第580堀:次なる舞台へ
次なる舞台へ
Side:ユキ
「初めまして。私はエナーリア王国より派遣された外交官兼、総合技術顧問、将軍を務めているエージルと申します」
そうビシッと挨拶するエージルは、幼い容姿ながらも、威厳に溢れている。
流石、エナーリアで要職を務めているだけはある、立派な大人だ。
それに対して……。
「は、初めまして。私はハイデンより派遣された外交官で、カグラと申します」
少々固いがそろそろ慣れてきたかなーという感じのカグラである。
さて、なぜにエージルとカグラが顔を合わせているかというと……。
「「本当に別大陸の人なのですか?」」
と、お互いが聞いている、それが理由だ。
未だ、イフ大陸、新大陸共に別大陸の存在を疑っているモノがいるので、それを払拭するための顔合わせでもある。
口だけならなんとでも言えるからな。
品物、文化などを見せるのもいいが、一番いいのは当人たちの顔合わせがいい。
それは、俺たちウィードと出会った連中ならよくわかるだろう。
あれだ、百聞よりも一見という奴だ。
昨日、エージルがウィードにやってきて、遊び倒したから本日はお仕事というわけだ。
その一歩がこれ。
異文化、異国交流こそ外交官の仕事である。
俺はそれを取り持ちつつ、のんびりしているだけでいいという役回りだ。
「まあ、あの2人はいいとして、そっちの2人はのんびりしてるな」
俺がそういうと、エージルと一緒に派遣されてきたという建前のポープリとヒフィーはのんびりお茶を飲んでいる。
「え? そうは言われてもね。私は技術派遣だからね」
「同じく、私も技術派遣ですから、外交官の仕事はないですし」
「「というか、今更信じる信じないの段階ではないですし」」
「そこはわかるが、カグラはその技術にも関係してるぞ? 一応、魔術学院の学生でもあるからな。そこでトップクラスの成績だから、そっちの方面でも十分に活躍してくると思うぞ?」
「へー、彼女がね」
「その話は聞いていますが、彼女は外交官の仕事が忙しいのでは? そもそも学生とあれば」
「縁を大事にしろって話だよ。カグラを通じて、ハイデンや新大陸の技術者と繋がれるかもしれないだろう?」
そんなことを話していると、エージルも話を聞いていたのか、話が盛り上がっている。
「ほほう。カグラ殿は優秀な魔術師なのかい?」
「いえ。聞いたと思いますが、私は未だ学生の身なので。私より優秀な者はたくさんいますよ」
「ふむふむ。そういうのはイフ大陸と変わりはないのか。そういえば、ユキ殿」
「どうした?」
「ロガリ大陸には魔術を学ぶための国、みたいなところはないのかい?」
「んー。ロガリ大陸は基本的に魔術を使える人が多いからな。そういうのは山ほどあるみたいだぞ? まあ、あえて言うなら魔術の国というのがあるな」
「魔術の国?」
「ああ、そこが一番有名だな。魔術に対して重きを置いて教育はもちろん、研究なども盛んだな」
ま、敵対してたから色々面倒だったんだけどな。
「ふむ。今後はその国とも交流はあるんだろう?」
「まあな。だが、まだまだ先の話だ。まずは、足元を固めるのが先だな」
「それはわかっているよ。で、カグラ殿との顔合わせは終わったけど、これからどうするつもりなんだい? 昨日みたいに、友好を深めるためにまた遊びに出るかい?」
「いや、それは休みの日にでもやってくれ。今日は品物選定だな」
「品物選定? ああ、輸出用の物とかを決めるのかい?」
「そうそう。カグラの方も決めないといけないから、ついでってやつだな」
「いやいや、そういうのは国によって違うし、政策も絡むから一緒にやるのはどうなんだい?」
「お互いの国を知ることも大事だろう? というか、お互い国を説得するための材料集めが、今の外交官としての仕事だろう? 同じ状況なんだから、顔を突き合わせて考えればいい案でも浮かぶんじゃないか?」
「ああ、そういう見方もできるのか。で、そういうことらしいけど、カグラ殿はそれでいいのかな? 国の方針で遠慮したいなら、して構わないよ。ユキはこう見えても無茶を言う人じゃないからね」
