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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第528堀:本当に忙しい半日 深夜之部

本当に忙しい半日 深夜之部




Side:ユキ




ホーホー……。


そんなフクロウらしき声が聞こえる夜。

こっちの大陸にも似たような生き物がいるんだなーと、どうでもいいことを思ってしまう。

このクソ暗い中を活動する、所謂夜行性の動物。

もうすぐ時刻は22時を回ろうかというところ。

何が悲しくて、こんな時間まで労働に勤しんでいるのか、悲しくなってくる。


「ふむ。ゲートが存在する出入り口は見たこともない作りでしたが、上の方はいたって普通な屋敷ですな」

「まあ、あそこは俺たちと同じ故郷の初代様が作らせた、こちらで言う教会みたいな場所だからな」

「なるほど。ウィードといい、あの教会といい、世界は広いのですな」

「人が、個人が知れることなんて、そんなに多くないし、世界は狭くない。ジョージン殿みたいに、新しく認識、楽しむことさえ忘れなければ、どこまでも世界は広がっていくだろうさ」

「多くの世界を知っているユキ様の含蓄のある言葉ですな」

「だが、こうやって忙しいのは勘弁願いたいね」

「そうですな。急すぎるのはいただけませんな。老骨にはキツイ。まあ、それでも醍醐味でしょうが」

「俺は寝たい。ジョージン殿はまだまだ精神的には若いんじゃないか?」

「なっはっはっは。ウィードに連なる新しい世界をしりましたからな。まだまだ、若者には負けませんぞ」


そんなことをいいながら、カミシロ公爵の屋敷の地下牢へと足を進める。

地下牢の入り口にはすでに、公爵とヴィリア、アマンダが立っていた。


「おお、ユキ様!! と、どなたですかな?」

「お兄様!! それにジョージンさん!!」

「ユキさん、今、タイキさんがエオイドとルースさん、ドレッサを連れて、地下牢に行ってます。私たちは万が一脱走が無いようにここに待機しておくようにって」


文字通り三者三様の反応だな。

アマンダのおかげで、現状は理解できた。


「よし。俺も行ってくる。リーアはこっちで待機、デリーユは一緒に来てくれ」

「はい」

「うむ」

「ジョージン殿はどうする?」

「私はご一緒しますぞ。結局、会わないといけないのですからな」

「じゃ、一応気をつけてな。正直状況が不明だから」


なにせ、あのぽわぽわお姫様が、捕虜を拷問?しているという異常事態だからな。

錯乱してこっちに襲い掛かる可能性も無いこともない。

というか、何が目的で捕虜に会いに来たんだか……。

ああ、とりあえず、今日はやっぱり徹夜だなー。

運よく、下に降りたらもう全部終わってるなんてことは……。


ピュン、ピュピュン!!


ないようだ。

聞こえるのはなにかを振る音。

地下牢の扉を開けると、そこには……。


「……流石は、ユキ様が選んだ従者ですわね。まさか、剣がかすりもしないなんて、ならクーノ!!」

「はっ!!」


ぽわぽわお姫様どこ行ったレベルの、凛々しい剣を握ったお姫様と、メイドその1が見事な連携を見せて、タイキ君に斬りかかっていた。


「おっと、よっと」


剣筋は確かに鋭い。

だが、所詮はその程度。

チート勇者に当たることはない。


「ずるいぞー、チートだよ、チート」

「いや、見てないで止めてくださいよ」

「いや、制圧しろよ。なんでわざわざ自由にさせてるんだよ。けが人いるんだろ」


この程度の腕ならあっという間に制圧できるだろうに。


「これは見てもらった方が、納得できるでしょう? 俺が後でお姫様が剣を振っていましたなんて言って素直に信じられますか?」

「あー、それは信じられんな。映像残してても、合成疑うわ」


それほど、今のお姫様と普段のお姫様は違いすぎる。

そして、この余裕のやり取りを聞いて、お姫様とメイドはようやく動きを止め、剣とナイフを下し、こちらに振り返る。


「……なるほど。なぜ私たちに攻撃させるばかりなのかと思っていましたが、ユキ様に見せるためでしたか。……熱くなっていたようです」

「姫様申し訳ございません。私が付いていながら、気が付きませんでした」

「そりゃー、限界ギリギリまで引っ張ってましたからね。意識を他に向ける余裕はなかったでしょう」

「……ここまで差があるとは、流石英雄様に喚ばれた従者ですか」


いや、従者じゃなくて、勇者な。

ドッペルの影武者だけど、中身は一国の王様だぜ?

