第509堀:焼きたては美味しい 揺るぎのない真実
焼きたては美味しい 揺るぎのない真実
Side:アスリン ウィード所属 ウィード学校6階生 モンスターテイマープリンセス
「お、おはよう。アスリン嬢ちゃん」
「あ、おはよー。おじさん」
「今日は、学校はお休みだったねー。フィーリアも気をつけて遊ぶんだよ」
「はーいなのです」
「ラビリス様、シェーラ様、おはようございます」
「ええ。おはよう」
「はい。おはようございます」
そんな挨拶をしながら、私たちは朝のウィードを歩いていく。
今日、学校はお休みでみんなに会えないのは寂しいけど、明日には久々に顔を合わせられるからいいよね。
だって、ついこの前まで、お兄ちゃんやみんなと一緒に、召喚されちゃってたから。
お家に帰れないかと思ったこともあったけど、やっぱりお兄ちゃんが何とかしてくれた。
だけど、お姉ちゃんたちの半数以上はウィードに残ったままで、いつもより人手不足で、私たちもお兄ちゃんの手助けをしてがんばったんだ。
久々にウィード戻ってきて、今みたいにおじさん、おばさんに声をかけられるのは嬉しい。
「おじさん、おばさんたちも元気そうだねー」
「よかったのです」
「まあ、ウィードを離れたといっても一週間もないけどね」
「たったそれだけの時間と言ってしまえばそうですが、それでも私は変わらないウィードを見て安心していますよ。私たちにとって、もうウィードは故郷ですから」
「そうね。ウィードは私たちの故郷だものね」
「ふるさと?」
「故郷?」
「えーっと、なんていえばいいのかしら?」
「そうですねー。帰るべき場所、街ですね。お家はあの旅館ですから」
「なるほどー。うん。私たちが住んでるのはウィードだもんね。ふるさとだよ」
「大事な故郷なのです」
なんとなくラビリスちゃんやシェーラちゃんの言っていることがわかる。
たーくさん、いろいろなところに行って大変だけど、帰ってくる場所はウィードだもんね。
学校の友達がいて、おじさんおばさんがいて、商店街のみんながいて、魔物のみんながいて、お兄ちゃんやお姉ちゃんたち家族がいる、大好きなウィードがアスリンのふるさと。
「ちょっと、離れただけでわかることってあるモノね。故郷を思うってことが分かった気がしたわ」
「ええ。常々言ってはいましたが、こうやって実感するということはなかなかないですからね」
自由に帰れないのは寂しかったし怖かった。
これが、ラビリスちゃんのいうふるさとを思うってことかな?
「と、そこはいいとして、ウィードに変わりはないようだし、私たちもお仕事に行きましょう」
「はい。お勤めのついでに、ウィードを散歩していましたが、あくまでも今日はお仕事ですからね」
「うん。早く、カグラお姉ちゃんたちを迎えにいこう」
「ウィードをうんと知ってもらうのです」
そう。
今日は残念ながら遊ぶ暇はないんだ。
お兄ちゃんに頼まれて、昨日に引き続いて、カグラお姉ちゃんたちの案内をするんだ。
昨日、カグラお姉ちゃんはよほど疲れていたのか、おトイレから出てきた後、すぐ寝ちゃったから。
「お腹大丈夫かなー?」
「お薬を飲んだから大丈夫だと思うのです」
「あー、キャベジ○を渡していたわよね」
「ただの食べ過ぎですからね。時間が経てば落ち着くでしょう。あれだけトイレにいたのですから、中身は出しきっているでしょうし、キャベ○ンのおかげで胃もたれもないはずです」
「そもそものとどめは、風呂上がりの牛乳だと思うのよね。牛乳って慣れてない人が飲むとお腹壊すわよね?」
あー、そういえば、今では気にならないけど、身長が伸びるって言われて、牛乳をがぶ飲みしたときはお腹が痛くなった気がする?
ヴィリアちゃんも、大人の女性になるってたくさん飲んでお腹がいたくなってたような?
