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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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第720堀:夜はこれから(仕事)

夜はこれから(仕事)



Side:ユキ



俺は夜道を駆ける。

何が悲しくて、こんなくそ暑い夜に走らにゃならんのだと思いつつも、事態が事態なので、走らなくてはいけない。


「あんのクソ女神共がー」

「まあまあ、お兄さん。今回は仕方ないでしょう」

「夫婦の話ですからね」


俺の口から洩れる文句にラッツとエリスがそう返す。

今回、事件が起きている場所が商業区のスーパー銭湯。

なので、ウィードの商業代表である、ラッツ。

そして、元々スーパー銭湯などの国営娯楽管理を任されていたエリスに……。


「まったく、女神様とはいえ、お風呂で騒動なんて出入り禁止も考えないといけませんね……」


そう呟くのは、ウィードお風呂全般の総責任者であり、お風呂ソムリエとかいうわけのわからん称号を持つ、アイス狂いの妖精族ナールジアさん。あ、鍛冶代表でもある。残念ながら彼女の後継はまだ育っていない。フィーリアが候補だとは言われているが、フィーリアはまだまだほかのことで忙しいし、学校に通う世代だ。

まあ、楽しそうに毎日槌を振るっているし、技術職なので、そう簡単にナールジアさんの代わりが見つからないというのもある。

本人はこうして楽しんでいる上、現役でもあるので無理に代表を退く必要はないと思ってもいる。


「あまり騒ぎを大きくはしないでください。ミヤビ女王が訪問していること自体も秘密なので」

「わかっています。穏便にすませます」


そんなことを話している内に、スーパー銭湯へとたどり着く。

既に夜10時を回っているのに、この場所は賑わっている。

それも当然だ。ここはウィードの観光名所のひとつであり、夜という時間帯が一番忙しい時なのだ。

風呂だからな。お風呂でくつろぎに来る人も多い。

簡易的な宿泊施設もあるので、ここで風呂に入りながら、本を読んで、ご飯を食べ、飲んでゆっくりする人は、観光客、ウィード国民に限らず、多くの人が訪れている。

とはいえ、本日は平日なので、まだ少ない方だ。

休日の前日や連休はこの比ではない。

ま、そんな事よりも、バカ女神の後始末をしなければ。

そういうことで、お風呂ソムリエのナールジアさんを先頭に、スーパー銭湯へと入る。

無論仕事なので、入場料、入浴料を支払うことはない。従業員入り口からだから。


「あ、ソムリエ。それに、ラッツ副代表に、エリスさん、ユキさんお待ちしていました」

「うん。トラブルだって?」


ソムリエってどういう呼ばれ方してるんだよ!?

なに? カリスマなの?

いや、そこはいい、まずはトラブルの方だ。

ミヤビ女王をなんとか、馬鹿共の魔の手から救い出さないと。


「トラブルはトラブルなんですが、お忍びで来られた偉い人が、いきなりリリシュ司祭に平伏して挨拶をし始めて、それに驚いたヒフィー様、ノノア様がそれを阻止して、空き部屋に連れて行ったんです。なにか大きな問題にならないか心配で……。ヒフィー様、ノノア様はセラリア様からもよしなにといわれている女王様たちですので、私たちが勝手に対応するのは不味いかと思って、待機していたスティーブ将軍に連絡を入れた次第です」

