第612堀:大・降・臨!!
大・降・臨!!
Side:ユキ
『やあ、来たね。水から話は聞いているよ』
そういって出迎えてくれたのは、この学院の創設者の1人であり、日本人でもあるソウタさんだ。
幽霊だけどな。
と、そこはいい。
今までは、おまけが沢山ついてきていたので、話せる内容が限られていたが、今日の訪問はウィードのメンバーしかいない。
そういうことで、これからとことん俺たちが聞きたいことに答えてもらうことにしたのだ。
500年前なにがあったのか? そして、俺たちがこの新大陸で魔力に対する問題にどう対応するべきなのか。
これから話す内容は唐突に聞かれても答えられないだろうということで、水龍に頼んであらかじめ伝えてもらっている。
カミシロ公爵やカグラも俺たちが魔力枯渇の為にこちらの世界に来たと、というか拉致されたのは知っているが、具体的に何をどうするのかは知らない。
というか、俺もよくわからん。いまのところは、ダンジョンを使って魔力を集めて、取り敢えず濾過循環装置を各地に設置している程度だ。
大自然に対して、人のできることなんぞ、小さいものだよなーと改めて思う。
「さあ、お話をと言いたいんですが、その前に、今、学院というかハイデンの方で起こっている問題を把握してもらったほうがいいでしょう」
『ん? 今の問題は今の若者たちにって思ってるんだけど……』
『そうもいかん内容だ。昨日、状況が一変した』
『水、どういうことだ?』
ただの国同士とかの問題であるならともかく、学院の生徒が生贄にされている可能性ありという情報をもたらすと、にこにこ顔から、無表情になる。
『……なるほど。生贄を使った魔力確保をしていたわけだ。しかも、私たちの学院の生徒を使って』
「今さらなんですが、こちらで魔術を使う際の、魔力消費はそこまで多くはありません。しかし、召喚となれば別です。生物を欠損や命を失うことなく、移動、転送するとなると、魔力消費は莫大なものになります。それは、カグラやキャリー姫が所持していた、御三家のペンダントからもわかると思います。まあ、あれは、異世界から私たちのような者を呼び出すためのもので魔力消費量はくらべものになりませんが」
『今回の魔物の呼び出し、さらに、500年前の戦争でも同じように命を奪って強制的に召喚させていたということだね?』
「はい。といいたいですが、500年前のことは何もしらないので、何とも言えないんですよ。こちらで、魔力枯渇の原因を探るのならば、そのきっかけとなったと思われる500年前に起こったことを知っているべきだなと思ったわけです。というか、ダンジョンについては何か知っていることは?」
『ダンジョンか。君たちが、その力を使っていると聞いた時は驚いたけど、もう顔を合わせて話し合ったあとだし、水からもくどくど言われたあとだったからね』
「その様子だと、やはり、500年前の戦いには……」
『うん。ダンジョンもかかわっているよ。だけど結構面倒な話なんだよね。と、そこはいいんだけど、500年前のことを教えた神様がいるって聞いたんだけど……』
「……ええ。その神の話で、ここの魔力枯渇の原因はそこらへんにあるんだと当たりを付けたわけです」
くそ、やはりその話をしないでおくことは不可能か。
『となると、あの500年前の争いの原因といってもいいのかな?』
「いや、詳しい話はなにも聞いてないです。というか、本人はこの件にはノータッチと言っています」
あの駄目神曰く、失敗したうちの一つで、厄介そうだから後回しにしておいた程度のモノだ。
『ふーん。あの戦いの裏話を知っていそうな感じだね。私も会って話すことはできるかい?』
「話すことはできるとは思いますけど、本当にあれは何も知りませんよ? 知っているならここで聞くようなことはないですから」
裏話は正直、裏の裏ぐらいで、500年前の戦いとは全く関係ない、このアロウリトの神とかいうバカ者どものお話だ。
『まあ、そうだけどね。水が言うには天照大御神らしいじゃないか。神社の息子としても、日本神話における最高神、太陽様には会ってみたいんだけど……だめかな? いや、簡単に会えるとは思ってないけどさ』
会えます。
簡単に会えるからこそ、会わせたくない。
ソウタさんを絶望させたくないという気持ちと共に、アレを見て、天照大御神と信じられるのかということが一番心配だ。
下手をすると、ソウタさんと築いてきた信頼関係があの駄目神のせいで一気に崩れることが怖い。
あれは、俺にとってやはり爆弾でしかない。
……どうする。会えないというべきか? あれはいないと押し通すべきか?