エージルはカグラに気を使ってそう話すが、カグラは拒否することはなかった。
「いえ、私もエージル殿と意見交換ができることは有益だと思いますので、ご一緒したいと思います」
「そうかい。なら、よろしく」
「はい。よろしくお願いします」
そんな感じで2人が国に持って帰る品物の選別に取り掛かる。
俺はカタログを渡して、希望の品物があれば取り寄せるという仕事をしている。
ちなみに、ポープリとヒフィーの方は既に退出して、コメットとザーギスの研究室へと行っている。
外交官の仕事を始めた2人を邪魔するわけにもいかないということだ。
で、やはりこの品物選定に時間がかかったのは言うまでもない。
お国を説得するための物でもあり、自分の仕事の評価をうけるところでもあるから、2人は真剣になる。
自分の進退に関わるからな。
ちなみに、イフ大陸の外交官としての建前を持っている嫁さんたちもこの品物選びはやったのだが、こっちは自宅でのんびり雑談をしながら決めていた。
まあ、付き合いが長いから一々カタログを見ることもなく、ラッツやエリスと話し合って、既に持っていく品物などの方向性は決まっていたらしい。
まあ、そんな感じで、時間はかかりつつも、物品は決まり希望の品を各国に送ることになった。
「さーて、これから新大陸ってところかな」
俺は各国に送った物品の書類を見ながらそう呟く。
そう。面倒なことは大体片付いた。
あと細かいことは俺ではなく、他の連中が頑張ってくれることだろう。
「そうね。と言いたいけど、流石にロガリ、イフ合同会議には顔出さないといけないわよ?」
セラリアが書類を見ながらそういう。
「それは顔を出すけど、それはまだ先だからな。今は送り付けた品物で各国が騒いでいるところだろうな」
「その間に、新大陸の方に力を入れるってわけね」
「そういうこと。今回の品物を送ったことで、ハイデンの方も動き出すだろうからな。そっちの動きに乗じて、新大陸でのウィードの立場を固める必要がある」
「キャリー姫がどこまで上手くやってくれるか見物ね」
「ま、スムーズにいけば嬉しい限りで、面倒になれば実力行使だろうな」
その時はジルバ帝国でやった殴り込みが一番わかりやすいだろう。
事後処理が面倒になるのでやりたくないのだが。
「それは当日をお楽しみにって所ね。と、話は変わるけど、あなたは思ったよりもカグラを大事にしているわよね」
「いや、当然だろう? カグラはこっちにきた日本人の末裔だぞ? そして何よりも新大陸の足掛かりとなる人物だからな。ハイデンの上層部ともつながりがあるし、大事にするのは当たり前だよ」
「そうかしら? 各国の王との引き合わせは何もカグラでなくてもよかったでしょう? キャリー姫を引っ張ってきても良かったじゃない? そっちの方が姫の直接的な功績になるでしょうに」
「まあな。だが、キャリー姫をこっちに日帰りで引っ張ってくるのも逆に警戒されるだろう?」
「まあね。過剰な力は警戒されるわね」
「だから、カグラっていう緩衝材を挟むんだよ。まあ、ぶっ倒れても困るからちゃんとフォローはするけどな。それに、カグラを大事にする別の意図も確かにあるな」
「別の意図?」
「そう。魔力枯渇に関することだ。新大陸では国家間の争いに巻き込まれたが、俺たちにとっての本題はそこじゃない。叡智の集とかいう魔物を使う集団を追うのも結局はそこだ」
そう。
結局、俺たちの本命の目的は魔力枯渇の原因を探ることにある。
500年前に何があったのか? フィンダール帝国であった姫生贄事件、そしてハイデンでの叡智の集、ハイレ教の暗躍などなど、色々探りを入れるべきところはあるが、もっと優先的に調査を入れるべきところがある。
「魔力枯渇ね。でもどこにカグラに関係が……って、なるほど」
セラリアは気が付いたのか、納得した顔になる。
