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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
大陸間交流へ向けて

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落とし穴112堀:受付新人の日常

受付新人の日常



Side:ファテア ウィード冒険者ギルド 受付新人



「ありがとうございました」

「いえいえ。お仕事の方頑張ってくださいね」

「はい。頑張ってきます」

「いってらっしゃい」


私はそういって、冒険者を送り出す。

これで今日は何人目だろうか?

まあ、いつものことだし考えるだけ無駄か。

とりあえず、朝の混雑時を乗り切らないと。

そう覚悟を決めて、私は未だに列を作っている冒険者たちを見つめる。


「はい。次でお待ちの方どうぞー」


そういうと、待ち列の一番前の人が私の所へとやってくる。

この行列は各受付の前に、列を作っているのではなく、依頼を受けるための冒険者専用列というのがあって、そこから空いている受付へと行くのがルールとなっている。

そうしないと、人気の受付と人気のない受付で差がでるし、新人の経験がいつまでたっても上がらないという悪循環に陥るからだ。

ちなみに、冒険者たちにとっても同じような意味があって……。


「おはようございます」

「おはようございます」


この様に、どの受付が対応してもちゃんと挨拶から始まり……。


「冒険者のクロッシュといいます。よろしくお願いいたします」

「はい。クロッシュ様。本日は私、ファテアが受付をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」


そういって、お互いに頭を下げる。

これが出来ない阿呆は、つまみ出すのがこのウィードの冒険者ギルドでのルールである。

依頼人の前で横柄だったり、礼儀が出来ていないというのは、冒険者ギルドの評判を落とすことになるからだ。

以前から問題視されていたが、荒くれ者が多い冒険者相手に礼儀を仕込むというのはすごく大変で、予算も割けないので、放置されていたが、このウィードではその躾……ではなく、礼儀などを教えることに予算が出て、こうして教え込んでいるわけだ。

まあ、ウィードがここ数年で出来たばかりの国であり、ダンジョンの中にあるという特殊な場所だというのもある。

新しくここに冒険者ギルドを作ることになったので、しっかり一から冒険者を教育しようということになったのだ。

このウィードと縁が切れるのは冒険者ギルドにとっては絶対に避けたいことであり、冒険者がトラブルを起こして、冒険者ギルドの評価が下がるのを避けるためというのも、冒険者たちの教育をする理由に含まれる。というか、恐らくこれが冒険者たちに礼儀を教え込む最大の理由だと思う。

まあ、そんなことはいいとして、このあいさつなどは、出入り口などに……。


冒険者の心得

・あいさつはしっかり

・礼儀正しく

・ちゃんと列に並ぶこと

・ギルドカードは用意しておくこと

・武具の手入れを怠るな

・無用な借金はしない

・酒は飲んでこない


などなど、書いてあるので、知らぬ存ぜぬは通用しない。

と、そんなことはいいとして、まずはランクの確認をと……。


「では、ギルドカードの提示をお願いいたします」

「はい」


既に用意していたのか、すぐに提出するクロッシュさん。

まあ、彼の性格から考えれば当然ですね。

真面目なんです。いえ、冒険者の心得に書いてあるから当然なんですけど、結構ここが出来てない人は多いんです。

席についてから、ギルドカードをあちこち探す人が多々います。


「拝見いたします。えーと、ランク3、ダンジョンランクは5と……。あれ? 前よりもダンジョンランクが上がっていますね?」

「あ、はい。最近、キシュアさんとか、スィーアさん、アルフィンさんたちとご一緒させていただいているので」

「あー、あのキシュアさんたちとですか?」


キシュアさん、スィーアさん、アルフィンさんはこのウィード冒険者ギルドでも腕利きだ。

その実力はモーブさんやオーヴィクさんの冒険者チームに次ぐと言われるぐらいの期待の新星だ。

まあ、ダンジョンランクだけが高いので、魔物相手の戦闘能力が高いだけの評価なのが残念だけど、それも仕方のないことだ。

だって、この国はダンジョンの中にあり、女王陛下による統治が完璧なので、盗賊や魔物による襲撃などがなく、貴重な薬草の回収、取得依頼もあまりないので、冒険者ランク自体は上がり辛いのだ。

