表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 学府編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

309/2338

落とし穴41堀:夏の始まり

さあ、皆さんは本場を知っているから説明はいらんな。

どうぞ、異世界で行われる夏祭りをご覧ください。

夏の始まり




Side:トーリ



今日も今日とて、ウィードの見回り。

ま、書類仕事の息抜きなんですが、私たちも警察の一員です。

いくらトップになろうと、こういう巡回行為をないがしろにしてはいけないんです。

ウィードの治安は私たち警察の双肩にかかっているのですから。


「ふひゃー、もうウィードは夏だねー」

「そうだね。気が付けばもう3度目だよ」


そう、魔術的な物とはいえ、ウィードの天候や気温は、ウィードの外と合わせてあります。

なので、夏になれば暑く、冬になれば寒く、無論、春になれば桜が咲き乱れます。

そして、今は私たちがウィードに来てから3度目の夏。

最初の時はウィードを作ることで、そんなことを気にする余裕はなかったですけど、2度目はウィードを建国して、夏の日にリエルと一緒にアイスを買いにいったんだっけ?


「うん。もう3度目だね。まだ、ウィードができてからたった1年とちょっと。でも、色々なことがあったよね」

「……本当に色々あったね。大変だったけど、とても楽しい。生きてる感じがする」

「僕もだよ。ラッツたちには赤ちゃんが生まれたし、とっても、とっても嬉しい。でもまだまだ、たくさんの嬉しいことがあると思うんだ。僕たちも赤ちゃん産むしね!!」

「あれ? リエルは赤ちゃん産むのは痛そうだから嫌だっていってなかったっけ?」


そうそう。たしか、セラリアとルルアが生んだときとか、痛がる2人をみて、赤ちゃんは当分いいやー。とか言ってたような?


「そうなんだけどさ、やっぱり赤ちゃんって可愛いし、僕の血のつながった子供だし、ユキさんもあんなに嬉しそうにしてくれるから……。頑張って産んでみようかなーって」

「ああ、ユキさんってとっても嬉しそうにしてくれるよね。産後に異常がないか、しばらくは大事に気にかけてくれるし」


ユキさんってば、心配性だから、産後で入院している皆に毎日会いにいって、回復魔術かけてたっけ?

赤ちゃんとか、特に異常がないか確認してたし。

……いや、ユキさんは日常でも、毎日私たちと会ってくれる。

普通なら妾の私たちなんか、月に数回会えればいい方なんだけど。

そう考えると、どれだけユキさんが私たちを大事にしているかがよくわかる。

私たちの体が目当てじゃなくて、心から愛してくれているってわかる。


「うんうん。ユキさんって優しいよね。……でも、たまーに、ユキさんの奴隷の方がよかったかもって思うんだ」

「え、なんで?」

「……し、仕事しなくていいし」


ユキさんとの睦まじい日々を思い出して、ほっこりしていた気持ちが萎えた。

……まったく、リエルってば、奴隷から解放されるだけでも感謝なのに。


「……奴隷でも仕事はしないといけないよ」

「わ、わかってるよ。でもさ、ユキさんの奴隷の場合、仕事ってユキさんの身の回りのお世話でしょ? つまり、四六時中ユキさんとやりたい放題の仕事だと思わない?」

「そ、それは……」


ユキさんが、ただ性欲を解消するために私をそばに置くの?

そ、そんなの嬉しすぎる。ずっとワンワンできるのかな……。


「はいはい。お2人とも、人の店の前で性欲バリバリな妄想はやめてくださいな」

「「ふえっ!?」」


気が付けば、ラッツが微笑んで前に立っていました。


「まったく、お2人が来ているって店長から聞いて来てみれば、ユキさんの性処理奴隷とか羨ましい職場を想像しないでくださいな。というか、そんな職場ができれば、全員が就職希望でしょうね。無論、私もです。お兄さんとまだまだやりたいですし。と、そんなことはどうでもいいです。私の店の前ってことはアイスと休憩に来たんですよね?」

