第664堀:久しぶりのジルバ帝国
久しぶりのジルバ帝国
Side:ユキ
「なんか、すげー久しぶりな気がするな」
「そうっすねー」
俺とスティーブはそう言いながら、ジルバ王城を歩いていた。
「いや、お前はしばらくこっちで働いてただろうに」
「いやいや、しばらくって言っても二、三か月ぐらいっすよ? そのあとはもう大将にあちこち引きまわされてこき使われてたじゃないっすか」
「そうだっけ?」
「そうっすよ。ヒフィーさんやノーブルさん、それにホワイトフォレストとか諸々」
「あー、そういえばそうだっけ? ま、ともかく、俺たちがここに滞在した期間は物凄く短かったってわけだ」
「それは間違いないっす」
さて、俺たちがなぜジルバのお城に来ているのかというと、昨日ノーブルたちと話した外務省設立の話を事前にしておくためである。
表向きはジルバ王から相談、面談希望があったから訪れている。
「でさ、ここどこだよ?」
「分からないっす」
「いや、お前ここで一時期働いてただろうに」
「そんな全部覚えてるわけないっすよ。おいらは基本的にお客様だったっすから、勝手に歩き回るわけにもいかんでしょ」
「……とりあえず、来た道を戻るか」
「そうっすね」
そういうことで、来た道を戻ることにする。
「はー、ユキさんやスティーブでも道に迷うんだー。意外」
「ですわね。まあ、他国のお城を好き勝手に歩くというのもあれですし、当然でしょうけど」
「……ん。だけど、ジェシカが戻るまで、部屋で待っていればよかったのに」
なにか、後ろの3人が驚いているが、俺だって道ぐらい迷う。
いや、この場所がどういう場所かや、名前がわからないだけで、帰れないというわけでない。
必殺のマップ機能ですぐに道ぐらいわかるし。
「クリーナの言う通りじっとしてても良かったんだけどな。ジルバの滞在期間はそこまで長くなくてな。こう見物はしたことなかったんだよな」
「いやー、見物って雰囲気じゃなかったすけどね。ここには殴り込みしたっすから」
「「「ああ」」」
3人とも納得してくれる。
それで、当時の事を話しながら、来た道を戻っていると、ジェシカが前方から慌ててやってきた。
「あ、いました!! 探しましたよ!!」
「すまんすまん。なんか久々のジルバで見物してた」
「ああ、なるほど。……当時はそういう状況ではなかったですからね」
「そういうこと。で、ジルバ王との面会はどうにかなりそうか? いきなり来たから、駄目なら後日でいいけど」
普通ならアポをとって、会うような相手だ。
まあ、一国のトップに事前の面会申請無しに会うっていうのはどこからどう見てもおかしい。
だけど、今回は王の相談に乗るって話だしな。
堂々と、ジルバ王の相談に乗りに来ましたっていうと、色々問題がでそうなので、手紙もなしに来たわけだ。
「いえ。陛下は……」
「問題ない。お前との面談が何よりも優先するべきことだ」
と、ジェシカが喋る前に、さらに後ろからザ・王様って感じのジルバ王たちがやってきた。
「おひさー。フィオンハ。それにエア、あとはヨキエル、ローウ、ピク○ンにオリ○ー」
いかついおっさん将軍たちに、魔剣持ちを引き連れてきたジルバ王に、とりあえず、軽くジャブを放っておく。
「きさっ……!!」
「落ち着け、エア。お前じゃどうせ、スティーブ殿にも勝てん」
「エア殿どころか、私たち全員で戦っても勝てないがな」
「相変わらず、そういう呼び方ですのね……」
「お姉様。おそらくはユキ様的には軽いジョークなのでしょう」
魔剣使いのエアは怒ろうとしたのだが、ヨキエルに押さえられ、ローウに諭されて大人しくなり、オリーヴとミストのメルト姉妹はもうピク○ン呼びは慣れたようで、反応がつまらん。
「相変わらず、人を食ったようなことをする奴め。エア。落ち着け。これはそこの男のお得意だ。それに今ではお前より立場が上だ、よくよく肝に銘じておけ」
