落とし穴73堀:夏の夜の納涼 解決編
夏の夜の納涼 解決編
side:ユキ
じーわじーわじわわわわ……。
蝉の鳴き声で頭が覚醒してくる。
目覚まし代わりだよなー。なんてそんなことを考える。
「ふぁ……。起きるか」
俺は布団から起きる。
只今の時刻10時すぎ。
普段なら大遅刻なんだが、本日は昨日に引き続きフリー。所謂、夏休みというやつだ。
まあ、昨日は明け方までゴソゴソしてたから、仕方ない。
「と、そこはいいか。おーい。起きろ、タイキ君」
俺は横で同じように布団で爆睡しているタイキ君に声をかける。
「ふぁい?」
タイキ君はまだ寝ぼけている様だ、
俺たちは本日は男3人、同じ部屋で寝ている。
本当に悪ガキの夏休みという感じだ。
無論、最後の1人はタイゾウさんである。
「とりあえず、俺は起きるが、そのまま寝ておくか? 一緒に起きるか?」
「あー……。もう10時ですか。……起きます」
タイキ君は眠たそうだが、もそもそと布団から這い出てくる。
「……あれ? タイゾウさんは?」
「俺が起きた時にはいなかったから、飯とか、昨日の解析でもしてるんじゃないか?」
「うへー。元気ですねー。昨日寝たの何時でしたっけ?」
「確か、戻ったのが5時過ぎだから6時ぐらいじゃないか?」
「俺たちでも4時間睡眠ですよ。本当に研究者というか学者ですね」
「そういうもんなんだろう」
ああいう手合いは自分が納得いくまで、大抵止まらない。
あとは、電池切れで倒れるかだ。
……なんでそんなに前のめりかねー。
「しっかし、何も起きませんでしたね」
「ま、そんなもんだろう。別にあそこが心霊スポットってわけでもないんだし」
さてさて、なぜ6時に寝るようなはめになったかというと、昨夜の心霊検証のせいである。
あれから、2時、丑三つ時に人形部屋を監視して、俺たちは部屋の外で待機をする形になったが、特になにが起こるわけでもなく、そのままタイキ君と夏の談笑をして撤収ということになったのだ。
戻ったあとは、後片付けをささっとして、すぐに寝たのだ。
そして今に至る。
寝るときはタイゾウさんも一緒だったんだが、それがいないなら俺たちより先に起きたのは間違いないだろう。
「とりあえず。ちょっと遅いが、朝飯食べるか」
「……そうですね」
俺たちはタイゾウさんみたいにアグレッシブでもないので、朝飯を選ぶ。
「あら、おはよう。起きたのね」
「おはよう」
「おはようございます」
廊下でセラリアと会う。
首にタオルを巻いているところから素振りでもした後なんだろう。
「で、何かわかったかしら?」
「それがなんにも」
「だから本物って可能性もあるんじゃないかって話になってます。まあ、詳しいことはこれから調べますけど」
「そう。まあ、本物であろうがなんだろうが、私の邪魔するなら斬るだけなんだけど、デリーユとラビリスは怖がっているから、早めに解決してあげてね」
「わかってるって。そういえば、タイゾウさんは見たか?」
「タイゾウ? 見ていないわね。外で素振りしていたし、外に出たようには思えないわね」
「そうか。なら、やっぱり解析でもしてるのかね」
「でしょうねー」
俺とタイキ君がそう話していると、それを見たセラリアがにっこり微笑んで……。
「ま、男同士、仲良くやるのはいいけど、奥さんたちをほったらかしにしすぎると、後で酷いわよ?」
いい加減私達と遊びなさい。と、訴えていた。
いやー、一応さ、肝試しとかもそっちが楽しめるように頑張ったつもりなんだけどなー。
「ああ、夫婦水入らずってことよ? 娯楽の提供ではなく、愛を育んで確かめる時間ね」
あ、はい。そっちですね。わかりました。
「わかればいいのよ。じゃ、私はお風呂入ってくるわ」
そう言って、セラリアは立ち去る。
「怖いっすねー」
「いつの世も女性は強いってこった。とにかく朝飯だ」
「うっす」
セラリアの要望を叶えるためには、さっさと昨日の問題を解決しなくてはいけない。
となると、まずは腹ごしらえだ。
腹が減ってはなんとやらというやつ。
「おや、起きたのかね」