どちらかというと友人枠だぞ。


「で、けが人の方はルースが?」

「ええ、そうですよ。ルース、どうだ?」

「もう少し遅ければ命を落としていましたね。四肢の大きい血管が傷つけられて出血多量で死ぬ寸前でした。エオイド君の止血と、ドレッサさんの回復魔術がなければ危なかったですね。私は指示を出しただけです」

「いや、ルースさんが指示してくれなかったら、どうしていいか分からなかったですよ」

「血がどぱーって、死んでると思ったわよ」


ふむ。2人にはいい経験だったか。


「さて、幸い捕虜は死なずにすんだが、事情を聞かせてもらっていいかな?」


俺はそういって、大人しくなっているお姫様に話を振る。

もう、ぽわぽわやお花畑とは呼べないよな。


「……いいでしょう。英雄様のお望みとあれば。近いうちに話すつもりでしたし」


そうお姫様が言い終わるのと同時に地下の階段を駆け下りる音が聞こえてきて、カグラが飛び込んでくる。


「ひ、姫様が捕虜に会いに行って襲われたって!? ユキ、姫様は……無事みたいね」


どうやらすでに就寝していたらしく、薄いネグリジェみたいなのを着ていた。

スタイルは普通にいいから、場面が場面であれば、フラグの一つにでもなったのだろうが、この場面では間違いなく、ミスマッチだ。


「カグラ。いついかなる時も、立ち居振る舞いには気を使いなさい。それが公爵家、そして初代様の名を継ぐ者の義務です」

「へ?」


お姫様のいつもとは違うはきはきとした威厳に満ちた声に驚いた顔をするカグラ。


「服装は、状況によってはやむを得ないこともあるでしょう。しかし、そのような威厳の無い振る舞いは控えなさい。上に立つ者はたとえ裸でも恥じらいを捨て、覇気をまとい、皆の導きたらなければいけません」

「は、はあ?」


言ってることはわからんでもないが、カグラはついて来れてないぞ。

そもそも、こいつ次女だし、王者とはまた別だしな。


「しっかりしなさい!!」

「は、はひっ!!」

「よろしい。では、今からユキ様と会談がありますので、一度身だしなみを整えます。カグラも着替えて同席しなさい。よろしいですか、ユキ様?」

「まあ、返り血浴びたままってのはアレだしな。着替えてくるといい。ああ、バイデを出るときみたいに時間はあまりかけてほしくないな」


と、一応皮肉を言ってみると。


「ご心配には及びません。応接室でお待ちになってください。小さい蝋燭の5分の1が溶ける前には着替えをすませます。間に合いそうになければ、裸でも向かいますからご心配なく。いきますよ。クーノ、カグラ」

