第511堀:再会と今後の相談
再会と今後の相談
Side:タイキ ランクス所属 勇者兼国王兼使い走り
「お、来たな。久しぶりってわけでもないか」
そう声をかけてくるのは、ウィードの裏ボス的存在で、俺と同じ日本人のユキさんだ。
「まあ、一週間そこらですからね。といっても、流石に報告を受けたときは驚きましたけど」
「俺も驚いたよ」
そりゃそうだ。
異世界に来てからさらに召喚されるとか、まさかの話だったからなー。
「とりあえず、お元気そうですね」
「体自体は健康そのものだよ。生憎。これで倒れでもすれば少しは休みがとれたかもなー」
いやー、ユキさんが倒れた場合、奥さんたちが黙ってないと思うんだよなー。
と、考えていると、ドアを開ける音が聞こえて、会議室に誰か入ってくる。
「その場合。私たちはウィードの全戦力を率いて、ハイデンに侵攻してたでしょうね」
噂をすれば、ユキさんの奥さんでウィードの女王であるセラリアさんだ。
当時は、ウィードに残ったメンバーは暴走に近かったからなー。
セラリアさんのいうように、ユキさんが倒れてたらそうなったかもしれない。
中世ヨーロッパの文明レベルの所に現代戦術と兵器群で攻めるとか、あっという間に焼野原だな。
「あのなー。俺が倒れた程度で一国を滅ぼすなよ。割が合わん」
「割が合うとかの問題じゃないの。愛よ、愛」
そんなことを言いながら、二人はハグしているから仲がどれだけいいかわかる。
他の奥さんたちも同じレベルだし、感情的にはわかるんだよな。
俺にとっても、兄貴分で、知り合いで唯一の俺の知る日本を知る人だからな。
正直、ユキさんが殺されたとかなると、俺も報復攻撃はするかもしれない。
「今のユキ君の立場からして、一国を潰してでもというのは、割りにあっていると思うがな。今や君は、このロガリ大陸、そして私たちがいるイフ大陸を裏でまとめる存在だ。まあ、面倒だという君の気持はわかるがな」
そういって、タイゾウさんも会議室へ入ってくる。
「ロガリ大陸? イフ大陸? 名前決まったのか?」
ユキさんが不思議そうにこちらを見てくる。
「ああ、そういえば、大陸の名前を決める話し合いの最中召喚されたんでしたね。セラリアさんからは聞いてませんか?」
俺から言うのはどうかと思って、奥さんのセラリアさんに話を振ると、肩を竦めて口を開く。
「ごめんなさい。流石にいろいろありすぎて、私もすっかり忘れてたわ」
そりゃそうか。
大陸の名前どころじゃなかったもんな、ウィードの方は。
「へー。ロガリってのは、各国の頭文字を持ってきたってのはわかるが、新大陸の方のイフってのはなんでまた? あっちのほうは、まだ大陸の名前を決めようって場も設けられてないはずだよな?」
「それは、ノーブル殿やヒフィーさん、そして私が仮でつけた名前だよ。イフ、if、もしもというやつだな。いつでも名前を変えられるという意味もある。ユキ君たちが呼び出された大陸もあることだし、そちらを新大陸と呼称したほうがわかりやすいだろう」
「なるほど。確かに、ウィードのー、タイゾウさんのー、バイデのー、とか言い分けるのは面倒だったしな。ありがたく使わせてもらいますよ」
そんな話をしているうちに、サーサリさんが全員に飲み物を配り終わる。
「さて、飲み物も出てきたことだし、そろそろ本題に入ろうか」
そう、今までのは軽い雑談。
これからが本番だ。
突如、ウィードと繋がった、新大陸。
いや、元はといえば、ユキさんをさらった召喚が原因なんだけど。
ラノベの定番で言えば、これから桃色髪ロリ魔法使いとの契約があって、その世界を救うために奔走するという王道になるのだろうが、残念ながら現実はそうはいかなかった。
ユキさんの横紙破りというか、当たり前の対応で、即座に召喚した当人たちは一瞬で制圧され、安全を確保するために、惜しみないダンジョンマスターの力と、ユキさんのやり方で、瞬く間に拠点を確保。