「あら、おはようございます」
で、なぜか調理場にはタイゾウさんとヒフィーがご飯とお味噌汁を並べていた。
「今から遅めの朝食なんだが、一緒にどうかね?」
「あ、はい」
「どうも」
「ヒフィーさん。彼らの分もお願いできますか」
「はい」
そういわれてヒフィーがささっと準備を済ませる。
ああ、多分これが日本の夫婦という感じなのだろう。
すごく、気まずい。
あれだ。夫婦水入らずの朝餉にずかずか乗り込んで肩身が狭いって感じだ。
「もう少ししたら声をかけようかと思っていたので、ちょうどよかった」
「そういえば、タイゾウさんは起きたらいませんでしたけど……」
「ああ、私は朝日とともにというのは些か違うな。あれだな、6時には目が覚めるような習慣で、今日も小一時間寝たら目が覚めてしまったんだよ。ほら、戻って寝たのは5時過ぎぐらいだろ?」
「ということは殆ど寝てないじゃないですか。大丈夫なんですか?」
「まあ、よくあることだ。無理はしてないから心配しなくていい」
話をしている間に、俺たちの食事の準備が終わる。
「じゃ、いただこうか。いただきます」
「「いただきます」」
「はい。どうぞ」
ちなみに、タイゾウさんとヒフィーの朝ごはんは、白飯、味噌汁、漬物、鮭の定番コンボだった。
タイゾウさんは俺たちと合流するまでは、現地の飯ばかりだったから、当初は涙を流して喜んでいた。
故郷の食事とは斯くも偉大であり、人々の支えだというのがよくわかるだろう。
納豆はヒフィーがダメなので出ない。個人的には食べているようだが。
「ごちそうさまでした」
「「ごちそうさまでした」」
「はい。おそまつさまでした」
朝ごはんを掻っ込んで、お茶を飲んで一息つく。
「タイゾウさん。朝早く起きたってことは、昨日のアレのほうは?」
「ん? ああ、多少だが、記録の見直しをしているな」
「その様子だと、特に成果はなしですか」
「そうだな。ま、そう簡単に何かがわかるとは思ってないさ」
そりゃそうだ。
俺たちで幽霊の謎を解き明かせるなら、すでに地球で解き明かされているだろうよ。
俺たち以上の天才なんて山ほどいるからな。
「じゃ、お茶飲み終わったら調べるとするか」
「そうですね」
「それがいいだろう。しかし、時間が取れないのが悲しいな。いつの世も、何かが足りない」
「世の中そんなもんですよ。だからこそやりがいがあるんでしょう」
「違いない」
ということで、俺たちはそろって、昨日の解析を始める。
まあ、解析といっても、ビデオを再生して観察と、明るくなった現場の再検証だ。
ビデオの観察は寝起きの俺には睡眠導入プログラムと変わらないので、タイキ君に押し付けて、現場の再検証に赴いた。
「ふぁー……。眠い」
「……ん。眠い」
今回のついてくる護衛はリーアとクリーナで、ジェシカとサマンサをタイゾウさんのところに置いてきた。
真昼間から、幽霊が出るのはまれだし、パニックになっても明るければ自爆することもそうそうないだろうという判断からだ。
「タイゾウさん。映像のほうはどうですか?」
『特に変化はない。問題なしと判断する。そのまま向かってくれ』
「了解。2人とも、廃屋に入るから足元気をつけろよ」
「「はーい」」
『2人ともシャキッとしてください』
『そうですわよ。そちらには得体のしれないものがいるかもしれないんですから』
「わかってるってー」
「ん。いるならどんと来い」
昼だからなのか、2人とも余裕がありそうだ。
といっても、ただまた部屋を調べるだけなんだが。
特に、2人に断ることもなく、手を伸ばして部屋のドアを開ける。
ギィィィ……。
軋むような音が聞こえるが、昼に聞いても特に何も怖くない。
部屋の中は相変わらず、光源がないので薄暗いが、日がお空に昇っているので、夜ほどではない。
人形がずらっと並んでいるのは、それでも気味が悪くあるのだが……。
「俺はカメラのほうを見るから、2人は人形のほうと、台の裏を調べてくれ」
「はい」
「わかった」
そう指示をだして、この場にいる全員が中に入った直後、それは起こった。
バタンッ!!
