第599堀:よく見なければ扉はどっちに開くかわからない
よく見なければ扉はどっちに開くかわからない
Side:ユキ
さて、昨日の第二次探索の結果、この第三次探索で終わらせると目標が決まったので、そのあとは準備に追われていた。
まあ、必要物資などはすぐに集まって、問題はどの程度まで無理をするのか? というところだった。
如何に、次があるかわからないとはいえ、人死にがでてまで前に進もうとは思わない。
情報が欲しいのは欲しいが、命と引き換えというわけにはいかない。
ということで、話し合いの結果、今回の探索の条件がまとめられた。
・重傷者が出た場合、即時探索の中止、及び撤退。
・行方不明者が出た場合は捜索に切り替え、結果の有無にかかわらず撤退。
・探索時間が5時間を超えた場合、一度帰還すること。6時間以上戻らない場合は行方不明として扱う。
こんな感じで、ごく当たり前の条件だ。
この条件は護衛も含む。
たかが学院探索で死者など出してたまるかという奴だ。
それに加えて、俺やタイキ君、エージル、スタシア殿下といった、各国VIPも参加しているからというのも理由の一つだ。
わかると思うが、昨日のひと悶着の結果、スタシア殿下はついてくることになった。
無駄に正論を言うのでジョージンが折れた形となった。
元々危険も少ないというのもあり、ハイデンの秘密を握るということを押し出されると否定できなかったそうな。
なんというか、スタシア殿下も強かだよな。前からわかってはいたけど、ヒイロと仲良くなってからは我儘を押し通す方便に使い始めた。
ジョージンはこういうところは前の方がよかったと呟いていた。
何事も極端はよろしくないよな。バランスよく。
同じように、タイゾウさんやポープリも探索に参加したがったが、既に探索メンバーにかなり戦力や有識者を集めているので、万が一この探索メンバーに何かあった場合、外部から問題解決できる人員として、この2人は外せないので、外の待機メンバーとなってもらったわけだ。
まあ、流石にこの状況を理解しているので、何も文句は言わなかったけどな。
その代わりと言ってはなんだが、探索の会議室にはタイゾウさんやポープリが指示した機材が多く持ち込まれ、こちらのサポートは万全といった感じだ。
こういうところはやはり、経験を積んでいる年上がいるとありがたい。
と、こんな感じで、会議の後は慌ただしく準備を進め、今は準備を終えたメンバーが整列している。
「よし。探索メンバー準備は整っているな?」
そういってみんなを見ると、全員が頷く。
1人だけ、ヒイロを抱っこしているお姫様がみえるが、この世界、高確率でシスコンお姫様がいるので、そういうもんだろうと無視しておく。
「外で待機サポートメンバーの方は、準備はいいですか?」
「ああ、問題ない」
「大丈夫だよ」
「頼みます。カンナ君。何かあった場合は君がなんとしても、皆様を、身を挺して守らなければならない。すまない。本来であれば、私が赴くべきなのだろうが……」
「いいえ。学院長はこの学院をまとめるのが仕事、私が末端として、その時は必ずや」
学院長とカンナはこの学院の代表として色々胃の痛い話をしている。
この学院で問題があれば、まず学院関係者が処罰を受けないといけないだろうからな。
というか、学院長とか、長、お偉方が残るのは至極当然だ。
今回の編成が色々おかしいだけ。
ま、そんなやり取りがありつつ、俺たちはようやく探索に出発するのであったが……。
「流石に、多くない?」
「あはは、歴史書コーナーに収まりきるかな?」
なんて話すのはカグラとミコス。
それも当然、今この歴史書コーナーには、俺こと、ユキ、タイキ君、スタシア殿下、エージル、カンナ、クリーナ、秋天、リーア、デリーユ、キルエ、ヴィリア、ドレッサ、ヒイロ、ルース、そしてカグラとミコス。
総勢16名が一つの通路にひしめきあっているのだ。
どこの本屋でも10名以上が集まっている通路というのはそうそうない。
というか、人気がある書籍は普通、新刊コーナーに置いてあり、こういう混雑がないようにしているからな。
こういう物理的な人数制限もあることから、少数精鋭で、知識人を組み込む必要があったんだよな。
何もしらない人を送り込んで解決できるわけもなし。
それでも16人。限界ギリギリだ。
これでバラバラになるようなことはないだろう。
