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ぼくがアレイスターに魔術を教えてから一年。アレイスターはこの一年で天才と称される人間で十年、並の人間では百年もかかるほどの魔術の知識を修めた。もうぼくが教えることはほとんどなくなると、アレイスターはぼくの助手をやりたいと言い出した。それも、リリスのように研究結果をまとめる書類仕事ではなく、ぼくの研究に直接手伝うというのだ。ということで、アレイスターはぼくの助手となった。
だが、助手だって楽じゃない。
「ぎゃー!」
特別製の研究室の中で小規模な爆発が起こる。アレイスターもぼくも防御系の魔術礼装で身を守ったが、爆発でいくつかの実験器具や実験材料が壊れてしまった。実験器具は作り直さないといけないし、実験材料は希少なものだったのでまた採りにいかないといけない。
「お、お父様。また、失敗ですよ」
「アレイスター、たかだか五千四百九十六回目の失敗でくじけていたら前に進めないよ。それに、今日は五十回もの成功があったじゃないか」
「ええええ……」
「嫌ならやめてもいいんだよ?」
「いえ、それだけはしません」
うむ。決意は固いようだ。だが、疲労の色が見える。アレイスターは自分の才覚に頼っているところがあるから失敗がかなりこたえるのかもしれない。
ぼくはあるものを取り出す。ルビーのように赤いが、この色はむしろ血の色に近い。
「まさか、これは賢者の石!?」
「そう。永遠の寿命の鍵とも言える至宝さ」
だが、ぼくは金銀財宝にも等しい価値を持つそれを握り潰す。思わずアレイスターは声を上げる。
「ああ!?」
「足りない、足りないんだよアレイスター。こんなんじゃまだ足りない。たかだか永遠の寿命ごときじゃ足りない」
生命の探求を掲げるぼくですら生命の神秘を全て網羅できていない。自分の研究ですら完全ではないのだ。それ以外にもぼくの知りたいことはある。
だけど。
「確かにぼくは賢者の石によって人間としての限界を超え、生物としての限界にも到達しかけている。でも、所詮は生物の限界なんだ」
この世の全てを知るにはまだ手が届かない。
「それにね、アレイスター。魔術を教えるときに言ったじゃないか。あの地平線の向こうには何があるのか、それを知ろうとすることが知識欲の本質であり、魔術の鉄則である、ってさ。そのためには数回の失敗で諦めたらおしまいさ」
「はい!」
「うん、いい返事だ。さあ次の実験に取り掛かろう」




