても、彼女の方がずっと力が強くて振りほどけなかった。
彼女は片手で俺を引き留めながら、もう片手でチーズまんを三口くらいで平らげると、立ち上がって尋ねてきた。
「お前、名前は?」
「本名、言わないとだめですか?」
「とりあえず、呼べれば何でもかまわないが」
「じゃあミツルで」
「私は、そうだな、シゲハで」
「シゲハさん、すてきな名前ですね。手を放していただけるともっとすてきなんですが」
「ミツルは、忠臣組をどう思っている?」
「正直、どうでも」
「どうでもとは、どういう事だ?」
「ぼくのオタク趣味とか、二次元嫁への愛を妨げてくるような存在で無ければ、どうでもいいので。助かりましたよ。強制結婚させられるかと思ってましたしね」
「つまり、独り身なのか?」
「だったら、どうするって言うんですか?」
また黙り込んで俺をじっと観察するシゲハさんは言った。
「正直に言おう。かくまって欲しい」
「えーと、やっかい事に巻き込まれるのはごめんなさいなんですが」
「ある程度ならそちらの要望を飲もう」
「やっかい事があるのは否定しないんだ!?」
「まあな。嘘はいずればれる。ともあれ、家はそう遠くないのだろう?風邪も引きたくない。家に連れ込んでくれないだろうか?」
「こ、これは絶滅した筈のおしかけ女房?」
「とりあえずの身分として、そうなる事もやぶさかではないが」
「いえ、ぼくが、拒否します」
「どうして?こう見えてもそれなりに胸もあったりするぞ?」
握ったままの手を胸に押しつけられた。やーらかい。というか厚めの服の上からだとあんまわからない。
「俺の家は、俺の二次元嫁達との聖域なんです。そこにリアル女性を連れ込む余地は無いんです」
「そこには干渉しないと誓おう。それでどうだ?」
「どうだじゃないですよ!拒否するって言ってるじゃないですか?」
「仕方ないな。一回で一晩でどうだろう?」
「え・・と・・、その道のプロの人?だったら、もっと普通に客取って下さい。具体的には俺以外の誰かで!」
また手を振りほどこうとしたら、ぐいっと腕を引かれて体を回されて、壁に押しつけられて、顔の脇にどんと手を、ってこれ伝説の・・・?!
とか思ってたら彼女のもう片方の手が俺の顎を掴んで、強引にキスされた。
舌も入れられた。絡められたり吸われたりで、商売女性でもやってくれないから、これは実質的にファーストキスなのでは?いや、定義的にはレイプに分類されるのではと脳内が混乱している内に、顎にかかっていた手はいつの間にかむくむくしだしたマイサンに向かっていって・・・
シゲハさんの両肩を突き飛ばして、何とか呼吸を取り戻した。
「その気になりかけていた筈なのに、怖くなったのか?」
「いやあのそういう趣味の人も世の中にはたくさんいるでしょうから、そういう人を見つけて幸せになってくださいお願いしますからっ!」
「いや、お前がいい。とはいえ、夜の雨にさらされながらというのは二人の最初にはふさわしくないな」
シゲハさんは、俺の手首を掴んで歩き出すと廃屋裏口の扉に手をかけ、何度か押したり引いたりするだけで、ばきゃっ、と鍵の部分を破壊して開いてしまった。
「とりあえず、前払い分だ」
「いーやー!誰かたすけ」
半分本気で叫びかけてたのに、口を唇で塞がれたまま廃屋に連れ込まれ、そこで・・・・・。蹂躙された、というのが正しいのかな・・・。
事後。冷えてしまった饅頭をぱくついてるシゲハさんに尋ねた。
「避妊、しないで良かったんですか?」
「これでお前は私から離れられなくなったからな」
「・・・妊娠してたらそうかも知れませんけど、シゲハさん、腕輪してませんよね?首輪はしてないから奴隷じゃないでしょうけど、非組員から望まれぬ性行為を強要されたり、自分より下位の女性から強要された場合は、男性だって拒否権があるんです。ましてあなたは、忠臣組になんか後ろ暗い事があるんですよね?」
