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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
果ての大地 召喚編

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第508堀:必要な休息

必要な休息




Side:シェーラ



予想はできていたとはいえ、やはりこうなりましたか……。

私はそんなことを思いながら、目の前の状況を再度確認する。


「ううっ……」

「カグラ。あなたねぇ、加減ってものを知らないの?」

「まあまあ、あ、すみません。このびーるをもう一杯もらえますかな?」

「あ、ジョージン殿、私の分も」

「わかりましたぞ。3杯で」

「はーい。生3つ追加!!」


なんというか、新人歓迎会で新人が潰れたような感じになっています。

まあ、実際はカグラさんが自爆、食べ過ぎただけですが。

ウィードに初めてきた方々にはよくある話です。

美味しいから食べすぎるという単純明快な話。

だからこそ、防ぎようもないといいましょうか。


「フィーリアちゃん。唐揚げたべる?」

「おー、食べるのです。確かランサーのところのおじちゃんの唐揚げだったのです」

「そういえばそうね。あっちから鳥肉を仕入れていたはずね。私の分もいいかしら」

「あ、それなら私もお願いします」

「わかったよ。4人分だねー。すみませーん!! 特製唐揚げ4人前おねがいしまーす!!」

「はーい。特製唐揚げ4人前!!」


はっ!?

つい、私も一緒になって注文を……。

……これは致し方ないというしかないでしょう。

あのおいしい唐揚げを食べないというのは愚か者がすることです。

なにせ、普段、晩御飯は自宅で食べるのが私たちの習慣ですし、こういう外食はお昼ぐらいに限られるのですが、何分、アスリンやフィーリアは学生の身。

昼食は給食と決まっています。

なので、外で食べるということはあまりしません。

私やラビリスは学生でありながら仕事をしているので、外食はままありますが、こうやって4人で楽しく晩御飯を外食でというのは珍しいことで、ここは4人の仲をさらに深めるためにも必要な行為。

