第510堀:想って作って造って創るのです
タイトルの「想って」は「おもって」と思う人もいるでしょうが「つくって」と呼んでください。
想像で、設計図を、部品を、オリジナルをって感じで「つくって つくって つくって つくるのです」
こうやって、3人にウィードの戦力をしれっと知らしめる。
想って作って造って創るのです
Side:フィーリア ウィード所属 ウィード学校6階生 鍛冶姫
カンカン、キンキン、トントン……。
そんな小気味いい音が聞こえてくるのです。
フィーリアにとっては子守歌のようなものなのです。
「へぇ。ここが鍛冶場なのね」
そんな風に関心しているのは、カグラだけで、他の2人は唖然としているのです。
「こ、こんなに大きな建物が鍛冶場!?」
「いや、区画とありましたしな。ここら一帯がすべて鍛冶の為の場所なのでしょうな。……正直信じられない大きさですな」
「そうなの?」
カグラはあまり詳しく知らないようなのです。
鍛冶場というのは職人の仕事場なのです。
つまり、個人の仕事というのが基本なのです。
だから、ウィードのように、こんな風にまとめて大きな鍛冶場が存在するのは非常に珍しいのです。
本来は城に専用の職人がいたり、街に個人個人の職人がいるだけなのです。
職人特有の、一子相伝の業というのもあるので、そうなりやすいのですが、ウィードの場合は火事などの防災や、職業選択の自由があるので、こうやって鍛冶場をまとめて、申請で貸し出しができるのです。
無論、ナールジア姉様や凄腕のドワーフおじさんたちは、ウィードが専属で雇っている鍛冶職人なのです。
新しい武器の開発や、大量生産などをするときには非常に便利なのです。
無論、一般家事道具も普通に作っているのです。
武器だけでなく、生活にも役立ってこそ、というのがウィード鍛冶職人の在り方なのです。
また、こうやって職人を集めることで、材料もこちらにまとめて送るだけでいいので、とても重い鋼材や他の材料の買い出しという面倒が減るのです。
個人的に色々作りたい人も、簡単に材料が手に入るのです。
勿論、オリハルコンなどの、貴重な鋼材は申請をして許可が下りないと使えないのです。
などと、フィーリアが簡単に説明していくのです。
「ふへぇ、凄いのねー」
「凄いどころではないわ。このやり方は画期的よ。職人の管理もできるし、火事などが起きても被害を抑えられるわ」
「武器の品質を維持でき、生産、量産も簡単にできる。非常時以外は家事道具を作って一般生活への寄与と、新しい武器の開発……。頭の固い奴らは嫌がるでしょうが、国としては非常にありがたい施設ですな」
みんな頑固なのですよ?
でも、みんなで色々話した方が面白いアイディアがでるので、結局集まってくるのです。
ナールジア姉様の話とか色々参考になるのです。
まあ、真似できるかと言われると難しいのです。
「って、ちょっと待って。その話ぶりからすると、フィーリアって鍛冶やってるの?」
「やってるのですよ? フィーリアはドワーフなのです。鍛冶が得意なのが多い種族で、フィーリアも得意なのです。兄様や姉様たちの装備を作っているのです」
「そんな小さい体でハンマーとか持てるの? ってそういえば、力が強いわよね」
「そうなのです。……こんな風にフィーリアは力持ちなのです」
ドンッ、ブンブンッ!!
戦槌をアイテムボックスから取り出して片手で振り回すのです。
と言っても、アスリンや、ラビリス、シェーラもこの程度は造作もないのです。
この戦槌も、ただの試作なので、フィーリアにとってはまだまだ物足りないのです。
やっぱり、まだ大きくした方がフィーリアには合うのです。
「……疑うわけじゃないんだけど、持ってみていい?」
「いいのですよ」
特に特殊効果もなにもないので、カグラにひょいと渡すのです。
勿論、柄の方を向けて。
「ありが……」
手に取ったのを確認して、フィーリアが手を放すと……。
ドズン!?