そのあと、数日間が空いたものの、ウィードと新大陸がつながったのだ。
イフ大陸の時みたいにこっそり行くのではなく、すでにウィードという国として乗り出した以上、国としての対応が求められるというわけ。
要人誘拐の責任追及とか、新しい国家との国交をどうするのかとか、それ以前に新大陸がどういう状況にあるのかなど、話し合わなければならない内容は多岐にわたる。
「まずは、あちらの状況を詳しく話しておこう。タイゾウさんやタイキ君は知らないだろう?」
「ああ、頼むよ」
「お願いします。俺としては、ユキさんを攫った、頭の悪い国があるという認識しかないですから」
「それが結構めんどくさい話なんだよなー。いや、面倒だからこそ、召喚されたとみるべきなんだろうが……」
それから、ユキさんが新大陸の話を始めて小一時間ほど聞く。
ズズッ。
そうお茶を啜っているのはユキさんだ。
「とまあ、これが大体の新大陸の状況かね。あー、お茶が美味い。サーサリお代わりもらえる?」
「はい。かしこまりました」
なんて感じで気楽にしているようにみえるが、話の内容は思ったよりもややこしかった。
「まさか、すでにウィードとして動いているとはな」
「まあ、状況を聞くに仕方ないですよね。しかし、そのハイデンって国の手助けをするつもりなんですよね?」
「あちちっ。と、まあな。ああ、タイキ君やタイゾウさんがハイデンを貰ってくれるなら真正面から潰してもいいけど?」
「断る」
「断ります」
こっちも、ノゴーシュとかビッツとかの問題がようやく終わって、ランクス内部の鎮静化に力入れているのに、他の国にしかも、新大陸にあるところに人手を割く余裕なんてない。
話しを聞く限り、どう見て地雷な国だし。
「そうなるよなー。だから、ハイデンは自分でどうにかしてもらう必要があるんだよな。それが……」
コール画面に映る、黒髪の少女、カグラ・カミシロ。
ユキさんを召喚した一人。
一緒に召喚をしたお姫様のように話が通じないとかはなく、まともらしい。
だからこそ、必然的にこのカミシロさんがハイデンの立て直しで頑張ることになるんだろうが……。
「……こんな少女が一国の救済をか」
タイゾウさんがそうつぶやく。
……ユキさんに軽く話を聞いたときは、どっかの元祖異世界召喚ファンタジー系かなーとおもっていたけど、実物や現実の状況を見ると、奇跡の連発でも起こらない限り、このカミシロさんは死体になりそうだな。
だって、ハイデンは中枢はすでにその馬鹿な武闘派が占めていて、旗印となる王妃様は幽閉、お姫様はお花畑。
すでに詰みの状態。
そこから逆転ができるのは、物語の中だけで、普通はこのまま終わるしかない。
まあ、普通なら。
「そういう意味では、カミシロさんは当たりを引いたわけだ」
そう。
呼び出したのは、ユキさん。
最高のバックアップを手に入れたわけだ。
「そうだな。しかし、こうなるとユキ君たちは、バイデの方で忙しくなるな。適当に調査員を送るだけでは済まなくなったわけだ」
「そうなんですよ。だから、大陸間交流に手が回りそうにないんですよね。イフ大陸はタイゾウさんたちに任せていいとして、ロガリ大陸はロシュールとかそこらへんがでるんですけど、前提にウィードという拠点があってこそなんだけど、このハイデンのことやら、フィンダール帝国のこともありますから、あんまり人を割けないんですよね。そこをどうするかって相談をしたいんですよ」
「由々しき問題だな。下手に大陸間交流をやめるわけにはいかないか。お互いに不審がるし、真実を話すわけにもいかない。お互いの大陸交流で精一杯の時に新しい大陸など、混乱こそすれ、スムーズに物事が進む要因にもなるまい。そもそも、きっかけがユキ君たちが召喚、誘拐されたのが始まりだ。これは、大陸間交流の妨害とみられて、ハイデンがある大陸に攻め込むなんてことになりかねん」
「そうなんですよねー」
うわー。
話しを聞くだけで面倒だというのがよくわかる。
