第504堀:世界は知らないことがいっぱいである
世界は知らないことがいっぱいである
Side:ジョージン ハイデン侵攻軍帝国軍所属 大将補佐 帝国の大鷲
「ど、どうなってるのよ!?」
「あー、とりあえず目的地に着くまで大人しくしてろ。言ってもわからんだろうに」
「ぐぬぬぬ……」
そんなやり取りをしているカミシロ殿を見て、わしも同じようにふるまえばよかったか? と思ってしまっている。
帝国の代表としてはあるまじき行為ではあるが、目の前に広がる未知に対して、答えを得るには、カミシロ殿と同じようにふるまった方がよさそうなのだ。
「ジョージン殿。私、疲れているのか、精霊の巫女様が沢山みえるのですが……」
「……おそらく本物だ。わしも同じものが見ている、キャサリン殿」
わしたちがくるま?とやらで移動している最中、街に入ったのだろう。
多くの人で溢れ、その中に、普通に精霊の巫女様たちだけでなく、男である精霊の戦士様たちも多数いる。
……こんな国、聞いたことが無い。
いや、言っていたではないか、彼らは召喚されたと、つまりここはわしが知っている世界ではないということか。
……実際、見ないとわからないものがあると言われたユキ様の言。確かにその通りだ。
「ジョージン殿。どうかされましたか? 微笑んでおられますが?」
キャサリン殿に言われて初めて気が付いた。
透明なガラスに反射するわしの顔は微笑んでいることに。
「いや、ただ、まだまだわしの世界は広がっていくのかと思ってですな」
「それは私もです」
「キャサリン殿もそうでしょうな。まあ、わしはこの先、老いさらばえて、新しい世界を見ることはないと思っていたのだが、人生なにが起こるかわかりませんな」
「ええ」
わしとキャサリン殿はそう頷きあう。
それを聞いていたのか、ユキ様が話しかけてくる。
「ま、人生いろいろだからな。楽しんだ方がいい。堅苦しい説明はさっさと終わらせて観光といこう」
「そんな簡単にいわないでよ!?」
「カグラ。お前はもっと2人みたいに余裕を持て。正直、うるさくてかなわん」
「うぐっ。で、でも仕方ないじゃない」
「ユキさん。それぐらいは大目に見てよ。これが普通だから」
「ええ。何度も言いますが、ユキの故郷のスペックがぶっ飛んでいるのが悪いのです。文明を一つ二つどころか、三つ四つ飛び越えてるのですから」
「……えーと、中世時代の未航海時代から航海時代、産業革命、第一次、第二次、高度経済成長、近代化ぐらいか、だいたい6つぐらい?」
「産業革命の前に、自由を謳った国民運動がありませんでしたっけ?」
「いえ、市民革命は同じ時期ではなかったですか? そもそも、足掛かりとしては認めますが、第一次、第二次の大戦を文明の枠に入れてよいものか」
「じゃ、4つか」
「……ねえ。私にも理解できる言葉で話してくれない?」
うむ。
わしもさっぱりわからん。
キャサリン殿も首を横に振るだけだしな。
「しかし、ユキ様の故郷の文明とジェシカ様は言われておりましたが、ユキ様はこのウィードの生まれではないのですかな?」
「はい。ユキはこのウィードの生まれではありません。というか、このウィードですら、作られてからまだ5年とたっていません。3年そこそこというところです」
「「「はっ?」」」
3人で同時に間抜けな声を上げてしまった。
「う、嘘ばっかりつくんじゃないわよ!? こ、こんなすごい街がたった3年そこそこでできるわけがないでしょう!? 目の前のあの細長い高い建物を作るだけで10年はかかるわよ!?」
カミシロ殿の言う通り、このような街がわずか3年そこらでできるわけがない。
「……あははー。カグラの言うことはよくわかるけどね。そこはユキさんのおかげというか」
「まあ、ユキの能力のおかげですね。ですが、ユキの故郷であれば3年もあれば、この程度は造作もないでしょう。それぐらいの技術力があるのです。と、話がずれましたね。ユキの故郷はまた別世界です」
そして、さらに告げられる事実。
ユキ様の故郷は別の世界?