「あ、うん。ラッツ、アイス頂戴!!」

「こら、リエル」


即座にラッツにアイスをねだるリエルに注意します。

まったく、これでも警察の副所長なんですよね。

もうちょっと、真剣さがあればいいんだけど。


「まあまあ。リエルはこんなところも愛されていますからね。ほら……」


私が更に言葉をつづけようとするのを、ラッツに止められて、ある方向を指さします。

そこには、子連れの母子がいました。


「あ、リエルお姉ちゃんだー!!」

「こら、リエル副所長でしょ?」

「えー、よくわかんない。やっほーリエルおねーちゃーん!!」

「あ、やっほー」


その子供の声に返事をして、すぐに駆け寄っていきます。


「この前の怪我は大丈夫そうだね」

「うん。お姉ちゃんに治してもらったから!!」

「リエル様、この前は本当にありがとうございます」

「ううん、気にしないで。これも警察の仕事だから」

「お仕事?」

「そうだよ。困ってる人を助けるのが警察の仕事なんだ。あ、でも僕もやりたいから、やってるんだよ。お仕事だからってわけじゃないから」

「すごーい。お母さん、私も大きくなったらけいさつかんになる!!」

「もう、この子ったら」

「あははー、うん、君がその気なら、大きくなったら、警官の試験を受けてみるといいよ」

「えー、試験って、学校みたいに勉強しないといけないの?」

「そうだよー。たーくさん勉強して、色々なことを覚えれば、それだけ沢山の困ってる人を助けられるでしょ?」

「うん、わかった。私、お勉強頑張る!! お母さん、おうちに帰ったら私、お勉強する!!」


そんな微笑ましい会話をリエルはしている。


「リエルは完全にロードワーク派ですからね。ああやって、外を歩き回っては、色々人助けをしているんですよ。まあ、子供たちにアイスやジュースを買ってあげるのは、甘やかしすぎだとは思いますが」

「そんなこともしてるの?」

「ま、おかげですぐに財布は空になりますから、子供たちに逆に気を使われていますけどね。でも、最近の暑い日に、飲み物なしで歩きまわるのは流石にあれですので、私持ちで飲み物は渡していますが」

「リエルったら……。ごめんねラッツ」

「いえいえ。日々リエルがああやって、パトロールをしてくれるから、大した問題も起きませんし、住人の評判も上々。お兄さんを支え、ウィードで暮らす1人として、リエルは十分に役立っていますよ」


私たちが話している間に、リエルは話が終わったのか、その母子と別れてこっちに戻ってきた。


「ごめんごめん。ってカヤだ」

「え?」

「おや、カヤもですか」


リエルが戻ってきたかと思えば、カヤもやってきた。

カヤは一応警察所属だけど、同時に農業方面の代表でもある。

朝からお昼すぎぐらいまでは、農作業で農業地域にいる。

で、現在は夏。

流石に暑いので、麦わら帽子にタオル、シャツに作業用ズボンという姿だが、汗でシャツが透けている。

透けすぎで、白いシャツが濡れて張り付いて、おっぱいが丸見えだ。


「透けてるよ。って、ブラつけてないの!?」

「ん? 本当だ。ブラはきついからつけてない」

「だめだよカヤ。ユキさん以外におっぱい見せたら」

「ですね。お兄さん以外に触らせるつもりはないでしょう?」

「ない」

「それなら、我慢してつけてください」

「でも、この姿でいたら、ユキが元気になって襲ってくれたから、捨てがたい」

「「「ちょっとまった。その話を詳しく」」」


ユキさんが襲っちゃうの!?

うん、よく見れば、カヤが程よく汗かいて、シャツが透けるレベルで色っぽい。

とりあえず、3人でカヤをスーパーラッツの応接室に通して、話を聞いた。

確かに、誰かにおっぱいを見られるかもかもしれないが、ユキさんを誘惑できるのは大きい。

襲ってきても、返り討ちにできるし、ユキさんとワンワンできる時間がふえるのか……。

これは使えるかもしれない、うへへ……。

ま、さすがに人目の多い所ではするつもりはないし、カヤも農作業は女性農作業員たちと一緒にやってるから問題はないかな?