特にランク4に上がる条件としては、盗賊討伐などの、敵対する人を殺害できるかが基準になるので、盗賊がいないウィードではランクの上げようがないのだ。

どうしても、ランク4以上に上げたい場合は他の国でその手の仕事をこなすしかないのだ。

でも、キシュアさんたちなら盗賊とかいう犯罪者相手に躊躇うことはないと思うけど。

と、そんなことはいいか。

今は、クロッシュさんの対応、対応。


「で、本日はどのような、お仕事をお探しで? ダンジョンの指定魔物退治ですか?」

「あ、いえ。今日は普通に町の手伝いで」

「わかりました」


私は席を立ち、一般の仕事のリストを持ってくる。

この冒険者ギルドだけということではないが、魔物退治や外にでて指定の薬草などを取ってくるという冒険者らしい仕事のほかに、町での雑用のような仕事の依頼がある。

別名、小銭あさりと言って、冒険者として外で働けない腕の低いことを指す言葉だったのだが、新興国であるウィードでは人手不足から雑用が沢山あり、これを利用して、冒険者ギルドや冒険者のイメージ改善を行い、今では、雑用を受ける人のことを蔑むようなことは少なくなった。よその場所からくる冒険者が蔑むことはあるが、その都度〆られることになる。

何より、誰でも冒険者ギルドで登録をして、働けるというのはいいのだ。

子供からご老人まで、できる仕事の種類は、一般成人に比べると少ないが、それなりにあるので、お金が手に入り、生活の糧が得られるのだ。

無論、そういう子供やご老人がこなせる仕事は、ウィードの行政からの依頼が多いけどね。

そのほかにも、こういうウィードの雑用を多くこなして、成功していることは、冒険者ギルドでの成果に記録されるので、ウィードでの仕事にも就きやすいのだ。

確か、履歴書とかいうのになるって、ミリー様がいってたっけ?

で、クロッシュさんは一年ほど前にこのウィードに来た人で、ウィードに仕事を探しにきたんだけど、まだ決まった職に就かず、こうして冒険者ギルドにきては色々な仕事を手伝っている。

