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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第635堀:選別と方針転換

選別と方針転換



Side:スタシア・フィンダール フィンダール帝国第一王女 鉄面皮?将軍



「……あの、よろしく、お願いいたします!!」


そういって頭を下げてくるのは、カグラ・カミシロ殿。

ハイデン魔術学院の首席であり、ウィードとの外交官でもあり、私たちとは一度敵対したりと色々多才な女性だ。

今回も、ハイレ教会の暗躍に巻き込まれて、危うく殺されるところだったと聞いている。

さらに、あのひどい状況を生で見たせいで倒れたとも聞く。

女性とは言ったが、未だ学生であるというのは、その報告を聞いて思い出した。

そう、倒れても仕方のない学生なのだ。

それを考えれば、今までよくやっていたと思う。弟のジョージとジョージンが率いる軍勢10万を相手に、都市に立て籠もったとはいえ、5千の兵で一週間以上も耐えたのだ。それだけで彼女の稀有な才能がわかるだろう。

もちろん、キャリーがあってのことだが、それでもカグラ殿が頑張った事実には変わりない。

だから、この場で一生懸命に挨拶をする彼女を見ると、無茶をしていないかと心配になる。

キャリーやユキ様が心配されるのは当然だ。


これが兵士であるなら、叱責でもして配置換えだが、彼女は未だ学生。

私たちは、なぜこんなに彼女に重責を背負わせているのだろうと思ってしまう。

しかし、状況は未だに良くならない。

いや、彼女たちだからこその手助けが必要なのだ。


「いや、カグラ殿。こちらこそよろしくお願いいたします。私たちだけでは、判断が付かないものが多い。と、仕事の内容の方は聞いていますか?」

「は、はい!! ユキ様たちが、ハイレ教会、総本山に潜入調査をするにあたり、貴族の関係者がいないかどうかを確認するという作業と聞いています」

「ええ。その通りです。当初の予定では、邪魔者は全部斬る予定でしたが、元貴族の神官などを切れば、場合によってはハイデン、フィンダールが窮地に立たされる可能性があります」

「逆に元貴族たちを利用することも考えているとも聞いています」

「その通りです。元貴族の神官たちを利用することにより、ハイレ教の一部が暴走していると公言できるでしょう。信憑性も高い。これにより、ハイデン、フィンダールの安全も確保できるでしょう」


そんな風に挨拶をしていると、続々と人が集まってくる。

キャリーを筆頭に、ハイデン魔術学院の学院長に、カグラ殿の父親であるカミシロ公爵、そして学生である、ミコス、ソロ、そして、ジョージンなど、他国の貴族のことも詳しい面々が入ってきて、最後にユキ様が到着する。


「よし、みんな揃っているな?」


そう聞かれてみんな頷く。

後ろには、私とキャリーが潜入時についていく部隊の隊長であるスティーブ将軍とブリット副将軍も一緒にいる。

彼らは非常に優秀だ。何度か訓練を一緒にさせてもらったが、ウィードの技術力も確かにすごいが、それをしっかりと使いこなし、指揮する力がものすごい。

我が国で、スティーブ将軍やブリット副将軍のように動けるものがそうそういるとは思えない。

私の私見ではあるが、ジョージンでようやくいい勝負ぐらいだろう。

だからこそ、今回の潜入作戦は安心して行えるというものだ。

こうして、事前の準備も怠らず、しっかりと着実に作戦が遂行できるように整える。

これは、当たり前のことに見えて、とても難しいことなのだ。

そんなことを思っていると、ユキ様が説明を始める。


「今回の元貴族の神官などの確認選別は、今後のウィードやハイデン、フィンダールの国際社会での孤立を防ぐためのものだというのは理解していると思う。当初の予定では、ハイレ教の中にいる、一部の馬鹿どもをこっそり排除すれば終わりと想定していたが、そうもいかなくなった。正当性を訴えて、ハイレ教の信頼できる人物を味方につける必要性がでてきたわけだ。まあ、ばれなければいいじゃないか? という意見もあるだろうが、こういうのはばれたときのことを想定するべきだからな。それに、すでにハイデン、フィンダールと触手を伸ばしているところを見ると、他の国が安全とは言い切れない。いや、確実に手が伸びているだろう。ということで、下手をすると、中級神派に取り込まれた国と、そうでない国で争うことになるだろうな」