「ふう、すっきりした」


話が終わって、汗だくのカヤはシャワー室を借りて汗を流してきました。

着替えもばっちり用意してあるので問題はないです。

まあ、この応接室は私たち代表用の部屋みたいなものですから、色々と準備していたりします。


「さて、カヤも戻ってきましたし、アイスでも食べますか」

「まってました」


ラッツが冷蔵庫に保管してあるアイスを出します。

私たちの専用スプーンがあるあたり、結構な頻度で利用してるんだなーって思います。


「……ん、冷たくて美味しい」

「うんうん。夏はこれが一番だね」

「うん。本当にそう思う」

「私たちも忙しい身ですからね。こういう役得がないとやってられませんし」


ラッツもそう言いながら、アイスを口に入れては、とろけた表情をしている。


「あ、忙しいで思い出したけど。ラッツは赤ちゃん、シャンスほっといて、こっちに来ていいの?」

「んー? ああ、こっちにはちょっとした書類片付けですから、時間はかかりませんよ。キルエとルルアが今面倒みてますし、大丈夫です。というか、そっちこそ大丈夫なんですか? 向こうで学生やっているんでしょう?」

「学府は今日が休校日。だから、たまってる書類片付けて、こっちにきたんだ」

「……農業の皆は私がいなくても大丈夫そう。来年には代表を代われそう」

「そりゃうらやましい話ですね。私も代表を譲り渡す人がいれば楽できるんですけどねー」

「ラッツのほうが部下は育ってると思ったけど?」


私は素直にそういいます。

だって、ラッツはスーパーを今や5店舗経営するトップです。

5店舗分の店長や人材もあるということ、代表を代わるには問題ないと思うんだけど。

私たちの警察署長とかは、もの凄い引継ぎと、代表たちの信任がないとなれませんから、まだそれをクリアできそうな部下はいません。

まあ、悪用されると、大変ですからね。


「育ってはいますが、私の仕事量を知っていますからね。引き気味なんですよ。従来のやり方なら、後継ぎ方法で有能だろうが、無能だろうが関係ありませんでしけたけど、ウィードは違いますからね。有能じゃないと上にはつけませんし、有能であれば有能なほど、上の大変さが分かってきます。出世欲があればいいんですが、なにせ、私の仕事は、他国のお偉いさんとの交渉もありますからねー」

「「「あー」」」


そっか、ラッツの仕事はお店の切り盛りだけじゃなく、スーパーラッツから輸出品もだしているから、エリスとかの会計を通して、国との交渉事もしないといけないのだ。

それは、知ってる人なら、できるだけラッツにやってほしいよね。


で、そんな雑談をしていた時、応接室の扉が開かれた。


「お、ラッツだけじゃなく、みんなここにいたのか。丁度よかった」

「ユキさん!?」

「あ、あははー。さ、さぼっていたわけじゃないよ?」

「……ちゃんとした休憩」

「わかってるって。こんなに暑いもんな」

「おや、お兄さんも食べますか? というか、シャンスになにかありましたか?」


ちょっと驚いた反応をする私たち3人をほっといて、ラッツはアイスを出して、あーんを要求します。

ユキさんは特に嫌がりもしないで、ラッツの差し出したアイスを食べます。


「うん。夏はアイスだな。と、シャンスは関係ない」

「あむ。うーん、やっぱりアイスですね。で、シャンスが関係ないならどういう用ですか?」


あ、ラッツは自然にあーんしたスプーンを自分の口に持って行った!!

羨ましい!!

いや、キスとか普通にするけど、それでもうらやましい!!


「もう、ユキ!! いきなり飛び出すのはやめてください!!」


私がそんなことを考えていると、ユキさんを追いかけてきたのか、ジェシカが慌てて部屋に入ってきます。


「すまんすまん。でもウィード内だから問題ないだろ?」

「問題だらけです!! と、言ってもユキは聞かないでしょうから、せめて私かリーアを連れて行ってください」


ジェシカも大変だね。

ま、ユキさんが窮屈に感じるのもわからないでもないけど、ユキさんの身になにかあれば本当に大変だから。


「わかった。と、ラッツの質問だが、祭りをしたいから、手伝ってくれ。セラリアやエリスには話通して、予算と予定、広告は決まったから、あとは、警備と販売系に話を通す必要があるんだ」

「なるほど。それなら私とトーリたちですね。で、お祭りですか?」


ラッツは、ユキさんの嬉しそうな、何かをたくらんでいる笑顔を見て、とても優しい顔になってます。

もう、ずるいですよね。

そんな顔をされたら嫌とは言えません。

そして、ユキさんはその祭りの名前を言います……。


「花火大会だ」



その話は、全体的に危険が伴うものでした。

なにが危険なのかというと、まず、その花火大会はウィードの外街で行われるというのです。

一応ダンジョンの区域なので、私たちのような指定保護を受けている人は安全ですが、ほかの人たちは、盗賊や野生の魔物に襲われる危険性があります。

一応外街は外壁で覆っていますが、防衛能力はダンジョンより格段に落ちます。

そして、その花火自体も火薬を大量に使用した、大砲のようなものと聞きました。

日本の知識のスキルとして、多少は花火に関する知識はあるのですが、実物を見ていない私には判断がつきません。

それが、なんで夏の風物詩と言われるかはわかりませんが、危険なものであるのは材料を聞けばわかります。

でも、それをわかっていて、ユキさんは花火大会を実行しようとしています。

……うーん。少し心配だけど、ユキさんや私たちがいるから、万が一の時はなんとかなるかな?