「はっ。大変失礼いたしました。ユキ様。この度は失礼な態度を……」
フィオンハことジルバ王にたしなめられて、すぐに謝るエア。
こういう躾は行き届いているよなー。
だが、こうやって謝られるのも面倒だ。
「あー、エア。いいから。別に、友人として遊びに来たついでに、相談に乗ろうって話だからなー」
「……本当に人を食ったような奴だな。なるほど、友人を名前で呼ぶのは当然のことか」
「そういうこと」
「はぁ……。まったく。お前が敵にならなくてよかった。こっちに来てくれ」
そういわれて、俺たちはジルバ王の後をついていくのだが……。
「そういえば、ヨキエルにローウはスティーブと面識あったのか?」
「ん? ああ、ユキ殿は知らないだろうな。ん? ユキ様と呼ぶべきか?」
「一国の王配であらせられるのだ。ユキ様が適当だろう」
「いや、個人的には殿でいいぞ。様はうちの女王陛下に言ってくれ。で、スティーブとは知り合いなのか?」
「ユキ殿がマーリィ将軍と行動を共にしたあと、スティーブ将軍は残っていただろう?」
「そこで、ザーギス技術将官殿と一緒に色々教えてもらったのですよ。そういえば、ザーギス殿は?」
え? なに? なんで、ザーギスがこんなに敬われているの?
「ああ、ザーギスはウィードでは技術研究員っすからね。大変っすよ」
「なるほどな。あの魔術の腕なら当然か」
「ですね。スティーブ将軍。良ければ、我々が久々に会いたがっていたと伝えてもらえますか?」
「わかったすよ」
というか、スティーブも普通にこの両将軍に敬意を払われているようだ。
「……具体的になんでこんなに敬意を払われているのか知っているか?」
こっそりと、メルト姉妹に話を聞く。
「確か、ヨキエル将軍は一騎打ちの果てに、ローウ将軍は兵を用いた戦いで、完膚なきまでにやられたそうですわ」
「そのあとの的確な改善点の指摘に、書類処理の手伝い、さらにはザーギス殿の魔術じっけ……講義で大幅にジルバの戦力が上がりましたから」
なるほど。
確かに、そういう話はあった。
ま、仲が悪いよりはいいか。
「いつでもこちらに来てくれていいからな、スティーブ殿」
「ああ、あの部屋は今でも将軍の部屋となっている」
「……おいら、一応ウィードの将軍っすよ? しかも大将の前で勧誘とか……」
「あ、必要なら派遣はしていいぞ。手が空いているときにでも派遣する。両国の健全な交流の為にも必要だろう? な、フィオンハ?」
「ユキが問題ないというのなら、私としても何も異存はない。スティーブ将軍が我が国に来てくれることは素晴らしいことだ」
「おいらの休みはないっすねー」
「「「あははは」」」
そんな雑談をしていると、会議室へとたどり着き、席に着く。
「で、相談ってのは?」
「さっそくか。だが、その前に聞いておきたい。ユキがこの場に自らやってきたということは、新大陸の方は落ち着いたということか?」
「なんとか、戦争は回避した。あとはこっちと同じように、地道に外交でこっちを知ってもらう感じだな」
「戦争を回避か、見知らぬ土地で、わずか半年でできるわけもあるまいにと他の人間なら笑ったのだが、ユキたちならばあり得るか」
「納得していただいてなにより。で、相談は?」
「うむ。その話だが、そこにいる将軍たちが関係することなのだが……」
どうやら、ジルバの支配下近くにある近隣の小国の数国がいまだに抵抗しているらしい。
その担当が、パワータイプのヨキエル将軍率いる西方攻略軍。
その手助けをしてほしいとのことだ。
他の将軍を使えよと思ったが……。
北方の守りであったローウ将軍はノーブル相手、つまりエクスへの警戒を怠っていない。
東方は担当のマーリィを筆頭にオリーヴにミストが担っているが、北方、東方ともに、エクス王国、エナーリア聖国と連合を組んだ相手なので、攻略軍ではなく防衛軍と性質を変えている。
つまり、連合とは言っても気を許していないというわけだ。
