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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第811堀:田舎発展物語 序

田舎発展物語 序



Side:ユキ



「娘はいつも通り元気そうですな」


裏庭で楽しそうにラビリスたちと話しているミコスを見つめながら、ジャーナ男爵がそう言う。


「やはり故郷ですからね」


俺も一緒にその光景を見ながら言葉を返す。

事実、ミコスは故郷に帰ってからずっとテンションが高めだったからな。

気合いれて綺麗な服も着ていたし。あれだな、故郷に錦を飾るというやつだ。


「戦争が起きて、魔術学徒も動員と聞いた時には肝を冷やしましたよ」

「……国として謝ることはできませんが、私個人としてお詫びいたします。学生であるご息女を危険な目に合わせることとなってしまい、王族として、国を代表するもののとして、恥ずべきことだと思っております」


そう言って頭を下げるのはキャリー姫だ。

ミコスの故郷に来てからずっと黙りっぱなしだったからなぜかとは思っていたが、その理由がこれか。

まあ、一学生に過ぎない娘さんを戦場に実際連れ出したとか、普通の親なら激怒すること間違いなしの話だ。

しかも、その原因は王宮の腐敗というかハイレ教のせいなんだが、国の統括である王家が緩んでいたからこそ起きたことであるとも言える。

こういう時は上は責任を取るっていうのが仕事になるんだよな。

とはいえ、あのような状況は稀すぎる例だろう。

それに、国家存亡の危機での学徒動員なんてのはよくある話だ。

そのことで、国を代表するお姫様が男爵相手に頭を下げるなんてことは普通はあり得ない。

だが、今回はそうもいかない。

このジャーナ領にウィード直通のゲートが置けるとなれば、今後ハイデンが侵攻を受けた際の防衛戦力の移動などに関して圧倒的なアドバンテージを得ることが出来るからな。

じゃあ、シーサイフォ王国が直に訪れた辺境伯に頼めばと考えるのが普通と思うが、そうなると、伝手が全くとはいわないが、ほぼ伝手のない相手に交渉することとなり、どれだけ大変か。

だから、ジャーナ男爵に快諾をもらえなければ、今後の活動にいろいろ支障がでるわけだ。

そういう背景もあって、お姫様が男爵に頭を下げるという事態になっている。

まあ、最悪無理やりというのもあるが、それだと結局辺境伯も出張ってくることになるからな。


さて、ジャーナ男爵は今まで終始俺たちの話を聞くのに徹していたが、答えは……。


「頭をお上げください。姫様のせいではありません。あの事件はまさに国家存亡の危機。我が娘もお国のためによく尽くしたということでしょう。それに、こうして外交官補佐という大役まで任せてくださっています。恩賞も十分に頂いております」

「そう言っていただけて何よりです」


ほっ。まずは第一関門は突破だな。

この男爵はミコスからはとーちゃんなどと気軽に呼ばれてはいるが、貴族としての立ち居振る舞いはしっかりしていて、感情を抑えることもちゃんとできる人のようだ。

まあ、俺たちが村を訪れたときは馬に乗って兵士たちを指揮していたから、それぐらいは日常的にやっているんだろう。

と、そんなことを考えていると、ジャーナ男爵の視線が俺に向く。


「そして、ミコスが外交を担当している国の王配でいらっしゃるユキ様でしたか。その彼の国に土地を貸し与えてほしいと……」


とーちゃんなどという気軽な呼ばれ方とは裏腹に、鍛え抜かれたイケメン中年といった感じの人だ。

ひげもちゃんと整えていて、貴族らしい印象はしっかりある。

逆にこの男性の娘があのミコスというのがちょっと信じられないぐらい、ちゃんとした貴族だ。


「ええ。信じられないかもしれませんが、ウィードという国の存在も、ゲートという技術も、いずれも真実なのです。それは、私が保証を致します」

「同じく、私、カミシロ家次女カグラも証人となります」

「私、フィンダール帝国第一王女スタシアも証人となりましょう」

「ハイレ教、ハイデン王都司祭代理、ウィード王都司祭エノラも証人となりましょう」


こうして、俺たちの存在を認めると、キャリー姫たちが改めて宣言をする。


「……はぁ。娘の言っていたことは冗談ではなかったのですね。いえ、姫様たちを疑うわけではありませんが、どうにも……」

「そのお気持ちはよくわかります。ですが残念ながら、先ほどミコスの言ったことは事実です」


ミコスがこの場にいないのは、ミコスが今までの経緯を面白おかしく誇張などを含めて話したせいだ。ただでさえ与太話や出まかせとしか思えないようなお話がさらに昇華し、まるでどこかの英雄譚のような夢物語へと変わってしまったため、その話を全く信じられなかったジャーナ男爵から追い出されたわけだ。