そう。その最悪のシナリオはそれだ。

500年前に起こった、女神ルナ様と中級神派の争いが再現されかねないのだ。

そうなれば、数多の国を巻き込んで混乱は必至。

マジック・ギアという魔物を呼び出せる悪魔のアイテムが戦場で使われれば、魔物を知らない各国にいったいどれだけの被害がでるかもわからない。

その最悪の事態になったとしても、味方を増やせれば被害を最小限に抑えられる。

そんな事態が起こらないようにするべきではあるが、しくじった場合のことも考えるのは上に立つものとして必要だ。


「ま、そんな難しいことより、関係のない人を巻き込まないためと思えばいい。そういうのはお国のトップたちが考えることだ。学生諸君は気楽にな」


そういわれて、ようやく気が付いた。

この場にいた、カグラ、ミコス、ソロの顔が真っ青になっていたことを。


「ユキ様。彼女たちに詳しいことは伝えていなかったのですか!? カミシロ公爵もです!!」


私が声を荒立てて立ち上がっても、ユキ様もカミシロ公爵も特に驚いてはいなかった。


「いや、事前に伝えるわけないだろう。これ国家機密だぞ」

「スタシア殿下。覚悟が足りない我が娘や学友たちを思っていただき、感謝いたします。ですが、本人たちが望んだことです。やると。自らも役に立てるならと」


それは、その通りだが、彼女たちは学生で……。


「スタシアお姉様。お心遣いは感謝いたしますが、すでに覚悟を決めてのこと。それは将軍であるお姉様がよくわかっていらっしゃるでしょう?」

「ぬぐっ……」


確かに、カグラ殿たちの顔は真っ青になってはいるが、怯えはない。


「ははは、スタシア殿下。最近はよく表情をコロコロと変えられますな。私も嬉しい限りですぞ」

「ふんっ。だが、倒れられたら迷惑でしかない。具合が悪くなればすぐに言うように」

「「「はい」」」

「ふふふ。さあ、お仕事です。聞いた通り。これはとても大事な仕事です。よく写真を見て判断してください」



ということで、スティーブ将軍たちが事前調査で撮影したものを全員で確認していく。

幸い、どこぞの王族らしきものは確認できなかったが、厄介なことに元貴族というのは予想通り多く見受けられた。

確証はないが、どう見ても動画を見る限り、貴族の動きであるという者が幾人もいる。

そんな中、不意にユキ様がつぶやく。


「そういえば、総本山にいるハイレ教のトップ……なんていうんだっけ? 大司教だっけ?」

「はい。正確にはエノル8世となっております」

「エノルってことは、血縁?」

「いえ。襲名になっております。エノル様の子孫は、我らが御三家の一つとして、ハイデンの教会にいます。そして、ソウタ様からお聞きになったと思いますが、カミシロ家の始まりは、ソウタ様とエノル様が結婚してできたものです。まあ、詳しい話を聞く限り、エノル様とハイレン様はソウタ様の取り合いをしていたようですが」


その通り、だからこそハイデンの立場は建国当初から今までずっと強かったのだ。

女神ハイレ様と共に魔王を倒し、建国し、そして崇め奉ったという事実が、魔王の脅威から救われた国々にとっては感謝するべき事柄であり、また、嫉妬の対象でもあった。

だからこそ、ハイレ教の総本山のトップはそういう嫉妬を抑える為にも、襲名制として4大国を中心に大司教を決めることになっている。

総本山がハイデンに存在しない理由の一つでもあるのだ。


「ユキ様。そのエノル8世がどうかしましたか?」

「いや。その大司教はどっちなのかなーってのをな」

「どっちというと、正気なのか、中級神派なのかということでしょうか?」

「そうそう」

「……わかりません。というのが正しいのでしょうけれど、オーノックでとらえた助祭のことを考えると総本山の者は全員クロではないでしょうか?」


そうでもなければ、あんな気のふれたことを総本山からやってきた者がするわけがない。


「まあ、気持ちはわかるけどな。しかし、元は、このカグラ、キャリー、カミシロ公爵、果てはスタシア殿下のご先祖様たちが、戦友の為に作った宗教だ。それが全部染まっていると思うか?」