そして、花火大会の準備が始まったのでした。

それが、ウィードの代名詞となるとは露とも思わず。




Side:カヤ



……気が付けば、私は花火師になっていた。

いや、私が一番炎の魔術がうまく使えるからって理由はわかるけど……。

学府の調査そっちのけでやっていいのか、私ですら不安になる。

あの、映画でみた、怪獣王が出てくるかもしれない可能性をほっといていいのだろうか?


「カヤ、どうした?」


私がそんな風に考え事をしていると、クリーナが私の顔をのぞき込んでいた。

彼女はリーアがユキの嫁にふさわしいと連れて来て、すぐに私を含めて、許可を取れて、無事にユキの嫁入りを果たした。

ま、時期が時期なので、クリーナの花嫁姿は我慢してもらっている。

そう、クリーナの式すらほっといて、なんで花火大会なのだろう?


「……クリーナは花火大会にいきなり使われて不満はない?」


クリーナも炎の魔術が得意なので、花火師役になっている。

流石に、扱いがひどい気がしたので、少し様子をうかがってみる。

もしクリーナが嫌なら、ユキにちゃんと言って、まずは式を挙げるべきだろう。

彼女はウィードに連れてこられて、それこそ、まだ数日しかたっていないのだから。


「ん、不満はない。むしろ、信頼してこんな大役を任せてくれて嬉しく思う」

「そう?」

「……私は皆の中では一番性能が低い。みんなの実力を知ったときは、自分はいる意味がないのではと思ったぐらい」

「……それはない。クリーナの魔術も知識も役に立つ。それに、ユキを支えると言った。それが一番大事」


そう、クリーナは自分の実力が劣っていると知らされた。

というか、セラリアが嫁試験と言って、コテンパンにした。

でも、クリーナは言ったのだ。それでもユキを傍で支えると。

半泣きになりながら、ボロボロになっても、杖を向けてきたのだ。

これが、嫁全員を納得させる一番の理由だった。

才能の有無でユキの嫁は決まらない。

最後までユキを裏切らずに支える覚悟があるかが大事なのだ。

クリーナはそれを示した。


とまあ、そんなことがあって、めでたくクリーナは嫁入りをしたが、状況が状況なので、クリーナは情報役として、ユキのそばにいる。

最終的には護衛にまでしたいと皆、思っているのだが、今は修行している時間がない。

クリーナの知識はそれほど役に立ったというわけ。


「ん、ユキにもそういわれた。……嬉しかった。私の才能や知識ではなく、私自身が欲しいって言ってくれた。本当に嬉しかった」


……相変わらず、無意識なのか意図的なのかはしらないが、こういう殺し文句を簡単にユキはいう。


「だから、絶対花火を完成させる。そして、ユキとウィードの人たちを喜ばせる」

「……意気込みはわかった。でも、無理はいけない。魔力が無くなってきてる。休憩」

「ん、わかった」


2人で、草の上に座る。

花火の練習は流石にダンジョン内ではできない。

いや、できなくはないが、最低5キロほど縦穴がある場所を用意しないといけないし、煙の排出とか考えるといろいろ大変らしい。

この場はダンジョンの外街から少し離れた場所だ。

足元は、ダンジョン支配下にあるので、指定保護は効くから、私たち自身の危険はそれほどない。

と、そんな事はどうでもいい。

この場に2人しかいないのだ。

花火大会を企画したユキはこの場にいない。

ユキは科学を使った花火を作るとか言って、ナールジアやドワーフたちと別の場所で色々やっている。


「……ユキは私たちと別行動。少し不満」

「ユキは科学で夜空に花火を作ると言っていた。私は楽しみ。科学の凄さは今まで見てきた。しかし、それは生活をより良いものへするモノや、戦いをより有利に進めるもの。人を魅せるための科学があるなんて凄いと思う。そして、私たちにも魔術で人々を魅せる術を教えてくれた。魔術は人を攻撃するためだけではないと、全ては使いようだと教えてくれた」


……クリーナの言う通り、確かに魔術は攻撃やその補助、多少の生活支援ぐらいにしか使われてこなかった。

それを、魅せる為だけ、芸術に使うっていうのは流石ユキというか、ユキの世界だと思う。


「きっと、ユキが言う科学の花火は私たちが目指しているモノより凄いと思う」


クリーナはそう言って、ユキから実演してもらった魔術花火を打ち上げる。


ひゅーー、ドンッ!!