で、この宣言を聞いたジャーナ男爵がどんな判断をするのか、みんなの視線があつまる。


「……申し訳ないですが、私はいまだに姫様たちの仰ることが真実だとは思えません。ですがそれとは別に、土地を貸し出すことに関しては、住人たちの邪魔にならない場所を選んでくれるのであれば何も問題はありません。それに、貸し出す見返りとして物資の援助や開墾の手伝いなどもしてくれるとあれば、断る理由はありません」


ほっ、ジャーナ男爵の答えに安心する俺たち。

ここで断られようものなら、本当に難航する予測だったからな。


「とはいえ、労働力としての村人たちの貸し出しなどはできません。そこは申し訳ないのですがご了承ください。先のシーサイフォ王国が国境にやってきた件への対応ということで、辺境伯のほうから徴兵を受けて、現在働き手が少なくなっているのです」

「その件は私から辺境伯に話を付けますのでご安心ください。既にシーサイフォ王国と我がハイデンは同盟を組んでいる状態にありますので、シーサイフォ王国を警戒しての兵の配置など不要です。すぐに領民が戻れるように手配いたしましょう」

「ありがとうございます。皆喜ぶことでしょう」


お互い手出し無用を約束しているからな。

そういえば、結局シーサイフォ王国のハイデンへの復興支援はスコップを提供しただけである。実質的な救援活動はしておらず、それに対する直接的な見返りを得ることができなくなってしまっているが、それについては、ハイデンがウィードを紹介してくれたことと、シーサイフォ王国に当初の目的である魔術師を派遣するということで、目的を達成したことになっている。

まあ、レイク将軍としてもせっかく持ってきた支援物資をそのまま持ち帰っては兵士の士気にかかわるし、行軍も遅くなる。何より、支援に行ったのに手ぶらで戻ったと勘違いされてはトラブルの元だからな。

結局、ウィードへの報酬が出来高制になっているのには思うところがあるが、見ず知らずの国を最初から信用できるわけもないわな。


ま、各国の動きはともかく、ジャーナ領で俺たちウィードが土地を借りることを認められたのなら、人手の提供なんて不要なんだよな。

ゲートさえ設置できれば向こうから連れてこれるから。

ともあれ、ジャーナ男爵がお姫様の提案にお礼を言ったのと、ウィードへの土地の貸し出しを認めたということで、最初から躓くことは無くて何よりだ。


「それで、早速ではありますが、ここが良いとか、ここはダメだという場所はないか教えてほしいのですが、同行していただけますか?」

「ええ。村を紹介がてら提供できる土地がないか確認いたしましょう」


俺がそう言うとジャーナ男爵は素直に快諾してくれて、さっそく領内を見て回ることになる。

のどかな風景が目の前に広がるが、やっぱりというか、こんな片田舎でも徴兵は避けられないのか。

……結局辺境伯との交渉事が必要なのは面倒だな。

俺が顔を出さないようにしている間に、ジャーナ領民が素直に戻れればいいけどな。


「しかし、土地を貸し出すとは言いましたが、どれだけの土地が必要なのですか? 屋敷が立てられるほどでしょうか?」

「あー、なんといっていいのやら……」


飛行機が離発着できるだけの土地が欲しいって言ってもわからないよな。

どう説明したものかと、思い悩んでいると、交渉が一段落し、外に出たことで合流したミコスが代わりに口を開き……。


「とーちゃん。一応、ユキ先生の話聞いてたでしょう? ウィードとつながる予定なんだから、屋敷が一軒立つ程度の土地なんて全然足りないよ。ほら、丘向こうの原っぱのところとかが最適だよ」

「待て待て、あっちは大岩がいくつもあって、開墾するには手間がかかりすぎると言っていたのを忘れたのか?」

「だいじょーぶだって。ねえ、ユキ先生?」


そう言ってミコスがこちらに笑顔を向けてくる。

ミコスはダンジョン製作能力を知っているからな、どれだけ岩があってもこちらにとっては特に問題にならないのを理解している。

とはいえ、未だに困惑しているジャーナ男爵に現場を見もせずに問題ないですといってもアレだからな……。


「まあ、とりあえず見てからですね」

「それはそうですね。とはいえ、どうにかできるような土地とは思えないのですが……。まったく、ミコス。お客人たちに無駄足を踏ませるようなことを言うな。それと、お父様と呼べ」

