落とし穴101堀:楽しみな未来と不安な足元
楽しみな未来と不安な足元
Side:デリーユ
「え、えーと、改めてこれからよろしくお願いします」
そういって、ソロ・フィンドウが挨拶をして、周りが拍手をする。
「これからよろしくね」
「は、はい!! 頑張らせていただきます!!」
カグラにそういわれて、カチンコチンで返事をするソロ。
やはりというか、人と話すことになれていないので、ぎこちない。
1人でいることを好む彼女は本来こういう場にいるはずがないのだが、ひょんなことから行動を共にすることになったので、こうして親睦会を開いているというわけだ。
……そもそもの原因はこちらにあるからのう。
いや、友達を作れないソロが悪いと言えば悪いのじゃが、まあ、そこは、こちらが無理に押し入った形になったしのう。
……ボッチなのは妾も一緒なので、そこも理解はできるのじゃ。
理由などは違うが、人を避けて生きていたことには違いないからな。
というか、ボッチの期間だけでいうなら、妾の方が圧倒的に長いからのう。
なにせ、百年単位でぶらぶらしておったからな。
そんなことを考えつつ、親睦会を眺めていると、アマンダが妾に話しかけてきた。
「ねえ。デリーユ師匠。そういえば、ユキさんたちはどうしたんですが? 親睦会なんですよね?」
「ん? ああ、ユキたちはちょっと遅れるそうじゃ。夕方の噂、実はソウタが絡んでいたじゃろう? それで、何か他に細工とかしていないかというのを確認しているんじゃよ」
「ああ、なるほど。だから、今日の夜は親睦会になったんですね?」
「そうじゃ。このまま夜の噂に行って、またソウタの仕掛けでしたってオチがないようにな」
そう、夕方に見知らぬ教室が現れるという噂話は、元をたどると、ソウタがあの図書館の秘密の部屋を維持するため装置であり、日本人を探すための手段が、紆余曲折してあのような噂になっただけだったのだ。
500年も前の噂じゃ。そういうこともあろう。
逆に今まで6つの内3つがしっかり形を保っていたのが不思議なくらいじゃ。
こういうのは十中八九ガセと決まっているからのう。
ソロのトイレ、ソウタの夕方の教室とはずれが続くのはむしろ当然といっていいじゃろう。
というか、ここまで噂の裏が取れること自体も稀じゃ。
「まあ、だがこうやってしっかり真実があるということは、ミコスの情報収集能力は確かなものということじゃな」
「でしょう!! デリーユさん!! 私ことミコスちゃんは、がんばっているんです!!」
「うむ。情報は大事じゃからな。しかもミコスの集める情報は精度も高い。いい仕事をするじゃろう」
このミコス、当初は胡散臭いと思っていたが、情報を集めて精査する能力はかなり高い。
ウィードの諜報部までとはいかないが、そこは元々の技術力の差があるからなので、同じ条件でやれば恐らくウィードの諜報部にも負けず劣らずの能力を発揮するじゃろう。
妾は素直にミコスの実力を認めて褒めると、ミコスがお願いをいいだした。
「あの、そこまで買っていただいているなら、どうにかして、ウィードの見学とかできませんか?」
「ウィードのか?」
「カグラだけでは大変そうだし、私もウィードを見て見たいというか……」
まあ、話は分かる。
むしろ当然のことじゃな。
情報を扱うミコスにとっては未だ知らぬウィードは是非とも行ってみたい場所じゃろう。
今回の功績もあるし、今後の交流を深めるためにも、進んでウィードを見てみたいという者は受け入れるべきじゃろうな。ユキも反対はせんじゃろう。
だが、それもこの騒動が終わってからだ。
「うむ。ミコスもこの騒動が片付けば招待しよう」
「本当ですか!?」
「まあ、一応、ユキやセラリア、ウィードの上層部に許可をもらわなければいけないから、絶対とはいえん。だが、確率は高いじゃろう」
「やったー!!」
そんな風にミコスが喜んでいるのをみた、アマンダもお願いをしてくる。
「デリーユ師匠。それなら、ソロもいいんじゃないですか?」