「あ、いえ。だからこそ、こっそり潜入して調査するのでしょう?」


そうだ。そのために、全員を切り倒すのではなく、敵を見定めて行うということになっている。


「いや、それはあくまでも、今後の展開で切っちゃいけない人を見極めるためだ。味方を増やすためだな。だけど、それって、色々裏でやっている連中にとってはそれを知られるとまずいってことだろう? ほら、オーノックの司祭のおっちゃんみたいに反発している人もいるし」

「えーと、なにが言いたいの。ユキ? それはわかっていることでしょう?」


カグラ殿はユキ様が何を言いたいのかわからず、首を傾げる。

私たちもユキ様が言いたいことが分からずにいる。


「あー、なんて言ったらいいかな。これ、本当に大司教が主導でやっていると思うかって話だ。こんな元の教えから大幅にずれたことを、トップが指示して部下が納得するとおもうか? 逆に、騒ぎにならないか? 大司教が乱心したとか。そういう話は聞いたか?」

「そういわれると、そういう話は聞いたことないわね。お父様、聞き覚えは?」

「いや。聞いたことがないな。それに、ユキ様の言うことはもっともだ。ということは……」

「つまり、一部の者が勝手に動いているということですな。しかも、オーノックの件から考えると、助祭などの派遣決定をできる立場の者に限られますな」


確かに、よくよく考えればその通りだ。

あくまでも、ハイレ教会の全部が敵でないというのはわかっていたはずだ。

なのに、憎しだけで視界が狭まっていた。


「だろ? 俺もクソ神様を叩き潰すっていうことで結構強硬姿勢になっていたことに気が付いた。でも、冷静に考えると、教会のトップである大司教はどう考えても、無理やり賛同させられているか、部下がやっていることを理解していないというところだろう。オーノックの助祭の件がまさにそうだ。大司教あるいは、ハイレ教の上層部が過半数以上でもいいから、味方に付いているなら、あんな面倒なことはしなくていいんだ。各地にある全部の教会の人員は無理でも、魔術学院近くの補給場所の教会は、全部、動かしやすい人員に変えることぐらいできるはずだからな」

「その通りですね。オーノックの教会は本山から送られてきた、助祭とその一部の部下たちだけがあの凶行を行っていましたし、内容を知っていた司祭様は一命を賭して反発しました。話を聞けば何度か反発する者や、事実を知った者の始末もしたようです。となると、これは一部の者が密かにやっているということになりますね」


ユキ様やキャリーのいう通りだ。

総本山の中に敵がいるのは間違いないが、大司教様が関わっている可能性は限りなく低い。


「となると、方針は変更になるのではないでしょうか? 大司教に話をつけるという方法もあるはずです」

「スタシア殿下の言う通り。そっちの方針の方が、今後の展開のためにもすごくいい」

「ですが、手間がかかるのでは? それに交渉事となると……」


作戦の変更というのは予算や手間を大幅に増やすものだ。

それに、これは軍事行動というよりもややこしい交渉事になる。

ん? そこで違和感に気が付いた。

ユキ様は基本的に戦いよりも、交渉事の方が……。

そう思って、ユキ様の顔を見ると、にこにこしていて、それを見ているのは私だけでなく、この場にいた全員。


「いやー、交渉事か。大変だなー。よし、今までの証拠をかき集めて、こっちの仲間になってもらうようにしないとな」


そういって、部屋を出て行く。

あ、これは、戦闘するよりもひどいことになるのではないのだろうか? 





忘れている人も多いかも知れないが、ユキの本領は相手の中を引っ掻き回すこと。

自分の味方を増やして機能不全を起こして、動きをさせなくする。


そして、カグラも早い復帰。ぶっ倒れてウィードに行ったはずだが、その理由は次回。



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