「なるほど」


スティーブの報告に間違いはないな。


「話は分かった。とりあえず、私たちでその部屋に行ってみるよ。案内してくれる?」

「はい。こちらです」


従業員の人に連れられて、俺たちは問題の部屋へにたどり着くと、ドアの前でスティーブたちが待機していた。


「ここです。スティーブ将軍が様子をうかがってくれていたんです」

「案内ありがとう。君はこのままいつもの仕事に戻ってくれていいよ」

「はい。よろしくお願いいたします」


そう言って、案内の人がいなくなるのを確認して、すぐさまスティーブに近寄る。


「現状報告を」

「ういっす。特に何かあったわけじゃないっす。恐らく事情の説明でもしているんじゃないっすかね。危害を加えるとかそういうのはないっすよ」

「それは良かった」


ミヤビ女王に何かあれば、本当に国際問題になりかねなかった。


「で、ユキさん。どうしますか? 私としては踏み込みたいんですけど?」

「そうですね。それでいいと思います。スティーブたちは現状維持で周囲を警戒。ラッツとエリスは一緒にいくぞ」

「了解っす」

「「了解」」


だらだらと様子をうかがうつもりなどない。

さっさと、ミヤビ女王を救いだす。

そういうことで、直ぐにドアを開けて踏み込む俺たち。


「こらー、リリーシュ、昨日の今日どころか、目を離したとたんに問題おこしてるんじゃねーよ!! って……」


と、リリーシュに文句を言いながら、俺が見たものは……。

ペターンと五体投地をしているミヤビ女王と宰相とその他護衛たち。

そして、それを見て困っている、リリーシュたちだった。


「なんだ? 崇めさせているのか? 趣味の悪い」

「ちーがーうーわーよー」


夫婦喧嘩の時とは違って、いつもののんびりとした雰囲気に戻ってはいるが、微妙に焦っているリリーシュをみて、心の片隅でざまあみろと思った。

これぞ因果応報、自業自得というやつだろう。


「今回は別にリリーシュは悪くないわよ。このハイエルフが私たちの正体を見破ったことが凄いのよ」

「はい。私たちの神格を見抜いた彼女を褒めるべきであって、別にリリーシュが悪いという話ではありません」


そう言って、リリーシュをフォローするノノアとヒフィー。


「話は聞いたが、そんな簡単にばれるものか? ばれたとしても、知らんふりでもできただろうに」

「しかたないのよー。すぐにこの子たちがこんな風に膝をついたんだからー」

「人前っていうのもあったからね。流石に単に否定すると、この子の立場も悪くなるでしょう?」

「敵対したのではなく、敬ってくれるのであれば、邪険にできませんし」


3人の言い分も一理あるとは思う。

ミヤビ女王が人前で土下座していたなんてのは外聞が悪すぎる。

今後大陸間交流にハイエルフ国が参加することになったら、この事件はウィードの評判を下げる要因の一つとなるだろう。

ということで、五体投地に近い、土下座をしているミヤビ女王たちにやめさせることにする。


「まあ、そういうことですので、ミヤビ女王、顔を上げてください」


俺がそう声をかけるが、ミヤビ女王は顔を上げることなくそのまま声が聞こえてくる。


「……何がそういうことなのじゃ。どうして、ここに神が、女神が3人もいる……」

「いやー、というか、そっちの2人も女神と気が付きましたか?」

「……リリーシュ様をリリーシュと呼び捨てしているということは、同格であろう」


なるほど。そりゃそうだ。

何をうかつなことを……。そう思って2人を見ると、どちらとも目を背ける。

お前らこういう視線そらしは全員共通でスキル習得してるよな。


「だけど、その理屈なら俺も同じじゃないか?」

「いや、ユキ殿の場合は日本人だというのを知っておるからな、他の神をあがめるというのはそうそうしないというのを知っておる。八百万じゃったか?」

「そうそう、八百万。神々はここにありて、我が目には見えず。周りは自然の恩寵の元にってやつだな」


何事にも神が宿る。

そういうのが神道だよな。

いや、誤解はありまくりだろうが、大体そんなニュアンスってことで。


「というか、いい加減顔を上げてください。話ができません。あなたたちを別に罰するとかそういう話ではありませんし、真実を話そうにも話せません。な、リリーシュ、ノノア、ヒフィー?」

「ええー。そんなにかしこまらないでー、私はこのウィードじゃ、ただの教会の司祭だからー」

「私もここへは一個人としてきているから、かしこまらないで」

「同じく私も、ウィードへは個人的な用事で来ていますので、普通の人と同じようにお願いいたします」


リリーシュはともかく、ノノアとヒフィーは自分の身分は言わなかったな。

まあ、国のトップやってますとかは、さらに爆弾発言だし、徐々にってことにしよう。


「……うむ。女神様たちにここまで言われて、従わぬのはかえって失礼か」


そう言って、ようやくミヤビ女王は顔を上げる。


「えーと、後ろのみんなもいいのよー?」

「宰相、女神リリーシュ様のご命令だ」

「はっ、皆、顔を上げよ」


これで全員が顔を上げたので、やっと話す体制ができた。

幸い、この部屋が大人数の宴会用なのか、護衛の人たちも含めて座って余裕があるので、部屋の移動は必要なさそうだ。


「とりあえず、まずは飲み物でも頼みましょう。話は長くなりそうですし」


俺はおかげで徹夜決定だよ、ちくしょー


「あ、そういうことなら、私が厨房に行ってきます。私なら顔が利きますし」

「なら、お手伝いで私も同行しますよー。エリスはここで、お兄さんを頼みます」

「はい、いってらっしゃい。ナールジアさん、ラッツ」

「お願いします。ナールジアさん。ラッツも気を付けてな」

「はいはい、お任せください」

「このぐらい、何ともありませんよー。お兄さん」


そう言ってナールジアさんとラッツが退席する。

さて、嫁さんも頑張っていることだし、俺も頑張るか……。


「では、あちらのテーブルで座って話しましょう」

「そうねー。私たちのことも説明したいしー」

「毎回、この手の説明って困るわね……」

「ですね。自分たちがいかに面倒な立場であるか、再認識されます」

「う、うむ。そういうのであれば……」


女神共は大体俺に説明いつも丸投げだろうが。

で、のんびりな女神たちとは違って、ミヤビ女王御一行はガチガチになって長テーブル、長机に座る。

あ、もちろん和式の部屋な。

しかし、ミヤビ女王は運がなかった。本当に運がなかった。

もっと、まともな出会いであれば、感動的なものになったのかもしれないのに、女神たちはそういうのを台無しにする才能があるのだろうか?