そんな音が響いて、夜空に綺麗な真っ赤な華が咲く。

実は花火は魔術の制御が難しい。

上空まで魔術を維持して、適度な位置で爆発させ、炎を均等に散らばらせる。

……正直、下手な上級魔術よりキツイ。

それをクリーナは結構な頻度で打ち上げて練習するのだから、魔術の才能は飛びぬけているのだろう。


「本番までそんなに時間が無い。ユキの科学花火は楽しみだけど、負けるつもりはない。あっと驚かせて見せる」

「……確かに、ユキに驚かされるばかりはつまらない。私たちを前座にしたことを後悔させてやる」


私とクリーナは炎魔術に適性がある。

前座で魔術花火を上げて、魔術を楽しませる方向への先駆けとなればいいって、ユキは言っていたけど、私たちが、それを飛び越えて、花火は魔術でやるべきと言わせてやる。




時が過ぎるのは早いもので、気が付けば本番になっていた。


「凄い、これが夏祭り?」

「多分そうだと思う」


私とクリーナは花火を上げる場所に移動しているのだが、ダンジョンの外街は凄いことになっている。

エリスとラッツが大規模な宣伝をしたので、ダンジョン内の住人どころか、ゲートでつながっている各国から見物人が押し寄せてきている。

一応、この祭りのためにダンジョン外街は一気に増築して、花火を見るための場所などを確保した。

セラリアやユキが建物の配置で結構悩んでいたいた。

そんな事を考えていると、警備の魔物や騎士とすれ違う。


「すまん、君はあっちにいってくれ」

「わかったゴブ」


最近じゃ、セラリア直轄の騎士隊も魔物と連携を取るのは慣れたもので、こうやって一緒に行動しているのはよく見る。

けど、何か警備の使い方を間違っているような気もしないこともないのだが……。


「はーい、焼きそばの最後尾はこちらです!! 順番を守ってください!!」

「こっちが、たこ焼きの最後尾ですゴブ!! そこ、割り込まないゴブ!!」


なんで、最後尾のプラカードもって客の整理してんだか……。

トーリとリエルとかは、各国の王が見物にきてるから、そっちの警備に忙しいし、トンデモない大事になってる気がする。

とりあえず、さっさと花火の打ち上げ場所まで行こう。

遅刻なんてしたら目も当てられない。



「お、来た来た」


私たちが打ち上げ場所にたどり着くと、大きな筒を沢山空へと向けているユキやドワーフたちが目に入った。


「ん、ユキ、来た」

「……そっちの準備は?」

「ああ、大方終わってるな。あとは時間を待つばかりだ。セラリアとエリスから連絡がくる。その連絡で問題が無ければ、そのまま花火大会開始だ」


なるほど、あとは時間を待つだけか。

で、手持無沙汰でぼーっと待っていると、ユキが変な玉を大事そうに持ってきていた。

いや、ドワーフや妖精たちもだ。


「ユキ、なにそれ?」


私が質問する前に、クリーナが興味津々でその玉が何かを聞く。


「これが、花火だ。これに火をつけて、空中に打ち出すと、綺麗な華が咲く」

「……ということは、これが火薬? でも、凄い大変な作業だと理解できる。なんでこんなに多く持ってこれた? そんな時間はなかったと思う、ユキは花火師?」

「いや、違う。今回は時間がないからな。DPで地球の花火を取り寄せた。オリジナルではないが、地球の日本の花火を見て驚くといい」

「ん、楽しみ」

「俺も、2人がどんな魔術花火を打ち上げるか楽しみだ」

「……見て驚くといい」

「ん、カヤの言う通り。驚かせる」

「そりゃ、楽しみだ。っと、セラリアか? うんうん、そっちは問題なしと。あとはエリスだけだ。ああわかった」


さあ、そろそろ気合いを入れよう。

……なにか緊張してきた。




side:ある日の母



「ねえ、おとーさん、おかーさん。いっーぱい人がいるね!!」

