第634堀:潜入ブリーフィング
潜入ブリーフィング
Side:スティーブ
「マジっすか?」
「マジだよ」
おいらと大将は顔を突き合わせて、そういってたっす。
なぜなら、今から始まるハイレ教総本山の潜入作戦のブリーフィングルームにて、ハイデン王国のお姫様であるキャリー様と、フィンダール帝国のスタシア殿下が参加しているからっす。
ああ、ただの作戦を聞いているだけのお偉いさんという意味でいるのではなく、ガチガチの潜入部隊の一員としてっす。
いやいや、確かに、潜入する際に一緒にという話はきいてたっすよ?
でもさ、最低限の訓練しないと連れて行けないって言ったのに、なんでいるっすか?
「流石に、素人はマジで邪魔っすよ?」
潜入任務に素人連れてとか、失敗しろっていってるようなもんしょ?
「心配するな。必要な訓練は済ませた。一週間もないが、お前の部下からのOKサインも出ている」
「え? 冗談?」
「残念ながら冗談じゃない。あのお姫様2人はかたき討ちの為に、今まで耐えてきたし、鍛錬も積んできた。ということで、潜入訓練も同じようにこなしたらしい」
大将はそういって、書類を渡してくる。
それに目を通すと、確かに、潜入適性ありと書いてある。
目頭をもんで、再び見てみるけど、……書いてある。
しかも適性は高いとか。
なんでやねん。と思っていたら、大将に言われたことを思い出した。
そういえば、お姫様2人は訓練をしていたといってたっすね。
つまり、偵察とかの訓練もしていたという事っすか。
経験があるなら納得の適性っすね。
まあ、足を引っ張られることはないならいいっすか。
「って、足引っ張るとかそういう問題じゃないっしょ!? お姫様っすよ!? 国際問題っしょ!?」
「しっ!! 声が大きい!!」
しまった。つい、ツッコミんでしまったす。
絶対お姫様たちにきこえたっすよね?
そう思って、恐る恐る、お姫様の方を見ると……。
「ご心配はごもっともですが、その点については心配ございません」
「はい。私たちは今回、ウィードの作戦実行能力を把握するために同行しますので、我が国からの正式な要請による参戦となりますので、万が一、私たちが戦死したとしても、大きな問題にはならないでしょう。むしろ、ハイレ教を責める口実になるかと」
「いやいやいや……。現場指揮官のおいらの首が確実にとぶっすからね!? とばなくても、絶対恨まれるっすからね!?」
「では、そのようなことがないように差配してください。スティーブ将軍。これは、命令です」
「将軍として、他国の姫君を戦地に連れて行くというのは、止めるべき事柄であるのは、私もよくわかります。が、キャリーのいう通り、これはすでに上が決めたことです」
「ぬぐっ!?」
なんという、超正論!?
たとえ無理だとしても、軍人は命令されればやるしかないっす。
「まあ、危険度が高いと判断すれば俺も同行は許さなかった。でも、今回は行けるだろう?」
「……できないことはないっすけど。はぁ、まあ、とりあえず、ブリーフィングをしてから、その内容を聞いてから、最終的に判断をするってことでどうっすか?」
個人的には、作戦の内容を聞いて、ついていけないと思ってくれればありがたいっす。
というか、現場でついていけませんとか言われる方が邪魔極まりないっすからね。
「それもそうだな。2人ともそれでいいか?」
「結論は変わらないと思いますが、作戦の内容を聞いてから判断をするというのは間違いではないと思います」
「そうですね。キャリーのいう通り、作戦を聞くというのは大事だと思いますで、聞かせてください」
ということで、当初の予定通りではなく、人数マシマシとなったハイレ教総本山の潜入作戦について説明することになったっす。
「じゃ、まずはわかっているとは思うっすけど、改めて、ハイレ教の総本山を潜入して調査することになった経緯から説明するっす。今回の……」
・作戦を行うことになった経緯は、オーノックハイレ教会が誘拐を行っていたことが判明し、その誘拐が一部の者の暴走で行われていたのではなく、ハイレ教会全体で行われていたという可能性が出てきたため、総本山へ潜入調査をすることになった。
・作戦目的 ハイレ教が誘拐し、拷問などでかき集めた、マジック・ギアの存在の有無。ハイデン、フィンダール以外へのマジック・ギアの輸出の有無。誰が主導で行っているのかの調査。裏にいると思われる、中級神派の連中を探し出す。及び、ハイレ教の女神であるハイレもとい、ハイレンの意思を確認すること。あと、人数、武具の数、食料などなど……。(ぶっちゃけ、調べられるだけ全部しらべてこいってこと)
あくまでも、今回は調査、情報収集であるため、武力行使は極力行わない。次回の突入時に敵を一気に叩く。
「以上が、潜入調査作戦の経緯と、今回の大まかな作戦目的っす。ここまではいいっすか?」
おいらがそう聞くと、全員が頷く。
あ、ちなみに、お姫様以外にも、今回の潜入調査の人員もいるので、そいつらへの説明も兼ねているっす。
「では、次は具体的に、何をどうするのか? ということになるっすけど。まずは、潜入するハイレ教総本山の見取り図を見ながら説明するっす」
おいらはそういって、見取り図を取り出す。
しっかし、事前に調査にいったっすけど、無駄にでかいっすよね。
なんだよ、この拝殿とか、本殿とか、聖域とか……無駄に和洋折衷してね?
