第411堀:お守りを付ける
お守りを付ける
Side:ラビリス
「ということで、私はこれから、ウィードを守るための秘密捜査官になるのよ!!」
「すごいねー」
「すごいのです」
ドレッサの宣言に、アスリンとフィーリアはわーっと騒いで、拍手を送っている。
何やら、先週、いつものお手伝いクエストを受けていた最中に、例の噂を探っていたユキたちと合流して、そのまま警察署までついていった結果らしい。
「もとに戻ったみたいですね」
「そうね」
ドレッサはエクス王国のあとは、しばらくぼーっとしていた。
恐らくは、空っぽになったのだと思う。
それから思いついたように、私たちとは行動を別にして、色々なお手伝いクエストをし始めた。
その結果、前の高飛車なツンデレが復活しつつあったが、今回のでもとに近い状態になったらしい。
「……ドレッサ。自慢話は結構だけど、その秘密捜査官の話はしていいのかしら? 口止めとかされていないわけ?」
「あっ」
……だめね。これは。
元に戻りすぎて、馬鹿になっているわ。
「はぁ、本当に大丈夫なのかしら?」
「まあ、ユキさんがこういうことを予想していないわけないですし……」
「それもそうね」
「ふん。今に見てなさい。きっと悪いことをしている人たちを捕まえてやるんだから」
「いや、報告だけでしょうに」
「間違っても手出ししてはいけませんよ? 色々と問題になりかねませんから」
「わ、わかってるわよ」
……だめだこりゃ、私たちがついていった方がよさそうな気がしてきた。
でも、私たちは顔が知れているしまずいのよね。
うーん、どうしたものかしら?
「というわけで、秘密だからね。ヴィリアやヒイロとかにも喋っちゃだめよ?」
「「はーい」」
ドレッサは二人に口止めをしているけど、まずはそれが先でしょうに。
と、ヴィリアにヒイロか……。
「ラビリス。あの2人なら」
「私も同じことを思ったわ。ドレッサ一人じゃ、危なすぎるけど、あの2人がいるならそうそう無理はしないでしょう」
「はい。とりあえず、ユキさんに話を通してみましょう」
「そうね」
盛りあがっている3人は放っておいて、ユキのところへと足を運ぶ。
「ラビリスにシェーラか。どうした?」
「ドレッサの件よ」
「ドレッサ? ああ、もう喋ったのか、昨日の今日で口の軽いことで」
「やっぱり喋るのは予想のうちなわけね」
「そりゃな。まあ、ばれても問題はないしな」
「問題ないのですか?」
「子供の間諜ってわけじゃないしな。ただ街のお手伝いをして、噂を拾うだけのお仕事だ。表向きには、警察と冒険者ギルドが協力して、子供たち向けに街の清掃活動などのクエストを出す予定になっている。これで、堂々と街に繰り出せるってわけだ」
「なるほど。子供たちに仕事をあっせんしているように見せるわけですね?」
「そういうこと」
なるほど、それで子供たちがうろついても問題のないように見せるわけね。
バックに警察や冒険者ギルドがいるなら、そうそうちょっかいを出してくる相手もいないだろうし、手を出してくるなら、堂々と制圧できるわけね。
情報収集と餌を撒くということも兼ねているのね。
「でも、それじゃあ、深くは探れないんじゃない?」
「そもそも、深く探るには子供は不向きだからな。大人ばかりの施設に子供がいるってのがまず問題になる」
「確かに」
「だから、そういう奥に深く調べるときには、大人の調査員が潜入することになっている。というかそういうのは、俺たちがやることで、噂を集める部署は本当に集めるのが仕事だから。それをほかの部署に回して、治安維持や犯罪防止につなげるわけだ」
「なるほどね。じゃ、ドレッサのお世話役で、ヴィリアとかヒイロを推薦しようかと思ったのはいらなかったかしら?」
「あー、どうだろう。ドレッサが暴走しそうで心配ってのはわかるからな。冒険者ギルドでも結構揉めてたんだろう?」
「ええ。子供たちをからかう冒険者相手によくやってたわね」
「それだと、自分で犯罪を見つけたら、報告は後回しで、自分で何とかしようとする可能性が高いよな」