「そういえば、今日はどこを案内すればいいの? フィーリアちゃん聞いてる?」
「兄様からなにも聞いていないのです。ラビリスやシェーラは知っているのです?」
「今日は、私たちにお任せだそうよ」
「はい。今日の目的はウィードを観光してもらうことですから。難しい話はなく、楽しんでもらうこと。その場合、ユキさんがいると緊張するだろうからと、私たちに一任してくれました」
「えーっと、それじゃ、どこに行くかは決めてないの?」
「決めてないのです?」
「迎えに行くこの時間に決めてしまえって言ってたわ」
「ダメな場所はダメと言いますから、アスリンやフィーリアが決めていいと思います。私たちよりも、一番ウィードの楽しいところを知っているだろうって、ユキさんが言ってましたから」
「私やシェーラ、ユキもだけど仕事が絡むからね。純粋に楽しいってことで考えるならアスリンやフィーリアがいいってことになったのよ」
「大役ですね」
「たいやく!! 私たちがんばるよ!!」
「任せるのです!! じゃ、どこにいくのか決めるのです」
ということで、私とフィーリアちゃんで色々考えながら、歩いていると、あっという間にカグラお姉ちゃんたちが泊まっている旅館についちゃった。
「えーと、みんなが泊まってるのはどこだっけ?」
「フロントに聞いてみるのです」
昨日は色々慌ただしくて忘れちゃった。
「その心配はないわよ。私が覚えているわ」
「私もです。でも、一応問題がなかったか、フロントに聞いておきましょう」
流石、ラビリスちゃんにシェーラちゃん。
私も見習ってもっといい女にならないと。
「あ、これはラビリス様方、おはようございます」
「おはよう。で、昨日の彼女たちに問題はなかったかしら?」
「いえ。お預かりしましたお客様たちからは特に何も。時間も時間ですし、すぐにお休みしたのではないかと」
「そうですか。もう、起きてバイキングにでられたりは?」
「いえ、それもないです。バイキングはこのフロントを通らないといけませんから。まだ見ていません」
「なら、間に合ったわね。これで朝食も案内できるわ」
今日は早めに起きて、美味しい朝ごはんをどこかで食べようって話になったんだ。
お兄ちゃんたちの朝ごはんもいいけど、今日は特別でお仕事食事なんだ。
「フロントから連絡してもらえるかしら? 迎えがきたって」
「はい。かしこまりました」
フロントの人に、カグラお姉ちゃんたちの呼び出しを頼んで、私たちはロビーのソファーに座って待つ。
「で、2人とも、朝ごはんはどこのお店に行くつもりかしら? スーパーラッツの紹介かしら?」
「そうですね。こんなに朝早くから開いているお店なんてスーパーラッツぐらいですよね?」
「ちがうよー」
「パン屋さんに行くのです」
「ああ、それはいいわね。というか、パン屋の存在をすっかり忘れていたわ」
「私たちは、ユキさんに倣って基本的に朝はごはん派になりつつありますからね」
そう。ウィードにはちゃんとパン屋さんも存在する。
お兄ちゃんのおかげでふわふわの白いパンが食べられるの。
それどころか、あまーい、菓子パンとか、惣菜パンっていうお腹の膨れる美味しいのもあるんだ。
「でも、なんで知ってるのかしら?」
「学校の皆に教えてもらったの。主にヒイロにだけど」
「冒険者のお仕事の帰りに、そのパン屋でパンを買って食べるのが人気なのです。なんどか行ったことがあるですけど、美味しかったのです」
「なるほど。そこまで高くもなく、美味しいおやつという感じですね」
そんな話をしていると、カグラお姉ちゃんたちが見える。
私たちの姿がすでに見えているのか、まっすぐこっちに向かってくる。
「「「おはようございます」」」
「あ、はい。おはようございます。昨日はご迷惑をおかけしました」
「おはようございます。今日もお出迎えしていただけるとはありがたいですな」
「……おはようございます。昨日は迷惑かけたわ。ごめん」
3人とも挨拶をしつつ、色々話してくれる。
見た感じ、十分休めたようで、疲れが残っている感じはしない。
カグラお姉ちゃんは昨日のことでちょっと恥ずかしいのかな?
