第578堀:今後の予定
今後の予定
Side:ユキ
「みんな仲良くやっておるよ」
そういって報告書を渡してくるのは、本日、新大陸の面々と仲良く遊んできたデリーユだ。
「しかし、カグラが訓練に参加するとはね」
「うむ。驚いたな。しかもそれなりに根性もある。だからちとやり過ぎた」
「そこらへんはちゃんと調整してくれ。外交官が訓練に参加して死亡とか大問題だからな」
「わかっておるわい。じゃが、なんでいきなりあんな行動をとってきたのかのう? 今まで見ているだけじゃったのだが」
「ああ、おそらく、イフ大陸との繋がりも欲しいんだろうな。あのキャリー姫は」
「なるほど。カグラに包み隠さず色々伝えていたのは、キャリー姫への脅しの意味もあったか」
「そういうこと。向こうからも、このイフ大陸の件を利用させていただきますとお礼の品と一緒に来ているからな。ほんと、あのお姫様はやり手だよ」
先にお礼の品を渡してきたから、あとで何かを揺するのはちょっとやりにくい。
何せ既にお礼は終わってしまったからな。
下手にこの件でハイデンをつつくと、ウィードの評価が落ちるだろうな。
「で、カグラはキャリー姫からの指示で、イフ大陸から来ているアマンダ、エオイドと仲良くなるために動いているわけじゃな」
「ああ。カグラも律儀に、2人と友好を結ばせていただきますので、ご理解くださいと挨拶にきたからな」
「友好のう。個人同士の友諠に口をはさむのは野暮でしかないのう」
「カグラもキャリー姫に色々鍛えられているようだな」
「人生いつまでも鍛えて学んでの道じゃよ。と、カグラの件はいいのじゃが、フィンダールの方はどうなっているのじゃ? ジョージンが国に戻ったんじゃろう?」
「戻って説得、説明中じゃないか? 何かしらアクションがそろそろあるだろうさ。ウィードにいる両殿下はのんびりしているし、そこらへんは心配ないしな」
「ああ、ジョージ殿はともかく、スタシア殿はヒイロにべったりじゃな。篭絡でも指示したのか?」
「そんな指示は出してない。まあ、相性が良かったんだろうさ」
「そんなものか。しかし、話を聞く限り、そろそろハイデンもウィード公表に向けて動くのじゃろう?」
「ああ。ようやくハイデン内部がまとまってきたみたいだな。それでようやくフィンダールとの会談も正式に設けられる。その時にジョージンが戻ってきて色々動くんじゃないか?」
「うーむ。まあ、忙しいことには変わりないのう」
「そうだな」
「つい、先日イフ会談が成功して少しは楽になったと思ったがのう」
「まあ、あっちは亜人たちが動いていたって件でもう少し両大陸会談は先延ばしだな」
「それは当然じゃろうて。会談に襲撃を掛けようとした内通者がいるのが分かったからのう。と、コーヒー飲むか?」
「俺は熱いお茶で」
「私は、カフェオレでー」
「……妾がコーヒーと言ったのは無視か。まあ、そこまで手間でもないからいいがのう」
デリーユはそんなことを言いながら、執務室に備え付けてある冷蔵庫やコーヒーメーカー、ケトルに近寄り、俺たちの注文した飲み物を作り始める。
その間に、一緒に書類仕事をしているリーアが話しかけてくる。
「そういえば、あの亜人たちの襲撃ですけど、イフ大陸の王様たちはあまり驚いていませんでしたよね?」
「ああ、おそらく。炙り出しに利用したんだろう。あわよくば、こっちの防衛の不手際を突いていい交渉条件を得ようとしたんだろうな」
「え? じゃあ、犯人は王様たちですか!?」
「いや、そうじゃない。アグウストの部下が暴走したように、今回の大陸間交流に反対するものは何も、アグウストだけじゃないからな」
「なるほどー」
セラリアに話した内容をそのまま説明するとリーアは納得する。
まあ、これで束の間ではあるが少しは余裕ができたわけだ。
「でも、今回ってあんまり私たちは得していませんよね? 損ばかりですよね? 会談でアグウストの王様には嫌味言われましたし。でも、ユキさんはそこに対して特に文句も、賠償も言っていませんでしたけど」
「表向きには何も言ってないけど、こっちの通したいことは全部通したからな。どっちが得をしたかといえば、どう考えてもウィードだろうな」
「そうなんですか?」
「そうだよ。ウィードはロガリ大陸の一員であり、ウィードの一存でそちらとのやり取りを決められないというのを言ったけど、これでウィードさえ押さえつければそれで終わりというわけではなくなったんだ」
「そうじゃな。これ以降ウィードを舐めて扱うと、ロガリ連合が敵に回りかねない。そういう意味合いで、ウィードの安全はより高まったじゃろうな。迂闊な武力行使はしないじゃろうて」