「ふぁっ!?」
やっぱり、カグラは持てなくて、すぐに地面に落としたのです。
「カグラ!! フィーリア様から預かった武具を落とすなんて失礼よ!!」
「あ、そう、なんです、けど……。ぬぎぎぎ……」
必死に柄を握って持ち上げようとしても地面に落ちた鎚頭は上がらないのです。
魔術師タイプでは兄様の特訓をしていない人が持ち上げられるわけがないのです。
というか、持ち上げられるのなら、警戒しないといけないのです。
「そこまで、重いのですかな? フィーリア様。私が持ってみても?」
「いいのですよ」
「では、カグラ殿。よろしいかな?」
「ふぅ……。気をつけてください。本当に重いですよ」
そして、ジョージン爺が戦槌の柄を持って、ゆっくりと、肩に担ぐのです。
ふむ。戦場で戦ってきたというだけあって、これぐらいは持てるのですね。
「これは、本当に重いですな。カグラ殿の細腕で持てるものではないですな。よっと……」
そういいながら、軽く両手で振り回しているのです。
ふむー、多少重心が安定していないですけど、普通に使えそうなのです。
「あらー? フィーリアちゃん? みんなも、こっちに帰ってきてたの?」
不意にそんな声が聞こえて振り返ると、ナールジア姉様がいました。
「な、な、な……」
なぜか、カグラは変声をだして驚いているのです。
「せ、精霊様……」
「なんと……」
カグラほどじゃないですけど、キャサリンもジョージン爺も驚いているのです。
「精霊様? ナールジアお姉ちゃんは妖精族だよ?」
アスリンが首を傾げながら、ナールジア姉様の紹介をするのです。
「はいー。妖精族の族長、ナールジアと申します。バイデの皆さまですね。この鍛冶区の代表も務めています。よろしくお願いしますね」
「あ、はい。よろしくお願いします。カグラと申します」
「キャサリンと申します。バイデの領主を……」
「ジョージンと申します」
そんなとても緊張した感じで3人ともナールジア姉様と挨拶をしているので、そのことを聞いてみるのです。
「精霊様ってなんなのです?」
「えーっと……、フィーリアたちは精霊の巫女様や戦士様は獣人って呼んでるわよね?」
「なのです」
「で、そちらのナールジア様は妖精族って言ってるけど、私たちの大陸では、その獣人たちの祖って言われてるのよ。精霊の巫女様や戦士様が仕える、文字通り精霊様。まあ、実物なんて見たことないけど、言い伝え通り、小人で膨大な魔力で空中に浮いているのねー」
なるほど。
確かに、ウィードの大陸でも妖精族は希少なのです。
獣人が極小数しか存在しない大陸では、さらに珍しいというわけです。
でも、精霊様はまた別にいるのです。
ウィードのダンジョンの上に広がる森に棲む精霊さんとか、兄様の世界のコノハナサクヤヒメとか。
というか、神様が普通に住んでいるのです。
流石にそれを教えるのはダメだというのはフィーリアでもよくわかるのです。
信じてもらえるとは全く思わないですけど。
「あらあら、この程度のことなら、フィーリアちゃんたちもできますよ?」
「「「え!?」」」
ナールジア姉様の言葉に、驚きの声を上げながらこちらを見る3人。
「できるのですよ? でも、お空を飛ぶのは的になるのです。よっと……なのです」
「だねー。とー」
アスリンと2人で空中に浮くのです。
やっぱり、思ったより自由に動けないのです。
これじゃ、狙撃の的になるのです。
地面を走っていく方が戦うには向いているのです。
兄様に習って覚えたのですけど、やっぱり兄様の言う通り、あんまり役に立たないのです。
せいぜい、高い場所に飛び移る時ぐらいなのです。
空なんて飛んでたら注目されるし、移動にも使えないから面倒なのです。
速く空を移動したいなら飛竜隊に乗ればいいですし、ゲートで移動した方が遠方に行くなら楽なのです。
「「「……」」」
3人とも目が点になっているのです。
「あ、そうそう。ちょうどよかったです。ユキさんから、お客さんへのプレゼントを頼まれていたんです。あとで調整に伺おうかと思っていたんですど、いま大丈夫でしょうか?」
「あ、はい。って、フィーリア、この後の予定とかは?」
「特に決めてないのです。でも、あまり時間がかかるのはダメなのですよ?」