だから、唐揚げを食べてもOKということです。

加減を忘れなければいいのです。

カグラのようにならなければいいだけです。

あとは、デザートも気になりますから、その分の余裕は持たせておくべきですね。

幸い、カグラも最初に食べすぎただけですので、ユキさんに頼まれた観光の遅滞はないでしょう。

私たちが食べ終わるころには、回復しているでしょう。


「なにそれ!?」

「それもおいしそうですね」

「唐揚げでしたかな?」


と、思っていましたが、注文した唐揚げが来ると、復活してきました。


「そーだよ」

「おいしーのです。食べてみるのです?」

「そうだねー。一つ食べてみるといいよー」


そういって、アスリンとフィーリアが、大皿にのった唐揚げをひょいと3人に一つずつ渡す。

一人前で3つ唐揚げがありますからね。

足りなければまた注文すればいいですし、口に合うかもわかりませんから、私としてはいい方法だと思います。

唐揚げを渡された3人はそのままフォークで突き刺し食べます。

あ、流石にお箸が使えるわけがないので、フォークです。

ウィードは観光客向けにちゃんとお店はフォークを置いています。

お箸は慣れると非常に便利ですから、ウィードでお箸を使っているのをみて、お箸の練習をする人も多いみたいです。

もちろん、3人もお箸を使うのを見て驚いていました。

と、そこはいいとして、唐揚げを始めて食べた3人はというと……。


「美味しい!? もっと、頂戴!?」

「こら、アスリン様たちの注文したものに手を出さないの。私たちで注文すればいいでしょう」

「そうですな。すみません。この特製唐揚げの3人前お願いします」

「はーい。特製唐揚げ3人前」


なんて、私たちが頼んだものを味見して注文するというのを、繰り返して……。



「……うぷっ。も、もう、食べれない」

「カグラ。あなた、ハイデン代表って自覚あるの!? ほら動きなさい!!」

「や、やめて、いま動かすと、あふれる。びーると混ざって……」

「あ、あふれるって!? す、すみません。シェーラ様。私が担いででもカグラは動かしますので」


このざまです。

キャサリン殿のいう通り、ハイデンの未来を決めるといっても過言ではない、このウィードの場でここまで醜態をさらすというのはなかなかありませんね。

かといって、私たちから手を切るという選択肢はないのですが。

今、カグラさんが持つ、カミシロ公爵家との繋がりがなくなれば、ハイデンを真正面から叩き潰すしか方法がなくなります。

そうなれば、ウィードというか、私たちの仕事が大幅に増えて本末転倒になるのは目に見えています。

そんなことがわからないカグラさんではないはずですが。


なら、なぜ?


……まさか、わざとやっている?

こちらの真意を探るために、ここで手を切られるなら協力するわけにはいかないと?

確かに、美味しいものを食べすぎただけで、粗雑に扱うような相手を信用するわけにはいきませんが……。

思ったよりも、曲者なのでしょうか?

私はそう思って、カグラさんの動きをつぶさに観察するために意識を集中します。

僅かな動きから、感情の流れというものも感じ取れるもの、わざとやっているのであれば、ぎこちなさがどこかに……。


「カグラ!? 聞いているの!? こんな無礼をはたらいていいと思っているの!?」

「まあまあ、キャサリン殿。カミシロ殿はまだ若い、疲れているようですから、その辺で。シェーラ様もどうかご容赦ください。私からもお願いします」


なぜか、そこでジョージン殿がカグラさんをかばうような発言をして、キャサリン殿も私も首を傾げてしまった。


「ジョージン殿がなぜかばうのですか?」

「まあ、苦労はわかりますからな。我々との戦い、そして噂の姫君の相手と、休まるところが彼女にあったのかと」

「「あ」」


そういわれて、私とキャサリン殿は思い出した。

そういえば、カグラさんは今まで、この若さでありながら、最前線の指揮や、魔術の行使、そしてあのお姫様のお世話をしていたんでした……。


「なによー。美味しいものぐらいたくさん食べて飲んだっていいじゃない!! 今まで、どれだけ頑張ったと思ってるのよー。わけもわからずバイデの指揮は執ることになるし、姫様役に立たないし、お世話も胃が痛いだけだし、ユキの話にはついていけないし、実家との繋ぎも考えろとか、なんで私ばっかりー……うっぷ」

「「……」」

「とまあ、いささか、若者に無理をさせすぎていたようなので、余裕がある今はご容赦いただけると、同じ苦労を味わったものとしてはうれしいですな。将来有望な若者が折れぬためにも」

「……私からもお願いいたします。どうか、この無礼はお許しいただけないでしょうか。私も、彼女に無理を強いていました」

「そうですね。私も配慮が足りませんでした。彼女も彼女で大変だったのですね。ユキさんにはこちらから説明しておきますので、ご安心ください」

「「ありがとうございます」」


そういう風に話がついたあと、そういえばラビリスが話に参加していなかったと思ってラビリスの方をみると、こちらを見て微笑んでいる。


「……ラビリス。わかっていましたね?」

「ええ。でも、私たちから提案すれば断られるでしょう?」

「そう、ですね」

「だから、カグラが羽目を外してしまった方がいいと思ったのよ。そのあと私がフォローするつもりだったのだけど……。そちらのジョージンおじ様は思ったよりも紳士だったみたいね」

「今も昔も、王族の側仕えみたいなものですからな。無茶にいろいろ苦労しましたわ。わっはっは」

「まあ、シェーラやキャサリンはこういう忙しいことには慣れているけど、カグラは学生で今回のことは初体験のことばかりだから、どこかで休息は必要だったのよ。ユキもそのつもりでウィードに連れてきたんでしょう」