「そうだな」

「ええ、凄いわね」


私たちは夏祭りと言われる、お祭りの中を歩いています。

ウィードには建国してから少したって、夫が商売のチャンスだと言って、移り住んだのですが、とても住みやすい街で毎日を心安らかに過ごせています。

これも、ウィードを治めているセラリア様や代表の方々のおかげ。

でも、それだけで贅沢なのに、何かにつけてウィードはお祭りを開催します。

年越しだったり、……お風呂覗き大会だったり。

夫になぜ、ここまでお祭りをするのかと聞きましたが、私にはよくわかりませんでした。

確か、経済を回すにも、活気を与えるのにも、お祭りが一番良いそうです。

ですが、人が集まらなければ意味がないし、成功する保証もないと言っていました。


「ねー、お母さん。花火ってなんだろうね?」

「さあ、お母さんも見たことないからわからないわ」


そして、この夏祭りのメインイベントで花火があるという事なのですが、花火自体をしらないので、それが何かもわかりません。

多分、ダンジョンの外街でやるくらいですから、ダンジョンの中ではできないことなんだと思います。

あ、夫はスーパーラッツの店長勤めなので、なにかわかるかもしれません。

あの、ラッツ代表と直接意見を言い合える凄い立場なのです。


「ねえ、あなた。花火がなにかラッツ様から聞いていないの?」

「ん? いや、俺も詳しくは聞いていないんだ。でも、夜空に落書きをするって言ってたな」

「すごーい!! 真っ黒なお空にどうやって落書きするの!?」

「ラッツ様はお楽しみにって言ってたし、空になにか起こるのは間違いないから、いい場所を確保しよう。俺たちは他の人達とちがって、自前で食べ物や飲み物は持ってきてるからな」


夫はそう言って、手に持っている手荷物を見せます。


「本当に持ってきてよかったわ。屋台の食べ物は気になるけど、流石に並ぶと見る場所を取る暇なさそうだもの」


私はそう言うと、ずらーっと並ぶ屋台の列を見ます。


「ラッツ様の言う通りだな。時間が早ければ買う暇があるだろうが、もうすぐ花火が始まるって時間は凄い人で買えそうもない。来年があるのなら、早目に来て買おうな」

「うん!! おとーさん、おかーさん、屋台の食べ物は我慢するから、早く場所取らないとなくなるよ!!」


娘は花火が気になるようで、屋台の食べ物が買えないことにぐずることはありませんでした。

この前、トーリ様、リエル様に会ってから結構聞き分けがいいのよね。

そんな事を考えながら、場所を確保して少し待つと、アナウンスが流れます。


『皆さまお待たせしました。告知したと通り、花火は8時からの予定です。あと10分ほどで始まります。その前に花火の注意事項がありますので、少しの間ご清聴ください』

「あー、エリス様だ!! エリス様の声だ!!」

「こら、静かに聞きなさい。注意をちゃんと聞かない子は花火がみれないわよ」

「あう。わかった」

『では、花火の注意事項ですが、大きな音がかなりの頻度で上がりますが、花火の音なので、慌てないでください。安全はちゃんと確保していますので、ご安心ください』

「あ、次はラッツ様だ!!」

「こら!!」

「ごめんなしゃい」


それから、祭りに関しての注意事項などを言って、困り事があれば、最寄りの交番へとかの話でした。


『さあ、もうすぐ時間ね。これからはウィードの女王、セラリアが指揮を取らせてもらうわ。こほん、ウィード国民、及び各国からの人々、並びに、各国の代表がこの夏祭りに参加いただけたことに感謝するわ。そして、これから始まる花火は、この暑い中来たことが間違いではなかったと、満足してもらえるものと思っているわ。よければ最後まで見物していってね。あ、無理はだめよ。具合が悪いなら救護のテントまで。さ、もう時間ね。西の空を見て』