まあ、まだ一年ほどしか経っていないから仕方ないのかもしれないけど、個人的には安定した収入がある定職に就く方がいいと思うな。

私なんて、ウィードに来てすぐに、計算の資格をとって、この受付に就職したからね。

そんなことを考えながら、クロッシュさんが受けそうな仕事を見繕う。

既に何度か対応したことがあるので、大体の方向性はわかるのだ。


「はい。お待たせしました。おすすめは商業区にある、公衆浴場の手伝いですね」

「ああ、それはやったことがありませんでした。それでお願いします」


私が提案してみせた依頼を素直に受けるクロッシュさん。


「では、期間は一か月、開始は来月の1日。明後日になります。集合場所は……」


いつものように、依頼内容を読み上げて、冒険者、クロッシュさんに伝える。


「何か質問などは?」

「いえ。特にありません。ありがとうございました」


そういうとクロッシュさんは席を立って出て行く。

その姿を見送っていると不意に後ろから声を掛けられる。


「ふーん。クロッシュ君は、今度はあのスーパー銭湯か」

「わっ!? ナンナ先輩!? 驚かせないでくださいよ!?」


私の後ろから依頼書をのぞき込んでいたのは、受付先輩のナンナさんだった。

もと冒険者で、暴れる冒険者も大抵は捻れるほどの凄腕の受付で、キナ副ギルド長やロックギルド長と同じように厳しく頼りがいのある先輩だ。

たしか、言い寄ってくる冒険者を外までぶっ飛ばしたっていう話もある人だ。噂じゃなくて実話。

いつも巡回に来るスティーブ将軍から聞いたから間違いなし。


『お、新人っすか? 何か困ったらナンナさんを頼るといいっすよ。凄腕っすから』

『スティーブ将軍。私がなんと?』

『うぇ!? いや、頼りがいのある先輩って話っすよ。じゃーねー』


という感じだったから。

まあ、そこはいいとして……。


「先輩。受付はいいんですか?」

「ん? ああ、ようやく捌けたのよ。ほら」


そう言われて、列の方を見てみると、そこには受付を待つ冒険者はいなくなっていた。

どうやら、私がクロッシュさんの受付をやっている間に全員捌けたようだ。


「あとは、お昼に来る子供たちね」

「そうですね」


朝の受付の後は、お昼過ぎの子供たちの仕事受付だ。

この子たちに対して、ちゃんとした仕事を割り振ることも私たちの受付の仕事だ。


「今日の子供たちの仕事は?」

「いつもの通りね。商業区の路地掃除に、公園の清掃、あとはご老人の家のお手伝いね。ここはちゃんと仕事のできる子を送らないといけないわよ?」

「わかってます。というか、その家の掃除はヒイロちゃんが指名されてませんでしたか?」

「ええ。そうよ。ちゃんと覚えてるじゃない」

「それは、ヒイロちゃんって冒険者ギルドでは有名ですし」


ヒイロちゃん。小さいながらも高度な魔術を使いこなし、戦闘能力も高い。

加えて、礼儀正しく、可愛いときたものだ。

将来有望な子だと思う。

そんな話をしているうちに、依頼達成をしたらしき冒険者たちがやってきて報告と処理を行うためにギルドに入ってくる。


「あ、やっほー」

「ダメだって、リエル」

「……ちゃんと。こんにちはって言わないと」


そういって私の前に来るのは、このウィードの重鎮である、リエル様、トーリ様、カヤ様だ。

は、初めて、こんな人たちの対応。お、落ち着くのよ。ファテア。し、失礼のないように……。


「きょ、きょ、今日は、ど、ど、どのようなご用件でしょうか!?」

「落ち着きなさい。ファテア。で、リエルたちは今日はどうしたの?」


ナンナ先輩はこともなげに、普通にリエル様たちと話しているけど、私にはとてもまねできない。

一歩間違えば、ウィードを追放されるかもしれないのに。


「久々に、ダンジョンに潜ってきたんだー。それで、換金しに来たんだ」

「はぁ、勝手に潜ってるのがばれると、ミリーやキナに怒られるわよ?」

「あ、大丈夫です。今回はちゃんと仕事の依頼を取ってますから」

「……そう。久々にダンジョンの点検」

「ああ、そういえば、点検の話があったわね。で、換金ってことは魔物を倒してきたの?」

「そうそう。道中で襲われたから、バシッとね」

「で、この子は初めて見ますが、新しく入ってきた人ですか?」

「……そういえば、見たことない」

「あ、ほんとだ。ナンナ、新しい子?」

「ええ。そっちが色々忙しい間に入った子でね。まあ、このウィードに来てからは一年ぐらいは経つんだけど、ここに就職したのはつい半年ぐらいね。ほら、いい機会だから、挨拶して」

「ひゃ、ひゃじめまして、ファテアと言います」


あ、駄目だ。声がひっくり返ってる。

それを見て、リエル様たちは気を使ってくれたのか、軽く会話をしたあとすぐに換金へと向かい去って行ってしまう。

いや、正直にいうと頭が真っ白だった。

何を話したか覚えていない。

だけど……。


「よし。合格ね」

「ふぇ!?」

「冒険者ギルドはさっきみたいに、ウィードの重鎮がよくやってくるのよ。その対応がちゃんとできるかが心配だったんだけど、あの様子なら問題ないわね」


そういってナンナ先輩は笑顔を向けてくれる。


「で、でも私が仕事を始めてからは、ミリー様がたまに……」

「ああ、何か忙しかったみたいよ? でも、落ち着いたって話だし。今の様子をミリーに報告しておくから、そろそろ新人卒業ね。よかったじゃない。これでお給料上がるわよ?」

「や、やったー……」

「ま、気持ちはわかるけど、頑張りなさい。別に横暴をするような人たちじゃないわよ。ファテアのミスぐらい笑って許してくれるわよ」

「は、はい」


内心、就職先間違えたかと思いつつ、なんとか、そう返事を返し、そして、そんなこんなで心が乱れつつも、その日の受付の仕事をこなす私。

その日の最後に、ミリー様がやってきて……。


「明日から新人卒業。一人前の受付として頑張ってね。ファテア」

「は、はい!!」


パチパチと周りからも拍手されて、ミリー様直々にお祝いの言葉を貰ってしまった。

……これは、にげられない!?


こ、こうなったら、やってやろうじゃない!!






冒険者ギルドの求人

「明るく華やかなで、多くの人と出会える素敵な職場です。あなたも一緒に働いてみませんか?」

※ウィード内仕事で一番不意に要人と出会う可能性が非常に高い職場で、知る人ぞ知る、地雷職場。

※主に不意に出会う可能性がある要人たち、セラリア女王陛下、ユキ王配、重鎮たち、他国の王族、重鎮、高ランクの有名冒険者などなど……。

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