と思っていたんすけど、そういえば、ソウタさんがいたからこんな妙な作りになっているっすね。
というか、こういう宗教の総本山になると、あちこちから修行者やら、観光客は……そこまでないけど、人の数が思ったよりも多く、生活場所と、修行やお祈りをする場所が分かれているのだ。
それとは別に、宝物殿とか食糧倉庫、お客さんを迎える離れなどなど、建物は豊富。
つまり、探す場所がクソ多いという事。
正面切って攻め込むわけじゃないから、潜入捜査は数日に分けて行う必要があるということを説明していく。
「ここまでで質問はあるっすか?」
一旦ここで質問がないかを確認すると、部下のブリットが手を上げている。
今回は神様関連ってことで、副将として忙しいブリットを引っ張ってきた。
何かあれば単独の戦力が高いほうがいいだろうという配慮でだ。
こいつも大将が初めてダンジョンを作ってからの付き合いっすからね。
銃器もたせりゃ、姐さんたちにだって負けねえっすよ。
と、思ったけど、お姫様たちは、ブリットに全部任せるという素晴らしい案を思いついた。
「……ブリット。発言を許可する」
「……なんか、妙に間がありませんでしたか?」
「ああ、少し考え事をしてたっすよ。質問は?」
……お前を便利に使うための作戦を考えるためにっす!!
フハハハハ……!!
しかし、少しの間で嫌なものを感じ取ったブリットはやはり優秀なんだと思ったっす。
第六感、というか、経験則で周りを感じ取る能力ってのは、なかなか得られるモノじゃないっすからね。
やっぱり、姫様たちはブリットに任せて、おいらが率いる部隊が危ないところを調査するって言うのがいいっすね。
「事前偵察での感じはどうでしたか? 人の様子などは?」
「特に変な感じはなかったっすね。日々教えを守り、聖句を読んでお祈りする人たちで一杯っす。会話も特に変だとは思わなかったっすね」
いや、教会に集まって、修行している僧侶とか、おいら達からすれば異常でしかないっすけどね。
あの中ではそれが普通みたいっす。
おいらたちが軍人でいつも訓練しているということも、一般の人から見れば変なのと同じっす。
「食料などは基本、購入でしょうか?」
「いや、畑などもあるっす。ある程度、自給自足っすね。特徴としては、高い山の上にあるから、火種、薪の調達は欠かせないようっすね。もちろん、食材も仕入れているっすから、商人の出入りもあるっす」
「となると、商人の詳細は調べた方がよさそうですね」
「そうっすね。外部との繋がりで一番出入りが多いのは商人で間違いないっす。貴族や王族との繋がりが力は大きいっすけど、そんなに頻繁に出入りはないっすね」
「それはそうでしょう。他国の貴族や王族が頻繁に出入りするのはおかしいですから。というか、山の上の総本山にお貴族様がいるのは事実上の縁切りでしょう? 違いますか、お姫様方?」
ブリットはそう言って、お姫様たちに話を振る。
「ええ。山の上の総本山に送られるということは、いろいろな事情で、世間に顔を出すことができないという意味ですから」
「キャリーの言う通り、そういう意味が多いでしょう。しかし、言われて気が付きましたが、そうなると、総本山の中には、そういった元貴族たちがいるのですね。……厄介な。ユキ様の言う通り、極秘裏に潜入して調査をするというのは正しかったのでしょう」
「そうですね。迂闊に私たちが正面から突入などすれば、かえってハイデンとフィンダールの立場を悪くしたかもしれません」
「何も関係ない、他国の元貴族などから見れば私たちはただの襲撃者でしかありませんからね」
そう言って、潜入捜査、調査の必要性に納得してくれたのはいいっすけど、最初は正面突破も辞さない覚悟だったっすか。
こりゃ、大将が嫌でもおいらたちと同行させるはずっすよ。
ほっとけばかえって面倒になりかねない爆弾なんすから。
ある意味助かったっす。
「となると、今回のお姫様たちの作戦参加はありがたいものですね」
おいらが内心ほっとしていると、ブリットがそういう。
どういう意味っすか?