セラリア様の言葉で一斉に祭りに来た人々が、日が沈んだ西の夜空を見上げます。


『さて、これからの解説は私ラッツが変わります。まず、最初の花火は魔術師による花火になります。この花火は、スーパーラッツ、ウィード鍛冶組合の提供でお送りします』

「ははっ、流石ラッツ様だ。ここでスーパーラッツの紹介をするか。花火が凄ければ、凄い宣伝にな……」


ひゅーー……、ドンッ。


夫がそう言いかけた言葉は、夜空に咲いた花によって遮られます。

いや、周り全ての人から声が失われました。

……本当に、夜空に花が咲いたのです。

そして、それは一度だけではありませんでした。


ひゅーー……、ドンッ。

ひゅーー……、ドンッ。


空気を通して響く重低音が、花火が夜空に咲いたと知らせてくれます。

一瞬で咲いては散る花。

それが次から次へと咲いては消えます。

その幻想的な光景から、誰も目を離すことはできませんでした。


『はい、以上が魔術師の花火でした』


終りを告げるラッツ様の言葉で、我にかえり、周りから凄い歓声と拍手が響きます。

私も、夫も、娘も歓声と共に拍手をしていました。


「すごい!! すごい!! おとーさん、おかーさん、花火って凄いね!!」

「ああ、ここまで凄いものだとは……」

「……魔術ってこんな使い方もできるのね」


しかし、それは終わりではありませんでした。


『ふふふ、歓声や拍手からお喜びいただけたのはわかりました。しかし、これで終わりではありませんよ。魔術師の花火はこれで終わりです。術者はカヤとクリーナでお送りしました。そして、次が本番です。我らが夫、ユキがこの花火を提案したのです。これからの花火はもっと凄いですよ。魔術を使わず、火薬で花火を打ち上げるのです。あ、資金提供はウィード、ロシュール、リテア、ガルツの王室からでお送りします』


……王室からの資金提供!?

いったい、ラッツ様の夫、ユキ様はどうやって!?

あの人、普段はどこか抜けていて、失礼ですが、本当に軍部の参謀とは思えないんです。

娘を抱っこしてくれたり、ラーメン屋とか開いてるんですから。いや、美味しいんですけど。


ひゅーー……。


そして、花火が上がる音が響いて、皆静かに空を見上げます。

が、花は開きません。今までのタイミングだともう花は咲いているはずなのですが?

まさか失敗?

と、そんな事を思っていると……。


ドンッッ!!


先ほどとは比べ物にならないほどの爆音が響き……。

夜空に、先ほどの花火が小さく見える程の、大きな大きな花火が夜空に咲きました。

見て居た人達は、あまりの大きさと凄さに反応できていません。私もですが、しかし、それで終わりではありませんでした。


ひゅーー……。

ひゅーー……。

ひゅーー……。

ひゅーー……。


立て続けに花火が上がる音がします。

さっきのは一個ずつだったのに、今度は連続!?

私の予想は当たっていて、空が昼のように輝き、夜空に沢山の花火が連続で咲き続けます。


ドドドドンッ。


……もう言葉はいりませんでした。

ただただ、夜空に咲く綺麗な花を見つめていました。

この世に、ここまで美しいモノがあるなんて……。


ひゅーーー……、ドンッ!!




『これにて夏祭り、花火を終了いたします。屋台につきましては、10時まで開いていますのでお楽しみください。はい、迷子のご連絡を致します。身長……』


気が付けば、私は夫や娘と家路についていました。

手には綿あめを握って、夫は焼きそばやたこ焼きを持っています。

娘はお面を被って、リンゴ飴を美味しそうに食べています。


「すごかったな……」

「……ええ、本当に凄かったわ」


あの花火の光景は忘れられません。

このウィードという国にきて本当によかったと思わせてくれる光景でした。


「お父さん、お母さん、また来年もこようね!!」


娘がそう言って嬉しそうにしています。


「そうね。また来年も来ましょう」

「ああ、資金が足りなくてできないなら、俺のお小遣いをあげてもいいぞ!!」

「あ、私もお小遣いあげる!!」

「ふふ、そうね」


そして、毎年、夏の始まりを告げる、夏祭りが行われていくことになりました。




いろいろ、太鼓とか、屋台とか詳しくかきたかったのですが、

文章的に色々断念しました。

まあ、つたない文章で色々感じていただけたら幸いです。


あと、もう花火はみたか?

夏はもう始まっているぜ!!


当たらないくじを引くんだ!!

変なお面を買うんだ!!

ぼったくりの屋台の食べ物や飲み物を買うんだ!!

水風船をわってずぶ濡れになるのだ!!

変な光る棒をもって歩き回るのだ!!


そう、夏はまだまだ始まったばかりだ!!

どっかの祭りに乱入だ!!


ま、俺はのんびり家ですごすけどな。

人混みとかマジ勘弁。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