「そう思うわ」
「なら、ヴィリアとヒイロがいる方がいいだろう。どうせ、子供の協力者もドレッサ以外に集めないといけないんだ。ヴィリアとヒイロがいやだって言わないなら協力してもらおう」
「そうね。でも、それなら、なんで最初からヴィリアとヒイロとかに声をかけなかったの? ドレッサだけでは不安があったんでしょう?」
「そういえば、この話のいきさつはしらなかったよな。この子供たちを使って情報を集めようって言い出したのは、俺じゃない」
「え?」
「そうなのですか? てっきり、ユキさんが考えたものかと」
「それが違うんだな。ドレッサを協力者に任命したのもだけど、ポーニっていう現在の警察の代表。署長さんだ」
へぇ、すごいわね。
トーリもすごい子を後継にしたのね。
リエルとデリーユではないのはわかっている。
あの2人、いつもトーリに書類仕事押し付けているから。
後継者を育てるよりも、現場で働きたいのよね。
「そうだったのですね。その手前、ユキさんが自ら推薦するのはためらわれたのですね」
「そういうこと。だれもやらないなら動くけど、頑張ろうとしている子たちがいるし、俺がでしゃばるのは最後。まあ、こっちとしてもいろいろ調べるけどな」
「当然ね。ま、話はだいたいわかったわ。私たちから、ヴィリアとヒイロを推薦しに行けばいいのね。そのポーニ署長に」
「ああ、たのむよ。でも、2人とも新代表の就任式には顔を出したんじゃないか? なんか初めてのようなニュアンスがあるけど」
「本当に挨拶だけよ。私やセラリア、ミリーはそのままだからいいとしても、ほかの新代表たちは親交を深める余裕はなかったわ。どこも新体制みたいなものだから」
「ああ、そういえばそうだよな」
どこもかしこも、新体制でいろいろ大忙しで、お互いにそこまで手が回らないのよね。
今回の件がいい機会になればいいんだけれど。
「ヴィリアとヒイロの推薦は承りましたが。2人にはどういって誘うのがよろしいでしょうか? 素直に全部話しても?」
「いや、一応、警察が主体で話が進んでいるから、シェーラやラビリスからいうのは、あんまりよろしくないだろうな。推薦とは言っても署長の最終判断で拒否される可能性もあるからな。あと、こういう経験もヴィリアとヒイロにはいいだろうし、軽くお手伝いって感じで連れていくのはどうだ?」
「……そうですね。それがいいかもしれません」
「いきなり連れてこられた子を信頼しろっていうのも酷な話よね。わかったわ。そんな感じで2人に話してみるわ」
「頼むよ」
ユキと話して、だいたい内容とか方針は確認したから、後は2人に話に行くことになった。
えーと、この時間なら、寮の方ね。
「気が付けばそろそろ夕方ね」
外に出ると、日が傾き始めていた。
「そうですね。今日のところは2人に説明だけして、明日、署長さんのほうに連れていくことにしましょう。そうしないと、晩御飯に遅れます」
「そうね。晩御飯に遅れるのは避けたいわ」
今日はユキたちが買い物した中に、大きい豚肉の塊とパン粉があったから、きっととんかつね。
出来立てが一番おいしいから遅れるわけにはいかないわ。
「きっと2人が作ってくれますしね」
「ええ。アスリンとフィーリアの努力を後回しなんてありえないわ」
最近は、2人ともユキの料理を手伝いながら、私たちの食べる分は自分たちが作るといって頑張ってくれているの。
きっと今日も、私たちの分を一生懸命に作るのでしょうから、それが無駄になるようなことは決してしてはならないわ。
私たちがいなければ、きっとセラリアとかが私たちの分を食べつくしてしまうから。
「はい? 明日、紹介したい仕事があるですか?」
「お仕事?」
2人は、寮のほうで自主学習をしていた。
何とも将来有望というか、遊びがないわよね。
特にヴィリアのほうは、いつかユキのためにって、毎日頑張っているわよね。
ヒイロは適度に息抜きしているみたいだけど。
……ちょーっと、ユキと相談してヴィリアのほうは息抜きをさせることを考えようかしら?