これが3人、4人程度ならいつの間にかというのがあるだろうが、ここまで人数がいれば数多の視線から逃れて、行方不明にはならないだろうという打算もあってのことだ。
怪奇現象は大人数で行くと出ないってのが定番だからな。
「よし、カグラ。やってくれ」
「あ、うん。いくわ」
今度はカグラもそこまで怖がっておらず、俺の指示を素直に聞いてトラップを踏む。
「飛んだ。とと様」
『うむ。移動したな』
2人の発言から、今度も問題なく移動したようだが、やっぱり移動したような感じはしない。
ゲートもくぐらず、気が付けば転移のような状態。
……日本とか異次元の世界じゃねーかよ。と思ってしまう。
まあ、それも今更か。昔から色々変な噂話はあったし、俺も妙な体験はしたことあるからな。
異世界すげーってより、地球の方が人外魔境じゃね? と思わないでもない。
と、それより、探索を続けるか。
「カグラ、声は聞こえるか?」
「うん。2階へこいって」
やはり、間違いなく声は聞こえるようだな。
俺やタイキ君もトラップを踏んでみると、二階へ来いという短いセリフだけ。
これを繰り返し小さい声でいうだけ。
こりゃー、意識してないと日本語って言うのもわからんわ。
「……じゃ、行きますか。ユキさん」
「……そうだな」
嫌な予感はしつつも、他の皆は特に悪意は感じないというので撤退するわけにもいかず、2階へ足を進める。
「……あれ? 下に続く階段がない」
「ほんとだ。じゃ、ここって1階?」
2階に降りてみると、1階へ続くはずの階段が存在せず、ヴィリアとドレッサが首を傾げる。
他の皆もあり得ない状況で、結構顔が強張っている。
「でも、2階って書いてある」
その中でヒイロはこういう異常性を異常と思わないのか、淡々と目に映るプレートを読みあげている。
幼い子というのは、ある意味こういう状況では場の雰囲気にのまれず、正しい判断ができるのかもしれない。
「2階で何か探せってことだろうな」
「まあ、そうでしょうね」
俺やタイキ君も定番すぎるネタなので、特に動揺はしないで、足を進める。
そのおかげか、他の皆も落ち着きを取り戻して後をついてくる。
「カグラ、あれから声とか聞こえるか?」
「え? いえ、別に何も……って、まって。何か聞こえる」
カグラはそういって耳に手を当てて何かを聞き取ろうとしている。
俺たちも何か聞こえるかもしれないので、静かに辺りの音に耳を澄ますと……。
『……い。……にこい。こちらにこい』
どうやら、俺にも聞こえるみたいだ。
俺だけかもしれないと思い他の皆に聞いてみると同じように聞こえてくるようだ。
「あれじゃないですか? 3階から2階へ誘導するのはいいですけど、2階も同じように何かと接触してだと、たどり着くことはほぼ不可能じゃないですか。だから、2階に来たら誰でも聞こえるようになるんじゃないですか? 日本語がわかる人ならしっかり誘導されるだろうし」
「十分あり得るな。とりあえず、誘導されている場所は全員一緒か?」
俺がそう聞くと、全員同じルートを指示した。
まあ、こっちに来いと聞こえる音量が大きい方を言っているだけなのだが、これで、聞こえ方が違うというのもなさそうだな。
こっちのメンバーをバラバラにしようという感じではない。
なので、とりあえず、誘導に従うことにして道を進んでいくんだが、同じような道を何度もぐるぐると通ることになり、こういうループネタを知っている俺やタイキ君、秋天、水龍はなんともなかったが、他のメンバーは同じ場所をずっとぐるぐる回っているので、もう疲れたとか、本当に進んでいるのか? 出られるのか? という感じで心が折れかかっていたりした。
うん。ネタとして知っている俺たちはともかく、何も事前知識がないと途方に暮れるよな、これ。
下手したら発狂もんだよ。
そんな感じでトラブルを乗り越えつつ、このそこまで大きくない図書館で5分ほど歩き回って、ようやく1階への階段を発見した。
どこまで我慢強いかって言うのも試されているんだろうな。
まあ、そこはいいとして、予定通り、今回は一気に調べる予定なので、1階へ降りると……。
「え? ここどこ?」
「あれ? ミコスちゃんたち図書館にいたよね!?」
カグラとミコスが驚きの声をあげて辺りを見回している。
いや、他の皆も辺りを見回している。