しかし、逆に会わせなかったということがのちのちばれたりすれば、信用はがた落ちになりかねない。
ならば、あの駄目神を説得して、それらしい恰好をさせるべきか?
いや、あれがそんな風に人の言う事を聞くのであれば、最初から俺がこんなに苦労はしていない。
バタンッ!!
そんな思考の迷路に嵌っていると、不意にソウタさんと水龍の視線が俺から外れドアを見ていた。
ああ、あの音は誰か来たのか? と首をドアに向けるまえに……。
「呼ばれてきたわよ!! 天照大御神、大・降・臨!!」
固まった。
固まって、血の気が引いた。
聞き覚えのある声。
残念ながら、嫁さんでも、ハイデン関係者でもないと、声を聴いた耳が、覚えていた脳が言っていた。
まぎれもなく、奴だと、呼ばなくても馬鹿が来たと。
賽は投げられた。
……覚悟を決めて説明するしかない。
で、俺が顔をドアの方向に向ければ、そこには堕女神で駄目な女神が威厳もクソったれもない、いつものスーツ姿で日本の特撮ヒーロー一号さんの変身ポーズを取っていた。
『えーっと、なぜ外人さんが、仮面ラ○ダーのポーズを?』
ソウタさんが発した言葉は至極当然の疑問だった。
「あれ? なんか別の意味で驚かれてるんだけど?」
「俺に振るな。というか、来るなら、普通に入ってこい、普通に!!」
「えー? だって、今時の信仰心よりも猜疑心の方が強い日本人よ? 胡散臭い、すけすけの衣つけても信じるわきゃないでしょう。あと、こっちのスーツの方がかっこいいし、機能的だし、私って別に露出の気があるわけでもないのよ」
「もうちょっと、後光差すとかあるだろうが!?」
「あれってまぶしいだけじゃん。今から自己紹介して、長い話でもしようかって時にするもんでもないでしょ」
「いつまでもやれって言ってないだろうが。最初だけ、説得のためだよ。説得の!! OLのスーツ姿で金髪のオッドアイ、その容姿のどこから、天照大御神だと思うかよ!? というか、もうそのポーズはやめてさっさと上がってこい」
「はいはい。せっかちよねー。この男」
お前が、事態を混乱させてるんだよ!!
と、言いかけて飲み込む。
こいつのペースに飲み込まれるな。
『……えーと、状況から察するに、天照大御神様で間違いないよな?』
『……ああ。あの神に容姿などあってないようなものであるし、あの服装は地球の服装だろう。この世界にあの服があるとは思えない』
『まあ、そうだよな。あと、仮面ラ○ダーのポーズもとってたし、日本を知っているのは間違いなさそうだよな。いきなりドアの前に現れた感じだし』
『うむ。いきなりこの場所に移動してこれるなど、よほどの力がなければできぬ』
「ふふん。そっちの2人は私が本物って思っているわよ。信仰がたらないのよ。あふれ出る女神パワーを感じられないんだから」
「もういいから、そこ座れ。俺はお前を崇め奉る一族でもなければ、神社の子供でもないし、神道学者でもない。適当に、行事を楽しめればいい一般人だからな」
「……そう、そこなのよ。今の日本の問題は、ただの祭りで楽しもうって感じになってるのよね。ちゃんと背景とか歴史とかを学ぶ必要があると思うのよ」
座ってもうるさい奴め。
「それでも、お参りに来る人の数は、年々増えてるだろうに」
「そうなのよ。第二次世界大戦以降、人口も増えて、さらに観光客で外人さんまで普通に神社にくるからね。右肩上がりよね」
『あはは……。有名なところはうらやましいね』
『一応、ソウタの所も宇迦之御霊神だろう』
『田舎の神社に、人は来ないよ。地元の祭事を請け負って、あとは神社仏閣への支援制度でギリギリ食いつないでいるって親父は言ってたし』
「あー、まあ、地方はそうでしょうね。と言っても、神社や仏閣ってのは、人の心の安寧の為にあるからね。別にどこにあっても問題はないのよ。私の話は、神様が今回のように降臨しても、日本どころか、地球上の主要都市では信じてもらえないよねーって話」