「大丈夫よ。そこまで高性能でもないし、フィーリアちゃんもいるなら小一時間で終わるわ」
「なら、大丈夫なのです」
「ではー、皆さんこちらにどうぞー。あ、アスリンちゃんたちの装備もこの際点検しようね」
「はーい」
「……また、厄介な機能をつけたりしないでしょうね?」
「……そういうのは使いこなすまでに時間がかかるので遠慮したいのですが」
「安心して、ただの点検よ。流石にあっちの大陸の環境がわからないのに、新機能や新型を持たせても無駄になりそうだし、正確なデータは取れそうにないから。あ、でも、フィーリアちゃんの言ってた戦槌はできたから、そっちは試して欲しいな」
「できたのです!?」
「ええ。今回の騒動で、慌てて作ったのよ。フィーリアちゃんなら自力で整備できるし、いいかなーって」
そう言う理由で、奥のナールジア姉様の工房に入って、3人へのプレゼントを調整したのです。
特にすごいというものではないのです。
ネックレスか指輪を選んでもらって、それを渡すだけなのです。
勿論、ただのアクセサリーではないのです。
防御はもちろん、自然治癒、解毒、軽い魔術なら使えるようになる指輪なのです。
「「「……」」」
まあ、3人にとってはオーパーツもいいところなので、驚いているのです。
流石に、厚遇が過ぎるとか姉様たちは言っていたのですが、兄様は、この3人に死なれるとさらに仕事が忙しくなると言うとみんな納得したのです。
が、所詮、適当に余った材料で作ったモノですから、フィーリアたちが装備している物に比べると、性能は数段落ちるのです。
「はい。あとは、アイテムボックスの機能も極小ながらつけていますから、回復薬と、万能薬を5瓶ずつと、あちらの棚から好きな武器を一個選んでくださいね。アイテムボックスに入れておけばいつでも取り出せますからいざという時の武器になります」
「「「……」」」
やっぱり、開いた口がふさがらないのです。
「こ、こここ、こんな、伝説のアイテムをい、いただいていいのでしょうか?」
ようやく、キャサリンがガクガク震えながら、自分の指にはまっている指輪を見つめていう。
「構いませんよ。どうせ、片手間で作ったやつですから」
「か、片手間!? で、では、あ、あちらの武器も……」
「はい。気分転換で作ったやつですよ。大した効果はないです。せいぜい、身体能力が向上するとか、魔術が武器から撃てる程度ですね」
「そ、それのど、どこが、気分転換なん、ですか!?」
ジョージン爺もカグラもぶるぶる震えて、武器棚を見つめる。
「……まあ、あれが普通の反応よね」
「……ですね。ここにあるのは基本的にウィード以外なら大金をだして買う品物ばかりですから」
「あの指輪とか国宝級よねー」
「ええ。普通なら存在しないものですからね」
なんてラビリスとシェーラが話していると、ナールジア姉様が私に大きい戦槌を持ってきたのです。
「フィーリアちゃん。これあっちで振ってみて。希望通りの性能はついているから、実演してみて。そしたら、あの3人も遠慮なく選べると思うの」
「わかったのです」
受け取った戦槌は、さっき持ってたやつより、二倍ほどハンマーが大きいのです。
ちゃんと、術式処理もされていて、特殊効果もちゃんとでているのです。
基礎ステータスアップ確認、風の術式による武器を振るう際の補助も確認、これで本体の重量を減らすことなく、簡単に戦槌が振れるのです。
……銃や魔術の方がいいと言われると泣きそうになるので、やめてほしいのです。
あくまでも、これは銃や魔術が使えないときの、近距離殲滅専用なのです。
と、戦槌の存在意義を考えるとむなしいので、さっさと性能評価をするのです。
「クエイクウィンド、なのです!!」
そう叫んで、地面に戦槌を叩きつける。
ドゴン!!
そんな音が響き地面が陥没して……。
ゴッ!!
巻き上がった土の礫を追加効果の風で押し飛ばすのです。
散弾銃の応用なのです。
足場によって威力が左右されるのですが、地面に当てる前に寸止めすれば風だけのけん制もできるのです。
流石、ナールジア姉様なのです。
「あんな威力はないので、安心して選んでくださいね」
「「「あ、はい」」」