でも、疲れていたから仕方ないよね。
私は気にしないから大丈夫。
「今日も、引き続き、私たちがウィードを案内するねー」
「はい。ありがとうございます」
「それは楽しみですな」
「それはいいけど、私たち朝食食べてないわよ?」
「大丈夫なのです。朝食を買って食べるのです」
「焼きたてのパン屋に行くことになったのよ」
「きっと気に入っていただけますよ」
そして、みんな揃って、旅館をでて、パン屋に行ったんだ。
「こ、こんなにパンの種類があるなんて……」
「というか、何かパンというには柔らかそうですな」
「うわー。すごいわね。なにこれ可愛い!!」
3人とも驚いていた。
そういえば、バイデのパンって焼き固めたパンだからカチコチだったよね。
たしかー、お兄ちゃんいわくパンをふわふわにするための材料がまだ見つかってなかったとかなんとか?
「こら。カグラ、手で鷲掴みにしようとしない」
「え?」
「え? じゃないわよ。周りのお客さんを見なさい。あのハサミでパンをつかんで、自分が持ってきたトレーに置いて会計をするの? いい? わかった?」
「あ、うん。これね」
それを聞いていたキャサリンさんもジョージンおじちゃんも、トレーを持ってパンを取り始めた。
「じゃ、私たちも選ぼう」
「選ぶのです」
「そうね」
「ええ。ここまでいい匂いだと迷いそうですけど」
そして、みんなで好きなパンを買って、横の喫茶店で飲み物を注文してパンを食べる。
ここのパン屋は横の喫茶店と協力していて、こうやって買ったパンを喫茶店で食べられるようにしているのも人気の一つなんだー。
私の今日の朝ごはんは、卵サンドとメロンパン、そしてココア。
美味しいねー。
「焼きたてってすごくおいしいですね」
「ええ。思った以上だわ。で、カグラ……」
「な、なによ」
「カグラもだけど、他の2人もなんでパンをそんなにたくさん買ってるの? 向こうの人って朝に沢山食べる習慣があるのかしら?」
ラビリスちゃんの言う通り、3人ともたーくさんパンを買っていたんだ。
皆沢山買うから、なんかそういう習慣でもあるのかな?
「いえ。恥ずかしながら、初めて見るパンが多く、そして美味しそうなので……というか美味しいので」
「そ、そうよ!! こんなに美味しいからいけないのよ!!」
「ははっ!! まことに美味ですな!! 店主が冷めても美味しいというものは土産にさせてもらいましたわ」
なるほど。
それなら仕方ないね。
だって、美味しそうな匂いで実際美味しいんだから仕方ないよね。
お兄ちゃんの料理とかもよく食べすぎるし。
美味しいのが悪いんだよね。
「そういわれると、なんとも言えないわね。私たちも何度か経験あるし」
「私たちの場合は愛しの旦那様の手料理ですからね。愛も加わって美味しさが跳ね上がっていましたから」
うんうん。
「まあ、いいわ。食べながらどこか行きたい場所とか話し合いましょう」
「そうだね。お兄ちゃんは自由に観光って言ってたし、カグラお姉ちゃんたちはどこかみたいところってある?」
「うーん。大事なことはユキが話すだろうし、どこを見ればいいのかしら?」
「そうね。純粋にウィードを楽しんでくれってことでしょうから、何か楽しめそうなところがいいわよね」
「そうですなー。わしから一ついいですかな……」
そうして、美味しいパンを食べつつ、今日の予定をわいわい立てながら、一日が始まるのでした。
最近パン屋の情報って多いよね。
そして、朝一で行ってみると並んでるからびっくり。
そこまでして焼きたてが食べたいのか!?
と、自分もその場にいるのにそう思ってしまう。