シゲハさんは喉が乾いたのか、俺のコンビニ袋を漁って、炭酸飲料を半分ほど飲み干すと、答えてくれた。
「ある。詳細は、ミツルの部屋に私を置いてくれたら話そう」
「こだわりますね。追われてるんでしょう?俺は巻き添えで逮捕されたくないんですよ」
「私は、そうだな。微妙な立場だ。本気で活動に関わっていたと言えなくもないが、肝心な部分からは外されていた」
「どうして?」
「どうしたら私をお前の家に置いてもらえる?」
「嫌です。俺が忠臣組に掴まったら、嫁達を寂しがらせる事になるじゃないですか!」
むぅぅ、と唸るようにしばし考え込んだシゲハさんは、俺のTシャツを裸の上半身に着込むと、しなを作り、両手を猫耳の用に頭の左右に添えて言った。
「し、仕方ないにゃら。ミツルはシゲハを好きにしていいにゃら。特別にゃんだからにゃら!」
その顔の角度や視線の向き、口調の強弱のつけかたなど、Tシャツに描かれた猫耳美少女キャラのミケラ(通称にゃら娘)そのままだった。
意外過ぎて心臓を撃ち抜かれた。
十数秒はたぶん余裕で停止した後、俺は叫んでいた。
「な、なんでシゲハさんが?!まさかアニメ『愛と魔法と裏切りの猫耳魔法少女物語にゃらんです』視てたんですか!?」
「知・り・た・い・にゃ・ら~ん?」
「知りたいです!もちろん!さっきのは第三期第二話の主人公とのえっちいシーンになりかけの場面の台詞。それとこれは第一期第十一話の犬耳っ娘ヒロイン、バウリンとの間の台詞!シゲハさん、あなたって人はいったい?」
「続きは」
「はい、俺の家ですね!ご案内しますっ!」
俺は全国津々浦々に住む会った事も無い同士達に心の中で詫びながら、シゲハさんを自宅へと案内した。
さすがにポスターやフィギュアの群の総お出迎えには引かれると思ったけれど、それらをざっと見渡してから、風呂を入れろと要求。従ったら、二人で一緒に入る事に。いや、うれし・・・。こほん。それはさておき。
二人で狭い浴槽に浸かりながら、まじめな口調とにゃらんとか口調を使い分けながら、シゲハさんは話してくれた。
シゲハさんは中学生くらいから裁縫を趣味にしていたらしい。その趣味が高じてレイヤー衣装などを仕立てるようになり、女子高生の頃にはイベントにも出てたりしたんだそうな。
だけど自衛官な両親に育てられた事もあって、防衛大学へ進学した頃には趣味はいったんは封印。したけど、防衛大在学中も、卒業して自衛隊に入ってからも、アニメ鑑賞は息抜きに続けてたそうな。
そこで深い仲といっていい相手もいたそうなんだけど、12.7で全てが狂ってしまった。そんなバカなと思う内にも日本国民は忠臣組と神国日本という存在を受け入れてしまった。自分達が守ってきたのは何だったのかと自問し、自衛隊を去る人は少なくなかったらしい。
そんな中で、相手の方は自衛隊を去り、かつての民主主義国家日本を取り戻そうとする集団に加わり、その機会を伺い続けていたらしい。シゲハさんは自衛隊に残り、情報を横流ししていたそうだ。ハッキングとか、機密情報を盗み出して、とかまではしていなかったので、シゲハさん曰く、グレーゾーンだけど重罪にはならないんじゃない?くらいの程度だったらしい。銃などの物品横流しまでしようとしたら、実際そうしようとした仲間はすぐに掴まって処刑されたらしく、その相手からも掴まるような行為は慎むよう言われてたらしい。シゲハさんもその言いつけを守っていたらしい。
そんな集団も、たいした成果をあげられない内に月日が経つ毎に忠臣組の神国日本は安定度を増していってしまい、意見の対立が目立ち始めた。
その対立のトドメとなったのが、8.14。あれに神国日本が加わり、大きな損害を受けていればまだ望みは残った。だが実際には、中国とは対立しないという方針を打ち出した事により、元自衛隊な神国日本軍は一切の被害を免れてしまった。
これには、シゲハさんの様に自衛隊内部に残って暗に反乱勢力に協力している人達の間にも判断を翻す人が増えてしまったそうな。