異世界?
「「「は?」」」
正直、理解が追い付かない。
「おい、ジェシカ」
「隠しておく必要性はないでしょう。むしろ知っておかなければいけない事柄です。いつ話すかは私たちに一任されていたでしょう?」
「でも、車内でなー」
「こっちの方がいいでしょう。まだ、庁舎の方には私たちの実情を知らない人たちもいますから」
「……まあ、それもそうか」
「では、納得が得られたことで、説明を再開しましょう。このユキは、私たちの大陸に異世界から召喚された人物です。そして、このような街を作り上げたのですが、つい最近、また召喚されて攫われるという事態がおこりました」
「「「……」」」
なるほど。
それが、バイデだったというわけじゃな。
「まあ、私たちも誘拐しているという事実は変わりませんが、和解していますし、こうやって仲良く夫婦をやっています。この大陸にも大国と呼ばれる国もいくつかありますが、その大国もウィードを……」
そうして、車内で軽く話を聞けば、あのゲートを使って物流の活発、安定、安全化を図り、各国の互いの監視も兼ね、物理的に戦争が起きにくい状態を構築したという。
状況は、ある意味私たちがいた大陸と変わりないのだろうが、こっちはすぐに各国の協力体制ができる状況で、瞬く間に包囲網が敷かれるのは想像に難くない。
「……つまり。ユキ様はその、この大陸で一番重要な拠点というべきウィードを作り上げた大人物ということですな?」
「そのとおりです。まあ、ユキは別の目的があるので、ウィードは正室であり、大国の一つロシュールの元第二王女であるセラリア女王陛下に任せております。まあ、側室も他の大国からの姫君や大司教などといった人物がいて、ウィードの外交などをしております」
「「「……」」」
あまりの話に、沈黙する我ら3人。
ジェシカ殿がいう大国がどの程度の大国かはわからないが、自分たちが住まうウィードを大国と言わないのだから、これ以上ということだろう。
そんな大国と複数繋がりがあり、小国は山ほど。
……これは、思ったより物凄いところにカミシロ殿は手を出してしまったのではないか?
この大陸の中核というべき人物を攫ってしまったのだ。
「わかると思いますが、この事実が各国に知られれば、ユキを重要視している大国はなんとしてもそちらの大陸に攻め入ることでしょう。幸い、すぐにユキは戻ってきましたので、誘拐されたということは知られていないので、そういうことはありませんが」
それは、幸いと言っていいだろう。
ウィードだけかと思えば、後ろにさらに大国が複数。
まともに一国だけで勝てる戦力ではない。
元々、ウィード一国にも勝てぬと判断したところに、さらに加わるのは絶望的だ。
「軽くの説明で長話になってるからな。さっさと庁舎の中にいくぞ。もうついてるからな」
気が付けば車は止まっており、あの細長く高い建物の前に到着していた。
「あれ? ユキ様。車で来られるとは珍しいですね」
外から衛兵らしき人物が来て、車の中を確認してそんなことを言っている。
「今日は客を連れてきてるんだ。ウィードが初めてでな」
「なるほど。後ろの方々ですね。とりあえず検査させてもらいますけどいいですか?」
「おう。じゃ、みんな降りて身体検査だ。武器は持ってきてないからすぐ終わる」
言われるがままに車から降りて、建物に入ると、何か小さいゲートがあり、ユキ様たちに倣うようにそのゲートをくぐる。
「はい。皆さん問題ありませんね。金属探知機、魔力探知機ともに反応なし。ようこそ、ウィード庁舎へ」
「う、うむ。歓迎感謝する」
「あ、ありがとうございます」
「どうも。……何してるのよ。あれ」
そんな疑問に私たちが堪えられるわけもなく、カミシロ殿の疑問に答えたのは、目の前に現れた、メイドであった。
「そちらのゲートは、危険物の持ち込みがないかを確認する魔道具の一種だと思ってくださいませ。このようにナイフを通せば……」
そういって、いつの間にか手元に握っていたナイフをゲートに通すと、ピッー!!と音が鳴り響く。