そこには、何もないただの部屋が広がっているだけだった。
本棚も本もテーブルも存在しない。
「どっきりで本とか本棚を運び出したとか?」
「そんなことをしたのなら、学院長を代えてもらわなければいけません」
俺の冗談にカンナが真面目に答える。
うん、冗談が通じるのはタイキ君ぐらいか。
下手なことは言わないでおこう。
「あれ? あっちになにかドアがあるわよ」
ドレッサが指さす壁にはいつの間にか、ドアが出現していた。
「でも、あんなところにドアなんてあったっけ?」
「知らないわよ。お姉様は」
「私もしらないわ。そもそも、ここは同じ図書館でもないのでしょう」
どうやら、学院の方々はあのドアを知らないもよう。
「となると、あれが秘密の部屋か?」
「だといいですけどね。秋天ちゃんに、水龍さんはどうですか?」
タイキ君が2人に話を振ると、2人は頷く。
「あの部屋から人の気配を感じる」
『うむ。あの感じはソウタのモノだ』
どうやら当たりらしい。
そう思っていると、ドアの方から声が聞こえてくる。
『そのドアを開けて入ってきなさい。この声が、言葉が理解できるのならば』
今度ははっきりと、男性の声が聞こえる。
水龍の言葉から、この声はおそらく、カミシロ家初代と思っていいだろう。
所謂、お化け、幽霊ってやつか?
まあ、敵意は感じられないので、そこまで警戒していないが。
とりあえず、皆に視線を向けるが、特に危機感などは感じていないらしく、このまま進むことにする。
「じゃ、カグラ。よろしく」
「ええ!? わ、私が開けるの!?」
「いや、水龍がソウタの声だって言ってるし、血縁者が開けるべきじゃないか? まあ、いやっていうなら、カンナ殿にたの……」
「やるわ!!」
ようわからんが、カグラはカンナに何やら対抗心燃やしてるんだよな。
あれか、優秀な姉に対してコンプレックスがあるという奴か。
タイゾウさんの授業はついていくだけで精一杯でカンナみたいに質問をバンバン飛ばしてくる余裕はないからな。
といっても、カグラは学生。対してカンナは研究職。もともとの下地が違うのだから仕方ないんだけどな。
「カグラがんばれー!!」
「ミコスもくるのよ!!」
「うぇ!?」
保身で身代わりのミコスシールドを持っていくのも忘れていないから、冷静さは失われていないらしい。
他の皆も何かあった時の為に構えて備える。
カグラやミコスをただ前に出すわけがない。こういうフォローは大人の役目だ。
「いくわよ」
「ちょっ!?」
ミコスの制止を無視して、一気にドアを押し開けようとして……。
「ぬぐっ!?」
開かずに、力を込めたカグラは妙な声を出してしまう。
『……外開きのドアだ』
ドアの方から、なんともいえない声が返ってくる。
「「「……」」」
皆も何も言えない。
頑張ろうとしていたのはわかっているので、なおのことだ。
「あの、カグラ。引くんだって」
「……わかってるわよ」
ミコスが遠慮がちに言ってようやくカグラはドアを引く。
すると、すんなりドアが開く。
そして、中にはちょうどドアの前に一人の男性が申し訳なさそうな顔をして立っていた。
『外に外開きのドアだと書いておくべきだったね』
と、顔を伏せるカグラにそういうのであった。
どうするよ、この空気?
誰でもあると思います。
別に、判りやすく引いてくださいと書いてあっても、思い込みで押してしまうということは、デパートとかでも普通にあります。
自分も経験ありますから。
そういうときって、こうみっともない失敗をしたと恥ずかしくなることありますよね。
大人になると、あまり気にならなくなるのですが、若い多感な頃はちょっと気になるかもしれません。
後から思い出すといい笑い話なんですがね。
今のカグラにとってはあれでしょうが。
こういう時、皆さんならどうします?
>慰める
>そっとしておく
>見なかったことにして普通に接する
女学生相手にはどれも地雷に思えるのは私だけでしょうか?
あ、あと、個人的に小説の書き方というか、小説になろうでの「雪だるま式書き方」でも書いてみようかと思うんですけど、どう思われるでしょうか?
目的としては、誰でも気軽に書いてみてはどうですかってことで、完全な自己流の書き方を教えるっていうのは偉そうだけど、参考になればと思っているのですが。
自分が色々物語を読んでみたいというのもある。