とっさにその音がした方向を全員が見る。
『ユキ君何があった? 妙に大きい音がこちらに聞こえたが』
「……扉が閉まっただけですよ」
『そうか扉が……。どういうことだ? モニターでは全員が扉から離れているが、だれが閉めた?』
「さあ。廊下のほうに人は?」
『いや、見当たらない』
『ドア開きますか?』
「今確かめる」
2人には後ろを任せて、何が起こっても対応できるようにする。
最悪、この拠点ごと消去かねー。
そんなことを考えながら、ドアに手をかけ、力を入れるが……。
「動かないな。なんでだ?」
「本当に動かないんですか?」
「私も調べる」
とりあえず、ドアを触るだけでは何もない様なので、2人にも試させてみる。
女性が触ると開くとか、トラップ作動とかを期待したのだが、そんなこともなく、ただ単に動かないだけ。
何というか、壁にドアノブを付けているような感じだ。
無理にやると、この一面の壁をまとめて壊す気がする。
いや、その前にドアノブが壊れるか。
「……って感じだな。内からは開けられそうにない」
『冷蔵庫ですかねー』
「ああ、そんな感じだな。外から開けられたらだけど」
『わかった。ジェシカ君とサマンサ君が既に向かっているから、もうすぐそれもわかるだろう』
「じゃ、それでわからなかったら一回更地ですね」
『残念ながらそうだな』
流石タイゾウさん。
俺たちが閉じ込められてもそんな反応ですか。
まあ、命の危険はなさそうだからそういう反応だとは思ったけど。
「でも……」
手に力を籠めるが、本当に動かない。
「不思議ですねー」
「魔力も感じられない。本当に不思議。まるで神の御業」
……ん?
クリーナ、今なんていった?
そういえば、この楽しそうなイベントに、あの楽しいことが大好きなアレが参加していなかった。
…………本当に、アレが参加していなかったのか?
俺がそんなことを考えているうちに、次の出来事が起こる。
『あれ? 5番モニターの映像が、って3番もだ!?』
『いや、次々とモニターが落ちている。なんでだ!?』
「おい。何か起こっている!? 聞こえるか!! おーい!!」
『モニターがお……て、今殆ど……アウ……』
「無線がおかしいぞ!! コールに切り替えた!! 聞こえるか!?」
『こち……ールに……えました。かい……しない……まっ……』
おいおい、無線にコールまで阻害されるとか、電波に魔力の妨害が起こっているってことだ。
つまり、それを兼ね備えた何かがいるというわけで、結構まずい?
俺はそう判断して、リーアとクリーナを抱き寄せて、この場所の撤去をしようと……。
「ふぁー。昨日は面白かったけど、深夜頑張るのはきついわねー」
そう言って、いきなりこの空間に姿を現したのは、ルナとかいう駄女神だった。
「昨日は無駄に頑張ったからねー。まあ、楽しかったからいいんだけど。いい加減お肌とか体調に悪いわよねー」
コキコキと肩を鳴らしながら、俺たちに気が付かないまま人形のほうへ歩いていく。
俺たちはすでに扉のそばに寄っていて、ルナはど真ん中に現れて、俺たちに背を向けたままだったのだ。
いや、気づけよ。駄女神。
「しっかし、最近ユキのほうも、馬鹿みたいにガードが固くなっているわよね。監視カメラに、魔力によるコールでの、ダブル監視、さらにサーマルカメラに粉塵、暗視ときたもんだ。いたずらするにも、あの監視網を抜けるために膨大に魔力使うのが難点よねー」
ほほう。
なるほどなるほど、なんちゃって駄女神パワーでごり押ししたということか。
「くくっ、あのヒフィーの乙女っぷり。いい思いもしたんだからいいでしょう。やっぱ私って最高の女神よねー」
おう、お気楽度では最高峰だな。
とりあえず、ハリセンの準備をして……。
「と、いけないいけない。さっさと私が仕掛けた痕跡を消さないとー……」
スパンッ!!
「いったーーー!? って、あれ!? どうやって入ってきたのよ!?」
「最初からいたわ!!」
「えー!! もっと寝てなさいよ!!」
やっぱり、俺にとって一番の難敵はこの駄女神らしい。
はい。何人か予想が当たっていました。
だめでしょ、ネタバレは。しっー!!
あと、落とし穴が多く、本編のネタに困っているのではないか? という心配する意見がありますが、今のところは大丈夫です。
このウィードの大陸の各国のゴダゴダ編と次の召喚編も考えてありますので、あと半年はやれると思います。
正直、これを混ぜるかどうか悩んでいるって感じですね。
落とし穴が多い理由は、夏のネタは昔からやりたかったが、メンバーの都合上できなかった。日本人がほとんどいないからね。
あとは、物語の進行上、そぐわなかったりした。
今回は大事も終わっているし、調査段階ということで落とし穴をねじ込んでいる。