「そういうことですか。私たちが接待役ですし、説得力がありますね」


本気で今後のことを考えた接待であれば、エリスさんやラッツさんの方がこういうことは向いているはずです。

まあ、カグラさんを殺しかねないという懸念もあったのでしょうが。


「では、失礼をして、ユキさんと連絡を取りますね」


そういって、部屋を出てユキさんに現状の連絡をする。


『はーい。シェーラ、どうかしたか?』

「カグラさんが、食べ過ぎで動けなくなったので、帰る時間が遅れそうです」

『あー、まあ予定通りだし、この際休憩させてやれ。あのぽわぽわ姫様相手じゃ疲労度は半端ないだろうからな』

「わかりました。やっぱり、これを狙っていたのですか?」

『そこまで狙ってないな。疲れを見せないタイプかもしれないし、その場合は早めに解散したほうがカグラの息抜きになっただろうが、そこでぐでーっとしてるなら、リラックスできそうな、温泉とかあとで案内してやった方がいいだろうな。まあ、シェーラたちも久々のウィードだし、温泉や娯楽施設の選択とかは任せるよ』

「はい。わかりました」

『気を付けてな。あー、晩御飯は外ですませたんだよな?」

「はい。それでカグラさんが動けなくなりました」

『じゃ、ジョンの漬物は明日の朝食回しって連絡しないとな。旅館の方も晩御飯はいらないって連絡がいるな、雑事はこっちがやるから、そっちは任せた』

「はい。任せてください」


ユキさんへの連絡は問題なく終わりましたし、部屋に戻り、カグラさんが復活するまで、温泉はどこに行くか話し合いましょう。

すでに、ウィードにはお風呂屋、銭湯が複数あり、いまやウィードを象徴する娯楽といっても過言ではありません。

体を清潔にするためのお風呂が娯楽というのは私としては、不思議なのですが、他の国の人から言えば、お湯を大量に使って体を洗うのは贅沢の極みということで、娯楽の一部といわれています。

とまあ、そんな感じで、希望に合わせて、いろいろな銭湯が出来ているわけです。

無論、流石にこれはダンジョンマスターの能力を使って温泉を作っているのですが。

効能がわからない温泉はさすがに心配ですし、ルナさんに頼んで、日本の有名どころの温泉をコピーしてもらっているので、素晴らしいの一言です。


と、熱く温泉について語ってしまいましたが、結局、向かった銭湯は見本ともいうべきところで、いろいろなお風呂をそろえているところに向かいました。

ヒノキの湯や岩風呂、足湯、バブル、露天、サウナといった鉄板を味わってもらうことにしました。


「あー……。温泉ってすごいのね。お肌すべすべだし」

「……ええ。お湯につかるということがここまで気持ちいいなんて……。あとで、石鹸とかシャンプー買わないと」


温泉に入ってとろけている、カグラさんとキャサリン殿。

喜んでいただけて何よりです。

無論、ちゃんと最初に体を洗うという常識は教えましたとも。

あ、ジョージン殿はモーブさんたちをユキさんが送ってくれたので、お任せしています。

そして私たちもゆっくり温泉を楽しんでいます。


「久々のウィードの温泉もいいねー」

「学校のお泊りで来て以来なのです」

「あー、あったわね。家の露天風呂もいいけど、こっちも悪くないわねー」

「そうですねー。こうやって銭湯でいろいろなお風呂を楽しむのいいですねー」


私たちも久々のウィードをこうやって楽しむのでした。




「え? これ飲むの?」

「そうだよー」

「一気にごくごくっていくのです!!」

「腰に手を当ててね」


そして風呂上りにカグラさんは3人に言われるがまま、お腹いっぱいなのに牛乳を流し込み……。


「お、お腹が!?」


その日はおトイレとお友達だったそうです。

何事もほどほどにということですね。











カグラはかなり一杯一杯でした。

まあ、仕方がないよね。

ユキもそういう意味でこの時間を設けたのでした。

仕事が忙しいのは間違いないけどね。


そして、本日17時にもう一個更新します。

それは外伝扱いなので、本編とは関係ありません。

ウィードの小話みたいな物語です。お楽しみにー。

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