デリーユはそういいながら、お茶とカフェオレを俺とリーアに差し出してくれる。
「ありがとう。それに加えて、イフ大陸が交易をする唯一の場所だからな。交易利益も莫大になるだろうな。まあ、その分ロガリやイフの各国に資金援助で還元するけど、それでさらにウィードの一般的な評価は高まって、ウィードを攻め落とせばなんて言うのは居なくなるだろう。攻め落とした国以外は資金援助が途切れるからな。意地でも守ろうとするだろう」
「ああ、なるほど」
「さらに、ポープリやヒフィーの両国が魔術魔力技術研究派遣に収まった。これで、速やかに俺たち主導で魔力枯渇の調査がイフ大陸全域で行えるだろう」
「ついでに、イフ大陸の管理のエクスや亜人の国ホワイトフォレストも今回の会談で正式に友諠を結べたからのう。これでノーブルとレフェストが手を組んでもなんの不思議もない。何かあればすぐに連携して動けるのう。イフ大陸における、ウィードの友好国の安全も今回のことで確保されたというわけじゃ」
デリーユの説明がおわり、俺も追加で説明するようなことは特になかったので、お茶を飲む。
おー、熱いお茶はいいね。
最近はティーバッグタイプの緑茶が出て気軽にいけるわ。
急須も好きなんだが、あれは後片付けとかが大変だからな。
「だけど、今回の件で襲撃してきた亜人達はどうなるんですか?」
「そっちは、話し合いに応じるなら、亜人の村に組み込まれるな。嫌な奴はそのまま放流」
「それでいいんですか? 逃がした連中はまたなにか問題を起こしそうですけど」
「それはそれでありがたいからな。不満のある連中を抱え込む方が面倒だよ。放流した連中はまたどこぞの組織とかから援助貰って動き出すだろうし、それが厄介者の捜索に役立つってわけだ」
「今回の事件を起こした時期が時期じゃから各国は警戒するじゃろうが、事件の規模としては、ただの村を襲撃してきた盗賊レベルの話じゃからな。ウィードで勝手に処理して終わりの話じゃよ。あえて教えてやったのは、ユキの言う通り、各国の不穏分子炙り出しの為じゃな」
「なるほどー」
所詮はただの襲撃未遂の盗賊モドキ。
各国が引き渡しをとかいっても払いのけられるからな。
今回の事件で後ろめたいことがある連中は、さぞかし胃が痛いだろうな。
ま、これはイフ大陸の王様たち次第ということで。
「まあ、あとはイフ大陸の王たちをウィードに案内して、ロガリの王たちとの顔合わせを成功させれば、あとは好き勝手に話が進んでいくだろうさ」
「じゃな」
「でも、それが一番大変そうですけどね」
「準備で大変なのがウィードなのは間違いないけどな。安全性とか云々では、余所でやるより遥かにましだからな」
「ついでに、そこでウィードはイフ大陸の連中の扱いも学ぶじゃろうて。それが一番の益じゃな」
「だな。今後の為に実地経験が積めるのはいいことだな。ま、あとはセラリアを頂点にウィードの各代表の仕事だ。俺はただの参謀役だしな。本来俺はここまで仕事をすることはなかったんだよ」
「ま、そこはイフ大陸で暴れましたからね」
「そこだけは誤算だった」
「仕方ないじゃろう。まさか、イフ大陸で生き残っているダンジョンマスターと神のコンビがいるとは思わんかったからな。あのエクスが無ければ大陸間交流なぞあと何十年も見通しがつかんかったぞ」
「幸か不幸か悩むところだな。ま、上手くいきつつあるから、幸の方だと思っておこう」
そう。人生ポジティブ、前向きに考えないとな。
「その間にユキさんは、新大陸との調整ですか」
「そういうことだな。俺はセラリアの名代としていくことになる。セラリアを今、ウィードから動かすことはできないからな」
「その間の護衛は妾とリーアのコンビじゃな。秘書なんぞしたことが無いからようわからぬがな」
「特に難しいことはないよ。報告書作って、渡す。それだけ。あとはスケジュール管理とかだけど、新大陸の方は時計とか一般化してないからねー」
「スケジュールはアバウトな一日単位設定か。面倒じゃな」
そうそう。
護衛兼秘書である嫁さんメンバーだが、サポートなどは現代の秘書並みに働いてくれている。
が、結局国相手の書類などや交渉は俺の裁可、対応が必要であるし、俺がトップの諜報部隊の報告書は目を通さないわけにもいかないので、そうそう忙しさからは解放されない。
雑務はもちろんしてくれているので、その分の負担はないから、嫁さんたちがいなければ今頃過労死しているだろう。