「え? そ、それは、私、なにも……してませんし」
「大丈夫よ。ソロも一度外に出てみれば色々自信が付くかもしれないし、来るべきだって。ねえ、エオイドもそう思うでしょう?」
「そ、そうなんでしょうか?」
ソロは恐る恐るエオイドの反応を伺っている。
この親睦会の中で唯一の男じゃからな。
「まあ、経験になるし、いいんじゃないかな」
「この馬鹿エオイド、自分でソロを庇っておいてそんな言い方はないでしょう」
「いや、是非来てくれっていっても、ソロの意思もあるだろうに……」
「だ、大丈夫です。いけるなら是非行ってみたいです。アマンダさんたちがいるなら、安心できます」
年が近いだけ安心できるんじゃろうな。
いや、妾も十分若いがな。
しかし、立場とかは上だから気を遣うなというのも無理があるからのう。
ミコスはともかく、ソロは無理強いしてどうにかなるとは思えなかったが、アマンダとエオイドに任せれば安心かのう。
これがきっかけでボッチを抜け出せるといいんじゃが。
1人が悪いとは言わんが、できることは限られてくるし、これから面倒な社会に出て行くことじゃからな。
妾たちとかかわったことが、ソロにとっていい出会いであると願いたいのう。
「よーし。じゃあ、私とソロで、存分にウィードを楽しもう!! カグラの奢りで!!」
「なんでよ」
「私たちお金に余裕なんてないし」
「威張るんじゃないわよ」
「……あの、そこは自分でなんとかします」
「ミコスはほっといて、ソロは私がおごるからいいわよ」
「なんでさ!?」
「さっきの態度でそう決めたわ」
「あはは……」
在学生である、カグラとミコスとのやり取りはいくらか砕けてきているし、元来、別に人付き合いが出来ないというわけでもないのじゃろう。
リーアみたいにぶっ壊れていた様子でもないからのう。
そこらへんは安心じゃな。
「ミコスとソロが来るなら、ウィードでしっかりもてなさないとね」
「ん。リーアの言う通り。私も手伝う」
「秋天も手伝う」
「そうでございますね」
リーアたちもやる気みたいじゃし、ミコスとソロが来るのは確定かのう。
とはいえ、ミコスとソロも最初は目を回すじゃろうがな。
そんな話をしているうちに、ユキたちも会議が終わったのか、戻ってきた。
「間に合ったか。お邪魔してもいいかな?」
「はい、旦那様。こちらにどうぞ」
キルエの案内で、ユキたちも席に着く。
「ユキ先生たちもお疲れ様です。どうです? 他に何かありそうでしたか?」
ミコスが会議の結果を聞く。
親睦会中に仕事の話はどうかとは思うが、やはり妾たちも気になるので、みんなユキの反応をまつ。
「いや、ソウタさんの話によればそういうのは、あれだけらしい」
「となると、寮棟の方は……」
「確認が必要だな。ま、そういう難しいことは明日だ。明日。今は楽しく話でもしよう。ソロは楽しくやってるか?」
「は、はい!! おかげさまで!!」
ガチガチに緊張した返事をされて判断がつかないユキはこちらを見てくる。
「本当じゃぞ。初対面の時よりは仲がよくなっておる。ついでに、ミコスとソロのウィード観光でもという話になっておる」
妾がそういうと、タイゾウが頷いて口を開く。
「いい話じゃないか。カンナ殿やグリモ学院長殿も来たいといっているし、学院内のメンバーだけでもウィードに慣れておくというのは必要だろう。ここまで参加者もいるのだし、学院主催の見学、旅行みたいな措置でもいいのではないですか? 学院長はどう思われますか?」
「そうですな。いい案と思います。カグラ君は外交官としての立場があるからいいとしても、単なる友人としての訪問ではミコス君とソロ君は私的な休みとして扱うしかないですからな。まあ、当然姫様に話を通す必要はありますが、カンナ君はどう思うかな?」
「学生たちの見聞を広げるための他国訪問というのは前からありますし、良い話だと思います。まあ、私は臨時教員みたいなもので、あまり参考にはならないと思いますが」
