第682堀:地元の仕事も大事
地元の仕事も大事
Side:ユキ
「ということで、スティーブの部隊をジルバの方に派遣することになった」
「なるほど。それなら、どうにかなりそうね」
ジルバで話した内容をみんなに伝えると、セラリアと同様に全員納得して頷く。
「今回は、スティーブがジルバで暴れたのが功を奏しました。おかげで、すんなりと援軍というか同行することに各将軍は納得してくれましたから。本来であれば、他国の将軍をこんな簡単に受け入れるわけないですからね」
ジェシカのいう通り、本来自国内で、他国の将軍が軍隊を率いて活動するのを認めることはありえないと言っていい。
地球の災害復興支援での軍派遣ですら断る国が数多あるからな。
今回のジルバ王の快諾や、他のジルバ将軍から受け入れられるというのは超特殊な例だ。
その理由が、初めてジルバに来た時に、もっぱらスティーブが暴れたおかげとなると、何が役に立つか本当に分からんよな世の中。
「じゃ、ユキさん。ジルバの方はこれで終わりになるんですか?」
リーアの質問にはちょっと返答に困ってしまう。
「たぶんリーアが言っているのは、俺たちが直接動くかっていう話だろうから、そういう意味では終わりだ。ジルバのことはスティーブに任せて、経過報告待ちってところだ。俺よりもスティーブの方が信頼篤いからな。で、そこはいいとして、残る問題は、各国のR魔剣の確認だな」
俺たちが直接動かない意味では終わりだが、スティーブが動いてるのでウィードの仕事としてはまだまだこれからだ。
この問題を解決してようやく外務省設立会議ができるというわけだ。
「あれ? ねえ、ユキさん。ホワイトフォレストの方は?」
「ああ、あっちは、外務省設立会議が始まってから解決し始める問題だからな」
「あ、そっか。みんなと仲良くって話だからね」
「では、次はエナーリアということでしょうか?」
次に聞いてくるのはルルアだ。
まあ、聖国という同じ名を掲げていることもあるし、慕われてもいるから気になるのだろう。
「いや、あっちは場を整えたら自力で解決するって言ってるからな。下手に手を出すべきじゃないだろう」
「確かに……」
エナーリアもアグウストと同様で手を出しすぎると色々と問題が出てくる。
こっちはしかも謀反とかじゃなく、宗教相手だからな。
迂闊な介入はよろしくない。
「こっちも外務省の設立会議を利用してって話だからな。まずは各国のR魔剣の管理状況を聞いて、それをジルバに報告してから、あとはスティーブたちが出張って……じゃなくて、ジルバ帝国軍と共闘で小国群を鎮圧。それで終わりって感じだな」
「でも、ユキさん。R魔剣の管理状況って聞く意味あるの? スティーブが全部やっつけちゃうんでしょう?」
「スティーブたち……じゃなくて、ジルバ帝国軍と敵対している小国群が全部持っているならそれでいいけどな」
「あ、そっか。全部集まっているわけじゃないもんね。となると、捜索も続行になるの? 私たちが行こうか? 変装して」
リエルがそういうと、トーリやカヤが頷いてくれる。
まあ、警察で働いていた経験から下手な兵士よりは捜査能力が高いのは認める。だが……。
「いや、リエルたちは出なくていい。イフ大陸のことはあくまでもノーブルの管轄だからな。要請がない限りは動かない。というか、イフ大陸全土に散らばっている可能性があるR魔剣の捜索とか、俺たちじゃ時間と人員が足らない。とりあえず、どれだけの数が行方不明かを確認できればいい。あとはノーブルに任せることになる」
あくまでも、イフ大陸の事はイフ大陸の連中でどうにかするべきなんだ。
今回の介入はあくまでも、こちらがさっさと外務省設立や大陸間交流を始めるために、時間のかかりそうな問題の早期解決へのための介入を行っただけだ。
そもそも、大陸間交流をと言ったのはウィードだしな。
表向きは経済活性化と銘打っているが、真の目的は駄目神の使い走りだからな。
こっちの勝手な事情で相手の世界を一変させているっていうのは、多少思うところがあるからな。