いや、こいつらのトップがそういうのは得意中の得意だったな。アレがあってこれがあるということか。

さて、今更、駄女神をこき下ろしても仕方がない。

今は、ミヤビ女王御一行に説明しないといけないな。


「さて、説明をと思いますが、一体どこから説明したものか……。ミヤビ女王からこれは聞きたいというのは有りますか?」


とりあえず、向こうの疑問に答えるようにしよう。

俺たちのことを一から話したら、時間がかかりすぎて眠れない。

一般の雇用される側なら報酬が増えるからよかったんだが、俺は報酬を支払う側だしな、この残業は俺を酷使するだけのものだ。お金も今の俺にとってはあまり意味のないモノだからな……。DPで揃えられるし……。

あー、なんてブラック。


「うーむ。色々聞きたいことはあるのじゃが、まずは、リリーシュ様と並んでいる女神様たちのことを紹介してもらえないだろうか? 失礼極まりないことではあるが、妾はお2人の顔を見ても、なんの女神なのか判断ができぬのじゃ」


いや、顔を見てどの神様か判断できるとか、七福神ぐらい特徴的じゃないとわかんねーよ。

それでも、老人で長い頭、福耳の福禄寿様、ほぼ同じ老人の容姿の寿老人様とか区別つかねーし。

日本で有名な七福神でも、認識度合なんてこんなものだ。

というか……。


『福禄寿と、寿老人とか区別つかないわよねー。キャラが薄いのよね。信仰的にも基本どっちも長寿がメインだし、長寿大国の日本にとってはあれよねー』


などと、どこかの駄目神は最低の発言してたけどな。

いや、長寿問題が出ているのは分かるが、七福神の立場を奪うようなこと言うなよ。

ということで、ミヤビ女王のこの神様だれ?発言は別に失礼でも何でもない。

人は知らないものは知らない。それだけの話だ。


「別に知らなくて仕方ないですよ。この2人はもともと別の形で活動していますので」

「というと、リリーシュ様のように司祭などになってということか?」

「ええ、そんなものです」


どっちも一国のトップですってどこのタイミングで言えばいいのかさっぱりわからん。

まあ、まずは普通に紹介するしかないか。


「では、テーブルの奥からということで、ノノアの方から紹介いたしましょう」


一番奥に座っていたノノアが俺の言葉を聞いて立ち上がる。


「彼女は、ノノア。魔術神だ」


どこが魔術神なのか教えてほしいですとか言っちゃいけない。

まあ、魔力はこの世界の人並み以上はあるし、一応、魔術師の国といわれる物を作っているから、それっぽいことはしているのだ。

基礎技術とか発想が地球と比べちゃいけないって話だ。

この世界では十分に高水準の教育をやっている。

その紹介を受けたミヤビ女王は首を傾げる。


「ん? 魔術神? ノノア? どこかで聞いたことがあるような……」

「陛下、確か、ロシュール伴国の魔術国の女王の名前がノノアだったはず……」

「おお、そうじゃ。確かにそうじゃった。……とまて、もしやユキ殿?」


そう言って、こっちを情緒不安定な様子で聞いてくるミヤビ女王。

……やっぱり隠すのは無理か。

まあ、ノノアはロガリ大陸にいるからな、国の長なら、他国のトップの名前ぐらい把握していて当然だよな。


「はい。その魔術国のトップである魔術神ノノアが、こちらのノノアでもあります」

「……か、神が国を作って治めているのか?」

「はい」

「は、はは……」


俺がそう答えると空笑をして頬を引きつらせるミヤビ女王とその御一行。

さーて、ヒフィーの追撃を入れたらどうなるか見ものだが、それは色々な意味で怖いので、まずは、飲み物が届くまで待機だな。

どうせもうすぐ来るだろうし。


そして時計は11時に差し掛かろうとしていた。


「帰りたい」

「我慢してください」


エリスにそう言われて逃げ道を塞がれるのであった。




夜はこれからだぜ!! 

残業という名の仕事がハジマルゼ!!


あ、転職した自分は基本的に定時上がりのよい職場でございます。


そして、夏ということで怖い話を一つ。

この話を投稿するさい、データ送信中でうっかりウィンドウを消してしまい。

データロストかと思ってら無事に投稿されてました。

いや、押し間違え怖いわー。まじで冷汗でた。

全部消えたら気力がなー。



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