まあ、嫁さんがいなければ、ウィードが存在しているかどうかもあやしいだろうけどな。
一日単位の設定になるのも仕方がない。
時間を問う概念はあり時計もあるが、それは結局その場所でしか通用しない。
隣町に行けば隣町の時間が存在する。
地球みたいに小型の時計の発明は標準時の設定などあればよかっただろうが、そんなものはこの世界には存在しない。
だから、どうしても一日単位のスケジュールということになってしまう。
まあ、ある意味分刻みのスケジュールじゃなくて助かる面もあるんだが。
「新大陸の件も、魔力枯渇が関わってなかったらそのままウィードに丸投げしてたんだけどな」
「どのみち、調査はするじゃろうし、ユキが主導で行って忙しくなっていたとおもうがな」
「私もそう思います」
「……だろうな。結局新天地を見つけたら調査は必須だし、俺が動かないわけにもいかないか」
逃れられないこの仕事の連鎖。
いや、生きるためには働けってことだよな。
誰もが味わうこの無間地獄。
どっかの文献で生きることこそ地獄であり、天国であるみたいな言葉があった気がする。
そんなことを考えつつも、お茶を飲みつつ、書類の確認が終わる。
「ともあれ、今日の仕事はこれで終わりだ」
「うーん。終わったー」
「お疲れ様じゃな」
「デリーユもおいおいこっちの仕事を覚えて行けよ」
「わかっておる。じゃがな、どうも書類仕事は苦手でのう」
「いや、警察の方で当たり前にやってたことだろうが」
「それはトーリに任せておった!!」
……はぁ。
トーリの苦労が目に浮かぶ。
いや、この場合は甘やかすトーリが悪いのか?
とりあえず、今度少し話をしてみよう。
トーリは今副代表、警察でいえば副所長でポーニのサポート。
つまり、秘書みたいな位置づけだ。全部肩代わりしてるなんてことはないだろうかという心配がわいてきた。
いや、でもポーニ自身はこの前の会議でちゃんとはきはきと質問とかしてたし、その心配はないか?
でも、やっぱり話はしてみよう。
トーリが倒れたら大変だ。
「でもさ、デリーユは警察云々よりも、前々からエリスの所で会計の手伝いしてたって聞いたけど?」
「……会計どころか、銭湯の掃除とか、スーパーラッツで品出し、レジとか幅広くこき使われたわ。だから、もう嫌じゃ……」
あー、デリーユの書類嫌いはそこからか。
確かに当時は計算できる人は少なかったし、人手も足りなかった。
そんな時に降ってわいてきた魔王デリーユ!!
いや、便利だったわ。
正直助かった。
リーアは当時いなかったので、デリーユがプルプル震えながら話す姿に首を傾げているので、当時の状況を教えてやると……。
「あー……。大変だったんだね。デリーユ」
「そうなんじゃよ!! 魔王ではあるが、こんな美少女を、ユキたちはまったく遠慮なくこき使ってくれたのじゃよ!!」
「おー、よしよし」
勇者に泣きつく魔王の図。
ちなみにこの魔王、一児の母でもある。
「でも、こっちの仕事は手伝ってよ?」
「分かっておる。流石に、そこまで我儘はいわんよ」
そんな感じで、新大陸の護衛メンバーは勇者と魔王のコンビで挑むことになった。
まあ、ヴィリア、ドレッサ、ヒイロもいるんだが、見習いだしな。
心機一転ということで、頑張っていこう。
あ、そういえば。トーリ、リエル、カヤはどうするんだろうな?
あとで、聞いてみるか。
子供たちのこともあるだろうから、新大陸調査についてくるのはないだろうけど、一応聞いておかないとな。
本日で8月も終わりでございます。
皆様、夏をどう過ごしたでしょうか?
日々の仕事で忙しい中で少しは夏ならではのことが出来ましたでしょうか?
学生の皆様は課題、宿題は終わりましたでしょうか?
私はお盆に実家の墓参りぐらいが、夏ならではという感じですかね? あと素麺?
物語はいよいよ新大陸の方に戻ります。
その前にあと一人主役メンバーかもというのが加入しますが、
のんびりしていた分、これから加速していくと思いますのでお付き合いくださいませ。
そして、本編のことでお詫びを
スタシア殿下の妹「オリオル殿下」ですが一番最初のジョージが「アージュ」と記入していたのをすっかり忘れておりました。
オリオル殿下で通そうかなーとも思いましたが、「アージュ」に戻しました。
オリオルという名前も別の呼び方みたいでいいかなとも思いましたが無理があるので変更にいたりました。
本当に申し訳ありませんでした。
混乱するかと思いますが「オリオル」から「アージュ」の変更を報告させていただきました。
言い訳:キャラクター多いと名前わすれるよね。てへぺろ。