そうおいらの表情に出ていたのが分かったのか、ブリットは説明をする。
「つまり、元貴族様たちと面識があるかもしれない、お姫様たちなら、繋がりに関しても色々わかるかもしれないってことです。已むを得ず排除する人たちはいるでしょうが、それが元貴族様だと色々問題になりますし、避けた方がいいでしょう」
「ああ、なるほど」
確かに、他国の元お偉いさんをやっちまったら後々色々面倒っすね。
ハイレ教の総本山で、大本の中級神派の連中を叩いても、他の末端は生き残るし、元お偉いさんをやったということを利用されかねないっす。
そんなことを考えていると、今度は大将が口を出してきた。
「その可能性があったな。となると、わかる範囲でいいから、総本山にいる連中の調査が必要だな。下手なことをすれば、ウィード、ハイデン、フィンダール対ハイレ教会諸国連合なんてことになりかねん」
うへー。それは嫌っす。
どう考えても、全面で戦うのはおいらじゃないっすか。
前面、先頭で戦うって意味じゃなくて、全面っすよ?
あちこちに転戦しまくって、栄誉ある戦場にえっちらおっちら働かされる、馬車馬っす。
「しかし、これはある意味好都合かもしれませんな。ハイレ教の一部が行っている凶行を出家した他国の元貴族たちに見せれば、こちらの味方となってくれるでしょう」
ジョージンさんもあくどいことを言うっすけど、今後の展開を考えると必要な一手っすね。
味方は多いに越したことが無いっす。
「となると、元貴族達の身元を判断するために、カグラや、カミシロ公爵、それに学院長に手を貸してもらうべきだと思いますが? 私たちも多少の知識はございますが、それはごく一部でしかありません」
「キャリーの言う通りだと思います。カグラ殿は現役の学生であり、カミシロ公爵は学院の創立者で、留学受け入れの判断する理事でもあります。学院長殿は言わずもがな、様々な国籍の学生を受け入れる学院を運営する人ですから、その他国の貴族の知識は当然あるでしょう」
ごもっとも。おいらたちじゃ判断つかないっすからね。
ちゃんと判断できる人たちが欲しいっす。
「……そうだな。確かに、学院の協力はありがたい。だが、カグラはこの前の事件で酷く体調を崩したし、心の傷になっている可能性もあるから、無理はさせたくない」
大将が珍しく、カグラの参加を渋った。
まあ、吐いてぶっ倒れたって話だし、無理をしても良くないってはわかるっすけどね。
元々、カグラはウィードとの交渉役外交官だし。
「……ユキ様のお気持ちはわかりました。ですが、何も言わずというのは問題になります。今回の件はカグラも無関係ではありません。ミコス、ソロにも伝えたく思いますが、よろしいでしょうか?」
「確かに、動きを知らせないっていうのはあれだな。だが、キャリー姫から言うと義務感から、無理をする可能性があるだろう。……ここはカミシロ公爵から伝えるのがいいかもしれないな。俺が言っても同じように強制感がでるだろう」
「……確かに。カミシロ公爵に話を頼んでおきましょう」
とまあ、そんな感じで、潜入ブリーフィングは進んでいき、あとは作戦決行当日を待つばかりとなったっす。
ちなみに、事前訓練で、おいらたちもお姫様2人の動きを見てみたっすけど、本当に動けるでやんの。
これじゃ、ほっといたら単独で動くだろうなってわかるレベル。
やっかいだわー、ここのお姫様たち。
戦え!! 平和の為に!!
シャチク(社畜)戦士(戦死)スティーブ!!
第2918話:今日も押し付けられ残業
明日の社畜に未来あれ!!
※なお、この番組、小説は期間限定放送で2018年1月10日までの公開となっております。(嘘だがな)