「いや、ウィードとの交流がある教員はカンナ君だけだからな。その時は引率として頼むよ。私はユキ殿たちと色々話すことになるだろうからね」
「はい。その時は是非」
「ということで、俺たちとしても特に反対意見はないな。あとは、セラリアたちに話を通せばいい」
うむ。
ユキたちも特に問題なしと。
「えーっと、セラリアって、確か……」
「こら、ミコス。ウィードの女王陛下よ。様をつけなさい、様を!!」
「うぇっ!? し、失礼しました!!」
「公式の場でもないし、気にしないから大丈夫。まあ、場所によっては気を付けてくれ」
「はいっ!!」
「……ミコス。ユキたちがフランクだから忘れているんでしょうけど、とんでもなく高貴な人たちなんだからね。本当に注意してよ?」
「わかってるって。で、ソロはなんで固まってるの?」
ミコスの発言でソロを見ると、なぜか微動だせずにパンをもったまま固まっている。
「ソロー? どうしたの?」
「じょ、女王陛下と会う可能性があるのでしょうか……」
「ん? そりゃ、ハイデンの代表として行くんだろうから、あるんじゃないかな?」
エオイドは首を傾げながら、ユキの方を見る。
「そりゃ、たぶんよほどの事情がない限りあると思うぞ。学生とはいえ、国賓扱いになるだろうしな。初の正式交流みたいなもんだ。ないほうがおかしい」
ユキがそういうと、ソロがプルプル震えだして……。
「私、ウィードにいくのやめます」
「はい? いきなりどうしたの?」
「だ、だって、平民の私が謁見して不快になったりして、ハイデンとの関係が悪化したりしたら……」
「「「ないない」」」
とソロの不安を一斉に否定する妾を含めたウィードメンバー。
それをみてポカーンとするソロに、ミコスが更なる追撃。
「というか、ソロ。ユキ先生はそのセラリア女王陛下の旦那さんだし、そっちにいるスタシア殿下もフィンダールのお姫様だよ」
「……そ、そうでした」
「首が飛ぶならもう飛んでるって」
「そうね。飛ぶならまず、ミコスが先だものね」
「うぉい!! カグラ、さっきから辛辣じゃない!?」
「私の奢りとかいう人が何か言ってるわね」
「「「あははは……」」」
カグラとミコスのやり取りでソロも不安が和らいだのか笑う。
まあ、平民が女王陛下と謁見とか夢のまた夢じゃろうがな、ウィード以外では。
セラリアは暇があればウィードの町に散歩に行っておるからのう。
いや、妾も同じじゃが。
「楽しい計画もあることだし、早いこと、残りの噂の解決もしてしまおう。みんな。よろしくたのむ」
ユキがそういうと妾たちも全員頷く。
「面倒事はさっさと片付けるに限るからのう」
「あ、じゃあ、今日は来なかったけど、次はデリーユ師匠も手伝ってくれるんですよね」
「いや、それはない。妾はあくまでも事が起こってからの後始末。怪談を実体験するのはアマンダたちに任せる」
「そんなー」
誰が何と言おうと、怪談を体験するとかは絶対にせん。
ユキの護衛でなかったらラビリスと一緒にウィードに引っ込んでおるわ。
まったく、なんで世の中には怪談なんぞがあるのか。
ウィードの学校はそんなの……ないのか?
と、今更不安に思えてきた。
いやいや、ウィードは新興国。お化けの出ようもないはず。
……ないよな?
と、わいわい賑わう親睦会の中で、ウィードの心配をするのであった。
こうやって楽しい未来の話をする一方で、ハイデンの中は未だに問題だらけ。
まあ、残る噂は1つ。これが片付けば、ハイデンの問題は動き出すかも?
というか、学院編は息抜きというかそういうのも兼ねていましたからね。
学院での定番お約束を見て楽しんでいただければ幸いです。
中には進みが遅いと思われる方もいらっしゃるのは当然だと思いますが、一応、学院編も諸国会議やソウタとの情報共有の為に必要なことではあったのだと、思っていただければ幸いです。
ではでは、もちっとだけ学院6不思議は続くんじゃ。(亀の甲羅を背負ったサングラスアロハ爺さん風)