「このように音を鳴らして知らせてくれるのです」
なるほど。便利なものだ。
しかし、先ほどはどこからナイフを取り出したのかわからなかった。
このメイドはただものではないな。
「って、メイドのあんたが危険物持ち込んでるじゃない!! いいのユキ!?」
「いいもなにも、俺の嫁さんだしなー」
「へっ!?」
「申し遅れました。私、メイドの身分でありながら、旦那様、ユキ様の妻を務めております。キルエと申します。此度の訪問。心より歓迎いたします。フィンダール帝国将軍ジョージン様。バイデ領主キャサリン様。そして、……カグラ・カミシロ様」
「ひっ!?」
綺麗な礼をとり、微笑んでいるが、あまりの殺気に私は凍り付いた。
矛先はカミシロ殿だが、余波でここまでとは……。
「こら。キルエ、いじめるな」
「なんのことでしょうか? 私は普通に挨拶しただけですが?」
「……はぁ。頼むから説明の邪魔をするなよ」
「もちろんです。その準備はすでにできております。こちらにどうぞ」
……致し方ないとはいえ、流石にカミシロ殿が不憫に思えてきたな。
と思いつつも、なにも言ってやれない老いぼれを許してくれ。
こっちはこっちで何としても帝国との友諠を結ばなくてはいけないのだ。
そんなことを考えていると、会議室に案内される。
当然、誰もいなかったのだから、室内は暗い。
そもそも、窓すらなく、光を取り込む手段がなく、蝋燭をつけるぐらいしかないのだが、その燭台すらも見当たらない。
「……この暗闇で説明するの?」
「スクリーン系を使う時に便利なんだよ。まあ、今回は使わないけど」
ユキ様がそういうと、いきなり部屋が昼間のように明るくなった。
窓も蝋燭もないのになぜだ?
そう思って、明かりがあるところを覗くと、見覚えのあるモノが視界に映る。
「これは、魔力ランプに使われていたものですな?」
「ジョージン殿の言う通りです。この部屋というか、一般家庭にも普及しているものですね。これで、夜も明るく、蝋燭よりも長持ちで便利なわけです」
「ははー。これは夜の仕事もはかどりそうですな」
「ま、とりあえず。席についてください。キルエ」
「はい。お客様方。こちらへ」
キルエ殿の案内で席に着くと同時に、紙を渡される。
……ものすごく整った紙の束だ。
それに、私たちの言葉でこう書いてある。
『ウィード観光案内・新大陸向け』
新大陸向け?
どういうことだろう? と思っていると、ユキ様が口を開く。
「資料は、これからの説明を詳しく載せているものだが、内容に目を通すのはちょっと待ってくれ。3人一緒に理解を進めていくのが目的だからな」
そういわれて、中を確認する手を止める。
「さーて、ここから少し長くなるけど。これからウィードと付き合いをする上で必要なことだから、我慢して聞いてくれ。ああ、トイレとかは普通に言ってくれ。キルエが案内する。いま、トイレに行きたいとかあるか? そうか、なら説明を開始させてもらう」
そういうと、いきなり、大きい物が天井から降りてきた。
「ああ、警戒しないでいいぞ。これはモニターって言ってな。モノを映す機械……魔道具だな。で……」
ユキ様が何かを扱うと、モニターと言われるものが光り、何か妙なものが映る。
見たこともない形だ。
これは、何だ?
「まず、勘違いを正そうと思う。カグラが俺たちを異世界から呼んだと思っているが、実は違う。同じ世界から俺は呼び出された。その場所が、この大陸。そして、カグラたちがいる大陸はここ」
「「「えーーーー!?」」」
いきなりの告白にわしたちは声を上げる。
異世界ではなく同じ世界からだと!?
しかも、この妙な絵図が大陸の形!?
そんな馬鹿な!?
そして、地図の確認と誤解を解く。
正確な地図っていうのは、本当にここ100年以内でどんどん進化したもので、昔の地図とかまあ、ひどいよ?
で、感想で人物紹介をーってあるけど、実際増えたのって、ビッツと秋天、召喚編のカグラ、キャリー、キャサリン、ジョージ王子、ジョージン、スタシア王女ぐらいだが。
一番最初に人物紹介がでてるのはしってるよね?