まあ、当然ではある。
さらに問題なのは……。
「エクスが報告してきた犯罪者組織が小国に逃げ込んだのか、元々拠点がそちらにあったのかはわからんが、量産型の魔剣を用いて抵抗してきているので、ヨキエルも攻めあぐねているわけだ。無理に攻めて、町を焼かれては反感を買うだけだからな」
「話は分かったが。具体的にはどうしてほしいんだ? その魔剣を使っている小国に俺たちで乗り込んで、王を捕まえてこいって話じゃないんだろう?」
「ああ、そこまでウィードに頼っては意味がない。というか、その場合小国を支配下におさめたとしても、周りの国がウィードに譲れというのが目に見えている」
「そりゃそうだ」
俺たちが制圧したのに、ジルバが支配とかおかしいよねーって話だ。
「なので、ヨキエルにローウ、オリーブの軍を合流させたい。だが、その分エクスとエナーリアの国境の守りが薄くなる。連合の約定があるとはいえ、それで油断はしたくない。そこで、ユキにはエクスとエナーリアに事情を話して、手出し無用と言ってもらえないだろうか?」
「ああ、つまり。俺、ウィードが間に入れってことか」
「うむ。それなら、エクスもエナーリアも間違っても変な気は起こさんだろう。信頼していないわけではないが、国としてはやらねばならん」
なるほど。
言っていることはわかる。
「別にそのぐらいなら構わない」
「そうか、ならすぐに親書をしたためる故、それを持ってエクスとエナーリアに……」
「まあ、まて、それをやるには条件がある」
「……やはりただでは動かんか」
「動くわけないだろう。というか、ここでただで動いた方が心配だろうに」
「まあな。それでどういう条件だ」
ということで、俺たちの外務省設立案を説明する。
「くくく。いいではないか。この外務省設立に手を貸すことを誓うぞ。これで、ちゃんと6大国が同盟をしたと示すことができるわけか。上手くいけば、小国群はこの話をきいて降るかもしれんな。それに、外交官の専横も多少は耳に入っている。面倒を押し付けている故、特権ぐらいはと見逃していたが、これからはそうもいかないだろうからな。整理する必要性はあると思っていたのだ」
そんな感じで、フィオンハの方は外務省設立協力を宣言してくれた。
「じゃ、次の連合会議の時に議題にあげるから。それまでに、色々と問題点とか上げといてくれ」
「なるほどな。根回しか。当然だな。が、6大国全部に根回しというのはなかなか面白いな」
「今の大国の敵は他の大国じゃなくて、身内の反対派だからな」
「確かに。急なイフ大陸連合結成で不安がっている者も多い。それを抑えるためにも必要か」
「案外、先ほどの件は連合で鎮圧して、ジルバに管理をって感じになるかもな」
「まさか。……いや、ありえないわけでもないか」
「分かりやすい鎮圧作戦だからな。6大国の連合が量産魔剣をもった犯罪組織討伐に赴く。っていうのは、この大陸に連合の結成を示すにはちょうどいいと思うけどな」
「……我が国でなければ、喜んで提案を受け入れたのだがな」
「ま、自国の勢力下での話だしな。汚点になるって言うのはわかる。とりあえず、親書は持っていって、鎮圧をする旨は伝えておく。案外援軍を出してくれるかもな」
「……難しいな。その可能性もあったか」
「恩を売るというか、向こうも連合を結成したと示すにはちょうどいいからな」
「……とりあえず、援軍の話が出た際には、返事は待ってほしいと言ってくれ」
「わかった」
という感じで、ジルバの相談事や外務省の設立に関してはなかなか良い感じだった。
さーて、明日はエナーリアか? それともいったんエクスのノーブルに話を通しておくか?
と、色々考えながら、家に戻ったのであった。
懐かしきジルバよ!!
みなさんの記憶は蘇ってきたでしょうか?
そして、トラブルの元は誰だったでしょうか?
とりあえず、それを解決するためにユキはさらに訪問を続ける。