「ふふーん。ミコスちゃんやユキ先生を疑っているようなとーちゃんはとーちゃんで十分だよ」

「はぁ。学院に行って、さらには戦争にまで経験したんだから、多少はまともになったかと思ったんだが……」

「あっはっは。ミコスちゃんはスーパーパワーアップをしているよ。それに気が付かないようじゃ、やっぱりとーちゃんで十分だよ。ねえ、カグラ?」

「はぁ、ミコスはもっとお父様を敬って大事にしなさい。さすがにぞんざいすぎるわよ。私の教育及び監督不行き届きで申し訳ありません。ジャーナ男爵」

「こちらこそ、なれなれしい娘で申し訳ない。そして、こんな娘の友人となって下さってありがとうございます」

「あれー? なんかミコスちゃんが何か悪いってことになってない?」


とまあ、本当に穏やかな会話をしつつ、貸出候補地にたどり着くと……。


「これは……なかなか使いづらい場所ですね」

「確かに。ここを使えるようにするには、大変な労力がいるわね」


スタシア殿下とエノラは目の前に広がるゴロゴロと大岩が転がる草原地帯を見てつぶやく。


「珍しいな。どこからこんなでかい岩がやってきたんだ?」


俺は辺りを見回しながら、近くの岩へと近寄る。


「向こうに見える岩山から来たんじゃろう」

「いやいや。どうやってこの場所まで来たかだよ」

「ふむ。そう言われると不思議じゃな。パッとみても100は超えておる。しかも無造作に。人が切り出した岩にも見えぬ」


デリーユの言う様にその草原の向こうには確かに岩山が見えるが、あそこから大岩がここまで転がってくるはずもないからな。

その指摘にデリーユも首をかしげながら……。


「まあ、妾なら可能じゃが……」

「普通の人じゃ不可能だし、デリーユの言う通り切り出した岩にも見えないからな。自然に転がってきたのは確かなんだろう。どうやってそんなことになったかはわからないが」


そんなことを話していると、ミコスが服を引っ張って口を開く。


「えーっと、難しい話は分からないですけど、ユキ先生的には、この場所は使えそうですか?」

「ああ、ごめんな。つい不思議な空間に思わず考え事をしてた」


こういうところはタイゾウさんとかに聞くのが一番だな。

とりあえず、土地としては、岩は特に問題にならない。

あとはどこまで使っていいかだな。


「ジャーナ男爵。ここからどれほどの範囲を使っていいでしょうか?」

「えーと、本当にここをお使いになるのですか? ここを開墾しようとしても随分……」


俺の言葉に心配そうに答えるジャーナ男爵。

まあ、それが普通の反応だよな。

でも、説明して納得が得られるわけがないので、そのまま話を進める。


「ええ。そちらは何とかなります。こちらの希望といたしましては、見渡す限り貸してほしいのですが」

「ああ、いいところを探すということですね。それなら問題はありませんよ。この草原を探せばそれなりに広い使える土地もあるでしょうから」


そっちで勘違いしてくれたか。

まあ、許可をもらえたことに間違いない。あとは……。


「許可はもらえました。キャリー姫いいですか?」

「いささか勘違いをしているようですが、こればかりは仕方がありません。私が契約の証人、立ち合い人となります。ジャーナ男爵よろしいですか?」

「はい。構いません」


よし、キャリー姫も納得してくれたんだから、あとは契約書を作ってから、拠点を構築するだけだ。


「では、屋敷に戻って契約書を作成して署名していただきますが。ユキ様、作業を先にやっておいたほうがいいのではないですか?」

「いいんですか? 見た後で無しとか言ってもらっても困るんですが」

「とーちゃんはそんなことしないよ。ねえ、とーちゃん?」

「もちろん、たとえ口約束とはいえ、姫様の前で誓ったことは破りません。まあ、ミコスとの口約束ならその限りじゃないが」

「えー!?」

「はいはい。じゃあ、早速……」


俺はこの土地をそこ掘れワンワンで改造し始めるのであった。



といっても、前もって作っておいたテンプレ通りに作るだけだけどな。






こうしてジャーナ男爵領の発展は始まるのだった。

超高速で!!


というか、みんな「そこほれわんわん」って名前を憶えているかな?


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