「畏まりました」

「え? 小さい蝋燭って、とても短くないですか!?」


そんなことを言ってお姫様たちは地下牢から出て行ってしまう。


「蝋燭の時間って、種類でまちまちですよね?」

「まあな。小さいって言ってるし、ここらの技術力で長時間燃やせる蝋燭が作れるとは思えないから、そこまで時間がかかるとは思わんけどな」


そうじゃないと、朝まで寝ずに待てという拷問になるからな。


「ま、そこはいいとして、このままジョージン殿と一緒に尋問してくれ。お姫様が恨みか、それとも拷問のつもりでやったのかはしらないけど、ついでだ」


他の牢屋にいる2人は震えているし、やりやすいだろう。


「わかりました」

「お任せください。必ずやリラ王国との関係を暴いて見せますぞ」

「で、そこはいいとして、お姫様が時間内に着替えられなくて裸でくるのとか、期待してます?」

「まあスタイルはいいけど、それはそれで面倒だろうな。裸を理由に色々はぐらかされそうで」

「あー、まさかわざと裸で来ないですよね?」

「そうならないことを祈る」


しまった。

あのまま話を聞くべきだったか。

裸のままでこられたら、言った通り面倒だ。

狙ってたのか? いや、ここはあの凛々しいお姫様を信じるか。

幸い、リーアやデリーユもいるし、既成事実は防げそうだからな。

ああ、カミシロ公爵も混ぜてしまえばいいか。証人は大事だよな。



なんてことを考えて、色々準備をして身構えていたのだが……。

キャリー姫様はビシッとナイトドレスを着こんで、本当に蝋燭が溶けたのかわからないぐらいの早さで応接室にやってきた。


「お待たせいたしました」


綺麗な一礼をして入室してくるキャリー姫とそのメイドのクーノ。

まあ、そこはいいが、なぜか最後に入ってきたカグラは下着姿だった。

しかも、下だけ。胸は手で隠しているというどこの変なネタ企画のアダルトビデオだよ。

普通なら眼福だろうが、いや、普通でも目が点になるレベルの痴態、変質者である。

こういうのが通用するのは、漫画とか、小説とか、空想のみである。

普通はお巡りさんを呼ばれて御用。


「カグラ!? なぜそのような格好で!?」


慌てたのは同席を頼んだカミシロ公爵。

そら、娘がほぼ全裸で来たら驚くよな。


「カミシロ公爵。カグラは時間に間に合いませんでした。なので、下着を選んでいる最中に連れ出してきました。まったく、要人を待たせた大事な話し合いだというのに、ドレスはおろか、下着すら迷うとはいったいどのような教育をなさっていたのですか?」

「そ、それは……、し、しかし、年頃の娘をこのような……」


ズバッと言葉で切り込んでくるキャリー姫にしどろもどろになりながら何とか返す公爵だが、それもキャリー姫は顔色一つ変えずに返す。


「年頃の娘以前に、国を背負う由緒ある一族の一員です。お待たせしているユキ様は連日激務で休息時間がとても少なく、本日はもう夜も深く、無理をされているのは誰でもわかることです。なのに、長時間をかけて着替えるのを容認しろというのですか? それで、ユキ様が倒れでもすれば、それこそ終わりですよ? どう責任を取るつもりなのですか? 状況を考えなさい。確かに、年頃の娘としては痛手でしょうが、肌を見られる相手はユキ様です。名誉であっても恥ではありません」


いや、その理屈はおかしい。

まあ、冗談はいいとして、的外れでもないんだけどな。

ある種の人身御供、生贄か、お姫様は俺の従者と知ってタイキ君に手を上げていたからな。

カグラの裸を見せたから、チャラにしてくださいってことか。

これ、カグラがいなければ姫様が裸で来たのかもな。

それはそれで嫌だわー。

しかし、とりあえず公爵は姫様の意図を理解したのか、文句はあるが、我慢しているような様子になって、カグラは泣く寸前である。

これでは話にならん。

俺が許しを出してってことになるんだろうな。

はぁ、思ったよりも狸だよ、この姫さん。


「はぁ。カグラこれを着てろ。話が進まんし、カグラも話を聞ける状態にしないと意味がないからな。いいな。お姫様」


アイテムボックスから俺の私服であるパーカーを出して渡す。

俺でもぶかぶかのサイズなので、カグラなら十分に体を隠せるだろう。


「ユキ様がそうおっしゃるのであれば、構いません。カグラ、良かったですわね」


そういいつつ、お姫さんは鋭い視線をカグラに送る。


「ううっ……。ユキ、ありがとう」


カグラはいそいそとパーカーを着込む。



……あれ? ちょっとまて、これ何かフラグ立ってない?



そんな思考がよぎりつつも、お姫様が話し始めて、そのことは頭の隅に追いやり、話に集中する。


「では、今回、なぜこのようなことに私自ら動いたのかというと、私怨でもあり、国の為でもあります。もちろん……、『まぁ、今日はよい月が見れる夜ですね』という演技も含めてです」


一瞬で、前のぽわぽわお姫様の感じから、凛々しい姫様に切り替える姿に俺以外のメンバーがあまりの落差に驚く。


「で、私怨っていうのは、リラ王国のときのことか?」


俺がそういうと、今度はキャリー姫が心底驚いた顔をする。

よし、これで意趣返しはできたかな?

まあ、まだまだ話は始まったばかりだし、やっぱり、俺の徹夜は確定らしい……。



フラグは立っていない。きっとそうだ!! だって俺徹夜で判断鈍ってるし。 byユキ


さて、GW突入しておりますが、皆様はどうお過ごしでしょうか。

私はまた短編集でも適当に書いては消しをしております。

GWのネタとしては、なにがいいかなー。

やっぱ、焼肉とか食べ物系ですかね?



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