「つまり、そんな面倒な時間がかかることよりも先に調査ができそうな、ハイデンにある魔術学院をということね?」
「そういうこと。カグラはそこの学生であり、身分も公爵家の娘ときたもんだ。下手な教師よりも立場は上だろう。その学院に来ている他国の学生からも情報収集できるだろうし、カグラの立場向上には喜んで手を貸す。学院というからには、それなりの蔵書もあるだろうし、研究関連の繋がりもあるだろう」
「私たちにとってはうってつけというわけね?」
俺は頷いて答える。
カグラの学生という身分は俺たちにとっては好都合なのだ。
知り合いということで、魔術学院に興味を持ってもおかしくないし、魔力の枯渇を調べる上で資料がありそうな候補としては学院が一番だろう。
そもそも、ハイデン王宮にも蔵書はあるだろうが、それの閲覧許可をもらうのは面倒そうだしな。
そこは、キャリー姫がハイデン内部を落ち着かせてからだ。
まずは、相手の魔術のレベルを調べると同時に魔力枯渇の情報が得られないか、学院に探りを入れるのがいいだろうという判断だ。
「人員は?」
「とりあえず、身内は全員ねじ込む。別に学生をやるわけでもないからな。四六時中学院にいる必要もない。見学をキャリー姫に要求すればいいだろう。相互技術の向上をとか言ったら喜んで受け入れてくれると思うぞ」
「そりゃ、そうでしょうね。私たちが使う魔術が使えるようになるかもという餌に飛びつかないなんておかしい話だわ」
「あとは、魔力研究に従事している連中かな。ポープリ、ザーギス、エージルとかかな」
「コメットやヒフィー、ノノアはどうするのかしら?」
「分かっていると思うが、コメットはリッチでアンデッド、一応魔力ボンベがあれば問題無いというのはわかったけど、リスクが高すぎるんでなし。ヒフィーやノノアは国のトップ。ちょくちょく帰れるからこそ、ウィードに顔をだしているんであって、そこまで長期間空けるわけにはいかんだろう。というか時差できっと疲れるぞ」
「そうね。アマンダとエオイドはどうするの?」
「連れて行く。カグラの友人だしな」
「思ったより大所帯ね」
「その方がウィードっていう別大陸の存在を広げやすいだろう」
「そういうモノなの?」
「1人に話してもらうより、10人に話してもらったほうが信憑性があるだろう」
1人だと与太話と流す人物もいるかもしれないし、実際に会う人も少ないから本当なのかと疑う人もいるだろう。
だが、人数が10人ともなれば、その分交流する人々も増えるし、こっちの1人当たりの仕事量も減るわけだ。
「ハイデンはともかく、他の国々にはまだまだ知られていないからな」
「なるほど。各国から集まっている魔術師の卵と交流を持って新大陸におけるウィードの認識を高めるわけね」
「そういうこと。だからこそカグラの協力が必要不可欠というわけだ」
今後の行動選択の幅を広げるためにもな。
「まあ、カグラ本人は忙しくてたまらないって感じのようだけどね」
「まだ学生だしな。そこは俺たちを呼び出したことの責任ってことで頑張ってもらおう」
「学生、ね。ランサーの時みたいに、魔剣使いの襲撃とかなければいいのだけれど」
「そうだな……」
あり得ないと言い切れないのがつらい。
……自分で言いだしたこととは言え、学院潜入ミッション。
ランサー魔術学府の時のフラグを思い出す。
俺にとっては鬼門だな。
ここは協力者を募ろう。
「もしもし、タイキ君?」
『はい。なんですかユキさん?』
「実は……」
そんなシーンを間近で見たセラリアは……。
「あ、駄目ね。これは何か起こるわ」
失敬な!!
何も起こさないために、綿密な計画を立てるのだ!!
アマンダとエオイドを連れて行くのも、カグラへの防壁の為だ!!
みよ、この用意周到な布陣を!!
さてさて、舞台は二度目の学園!!
同じ学園ではないです。
ですが、フラグの宝庫!!
さて、どんなお約束が待ちかまえているのやら。
ユキとタイキの対応策は実るのか!?
それともセラリアのいう通り何か起こるのか!?
次回を待て!!