仕事を頼みに来ている私がこんなことを考えるのは変だけど、それだけヴィリアは毎日忙しくというか、いじらしいほど頑張っているのよね。
ヴィリアにとって一番のご褒美はユキなんだけど、それでさらに暴走しかねないから考えものよね。
奥さんの一人に迎えたりなんかしたら、命燃え尽きるまで働き続けるんじゃないかしら?
……うん。もうちょっとおちつくまで、ユキとヴィリアをくっつけよう作戦は先送りね。
「ええ。ちょっと新設した部署があってね。そこは幅広く人材を集めたいみたいなの」
「はい。そういうことで、私たちとしては信頼している2人ならばと思ったのです」
「そうですか」
「ヒイロ、期待されてる?」
「期待しているわよ」
「ぬふー。ヴィリお姉、ヒイロは行ってみる」
「はぁ。ヒイロ、そんな簡単に決めていいことではないですよ。といっても、お2人からのお話ですし、一度お話を聞いてみるのはいいと思います。場所はどちらですか?」
「それは明日私たちが案内するわ。まだ一般には応募してないからね」
「私たちを通さないと、お話しできないでしょう」
「なるほど。では明日、よろしくお願いします」
「お願いします」
ともあれ、特に問題なく2人は快諾してくれたのでよかったわ。
今回の新設理由を聞けば嫌とは言わないでしょう。
2人にしてもそれなりの給与もでるし、いい経験になるんじゃないかしら?
あとは、ポーニ署長のおめがねに叶うかってところね。
そこらへんは、2人に頑張ってもらうしかないわね。
そして翌日、私たちは2人を連れて警察署の前に立っていた。
「えーと、ここは警察署では?」
「おまわりさん。おはよーございます」
「はい。おはようございます」
「あ、おはようございます」
ヒイロは特に気にした様子もなく挨拶をしているが、流石にヴィリアは案内された場所に驚いているようね。
まあ、ヴィリアの反応が当然か。
「間違っていないわよ」
「はい。というより、私たちを通すという意味が理解できたと思います」
「確かに……。でも、そんなに大事なお仕事に私やヒイロが役に立つのでしょうか?」
「それは、私が決めることじゃないわね」
「とりあえず、お話だけでも聞いてはどうですか?」
「わ、わかりました」
「頑張る」
わかっていると思うけれど、ポーニ署長としても子供の人材をどう確保しようか悩んでいたし、私やシェーラのつなぎとして使えそうな、この2人を拒否することなどなく……。
「お2人とも、これからよろしくお願いいたします」
喜んで推薦を受け入れ、詳しい内容を聞いたヴィリアとヒイロも……。
「はい!! よろしくお願いします!!」
「おねがいします」
このように、喜んで、この仕事を引き受けた。
ふう、これでドレッサの暴走も抑えられるでしょう。……多分。
流石に心配だったので2人がドレッサと行動を一緒にします。
つまり、この章では主役に昇格?ということです!!
やったね。ロリが増えるよ!!
いや、ヴィリアはもう中学生ぐらいだから、人によってはアウトかね?
ま、ロリの定義はどうでもいいとして、こうして、ウィードの国民内情調査が始まります。
あと、感想で500話おめでとうとありました。
ありがとう。
言われて気が付いた。
基本的に自分は○○堀の話数認識だから、トータル話数は気にしてなかった。
そうなると、500話中90話が落とし穴とかおまけ話、つまり5話中1話は落とし穴ということか。
多いよなーと思う反面、日常を描くにはこれぐらいないときつきつのジェットコースター話になるよなーと思っていたりする。
バランスって難しいね。
ま、自分の気分次第だけどな!!
じゃ、また次回。