「参加してれば、いや12.7以前の日本なら、参加は断れなかっただろう。甚大な被害を出し、人的にも数千から万以上の死者が出ていたかも知れない・・ぃ。
腐敗していた政権に不満を持っていた将兵も少なくなかった。鎖国という方針に不安を覚えていた者達の過半は、ん、神国日本の方針に賛同という立場に意見を変えてしまった。
あっ、だから、民主主義国家を取り戻したい者達、は、追いつめられてしまった・・んだ」
シゲハさんの声が、時々途切れたり上擦ったりするのは、俺に背中を預けてる彼女のおっぱいとかを俺の両手が揉んだりしてるから。いや、そうしていい、そうしろっていうから、そうですかと従っているだけだ。
だが、話の佳境にさしかかったところでさすがに手を止めて続きを待とうとした。んだけど、昂ぶってしまったシゲハさんに続きを求められて、ぬるくなった風呂から上がってベッドできちんとしてから、話の続きを聞いた。
「今のところも、忠臣組のアキレス腱は変わってはいない。皇居に囚われた皇室の方々だ」
「でも、助けようとするのは、真愛国者党が試して」
「失敗した。我々も結局、どうすれば解放できるのかわからないままだったが、それでも、皇居を占拠できれば、立場を逆転できるのではと考えた。そこにしか希望は無いと」
「そーいうの、負けフラグって言いません?」
「言うな。だがわかっていても、ヒトシは、ああ私の恋人だった男だ。あいつは、命をかけても守らなければならないものがあるんだと、やはり命を擲つ事を躊躇わなかった者達と、挑んだ。そして、帰って来なかった」
「皇居が占拠されたってニュース、無かったですよね」
「類似の志を持った者達を刺激しない為か、襲撃があった事すら報道されなかったよ・・・」
「えーと、つまり?俺はあなたの恋人の身代わりにされたんです?顔も体型もたぶんだけど全く似てないですよね?性格はもちろんの事」
「そうだな。何も似てない。そこがいいんだよ」
「でもどうして?」
「ミツルなら、外の世界の事に最低限以上の関心を払う事は無いだろう?そこに命をかけるような何かを見い出す事も、行動を起こす事も無いのだろう?」
「まあ、たぶんそうですね」
「私は・・・。シゲハは、つかれたにゃらん・・・」
ベッドの上。裸で俺に覆い被さりながら、俺の首もとにぐりぐりと頭をすりつけてきた。首もとに冷たい濡れたような感触があって、すすり泣く声が聞こえてきて、俺は彼女の髪や背中を撫でさすりながら言った。
「気が済むまで、ここにいてもいいですよ。まぁ、忠臣組の誰かが来たら、俺はテロには無関係とかシラを切り通させてもらいますけど」
「それで、いい。充分、にゃらん」
彼女が優しいキスをしてきて、唇を放してから、俺は言った。
「ただし、二人を支えきれるほど稼ぎがあるほどでも、ぎりぎり無くもないかもだけどやっぱり無いくらいなので、そこは覚えておいて下さい」
「だいじょぶにゃらん。指名手配とかがかかってないようにゃら、そのうち私も働くにゃらん。貯金も口座が凍結されてなければそこそこあるから、しばらくは厄介にならせてほしいにゃらん」
「でも、ATMを使って足取りを掴まれるとか、探偵ドラマとかでもありがちですよね?」
「数日は、このまま居させて欲しい。その後、試してみよう。追っ手がかかったままかどうか、それでわかると思う。かかってないようなら、それなりの普通の生活に戻れる、筈だ」
「はいはい。シゲハさん、そうなるといいですね」
「ああ、そうだな」
こうして、俺はテロリスト未満くらいの同居人を得てしまったのだった。
これからどうなるかは知ったこっちゃないけど、少なくとも翌朝とか翌日とかさらに翌日とかまで、玄関に忠臣組の人が訪れる事は無かった。
ほんと、どうなることやら。
この前の章とその前の章の番号が間違ってたので修正しました。(2021/4/11)