ランクスもいろいろ大変だけど、ウィードほどじゃないからよかったわー。
「今はまだいいんですけど、これからカグラを連れて、ハイデンに潜入するとなると、人員が乏しいわけですよ。さっき言った通り、魔物の人員は使えませんし、自由に使えるのは嫁さんたちぐらいです。でも、今までの経緯でどうも、不安が残るんですよ」
「大丈夫よ。ハイデンの馬鹿どもを叩きのめすだけだから」
「いや。セラリアが実力を示しても意味ないからな。あくまでも、カグラや助ける王妃様を返り咲かせるのが目的だからな? あからさまなウィードの後押しで返り咲いても長続きしないからな。というか、セラリアがウィードを離れるとかこの大事な時期はダメだからな」
確かに、セラリアさんは非常に錯乱してたし、ハイデン相手に手加減が出来そうにないよなー。
気が付けば、ハイデンを立てなおすつもりが、ウィードの属国が出来上がってそうだ。
「じゃ、モーブさんたちとかどうですか?」
「いや、あいつらはあくまでも冒険者とかそういう枠だからな。ウィードの政治状態を詳しく知ってるわけじゃないからな。教えても右から左だし」
ああ、たしかにモーブさんは普通に暮らせればいいって感じだしな。
「つまるところだ。ユキ君の奥方たちでは心配だというところだ。感情が入りすぎる。戦力的には問題はないだろう。あとは、その奥方をまとめる人物がいるというわけか。ユキ君が赴くというのは……」
「ありえないわね」
「旦那様を最前線とか、流石に私も怒りますよ?」
ひえー!?
セラリアさんとサーサリさんの殺気がすげーよ!?
というか、護衛のジェシカさんやリーアもすげー怒ってるよ!?
「しかし、ユキ君がその英雄として召喚されたわけだ。今更、代役で私やタイキ君が行っても納得できないだろうし、この手の交渉で一番強いのはユキ君だ。彼を抜きでのハイデン旧王家の復興は厳しいだろう」
「それは……」
「そうですけど……」
「動かせる人員が少なすぎるな。ユキ君たちがハイデンに向かうとして、その場合のバイデの防衛や、ウィードの外交や大陸間交流をどうするかという問題が出てくる」
「じゃあ、ユキさんの護衛を増やすって感じで、俺が付いていきましょうか?」
「いいのか?」
「ランクスの方が忙しんじゃないのか?」
「いやー、忙しいですけど。大陸間交流とかの仕事を兼任してるわけじゃないですしね。護衛といっても、いつもの通り日帰りでしょう?」
「ドッペルが面倒になってるのは知ってるよな?」
「ええ。でも、ユキさんたちみたいに、すぐに、大陸間交流で顔を出さないといけないとかじゃないですからね。それに、ランクスの問題を片づけてもらいましたし、それを言えばルースとか宰相も文句はいわないですよ」
むしろ、恩を早く返すことに賛成してもらえると思う。
ウィードとより強固なつながりをーって。
「ふむ。私としては悪くないと思うが、ユキ君どうかね?」
「こっちとしても、ウィードに人員を残せるからありがたいな。タイキ君なら最悪、ハイデンを任せてもいいし」
「いや、いりませんからね」
これ以上国とか抱えたくありません。
「ある意味、こっちとしてもちょうどいいんですよ」
「なにが?」
「ビッツが大人しくなってるのか判断するために」
「「「ああ」」」
皆納得してくれた。
ランクスの騒動のあとビッツ輝虎は俺の側近という形で収まって、内紛の鎮静化に力を貸してくれていたが、やっぱり処刑すべしという意見も存在する。
だから、俺がいない間に悪さをしないかという、泳がせだ。
まあ、輝虎がいるからそんなことにはならないだろうけどな。
ということで、ハイデン攻略メンバーに……
『勇者が仲間になった!!』
といわけです。
変りに嫁さんたちはウィードでお仕事になりますが。
グダグダしていましたが、ようやく新大陸冒険です!!
さあ、ユキたちは無事、ハイデンを立て直せるのか!!
いざ、自分たちの仕事が増えないための明日へ!!