かといって、世界って言うのは勝手に前に進むものだしな。
タイキ君やタイゾウさん、ソウタさんと俺以外の異世界の色々な人がいて、そして、その新しい考えを受け入れて、この世界を進めようとするセラリア、アイリ、ヒフィー、エノルなど、多くの現地の人々もいる。
難しいことは言ったが、単純に言うと、余所の大陸のことまで色々面倒を背負いたくないから、ノーブルに任せるって話だ。
恐らくだが、新大陸の方もいずれ、カグラやキャリー姫さん、あるいは、ソウタさんやエノルさんに任せることになるだろう。
つまり、今後の行動は……。
「俺たちは俺たちで、足場固めをしないといけない」
「「「足場固め?」」」
「イフ大陸では、色々問題があって足並みがそろいそうになかったから、手伝ったのであって、それで、ロガリ大陸の外務省設立が遅れたら問題だ。こっちはこっちでやることをやる」
「「「ああー」」」
全員、あっさり納得した。
今回のイフ大陸訪問は要請が出ていたので優先的に処理するついでに、外務省設立の問題を解決したが、それだけでは終わらないのだ。
まだ地元、ロガリ大陸の外務省設立説明が終わっていないのだ。
「セラリア、ルルア、シェーラ、外務省設立の話はどうなっている?」
無論、何も話していないわけではない。
ちゃんと、セラリアたちに一報を入れてもらっている。
「ロシュールには連絡入れているわよ。クソ親父はいつでも話に来てくれって」
「同じく、アルシュテール様も今回の外務省設立には賛成のようです」
「ガルツも賛成ですね。お父様、ティークお兄様、シャールお姉様などは大喜びです。書類仕事の軽減になるって」
「どこも同じよね。今はウィードを通して、物品流しているけど、それでもイフ大陸の6大国との交易なんだし、決済するべき書類は山のように……」
「アルシュテール様も外交関連で書類が増えたとぼやいていましたし、外務省を設立することで、雇用も増えると喜んでいます」
「ルルアさんの言う通りですね。雇用の増加。外務省の立場ある役職への貴族の枠も増えるでしょうし、そこにローエルお姉様やヒギルお兄様に他2人のお兄様も追加するとか……。それでも、まだまだ枠が余りますが」
「あ、エルジュとリリアーナのラストも外務省設立に賛成。そこを通じて、ルーメルも外務省設立は賛成だって」
ロガリ大陸の5大国のルーメルを除き、元々からの強力なコネや、ゲートの有用性や利益もでて、俺の裏事情を知っていることもあり、基本的に協力的だ。
「しかし、意外よね。今までさほど関係を持ってこなかったルーメルが外務省設立には賛成なんて」
「意外でもない。田中とか勇者様御一行の日本人がいるからな。外務省に関しては理解があるだろうし、向こうは向こうで他所の大陸に行っているとか言ってるからな、向こうも向こうで交渉関係で頭が痛いんだろうさ」
「「「なるほど」」」
しかし、俺たちのようにロガリ大陸全土を巻き込んで、余所の大陸の国とのやり取りをさせるつもりはないらしい。
利益を独占したいという意図もあるのだろうが、向こうは船を出すという荒業だからな、安定しないというのもあるのだろう。
それに、俺たちの方も、ロガリ、イフ、新大陸、そしてルーメルが見付けた別の大陸の交流とかになると、もう大変になるのは目に見えているから、このままルーメルには独占ということで頑張ってほしい。
そっちが見つけた大陸への交易、交流はルーメルが一手に引き受けるってことだからな。本当に頑張ってくれ。
「じゃあ、そういうことなら、イフ大陸と同様に訪問をする必要はあるだろう。一応外務省設立を提案したウィードが頼み込みに行くのが当然だからな」
「そうね。対外的には必要ね。本人たちは、ウィードでまとめて会議でいいって言ってるけど」
「まあ、わざわざ一国一国に出向いて説明するというのは手間でしかないですからね」
「そこで、提案があるのですが、ユキさんが今回の外務省設立の説明をするにあたり、各国へ迎えに行くというのはどうでしょうか?」
「迎え?」
シェーラの提案に咄嗟に考えがまとまらず首を傾げてしまう。