『お言葉ではありますが、それは今も昔も変わらないのでは? 名乗っただけで人が信じるとは思えませんが』
「いやいや、全然違うわよ。多少神通力とか見せても、手品とかそういう類に見られるからね。今の世の中。今の水神の姿もただのラジコンって言われるのがオチね」
『……だよなー。今の水を実家で見せられても、高度なラジコンとしか思わん』
『……信仰心の無さが深刻な問題だというのがよくわかりました。天照大御神様』
「いや、日本の信仰問題はいいから、話を進めるぞ。ここは、日本の神様の寄り合い所じゃねえ。神無月にでも出雲に集まってやってろ」
「そう、それも不満なのよね。なんで出雲なの? 私の所に集まるべきじゃない? 具体的には伊勢神宮に。あそこが私の総本山よ?」
「日本の神様事情なんかしらねーよ!? というか、神無月に出雲に集まるって話は本当かよ!! あれ、作り話だって説もあるだろう」
「あー、人も神様も同じなのよ。こう噂が流れたからには、集まろうって話になったのよ」
「世間を気にするのかよ!?」
「気にするわよ。信仰が力に直結してるのも多いんだし。ああ、諏訪の奴はでっかい体のまま来たがるから、くんなって塩まいたわよね。私たちが窮屈で仕方ないわ」
『……諏訪明神の話本当だったんだ』
「そうなのよ。というか、よく知ってるわね。流石、神社の息子ってところね。そういう博識は喜ばしいわね」
「いやいや、ソウタさん話が本当どころか、追っ払ったって感じだぞ真実は」
「こなくていいってことには変わりないからいいでしょ。というか、お茶」
『あ、はい。少々お待ちを』
「あ、お茶請けは醤油おせんべいで」
バンバンと机をたたいて茶とお茶請けを催促する駄目神。
お茶漬けを持ってきていいぞ、ソウタさん。
勧めるのではなく、リアルで持ってきて追い返せ。
って、違う違う。
俺たちは、日本の神様事情を聞くために駄目神を呼んだわけじゃない。
いや、呼んでもないけどな。
「ふう。いやー、話が通じるっていいわね。このユキもそうだけど、タイキもタイゾウも日本の神連中のことを深く話すとついてこれないのよね」
『それは当然かと。私のような妖怪かどうかという怪しい神もおりますからな』
「はいはい。そこまでだ。俺たちの話が終わった後で話してくれ」
「えー?」
「えー? じゃねえよ。さっさと本題を喋れ。というか、お前も話を聞きたいんだろうが」
「仕方ないわね。あ、ソウタ。ありがとう」
悪態をつきつつも、お茶を受け取りながらお礼をいう駄目神。
『あれ? 名乗りましたっけ?』
「それぐらいわかるわよ。これでも天照大御神だからね。さて、聞きたい話っていうのは、500年前のことよね?」
『ええ。あの時、なにが本当の原因であの戦いが起こったのか』
ほっ、ようやく本題か。
本当に疲れる。
俺がそう思っていたのだが……。
「知らないわよ。連絡が取れなくなっただけだからね。一々、この地方のことまで詳細確認しないわよ」
『『え?』』
駄目神のぶっちゃけ話に、目が点になるソウタさんと水龍。
「お社もないところのお世話を頻繁にするわけないでしょうに」
『あ、ああ。そういえばそうですね』
『確かに』
「ただ、ユキに呼ばれてこの土地にきてわかったことは、中級神派の連中が未だに何かしてるってことだけ。当時を詳しく知っているのはソウタと水神のほう。そっちから話を聞かせてくれない? そこからある程度予測ができるかもしれないわ」
ルナの言い分に納得した2人はようやく当時のことを話しだす。
さて、いったい500年前になにがあったのか……。
今回の問題を解決する何かが存在するのか?
よろこべよ
待ちに待ってただろう?
話の進展を。