「はい。各国もこちら側でまとめて会議をしたいという意向もありますし、セラリアやユキさんの言う通り国の力関係で大国を呼びつけるというのはよろしくありません。ですから……」
「ああ、迎えに行くということで、こっちがちゃんと礼節を持って接したってことになって、手間が省けるって話か?」
「はい」
「セラリア、ルルアはどう思う?」
「いいんじゃない? わざわざ、各国で一人一人丁寧に説明するより合同した方が手間が省けるって言うのはわかるし、クソ親父も文句は言わないでしょう。元々向こうもそれを希望しているんだし」
「私もいいと思います。ついでに、そのままロガリ会議に移れもしますし、向こうもそのつもりで、ウィードで集まりたいという話なのでしょう」
なるほどな。
わざわざ、ウィードで会議するからこそ意味があるわけか。
安全面はもちろん、ウィードだけにしかない、他の大陸に繋がるゲートもあるから、現場をしっかりみて、その場で話をしたいというのもあるんだろう。
他の国で話し合っても、面子が守られるだけで、時間とお金と労力がかかるだけだからな。
ロガリ大陸の各国は、魔力研究機関やイフ大陸語学解析機関などの設立で、人も、お金も一杯一杯だ。
わざわざ、人と金がかかることを自国でやりたくないって言うのもあるんだろう。
「よし。じゃあ、シェーラの意見を採用。俺が各国の要人を迎えに行くから、連絡頼む」
「わかったわ」
「はい。任せてください」
「すぐに連絡を取りますね」
そういって、セラリアたちはすぐに各国に連絡を取りに出て行く。
まあ、仕事中の呼び出し会議だからな、用事がすめばすぐに退出するってやつだ。
特にセラリア、ルルア、シェーラは忙しいからな。
さて、あとは、ロガリ大陸での外務省設立の草案はどうなっているかだが……。
「エリス、ラッツ、ロガリ大陸の外務省設立の意見まとめとはどうなっている? こっちもカグラたち任せか?」
「いいえ。こっちは先にまとめてあります。まあ、カグラさんたちもカグラさんたちでロガリ、イフ、そして新大陸をまとめた書類作成をしていますが」
そういってエリスはすぐに書類を手渡す。
準備のいいことで。
しかし、話を聞くだけでカグラたちの仕事が膨大で無茶に近いというのはよくわかる。
後で、ちゃんとフォローを入れてやろう。
ま、そこはいいとして、貰った書類に目を通すと、ま、草案だなーってレベルのものしかまだできてない。
「ま、仕方ないですよ。本格的にまとめるのは、各国の要人が集まってからですし」
「そうだな。一気に決まることはなさそうだな。そして、それが終わって、この外務省設立案のすり合わせで、ロガリとイフの本格的交流が始まるわけか」
長い。長いと思うが、これは必要な過程だ。
いや、短いのか?
大陸間交流を最初に提案したのは2年ほど前。
たった2年で正式に大陸間交流に向けての動きが始まっているという見方もできる。
日本だって戦国時代が終わり徳川の世になって、黒船来航で本格的に開国するまで、随分時間がかかったように見えるが、そのあと50年も立たない内に日露戦争勃発するし、交流を持つというのは結構スピーディーに行われるのかもしれない。
何せ、たった50年ほどで、日本は今まで時代遅れだった木造手漕ぎ船から、石炭などの火力による推進機器、つまりエンジンを搭載した、近代戦艦を英国から輸入するに至っている。それも一つではない、数多だ。
そして、伝説の日本海海戦……は、今は関係ないからいいか。
大事なのは、結構動き始めると案外早く物事は進むってことか。
「ま、一個一個確実に進めて行こう」
「「「はい」」」
どのみち俺にできるのはこの程度だ。
みんなと一緒に頑張っていこう。
異世界ものとかでよくある、文明や国際関係の進展問題だけど、現実世界でも技術の進歩は急にくるもの。
あっという間に進むこともあれば、しばらく停滞するっていうのもよくあるのは、歴史からもよくわかる。
1人の問題でもないし、自分で勝手に決めるものでもない。
ま、そこはいいとして、ユキはこれから地元ロガリの会談へと望む。




